川と運河の立体交差を味わう(マクデブルク水路橋)

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

川と運河。通常、これらは交差したり分岐したりするものです。しかし、世界には川と運河が立体交差する場所もあります。ドイツに大規模な立体交差があります。その立体交差を訪問してみました。

写真1. 川をまたぐ水路橋

復習:ドイツの川と運河の立体交差(マクデブルク水路橋)

まず、ドイツに存在する川と運河の立体交差(マクデブルク水路橋)について簡単にまとめます。

マクデブルク水路橋の概要

マクデブルク水路橋の概要

  • 河川:エルベ川
  • 運河:ミッテルラント運河
  • 長さ:918m

マクデブルク水路橋の概要をまとめました。マクデブルク水路橋はドイツを南北に流れるエルベ川と、ドイツを東西に結ぶミッテルラント運河の立体交差です。この東でミッテルラント運河はエルベ-ハーフェル運河に名前を変えます。

図1. マクデブルク水路橋の位置(googleマップより引用)

マクデブルク水路橋といいながら、イェリヒョウアー・ラント郡とベルデ郡の境界に位置し、マクデブルク市内には位置していません(図1)。もう少しわかりやすい表現をすると、マクデブルク市の北の郊外といいましょうか。公共交通でのアクセスにはやや苦労する立地です。

ミッテルラント運河の概要

ミッテルラント運河はドイツ北西部のルール地方とドイツ北東部のベルリンを結ぶことを主要の目的とした、ドイツでも重要な運河です。

ここで2つの疑問が浮かぶと思います。

  1. ドイツの北部には海があるのに、なぜドイツを東西に結ぶ運河が必要なのか?
  2. 水運であれば既存の河川を利用すれば良いのでは?

これらの疑問に簡単に答えましょう(これは私の考察です)。

図2. ドイツの地図

ドイツの地図です(図2)。ドイツの北側にはバルト海と北海があり、これらを通ることでドイツの西部とドイツの東部を結ぶことができます。しかし、ユトランド半島(デンマーク側に突き出た半島)を迂回しなければならず、デンマークという別の国の近くを通るというデメリットがあります。特に、別の国の近くを通るのは、国防上の問題がある可能性も指摘できます(外から見る限り、現在のドイツとデンマークでは特段関係性は悪そうには見えませんが)。そのような理由でドイツ内陸部の運河が必要なのでしょう。

ドイツ内陸部での水運が必要なことはわかりました。では、既存の河川はなかったのでしょうか。ドイツの地図を見ると、南に山地、北に海が位置しています。川は山から海に流れますから、ドイツにおいては川は南北方向に流れます。そのため、ドイツでは東西方向の川はないのです。したがって、運河という人工的な水路が必要になったのです。

東西方向の運河と南北方向の河川。この両者が直角に交差するのもある意味当たり前なのです。

マクデブルク水路橋へのアクセス

では、そのマクデブルク水路橋へのアクセスはどうなのでしょうか。周辺には駅はなく、駅から徒歩といっても時間がかかります。

図3. 最寄駅からマクデブルク水路橋までの経路

最寄駅から水路橋までの経路を示しました(図3)。最寄駅から6.0kmも歩き、往復は12.0km以上になるという強行軍です(航空写真を見るともう少し短いルートで行けると思うが)。また、航空写真を見る限り、途中の道路には歩道がないように見え、歩いてアクセスするのは難易度が高いです。

では、どのように向かえば良いのでしょうか。水路に向かうのですから、船で行くのが一番です。「水路橋に行く船などあるのか?」という疑問があって当然でしょう。しかし、そのような遊覧船があるのです。Magdeburger Weiße Flotte GmbHです。Wasserstraßenkreuz "Große Acht" というプランが水路橋を行くコースです。

2023年については、以下の通り運航されます。

  • 4/29~10/1:月曜と金曜を除き、午前中(10:00~14:00)と午後(13:00~17:00)の1日2便
  • 3/18~4/28と10/2~10/31:水曜、土曜と日曜に午後(13:00~17:00)の1日1便

基本的に冬期には運休し、3月~10月のみの運航です。詳細は公式サイトの時刻表をご覧ください。このコースの場合、大人1人で33ユーロです。ただし、私が乗った日は理論上、午前便の運航もありましたが午前便は運休されました。午前便でも午後便でも動ける日程を立てるのがベターでしょう。

図4. 遊覧船のりば

遊覧船のりばを示しました(図4)。マクデブルクの中心街に位置する、Alter Marktから徒歩10分程度とアクセスはそこまで悪くありません。(日本語によるきちんとした情報がないために)私は乗る前日に下見でここまで歩きましたが、私という先駆者が書いているので、この記事を読んでいる人は下見の必要はもはやありません(やさし-)!

