武雄温泉駅での接続風景

記事上部注釈
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西九州新幹線が部分開業し、在来線と新幹線の接続駅となった武雄温泉。ここでの接続は全体のオペレーションを左右する要所でもあります。そんな武雄温泉駅での接続を観察しました。

写真1. 新幹線から在来線への乗りかえが発生する例

復習:武雄温泉駅の位置づけ

福岡は九州で最も大きな都市、長崎は九州7位の人口の都市です。これらを結ぶ需要も多いのですが、政治的理由により、新幹線は部分開業に留まっています。

図1. 博多と長崎の経路(googleマップより引用)

博多と長崎の経路を示しました(図1)。所要時間は1時間30分内外ですが、途中の武雄温泉で乗りかえが生じます。博多-武雄温泉は在来線、武雄温泉-長崎は新幹線です。フリーゲージトレインや4線軌条があれば乗りかえは不要ですが、現段階ではそこには至っていません。そのため、武雄温泉での乗りかえが必須であり、武雄温泉での乗りかえが輸送品質を左右します。

その武雄温泉では新幹線と在来線特急は同じホームで乗りかえが可能であり、(私の記録では)片方の列車の客室からもう片方の列車の客室まで31秒で乗りかえが完了します。しかし、全パターンでの同じホームで乗りかえを約束するには、運行上の工夫が必要です。

図2. 武雄温泉駅の構内図(JR九州公式サイトより引用)

武雄温泉駅の構内図を示しました(図2)。武雄温泉では新幹線が11番のりば、在来線が10番のりばに発着し、両者は同じホームです。ただし、10番のりば以外から発着する在来線列車がある点に注意が必要です。

実際の武雄温泉での接続風景

御託はこの程度にして、実際に武雄温泉での接続風景を眺めます。ここでのポイントは以下の2点です。

  • 西九州新幹線、在来線ともに1列車しか接続ができない(上下方向の接続は別のタイミングで実施の必要あり)
  • 博多-長崎系統のほかに博多-佐世保方面の系統があり、西九州新幹線との接続なし

1点目が重要な事実であり、在来線は10番のりば、新幹線は11番のりばしか使えません。そのため、上下方向の接続はタイミングをずらす必要があります。また、武雄温泉は新幹線開業前から博多-佐世保方面の動脈であり、この動脈については博多-長崎とは別途に列車が設定されていました。これは新幹線開業後も維持され、接続列車以外も運転される点に留意する必要があります。

この点に注意して眺めましょう!

写真2. 11番のりばと10番のりばに列車が停車中

12:13に11番のりばに新幹線列車が到着し、10番のりばに停車中(12:16発)の武雄温泉始発の博多行きに乗りかえる場面です(写真2)。

写真3. 特急リレーかもめ博多行きが発車!

特急リレーかもめ博多行きが発車しました(写真3)。8両編成(全長160m程度)であり、新幹線6両編成(全長150m程度)と長さがほぼ一致します。同じホームで乗りかえが約束されていても駅ホームで歩くことになると、乗りかえ時間が必要になってしまいます。この対策として列車の長さをほぼ同じとし、歩く距離を短くする努力がなされています。また、輸送力をそろえることも可能です。

写真4. 博多から特急がやってきた

在来線側から撮影しました。12:23に博多から臨時特急がやってきました(写真4)。この列車は佐世保方面に向かわず、武雄温泉止まりです。

写真5. リレーかもめの表示

リレーかもめの表示です(写真5)。武雄温泉行きではなく、長崎行きと案内されています。

写真6. 新幹線のかもめが発車

12:26にかもめが発車しました。これらの列車の動きをまとめると以下の通りです。

  1. 12:13に長崎→武雄温泉の新幹線が到着(11番のりば)
  2. 12:16に武雄温泉→博多の特急が発車(10番のりば)
  3. 12:23に博多→武雄温泉の特急が到着(10番のりば)
  4. 12:26に武雄温泉→長崎の新幹線が発車(11番のりば)

ここでのポイントが特急博多行きが発車して7分後に博多からの特急が到着していることです。このポイントが高橋以西の複線です。武雄温泉駅周辺は単線ですが、隣の高橋からは複線区間に入り、その複線区間で在来線特急がすれ違っています。

新幹線の交差支障が3分とすれば、この接続パターンは16分間隔で展開できます。すなわち、博多-長崎の系統の最小運転間隔は16分ということです。別の表現をすると、博多-長崎系統は20分間隔が限界ということです。

なお、通常は博多-長崎は毎時1本が基本であり、以下のサイクルが展開されます。

  1. 毎時54分ごろに博多からの特急が10番のりばに到着
  2. 毎時57分ごろに新幹線の長崎行きが11番のりばから発車
  3. 毎時12分ごろに長崎からの新幹線が11番のりばに到着
  4. 毎時15分ごろに特急博多行きが10番のりばから発車

これではわかりにくい?簡単に図にまとめました(図3)。

図3. 武雄温泉での動き(時刻表を基にExcelで自作)

写真7. 佐世保方面から特急博多行きがやってきた

12:27に佐世保方面からの特急博多行きがやってきました。定刻であっても12:26発の新幹線には接続できません。もっとも、12:26発の新幹線は臨時列車であり、この接続が重要になる局面は少ないとは思いますが。

写真8. 2番のりばに到着!

2番のりばに到着しました(写真8)。この列車を新幹線ホームに着ければ佐世保と長崎の移動も同じホームで接続できます。現実には、10番のりばには博多からの特急が折り返し待ちで停車中であり、そのような芸当は不可能です。やるとすれば、博多-佐世保の列車にリレーかもめを兼ねさせることです。ただし、それをやると武雄温泉以西も本数を確保せざるを得ず、その選択肢は原則として放棄されたのでしょう。

写真9. みどりが到着!

