東京と千葉の鉄道ライバル物語~JRと京成

東京と千葉の間の路線図を見ると、JRの他に京成電鉄が路線を伸ばしていることがわかります。よく見ると、東京から成田空港、千葉へはJRと京成がかなり近いところを通っていることもわかります。このような中では競合関係はどのようなものでしょうか。よく注目される空港アクセスを中心に探ってみました。


東京と成田のライバル関係

東京と成田の間には京成電鉄があり、起点となる京成上野も(成田市のターミナルである)京成成田もJRの駅と近くにあります。また、両者ともに上野と成田を結ぶ列車を運行するなど、一見激しいライバル関係にあるように見えます。しかし、実際には成田そのものは大都市ではなく、上野の求心力にも乏しいです。そのため、この両駅を結ぶ旅客の争奪戦は激しいものではありません。

むしろ、JRも京成もその奥にある「成田国際空港」へのアクセスを重要視しています。東京は人口850万人の大都会ですから、いちがいに東京のどこを目指したら良い、という決定打もありません。ましてや決定的なターミナルがない山手線東側であれば、その傾向は顕著でしょう。

現在の成田空港アクセスの覇権は?

そこで、このページでは成田空港アクセスを重点的に述べることにしましょう。その後、千葉県でも大きな都市である千葉市と、東京のライバル関係について述べます。

有料特急:成田エクスプレスとスカイライナー

空港アクセスの代表格といえば、JRは成田エクスプレス、京成はスカイライナーです。この両者を単純に比較してみましょう(表1)。

表1. 成田エクスプレスとスカイライナーの単純比較

成田エクスプレスvsスカイライナー

※所要時間は日中の最短時間、いずれも都内拠点駅-空港第二ビルで比較
※京成は乗客の多い時間帯は20分間隔で運転

埼京線、成田エクスプレス、湘南新宿ラインが並ぶ(池袋)

写真1. 赤と黒が目立つ成田エクスプレス(この写真では側面の赤が目立ちませんね)

スカイライナーの先頭部

写真2. 青いカラーで攻める京成スカイライナー

単純に比較すると、京成スカイライナーのほうが安く、早いので圧勝のように感じます。しかし、実際にはそう単純にいきません。京成は日暮里、上野というそこまでメジャーではない駅に行かないといけません。一方で、JRは東京駅という東京を代表する駅に直結、そしてそこから品川、渋谷、新宿、横浜まで直通します。つまり、多くの乗客にとって直通できるのは成田エクスプレスなのです。

ただし、池袋については微妙なところです。JRの成田エクスプレスは大回りするので81分もかかります。京成は乗りかえこそあるものの、55分程度(日暮里での乗りかえ時間が6分と仮定)で着いてしまいます。混雑する山手線を利用する点は難点ですが、幸か不幸か山手線の池袋-日暮里はそこまで混雑しません(新宿方面から山手線に乗ると池袋で空くことがわかります)。また、池袋発着の成田エクスプレスの本数は少なく、通常は1時間間隔です。

余談ですが、成田エクスプレスには大宮発着もあります。大宮発着は新宿、池袋を通りますが、大宮へは大回りです。そのため、池袋-大宮の走行中の列車を外から見ると6両編成で10人~20人しか乗っていません。これは大宮の車両基地に回送するついでに運転しているようなものですから、乗客が少なくとも問題はありません。

空港アクセス特急は直前にならないと手配しないでしょう(航空機の遅れを勘案すると事前手配はリスクがある)。そこで重要なのは「直前でも座席が予約できること」です。私はこのような経験はあまりありません(国内だと航空機を使わない)が、少ない経験では「直後の特急の空席はないが、次の特急ならば空席はある」というものです。成田エクスプレスのことはわかりませんが、同等でしょう。
※この体験談は2016年のドイツ旅行のものです。夏休み最初の朝というかなりの人出が予想される時間のものです。

意外な伏兵:アクセス特急

意外なところに伏兵があります。それが京成のアクセス特急です。東京駅や銀座という一等地こそ外しているものの、都営浅草線に直結し、日本橋や新橋とダイレクトアクセスが実現し、外国人に人気の浅草も通っています。また、その先には今話題の品川も控えています。東京、新橋、品川と結ぶJRの快速電車と競合する関係です。

