関西でも混むほうの路線とされている、学研都市線(片町線)。夕方ラッシュ時は京橋始発が設定されるなどの配慮が見られます。では、実際の混雑状況はどうでしょうか。大阪環状線と連絡する京橋発車時点の混雑を確認しました。

写真1. 京橋で待つ人々
夕方ラッシュ時の学研都市線の混雑状況のまとめ
夕方ラッシュ時の学研都市線の混雑状況は以下の通りでした。
- 京橋断面で18:05~18:19の15分が最も混雑する
- 快速が最も混雑し、東西線からの普通も快速と同等の混雑である
- 京橋始発の普通が空いている
- 区間快速の直後の快速と普通は若干混雑がゆるい
- 17:50~19:19の混雑率は87%程度であり、(全体をならせば)座席前の吊革の半分が埋まる程度である
詳細なデータと解析は以下の章で示します。
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は、大阪環状線と連絡する京橋発車時の混雑を確認しました。
学研都市線の夕方ラッシュ時の混雑状況の生データ

写真5. 通勤電車と横切る人の群れ
まず、生データを示します(表2)。
表2. 学研都市線の夕方ラッシュ時の混雑状況

区間快速と京橋始発の普通が空いているように見えます。
夕方ラッシュ時の学研都市線の混雑状況の分析

写真6. 四条畷行きは空いている
生データだけでは不親切でしょうから、親切で有名な私は混雑状況を分析いたします(やさしー)。
生データでは混雑ポイント(=観測しやすい)を導入していますが、解析では混雑率に変換し、それを計算することにしています。これは混雑ポイントが順序尺度(160ポイントが80ポイントの2倍にならない)に対し、混雑率が比例尺度(160%は80%の2倍)であり、統計処理をしやすいためです。
復習:学研都市線のダイヤパターン
混雑はダイヤに依存します(逆にいうとダイヤも混雑を考慮して作成されます)。そこで、夕方ラッシュ時の学研都市線のダイヤパターンを簡単に紹介します。
学研都市線は15分サイクルで運転され、以下の構成です。
- 快速:(宝塚線→)東西線→木津(木津に行くのは半分だけ、もう半分は同志社前行き)
- 普通:(神戸線→)東西線→松井山手1本、京橋→四条畷1本
ただし、夕方ラッシュ時はこれだけでは混雑するということか、30分間隔で東西線からの区間快速京田辺行きが挿入されています。区間快速は京田辺まで後の快速よりも先着し、京田辺までの有効列車として機能しています。四条畷まではどの駅も15分に2本が確保され(快速停車駅は30分に7本)、四条畷から松井山手まで(※)はどの駅も30分に3本(快速停車駅は30分に5本)されます。
※区間快速は四条畷から各駅にとまります。
混雑状態を解析するのに、区間快速の有無は意外と重要です。
時間帯ごとの混雑状況
まず、混雑する時間帯がいつなのかを分析します。正確には30分サイクルのパターンダイヤですが、15分サイクルが基本ですので、15分単位とします(表3、図1)。
表3. 時間帯ごとの混雑状況


図1. 時間帯ごとの混雑状況(グラフ)
これを見ると、18:05~18:19が最も混んでいます。18:05~18:19の間には3本、その前後の15分には4本設定されており、その直前や直後の15分間は多少空いています。18:35~18:49の15分は3本設定ですが、同じようなダイヤの18:05~18:19より空いています。
いずれにしても、18時台前半は混雑のピークといえましょう。
種別ごとの混雑状況

写真7. 夕暮れの区間快速に乗る人々
次に、種別ごとの混雑状況を分析します。
表4. 種別ごとの混雑状況

先ほどの90分間についてまとめてみました。快速が最も混雑しており、次に普通(東西線から直通)が混んでいます。一方、京橋始発の普通は空いています。これは、東西線からの集客が見込めない(快速からの連絡によって、東西線各駅からの連絡列車の役割はある)ことや、四条畷止まりでこれまた集客が見込めないことが原因でしょう。
区間快速が意外と空いているのは、区間快速そのものが挿入される役割であり、15分に4本設定される時間帯にしか区間快速がないためでしょう。

図2. 時間帯ごとの種別の混雑状況
区間快速が空いているように見える理由が分かりやすいように別のグラフを作成しました(図2)。決して区間快速が空いているわけではありません。区間快速が設定されている時間帯は、快速や普通も同等の混雑率です。
号車ごとの混雑状況

写真8. 京橋のホーム先端は狭い!
最後に号車ごとの混雑率を分析します(表4、図3)。
表4. 号車ごとの混雑状況


図3. 号車ごとの混雑状況(グラフ)
7号車だけが異様に空いていることがわかります。学研都市線でも多くの客が乗る、京橋を考えれば納得できます。京橋のホームは7号車に向かうにつれてホーム幅が狭くなります。狭いホームをわざわざ歩いて7号車まで向かう人も少ないでしょう。そのような影響で7号車が空いているのです。
混雑状況からダイヤを考える

写真9. 逆方面も快速が走り、「均質なサービス」が提供されていることがわかる
夕方以降(17:00~21:00)の学研都市線のダイヤは快速1本、普通2本(1本は京橋-四条畷)が基本です。その中で特に混雑の厳しい90分間は30分間隔で増発されるというダイヤです。
18時台前半だからといって、その時間帯に特別に対応したダイヤではありません。これは、特定の時間帯が混む一方、どの時間帯にもある程度均質なサービスが提供されると解釈することも可能です。混んでいるとはいえ、最混雑列車であっても混雑率120%程度であり、首都圏の感覚ではそこまで混んでいる範囲には入りません。
このようなダイヤは若干の混雑のムラよりも、利用しやすいダイヤを優先した結果と読み取ることができます。若干混雑する時間帯はあれど、比較的空いている京橋始発の普通の設定で割り切っているように見えます(18時台は区間快速を15分間隔で運転しても良いとは思いますが)。
今後はおおさか東線の大阪駅乗り入れにより、放射状路線が増えることになりました。これからは需要の受け手を増やすことで、トータルで需要に応えるようになるのでしょう。