北海道新幹線について考える~考察の前提と将来の所要時間

北海道新幹線は現状では苦戦しているといいます。その北海道新幹線を札幌まで延伸するという計画が立ち上がっています。これは無駄では?という声もあるでしょう。しかし、私はそう考えません。情緒などのような感情論ではなく、理詰めで考えた結果です。以下でその詳細を考察いたします。

E5系、新青森

写真1. 北海道新幹線


北海道新幹線の現状把握

北海道新幹線は新青森(青森県青森市)と新函館北斗(北海道北斗市)を結ぶ路線です。当然のことながら、この2都市を結ぶことをメインとはせず、東京と北海道を結ぶ経路上にあると認識するのが一般的でしょう。「北斗市ってどこ?函館じゃないの?」と思うでしょう。そう、北海道新幹線の終着駅は函館市ではなく、北斗市なのです!北斗市そのものの説明は省きますが、函館都市圏の一員と考えれば大きな誤りはないでしょう。

現状の北海道新幹線の営業成績は芳しくないと聞いています。なぜ、芳しくないのか?その答えは色々と考えられますが、最も大きな要因は函館市は想定的に航空機が便利であり、人口が少ないためでしょう。基本的に鉄道は人がいない場所では、収益を得られないのです。だから、わが首都東京は鉄道が発達しているのです。

北海道新幹線の札幌延伸の概要

日本国の方針(私の方針ではない!)により、札幌まで延伸されることが決定しています。そうなれば、状況は一変します。
何せ、日本で5番目の人口を有する都市です(東京、横浜、大阪、名古屋の次)。そんな札幌と東京を結ぶのですから、元々の輸送量は大きいです。その証拠に東京と札幌を結ぶ航空便は世界で有数の輸送量を誇ります。

※日本の都市の人口はヨーロッパで有名な都市と比較して、多いです。例を挙げると、札幌市の人口(200万人弱)はオーストリアのウィーン市より多いのです。

羽田-新千歳間の航空便の輸送量は年間1000万人と言われます(2012年度の利用者数は成田-新千歳も含めて960万人です)。片道輸送量は年間500万人程度でしょう。

航空機と北海道新幹線のシェアの推定

では、新幹線が札幌に延伸された場合、どの程度の利用が見込まれるのでしょうか?それを見積もる1つの指標が東海道・山陽新幹線のシェアを参考にすることです。シェアを算出すれば、年間片道500万人の利用客の何割が北海道新幹線を利用するか推定できます。交通論の世界では利用客がどの交通機関を選定するかの最も重要な基準は、所要時間であるといわれています。そのため、シェア争いも所要時間という要因だけで決定すると考えました。

東海道・山陽新幹線の現状からシェアを推定する

なお、東京から山陽新幹線内のシェアについては、JR西日本の発表資料を参考にいたしました。
※PDFにまとめられた資料はこちら

東京-大阪間(所要時間2時間半)

東京-新大阪でみると、おおむね新幹線の所要時間は2時間半です。この区間の新幹線のシェアは85%と言います。これをそのまま適用した場合、新幹線が東京-札幌間を2時間半で結んだら、シェアは85%程度となります。

東京-岡山間(所要時間3時間20分)

東京-岡山でみると、おおむね新幹線の所要時間は3時間20分です。この区間の新幹線のシェアは60%と言います。これをそのまま適用した場合、もしも新幹線が東京-札幌間を3時間20分で結んだら、シェアは60%程度となります。

東京-広島間(所要時間4時間)

東京-広島でみると、おおむね新幹線の所要時間は4時間です。この区間の新幹線のシェアは60%と言います。これをそのまま適用した場合、もしも新幹線が東京-札幌間を4時間で結んだら、シェアは60%程度となります。

東京-山口間(所要時間4時間半)

東京-広島でみると、おおむね新幹線の所要時間は4時間半です。この区間の新幹線のシェアは30%と言います。これをそのまま適用した場合、もしも新幹線が東京-札幌間を4時間半で結んだら、シェアは30%程度となります。

東京-福岡間(所要時間5時間)

東京-広島でみると、おおむね新幹線の所要時間は5時間です。この区間の新幹線のシェアは8%と言います。空港の位置が福岡より札幌のほうが不利であるため、北海道新幹線ではもう少し善戦するでしょう。これらを考えると、もしも新幹線が東京-札幌間を5時間で結んだら、シェアは10%程度となります。

