JR京都線の混雑状況(平日朝ラッシュ時現場調査結果、東淀川→新大阪)

記事上部注釈
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JRになってから急速に輸送改善が進められたJR京都線。その京都線の混雑率は快速系のほうが高いとされています(2016年データ)が、実際はどうなのでしょうか。朝ラッシュ時の最混雑区間で実態を観察してみました。

写真1. 新大阪に到着した普通電車

JR京都線の朝ラッシュ時の混雑状況まとめ

JR京都線の朝ラッシュ時の混雑状況は以下の通りです。

  • 新快速・快速・普通を合わせた混雑率は102%程度である
  • 新快速・快速は比較的空いており、普通は比較的混んでいる
  • 普通は最後尾車両(7号車)がやや混んでおり、快速・新快速は中央よりの車両が混んでいる

詳細は以下の章で記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は新大阪手前の東淀川→新大阪で調査しました。

JR京都線の朝ラッシュ時の混雑状況の生データ

写真5. 朝は快速も外側線に入る

まず、生データを示します。

表2. JR京都線の朝ラッシュ時の混雑状況(東淀川→新大阪、生データ)

新快速が混んでいる先入観がありますが、実際には普通のほうが混んでいることがわかります。

JR京都線の朝ラッシュ時の混雑状況の分析

写真6. 新快速西明石行きがやってきた

生データだけでは不親切でしょうから、親切で有名な私は混雑状況を分析いたします(やさしー)。

生データでは混雑ポイント(=観測しやすい)を導入していますが、解析では混雑率に変換し、それを計算することにしています。これは混雑ポイントが順序尺度(160ポイントが80ポイントの2倍にならない)に対し、混雑率が比例尺度(160%は80%の2倍)であり、統計処理をしやすいためです。

復習:朝ラッシュ時のJR京都線のダイヤパターン

混雑状況を解析するにはダイヤパターンの理解が不可欠です。そのため、簡単にJR京都線のダイヤパターンを紹介します。

朝ラッシュ時は10分サイクルが基本です。その10分間に以下の種別が運転されます。

  • 新快速:京都以遠→大阪方面(近くとも西明石まで運転)1本
  • 快速:京都以遠→大阪方面(大阪行きの設定もあり)1本、京都から快速
  • 普通:京都→大阪方面(近くとも尼崎まで運転)1本、高槻→大阪方面1本、高槻から5分間隔

簡単にいうと、速達列車・普通ともに平均5分間隔です。朝ラッシュ時の快速は京都から快速運転であり、日中時間帯以降の高槻から快速の電車よりも停車駅が少ないです。具体的にいうと、京都から高槻までは長岡京にしかとまりません。

京都から大阪まで(実際には草津から西明石)は複々線なのですが、快速の線路の使いかたが興味深いです。新快速は外側線(速達列車が通る線路)、普通は内側線なのですが、快速は高槻までは内側線を走り、高槻からは外側線を走ります。

図2. JR京都線のダイヤパターンのイメージ(OuDiaで作成)

基本的に快速は京都から高槻の間で普通を抜かしませんから、そこまで速度を出しません(新快速と1駅しか違わないのに所要時間は5分も異なる)。一方で高槻から大阪までは速度を出します。このようなこともあり、京都から大阪まで先着するのは基本的に新快速のみです。ただし、長岡京から大阪までは快速が先着します。

時間帯ごとの分析

写真7. 普通尼崎行きがやってきた!

朝ラッシュ時は常に混雑が一定ではなく、時間帯によって混雑が異なります。では、時間帯ごとの混雑はどうでしょうか。京都線は10分に新快速1本、快速1本と普通2本の構成ですから、10分ごとに区切ったほうが解析に適切でしょう(そうでないと種別による混雑の違いを含めた分析になってしまう、表3)。

表3. 時間帯ごとの混雑状況

※時間帯が完全な10分間隔でないのは、正確には10分間隔でない時間帯もあるためです。

7:51~8:21の31分間が最ピーク時間帯のように見えます。もう少しわかりやすくするためにグラフで示しましょう。

図3. 時間帯別の混雑状況

普通と快速系で混雑状況が異なりますので、それぞれの混雑率を示しました(図3)。混雑のピークを迎えた後の時間帯は急激に混雑がやわらぐ傾向であることがよくわかります。