実際の道順を示します。

写真2. アルターマルクト電停からエルベ川方向に進む

アルターマルクト電停からエルベ川方向に進みます(写真2)。マクデブルク中央駅と反対方向、マクデブルク大聖堂から向かっていたら右に曲がる方向です。

写真3. 歩道を進む

歩道を進みます(写真3)。右に近代的なショッピングセンター、左に荘厳な建物を見ながら進みます。左の荘厳な建物は古くからの建物…ということはなく、社会主義がイケイケドンドンだったときに建造されたスターリン様式の建物です。

写真4. 教会が見えたら左に曲がる

教会が見えたら左に曲がります(写真4)。実際は教会ではなくイベント会場ということですが、道案内的には教会で良いでしょう(笑)。

写真5. 広い通りを歩く

広い通りを歩きます(写真5)。何となく日本の郊外住宅地を思い出させる風景です。マクデブルクの歴史は古いのですが、戦時中に建物が破壊され、戦後は新しい街を作ったのです。

写真6. 広い通りが続く

広い通りをもう少し歩きます(写真6)。それにしても社会主義時代の建物が多いです。ソビエト様式です。「ここはドイツであり、ソビエトではないのでは?」という疑問もありましょう。思い出してください!ドイツは戦後から1990年まで2つに分かれており、東ドイツは社会主義人陣営だったことを。そして、マクデブルクは旧東ドイツです。

なにやら看板が見えます。

写真7. 看板の中身

看板の中身です(写真7)。昔の様子を書いたものでしょう!

写真8. 右に曲がり、団地と団地の間を歩く

このあたりで右に曲がり団地と団地の間を歩きます(写真8)。日本から離れた場所に来ているのですが、育った場所にもあった団地を歩いている感覚があり、何となく懐かしく感じます。初めて来た場所なのにね!

写真9. 歩道橋が見える

エルベ川沿いに道路が通っており、その道路を渡るように歩道橋があります(写真9)。目の前に見えるのは礼拝堂です。

写真10. 歩道橋を渡る

歩道橋を渡ります(写真10)。

写真11. 歩道橋を渡り切った

歩道橋を渡り切りました(写真11)。エルベ川沿いにたどり着きました。

写真12. 船にたどり着いた

船にたどり着きました(写真12)。周囲は暗いですが、もう夕方です。「遅くて13時出発なのになぜ夕方に行くのか?」と思う人もいることでしょう。乗ろうとした前日に下見で行ったためです。

この近くの展望レストランで夕食をとりましたが、おいしかったです!

遊覧船でマクデブルク水路橋に向かう

さて、実際に水路橋でマクデブルク水路橋に向かいましょう。通常はマクデブルク水路橋の上下を通るルートですが、ローゼンボートリフトが閉鎖していたため、経路変更で水路橋の下だけを通る経路に変更です。

写真13. 船に乗りこむ

船に乗りこみます(写真13)。ここで現金(私はエポスカードを使いましたが)で支払います。事前予約すると価格が高いという情報を入手していたので、現地購入です。

写真14. 船内の様子

船内の様子です(写真14)。遊覧船なので飲みものや軽食を頼むことが前提で、そのためのテーブルが備わっています。前のほうはご婦人の集団、後ろのほうも高齢者の集団、と地元の集会場としての利用が主体のように見えました。川と運河の立体交差を見るために乗っている人はいないの?

写真15. デッキもある

デッキもあります(写真15)。この日は寒いので、誰もここを定位置にしていませんでした。

写真16. エルベ川の右岸を見る

エルベ川の右岸を眺めます(写真16)。ドイツの都市部に多い、集合住宅が並んでいます。

写真17. 遊覧船が出発!

遊覧船が出発しました(写真17)。私は進行方向左側に座りました。先ほどの礼拝堂が見えますね!

写真18. DBの線路をくぐる

DBの線路をくぐります(写真18)。マクデブルクからベルリン方面に向かう線路です。ちょうど貨物列車が通過しました。

写真19. 線路をくぐる

線路をくぐります(写真19)。

写真20. 華奢な橋をくぐる

華奢な橋をくぐります(写真20)。歩行者と自転車のための橋です。

図5. この橋の位置

この橋の位置を示しました(図5)。

写真21. ゆるやかな川を走る

ゆるやかな川を走ります(写真21)。マクデブルクの市街地から外れた位置です。

写真22. 大きな工場が見える

大きな工場が見えます(写真22)。このあたりはマクデブルク地区でも工場や物流倉庫が集結しているエリアです。

写真23. ボートリフト方面と分かれる

運河(西側)への連絡経路と分岐します(写真23)。この遊覧船はこちらに分岐するルートを通るのですが(往路か復路かは不明)、この先のリフトが定期点検のため、この日はあちらに分岐しません。

写真23. 現在位置!