山陽新幹線のシェアのデータから北海道新幹線のシェアを推定する

広島の場合、航空機に対して不利な条件で戦っている(広島空港が広島市内から遠い)ため、新幹線のシェアが高い可能性を指摘できます。そのような広島を例外と見なすと、以下の所要時間とシェアは以下のグラフのようになります(図1)。

所要時間とシェア(新幹線と航空機の競合)

図1. 所要時間とシェアの関係

このように、所要時間が5時間の場合と2時間半の場合で利用客は8.5倍の違いなのです。所要時間5時間の場合だと年間片道50万人、所要時間2時間半の場合だと年間片道425万人ということなのです。

所要時間の計算

シェアを計算するのに、所要時間が重要であることがわかりました。そこで、所要時間を推定しましょう。

現行の延長線上の所要時間見積もり

調べていましたら、国土交通省で調査報告書が執筆されていました。
※詳細はこちら
この資料から、以下のことがわかります。

・途中駅は新八雲、長万部、倶知安、新小樽
・新函館北斗-札幌まで全駅停車で72分45秒
・1駅通過で4分15秒スピードアップ(資料中の新八雲通過・停車の差で計算)

この2点と最速達列車がノンストップという仮定から、新函館北斗-札幌の所要時間が56分と計算できます。
現状の東京-新函館北斗の所要時間が4時間2分ということから、東京-札幌の所要時間は4時間59分となります。実際は最速達列車が新函館北斗を通過できることと、遅れ対策で余裕時間をこれに上乗せすることから、最速達列車の所要時間は5時間となりましょう。

所要時間短縮の可能性

現状のまま札幌まで延伸しても、シェアは10%(年間片道50万人利用)でしかありません。そのため、スピードアップは必須です。さて、どこをどの程度いじれば所要時間は短縮できるのでしょうか?以下ではそれを妄想考察したいと思います。
表1. 各所の速度と全体の所要時間の関係

北海道新幹線:所要時間とシェア

まずは、現行の延長線上のものを示します(entry1)。これを基本としてどれだけスピードアップできるのかを私の独断と偏見で計算しました。また、その場合のシェアと年間輸送量(片道)も図1を参考に算出しました。

スピードアップの最も効果の高い手法は低速で走行する区間を排除するというものです。そのようなセオリーに従って、東京-大宮と青函トンネルについて20km/hのスピードアップを考案しました(entry2)。こうすることで7分程度スピードアップします。これで何とか5時間を切ったといえます(上野停車としても)。

次に、このセオリーをもっと実行して、青函トンネル区間の速度を前後の区間と同等にすることを検討しました。こうすることで、4時間半が見えてきました(entry4)。上野停車便の上野からならば、4時間30分台を謳うことができます。この程度の所要時間であれば、現行の延長線と比較して2倍以上の乗客が見込めます。

この所要時間と同等になるのが、JR東日本区間の盛岡-新青森間を260km/hから320km/hに向上させることです(entry3)。青函トンネルは160km/hに据え置きます。この程度であれば、じゅうぶんに実現可能性があることでしょう。

青函トンネルを速度向上させる場合、他の区間をさらにスピードアップした場合はどうでしょう?盛岡-新青森も320km/h運転するケース(entry4)、それに加えて新青森-札幌も320km/h運転するケースも考えてみました(entry5)。これらのケースですと、東京-札幌を4時間で結ぶのも視野に入るでしょう。

最後にJR東日本が実現したいと構想している360km/h運転も想定しました(entries6-7)。この場合、大宮-宇都宮も若干スピードアップできるでしょう。盛岡以南のみの場合だと何とか4時間程度で結ぶことが可能で、全区間360km/h対応だと、4時間を切ることが可能です。

所要時間短縮の見込み

現実的に可能なのは、東京-札幌を4時間40分程度で結ぶことです。この場合は年間110万人(片道)程度の輸送人員です。ただし、青函トンネルも含み全区間で320km/h運転が実現すれば、東京-札幌を4時間10分程度で結ぶことも可能です。この場合は年間215万人(片道)程度の輸送人員です。ただし、青函トンネルのみ140km/h→160km/hの場合は、かろうじて5時間を切る程度の所要時間となるでしょう。

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