このグラフを見ると、混雑時間帯については以下の通りとなりましょう。

  • 混雑時間帯7:40~8:39
  • 最ピーク時間帯は8:00~8:20

ピーク時間帯を過ぎると急に混雑が緩和する現象は、個人的には「遅刻ギリギリ理論」と呼んでいます。特定の職場や学校を考えてみましょう。それぞれの職場には出勤時刻があり、その出勤時間の直前に多くの人が出勤します。その前に出勤する人もある程度いますが、出勤時刻を過ぎる人はそういません。電車に乗っている人はそのような人たちの集合体ですから、電車の混雑もそうなるのです。

種別ごとの分析

写真8. 快速大阪行きが発車した

今度は種別ごとに分析します。一般に朝ラッシュ時の混雑は混雑時間帯60分間について解析されます。本記事でもその慣例に従うことしましょう!

表4. 混雑時間帯60分間の混雑状況

快速系と普通で分けて混雑率を示しました(表4)。快速の混雑率が95%なのに対し、普通の混雑率は126%です。快速系が12両編成で普通が7両編成という違いを考慮しても普通が混んでいます。いくら3ドアクロス車といえども、快速系が12両編成なのは快速系が混んでいるからという先入観があったのですが、現実には違うようです。

普通が京都や高槻から混んでいるとは考えにくいですので、普通のほうが混んでいる時間そのものは少ない可能性は指摘され、そのために新大阪付近での混雑を「短時間だから」と割り切っている可能性を指摘できます。

号車ごとの混雑状況

では、空いている車両や混んでいる車両はあるのでしょうか。12両編成の快速系と7両編成の普通で異なることが予想されたので、それぞれでまとめました。これも最混雑時間帯の7:40~8:39の60分間で集計しています。

表5. 快速系の車両ごとの混雑状況

図4. 快速系の車両ごとの混雑状況

快速や新快速は中央の車両がやや混んでいます(表5、図4)。どちらかというと後ろよりの車両が混んでいます。これは大阪駅で地下鉄御堂筋線に乗りかえるのが便利だからでしょうか。

表6. 普通の車両ごとの混雑

図5. 普通の車両ごとの混雑状況

普通は最後尾が混んでいます(表6、図5)。やはり大阪駅での御堂筋線の乗りかえに便利な車両が選択されるのでしょうか。とはいえ、号車ごとの混雑の差はそこまで大きくありません。

混雑状況からダイヤを考える

写真9. このときのおおさか東線は新大阪どまりだった(開業の約1週間前に観察)

混雑状況から適切なダイヤを考えてみましょう。

まず、快速や新快速の10分間隔は適切と評価できます。クロスシート車で混雑率が100%未満というのは通勤電車の1つの理想系です(ロングシートの需要もあるので車端部のボックスシートをロングシートに変更しても良いとは思いますが)。ましてや最高速度130km/hで京都から大阪までの42.8kmを32分で走破し、通勤時間が最小限で済んでいることは通勤客にとっては理想そのものです。

まず、気になるのが快速のスピードアップです。具体的には京都から高槻まで外側線を走り、京都から大阪まで先着することです。ただし、このようなダイヤにすると、草津方面から京都への先着が新快速だけになり、琵琶湖線内での混雑のばらつきが懸念されます。これを防ぐために現在のダイヤにしている可能性を指摘できます。

もう1つの可能性が普通の増発です。理想をいうのであれば、最ピーク時間帯だけであっても、高槻から大阪までは3分20秒間隔で設定し、普通の混雑を130%(最混雑時間帯)から90%にすることです。もう1つの手段が最ピーク時間帯に入る電車を中心に8両編成に増強することです。かつては神戸線や京都線で8両編成で運転していた実績もあり、不可能ではないでしょう。宝塚線直通は従来の7両編成とすれば、宝塚線のホーム延伸の必要もありません。輸送力増強の効果は小さいですが、快速や新快速と足並みをそろえるには、こちらのほうが良いでしょう。

5分間隔に統一し、「均質なサービス」を受けられるようになったJR西日本の朝ラッシュ時ダイヤ(阪和線や大和路線でも同様の考えかたが導入されています)。若干の混雑のムラはあれど、利用しやすいダイヤを優先した結果と読み取ることができます。若干混雑する時間帯はあれど、快速系の長編成による輸送力で何とかするという割り切りも見えます。今後はおおさか東線の大阪駅直結の定着による混雑の分散などで全体として混雑を分散する方向にシフトしていくのでしょう。

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