だいたいの現在位置です。このような場面があるので、通信環境は重要です(例えば海外WiFiレンタル【WiFiBOX】は重宝します)。

写真24. 水門が見える

水門が見えます(写真24)。このあたりが中部ドイツの水運の重要な拠点であることをうかがわせる雰囲気です。

写真25. マクデブルク水路橋が見えてきた

マクデブルク水路橋が見えてみました(写真25)。せっかくなので、デッキに上がっています。

写真26. 川の右岸(東側)はかわいい住宅街

川の東側にはかわいい住宅街が広がっています。ここまで路面電車を伸ばしても良いのでは?

写真27. 水路橋に近づいてきた

水路橋に近づいてきました(写真27)。通常の道路橋や鉄道橋と異なり、水を張るための空間が下に延びており、水路橋であることがわかります。

写真28. 水路橋をくぐる

水路橋をくぐります(写真28)。

写真29. 水路橋を振り返る

水路橋を振り返ります(写真29)。

写真30. エルベ川を通る

エルベ川を通ります(写真30)。このあたりで急に速度が落ちました。何だろう?

写真31. 閘門(こうもん)への分岐点で停止

閘門への分岐点で停止しました(写真31)。ここで進行方向を変えるために停止したのです。

図6. ニーグリップ閘門の位置

ニーグリップ閘門を示しました(図6)。川と運河の結節点にあります。

写真32. 閘門に向かって発進!

閘門に向かって発進しました(写真32)。

写真33. 閘門に向かって進む

閘門に向かって進みます(写真33)。でも扉が閉められています。船旅(往路)はここで終わりかな?

写真34. 扉が開いた

扉が開きました(写真34)。運河からエルベ川方向に向かって貨物船がやってきました。それはここで待つわけです。

写真35. 貨物船がやってきた

貨物船とすれ違います(写真35)。一般に船は右側通行であり、このときもそのセオリー通りの方向ですれ違います。交通路としての役割を感じさせる貴重なシーンです。

このような場面を見たがるのは私くらいだと思っていましたが、もう1人が見にきていました(後で仲間をこのスペースに引き連れていました)。

写真36. 船が去っていった

船が去っていきました(写真36)。

写真37. いつの間にか青信号に変わっていた

いつの間にか青信号に変わっていました(写真37)。ニーグリップ閘門に入ります。

写真38. ニーグリップ閘門に停止中

ニーグリップ閘門に停止中です(写真38)。目の前に道路が見えます。何ということはなく通行している様子です。

写真39. ニーグリップ閘門に停止中(後ろを振り返る)

ニーグリップ閘門に停止中です(写真39)。閘門(こうもん)とは、水位の異なる水面をもつ河川や運河、水路に設けられる船を通航させるための施設のことを指します。別の表現をすると、そこで水を抜いたり足したりしてもう片方の水面に合わせるための施設です。

このときの私の脳内ではこのような演算がなされていました。

  1. マクデブルク水路橋を見ればわかる通り、運河のほうが水面が高い
  2. マクデブルク水路橋からニーグリップ閘門まではほぼ水平だろうから、ここと運河の高低差はそう変わらないだろう
  3. よって、水面が上がり、運河の水位に合わせるのだろう

この脳内演算は当たっていたのでしょうか?

写真40. 水位が下がり始めた

水位が下がり始めました?濡れていた場所があり、水位が下がったことがわかるのですが、あれ?どういうことでしょうか?

写真41. 水位が下がって運河と同じレベルに揃えられた

水位が下がって運河と同じレベルに揃えられました(写真41)。よって、ここから先も通行できます。

写真42. 運河に入る前の待機場

運河に入る前に待機場のようなものがあります(写真42)。閘門は通行量が制限されますから、ニーグリップ閘門を通れるまでの待機場でしょうか。

写真43. 運河に入った

水位が下がって運河に入りました。でも不思議です。運河のほうが水位が高いはずです。

写真44. 運河にも閘門がある

図7. 運河の閘門の位置(googleマップより引用)

運河にも閘門がありました(写真44、図7)。地形的な制約なのでしょうか。マクデブルク以東とマクデブルク以西では運河の水面が西側のほうが高く、それを調整するための閘門があったのです。先ほどの私の脳内演算では、「運河の水位が一定」という隠れた仮定があり、その仮定は現実にそぐわなかったのです。

写真45. 運河は流れがない

運河には流れはほとんどありません。道路や鉄道とは異なり運河は高低差が許されない建造物です(道路や鉄道も一定の制限はあるが)。そのため、運河の建設は道路や鉄道とは異なる難しさがあると推察します。