12:38に特急みどりが到着しました(写真9)。佐世保方面の特急です。やはり10番のりばにリレーかもめが停車中であり、2番のりばしか選択肢がありません。上りの特急が発車して11分後の到着ですので、佐世保線の複線区間ですれ違ったのでしょうか。

佐世保線の複線化によるダイヤ上の制約緩和が、武雄温泉での好接続に重要な役割を担っている点に気づかされます。

写真10. リレーかもめは在来線側から乗れない!

10番のりばに停車中のリレーかもめを撮影しました。10番のりば側に柵があり、リレーかもめは在来線側から乗ることができません!

つまり、この時間帯に武雄温泉から博多方面に向かう乗客は以下の通りです。

  • 12:16発:新幹線側の10番のりばから発車
  • 12:27発:在来線側の2番のりばから発車
  • 12:45発:新幹線側の10番のりばから発車

このように武雄温泉から乗る人は時刻によって在来線側から乗るか、新幹線側から乗るか、の確認が必要になってしまいます。改札も分かれており、あまり便利ではありません。本当であれば、こちら側に3番のりばを設置し、特急リレーかもめは両側のドアを開くのが便利ですが、そこまでの配慮はなされていません。武雄温泉での乗り降りがそこまで多くないという事情もありましょう。

写真11. 一瞬目を疑う表示

一瞬目を疑う表示です(写真11)。12時過ぎなのに佐世保線の特急が5時間程度存在しないのです。これはからくりがあり、新幹線ホーム側の発車案内に限定されているためです。在来線ホームからの発車の列車についてもきちんと表示するべきでしょう。

武雄温泉での接続風景を観察して

写真12. 武雄温泉で在来線から新幹線に乗りかえる乗客

武雄温泉での接続風景を簡単に観察しました。博多方面と長崎方面の乗りかえがスムーズになるように最大限配慮されていることがわかりました。乗りかえが発生することが避けられないという前提に立つ場合武雄温泉での運用は理想に近いものです。

しかし、長崎方面と佐世保方面の乗りかえが軽視されている点が気になります。佐世保方面と長崎方面を合わせて毎時1本で足りるのであれば、全ての特急を10番のりばに発着させ、佐世保方面と長崎方面も同じホームでの乗りかえにするのが良いのでしょう。

しかし、現実には博多側の混雑や佐賀までの本数確保の観点からこの輸送体系は却下され、長崎方面のリレー列車と佐世保方面の系統を独立して設定しました(利用の多い時間帯は西九州新幹線を毎時2本とし、佐世保方面の系統にもリレー号の役割を担わせています)。

もう1つの回答として、佐世保方面まで毎時2本を確保するという選択があります(早岐で分割する運用を独立する2本とすれば良い)。しかし、佐世保線は単線ばかりでこの方策は行き違い待ちが増えるというデメリットがあります。そのため、佐世保方面まで毎時2本に増発するという方策も採用されませんでした。

このような理由から長崎方面と佐世保方面の同一ホーム乗りかえは基本的に放棄され、乗客の多い博多方面-長崎方面の輸送に力点が置かれました。

ここまでは、乗りかえが発生することが避けられないという前提に立つ場合での考察でした。理想的な運用体系は、何かしらの方策で博多-長崎の流動に対し、武雄温泉での乗りかえを廃絶させるものです。

何とかして乗りかえを排除するのが望ましいです。その方策は主に3つあります。

  1. フリーゲージトレインを採用し、在来線区間は狭軌、新幹線区間は標準軌で走らせる
  2. 新幹線区間に4線軌条を採用し、狭軌の在来線列車を新幹線を走らせる
  3. 在来線区間に4線軌条を採用し、山形新幹線と同様にミニ新幹線列車を走らせる

1は技術的困難があり、いくらお金を積もうとできることではありません。やるとすれば、博多までの直通と割り切り、現在よりも低速で走行するしかありません。また、スイスでの非動力車での軌間変換が難しく(スペインは標準軌と広軌なので台車内の機器類の置き場で有利)、低速で走行することさえも難しい可能性を指摘できます(スイスの例は高速走行しません)。

2は狭軌での最高速度や曲線通過速度に懸念があります。電車運転での狭軌での最高速度は170km/hとも180km/hとも伝えられており、狭軌電車が西九州新幹線を走行した場合、新幹線区間でのスピードダウンも懸念されます(国土交通省の資料だと200km/h)。

3は線路改良が必要ですが、新幹線区間では320km/h運転も可能です。現時点では最も拡張性が高い方策です。ネックは新鳥栖周辺ですが、新幹線の新鳥栖-在来線の肥前麓の短絡線を整備すれば何とかなるでしょう。さらに、改良区間は新鳥栖-武雄温泉に留まることや、トンネルが少なく、施工が容易なこともポイントです。

この場合は、博多-新鳥栖の所要時間が現行の30分から13分に減少し、(3分の乗りかえ時間がなくなることを除いても)17分ものスピードアップが可能な点も大きいです。博多でのホーム不足も懸念されますが、毎時1本~毎時2本であれば九州新幹線と共用の1面2線で足りるでしょう。

新鳥栖周辺でのアプローチ線の建設が難しければ、博多-新鳥栖の4線軌条化でも良いでしょう。

新線建設の目途が立たない以上、乗りかえを排除するような工夫を考慮いただきたいものです。そして、乗りかえが存在する限り武雄温泉でのオペレーションが重要であり、残念ながらその重要性が軽くなる確率は低いのです。

前後を読みたい!

果たして前後はどこに行ったのでしょうか?

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武雄温泉での接続風景:現在地

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