表2. JR快速とアクセス特急の比較

JR快速vsアクセス特急

※所要時間は列車によってばらつきがあります。運転間隔も若干のゆらぎがあります。

アクセス特急はショートカットする経路を通っているため、所要時間が短いです。下手すると、成田エクスプレスと「ほぼ」同等の所要時間です。その証拠に、アクセス特急はスーツケースをもった乗客で満席になるくらいの混雑です。

アクセス特急羽田空港行きが入線

写真3. 青砥で上野方面の特急と接続し、そのチャンネルを広げる

そのアクセス特急は、青砥で京成本線経由の特急と接続し、京成本線沿線から都営線へのチャンネルも担っています。

このような実質的なサービスが人気なのか、京成のほうが空港アクセスのシェアは高いです。

では、東京と千葉の間は?

京成は東京と成田(空港)の間だけではなく、千葉市と東京を結んでいます。そちらの様子を探ってみましょう。

現在の状況:JRの1人勝ち!

便宜上、千葉駅からのアクセスを考えてみましょう。京成は速達列車の直通はなし、普通電車の直通も朝夕に限定(日中は新京成に直通)という状況で、JRで移動する以外は考えられないというのが本音です。JRは東京まで最短38分、それも日中時間帯でも10~20分間隔で運転、時間はかかるけど(67分)新宿にも直結という中、京成が優位にたつことは難しいです。

京成の巻き返しは?

京成が対抗するとしたら、対都心の競争は諦めるべきでしょう(千葉方面のサービスアップと引き換えに、成田方面のサービスダウンは許容できない)。やるとすれば上野方面でしょう。現在、青砥で京成線の快速と接続する上野方面の電車は普通電車で、上野-青砥で時間がかかりすぎます。これを解消するには、京成上野-青砥で特急を増発する必要があります。しかし、青砥や京成高砂で折り返すのも過密ダイヤである以上、難しいです。それならば、この特急を青砥から東に伸ばし、ちはら台まで直通させましょう。千葉線内各駅停車として、京成上野-京成千葉は51分、千葉線内2駅停車とすると47分と見込まれます。京成高砂を通過とすれば、46分程度になることでしょう。

既存の速達列車を減便できないでしょうから、この種別は20分間隔が妥当な線でしょう。それでも、JRの弱点の山手線北側へのチャンネルとしてはじゅうぶんに機能します。山手線北側と千葉市の流動は割合としては大きくはないでしょうが、人口の多い首都圏なのでそれなりに需要は見込まれるでしょう。

結びに変えて

ここでは成田空港アクセスを中心として、JRと京成を比較してみました。ただし、空港アクセスはこの両者だけではなく、リムジンバスも強力なライバルです。リムジンバスは東京だけではなく、大宮、川越などさまざまな場所にアクセスできます。この状況を考えると、「ある特定の2地点の移動にはJRと京成のどちらが便利か」という視点だけでなく、さまざまなパターンの利用を考えることが重要でしょう。その1つの解が直通運転の拡大です。運転上の理由という面は大きいでしょうが、JRは横浜方面に直通しています。また、京成は(たまたま)大田区や羽田空港(羽田空港じたいも大田区です)に直通する列車も多く運転されています。直通運転を拡大することにより、首都圏のあらゆる地点からあらゆる地点まで乗りかえなしで行けることができます。

この他の策として接続の強化が挙げられます。例えば、京成は青砥で別系統の特急と同一ホーム・短時間で乗りかえるチャンスを提供することにより、直通していない場所への利便性を確保しています。また、アクセス特急を東松戸に停車させることで、武蔵野線へのチャンネルも開いています。(今回の区間とは関係性は薄いですが)横須賀線に武蔵小杉駅を設置して、南武線とのチャンネルも確保しています。

人口3000万の首都圏、マイナーな駅からマイナーな駅への移動の割合は相当多いことでしょう。このような移動パターンを網羅するために、さまざまな場所へ直通(できなければ便利な乗りかえ駅を整備)することが重要で、ますます充実する高速道路網に対抗すべきでしょう。この目的のためにはライバルのJRと京成といえども手を結ぶほうが得策です。このように、ライバルといえども手を結ぶことも時には必要なのです。


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『東京と千葉の鉄道ライバル物語~JRと京成』へのコメント

  1. 名前:すぎぴー 投稿日:2018/11/27(火) 12:10:54 ID:47b4bcf91 返信

    成田エクスプレスとスカイライナーの所要時間が逆ですね。