写真46. ニーグリッパ湖に入る

ニーグリッパ湖に入ります(写真46)。隠れた保養地という雰囲気です。

写真47. ニーグリッパ―湖を航行中

ここで1周し、復路に入ります。

写真48. 運河でモーターボートに抜かされる

運河でモーターボートに抜かされます(写真48)。こっちもそれくらいの速度を出そうか(出せません!)。

写真49. 閘門をもう1度確認

写真50. ニーグリップ閘門方向に分岐

ニーグリップ閘門方向に分岐します(写真50)。

写真51. ニーグリップ閘門に戻ってきた

再びニーグリップ閘門にやってきました(写真51)。

写真52. 水が足されている

水が足されています(写真52)。

写真53. ニーグリップ閘門を出発

ニーグリップ閘門を出発しました(写真53)。

写真54. 船が見える

船が見えます(写真54)。エルベ川が航路として重視されていることがわかる一幕です。

写真55. マクデブルク水路橋にさしかかる

マクデブルク水路橋にさしかかります(写真55)。ここで水路橋を行く船がかろうじて確認できました。

写真56. もう1枚撮影!

もう1枚撮影しました(写真56)。

写真57. マクデブルク水路橋を通り過ぎた

マクデブルク水路橋を通り過ぎました(写真57)。ここは今回では重要ポイントですので、上のデッキから撮影させていただきました。

写真58. のどかな船室

船室はのどかです(写真58)。マクデブルク水路橋やニーグリップ閘門という重要ポイントを過ぎ、あとは出発地点に戻るだけですから、のんびりしたものです。私のところにウエイターさんがやってきて注文を聞かれましたが、紅茶1杯しか頼まずにすみません…。

写真59. キロポスト?がある

キロポストがあります(写真59)。

写真60. どんどん数字が減っている

どんどん数字が減っています(写真60)。復路は川上方向に向かいますから、(川上に向かって数字が減っていることからして)河口からの距離ではないことは明白です。川上のエルベ川(チェコ国内ではラべ川)地点からの距離なのかな?

写真61. 歩行者用の橋をくぐる

歩行者用の橋をくぐります(写真61)。日本の河川と比べ、河川を渡る橋は少ないように見えます。

写真62. ICが駆け抜ける

鉄道橋をICが駆け抜けます(写真62)。方角的にこの鉄道橋はハレ方面やハノーファー方面ではなくベルリン方面ですから、ベルリン方面へのIC(本数はごくわずか)でしょうか。

写真63. ベルリン方面に向かっていった

ベルリン方面に向かっていきました。

写真64. ベルリン方面からやってきた

ベルリン方面からマクデブルク方面に列車(RE)がやってきました(写真64)。

写真65. 先鋭的な建物が見える

マクデブルクの中心街に近づいたこともあり、建物が増えてきます。先鋭的な建物が見えます(写真65)。

図6. ミレミアムタワーの位置(googleマップより引用)

その正体はミレミアムタワーです(図6)。風景を眺められるだけでなく、学習ができる展示もあるようです。

写真66. 右岸にも住宅街が広がる

マクデブルクの中心街は左岸に広がるのですが、中心に近い場所は右岸も住宅街が広がります(写真66)。

写真67. 半日のクルーズは終了!

半日のクルーズは終了です(写真67)!

マクデブルク水路橋に行ってみて

今回は

  • 陸路(公共交通機関)でのアクセスが難しそうであること
  • 水路には水上交通機関で攻める

という2つの点を考慮し、遊覧船での接近を試みました。航路上の設備メンテナンスの点からマクデブルク水路橋を下から行くことになりましたが、閘門を通るという貴重な経験をさせていただきました。また、世界でも珍しい水路橋を行くために乗った自分と、地域の社交場の延長線上として乗った地元民の温度差も興味深いものでした(多くの人は上のデッキに向かっていませんでした)。

どのガイドブックにもこの遊覧船でマクデブルク水路橋に行くことが書かれていませんでした(※)ので、遊覧船で行くことを新たに提案させていただいた次第です。

※地球の歩き方先生にはマクデブルク水路橋そのものは掲載されていました。

また、(マクデブルクだけでなく)今回の旅行でクレジットカードとインターネット環境の重要性を認識しました。私は以下の2つを手配しましたが、類似のサービスであれば問題ないと思います。

前後を読みたい!

(←前) アートホテルマクデブルクの宿泊記

マクデブルク水路橋:現在地

マクデブルクの街歩き(次→)

★全体のまとめ:23年GWドイツ・スイス旅行のまとめと振り返り

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする