都営浅草線の混雑状況(平日朝ラッシュ現場調査、本所吾妻橋→浅草)

記事上部注釈
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東京の地下鉄でも古いほうの存在である都営浅草線。どちらかというと地味な印象の路線ですが、直通先には羽田空港と成田空港があり、ある意味国際化の一環を担う路線でもあります。そんな都営浅草線の朝ラッシュ時の混雑状況を観察しました。意外な種別が混んでいました。

写真1. 浅草を発車する電車(西馬込行き)

都営浅草線の混雑状況のまとめ

都営浅草線の混雑状況の概要は以下の通りです。

  • 浅草断面での最混雑時間帯は7:45~8:44であり、混雑率は112.4%である
  • 最も混雑するのは北総線始発の特急(都営浅草線内は普通)である
  • 最も空いているのは押上始発である
  • 空いている車両は前より、混んでいる車両は中の4両である

詳細は以下に示します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は、都営浅草線でも最も混雑するとされる、本所吾妻橋→浅草の混雑を調査しました。時刻は時刻表上の浅草発のものです(本所吾妻橋の発車時刻ではない)。

朝ラッシュ時の都営浅草線の混雑データ

写真5. 京成の最新鋭車両がやってきた!

まず、都営浅草線の混雑状況の生データを示します(表2)。

表2. 都営浅草線の混雑状況の生データ

※号車番号は積極的に案内されていないが、都営地下鉄のルールに従い、西馬込方を1号車とした(直通先の京成電鉄は逆なので、混乱防止のため号車番号は積極的に案内されない)

東京の地下鉄としては標準的な混雑だと思います。ただし列車による混雑の違いがありますので、その点を以下の章で解析いたします。

都営浅草線の混雑状況の解析

写真6. 引退間近の都営車もやってきた!

では、都営浅草線の混雑状況は実際にどうなのでしょうか。生データだけでは不親切でしょうから、さまざまな視点で解析いたします(やさしー)。

復習:都営浅草線のダイヤパターン

混雑と鉄道ダイヤは密接に関係します。そこで、都営浅草線のダイヤパターンを簡単に紹介します。

図1. 都営浅草線のダイヤパターンの概要(左が2回、そのほかが1回ずつ)

朝ラッシュ時の都営浅草線は10分サイクル(10分で1回り)で運転され、以下の構成です。いずれも都営浅草線内は各駅にとまります(案内上は京急での種別で案内)

  • 京成線内快速特急→都営浅草線内普通(京成本線→西馬込)
  • 京成線内普通→京急本線特急(青砥→京急本線)
  • 北総線内特急またはアクセス特急→都営浅草線内普通(北総線→西馬込)
  • 北総線普通→京急線内急行(北総線内→羽田空港)

10分間隔で京成本線からの快速特急、北総線からの普通、青砥からの普通、北総線からの特急またはアクセス特急が運転されます。いいかえれば、5分間隔で特急系と普通が交互に運転されます。特急系は京成線内の八広で先行の普通を追い抜きますから、青砥や京成高砂からは特急系が便利です。

ただし、北総線の特急は20分間隔、アクセス特急は40分間隔であり、両者を合わせると40分に3本の運転です。そのため、その穴を埋めるように押上から始発の普通(※)が運転されます。押上始発の普通の直後の普通は(八広で抜かれる特急系がないので)青砥から先着します。

※京成線内の種別に関わらず、朝ラッシュ時は都営浅草線内は各駅に停車します。そのため、押上以南の都営浅草線内はアクセス特急の場合と停車駅などは変わりません。

浅草は京成寄りの駅であり、混雑状況は京成線内での始発や種別に大きく左右されます。そのため、本記事では特段の断りがない限り、京成線内での種別で記します。

最混雑時間帯の選定

朝ラッシュ時の混雑については一般的に最混雑60分間で語られます。では、その60分間はどこなのでしょうか(表3)。視覚的にわかりやすいようにグラフでも示しました。10分ごとに区切ったのは、基本は10分サイクルのダイヤであり、種別ごとの混雑状況のばらつきをキャンセルするためです。

表3. 10分ごとの混雑率の推移

都営浅草線の混雑状況(朝ラッシュ時、本所吾妻橋→浅草、時間帯別層別)

図2. 10分ごとの混雑率の推移

これらを眺めると、7:40~8:39の混雑よりも7:50~8:49の混雑は全体としてゆるいことがわかります。では、7:40~8:39が最混雑時間帯と判断して良いのでしょうか。もう少し時間を区切ると、以下のようになります(表3)。なお、最ピーク時は8:10~8:19といえそうです。

表4. 時間帯ごとの混雑率

時間帯 混雑率 [%]
7:40~8:39 110.6
7:45~8:44 112.4
7:50~8:49 109.9

よって、本記事では最混雑時間帯を7:45~8:44とすることにしました。また、そのときの混雑率は112.4%です。

種別ごとの混雑状況

写真7. 京急線直通は京急線の表示がなされる

では、その最混雑60分間の混雑状況はどうなのでしょうか。まず、種別ごとに分析しましょう(表5)。

表5. 種別ごとの混雑状況

都営浅草線の混雑状況(朝ラッシュ時、本所吾妻橋→浅草、種別ごと)
図3. 種別ごとの混雑率(最混雑時間帯)
  • 普通と特急系で混雑率に大きな差はない
  • ただし、押上始発は空いている傾向にある
  • 逆に、北総線からの特急混んでいる傾向にある

意外と種別ごとの差が少ないことがわかります。ほかと比べて混んでいるのが北総線からの特急、空いているのが押上始発の普通です。押上始発の普通が空いている理由は簡単で、京成からの乗客を乗せていないためです。

では、北総線からの特急はなぜ混雑するのでしょうか。北総線内において特急アクセス特急の集客条件はそう異なりません(新鎌ヶ谷以西で速達運転、新鎌ヶ谷以東各駅の乗客を乗せられるという意味では同じ)。確かにアクセス特急は前の特急の10分後、特急は場合によっては前の特急系の20分後という前列車間隔が寄与すると考えられそうです。しかし、それでは、前列車間隔10分の8:17の特急が混んでいる理由を説明できません。

ここから、違いを説明する理由としては、北総線内での集客条件は弱そうです。もう少しダイヤパターンを考えてみます。京成本線内は20分に2本の快速特急と20分間隔の通勤特急が運転され、快速特急は都営浅草線内に向かいます。一方、通勤特急は京成上野に向かいます。

京成本線から都営浅草線内への乗車チャンス確保のために、通勤特急と北総線の特急は相互に接続します。言いかえると、北総線からの特急は京成本線の通勤特急のぶんの乗客も運んでいることになります。これが北総線からの特急が混雑する理由です。

車両ごとの混雑状況

では、車両ごとの混雑状況はどうでしょうか(表6、図4)。

表6. 号車ごとの混雑状況

都営浅草線の混雑状況(朝ラッシュ時、本所吾妻橋→浅草、車両ごと)

図4. 号車ごとの混雑状況

以下の傾向が読み取れます。

  • 1号車、7号車と8号車がやや空いている傾向にある
  • 3~6号車がやや混んでいる傾向にある
  • ただし、全体的に混雑にかたよりは少ない

これは、都心に多くの駅があり、出口が分散していることが混雑にかたよりが生じない原因でしょう。また、都営浅草線は直通しており、目立った乗りかえ駅がなく(※)、特定の駅の階段の配置による混雑のかたよりが少ないこともその要因でしょう。この点を指摘している記述を見たことはありませんが、特定駅の乗りかえ通路の影響が出にくく、車両ごとによる混雑のかたよりがないことは直通運転の隠れたメリットです。

※京成系の乗りかえ駅の多くはホーム対面での接続が確保され、階段を渡る乗りかえが生じることが少ない

混雑状況からダイヤパターンを考える

写真8. 京成からの普通西馬込行きが発車(京成線内は快速特急)

混雑状況からより良いダイヤパターンを考えてみましょう。気になるのは、押上始発が空いており、その直後の普通が混んでいることです。これは、押上始発を青砥始発とすることで解決できます。

また、北総線からの特急が混んでいることも気になる点です。これは、京成本線の通勤特急を20分間隔から10分間隔に増発(ただし普通をそのぶん減便)し、上述の青砥始発を快速特急にし、アクセス特急と合わせて通勤特急からの接続の受け皿を用意することで改善されましょう。つまり、京成本線の通勤特急に接続する対象が20分間隔の北総線からの特急のほかに、20分間隔のアクセス特急(または青砥始発快速特急)として、通勤特急からの受け皿を10分間隔に倍増するのです。

都営浅草線内を通過運転する列車については、必要性はそこまで高くないように見えます。地下鉄の特長の1つの「都心部のどこからでも利用できる」というものを打ち消すことと、追い抜き設備がないので大した速度向上にならないというのがその理由です(本所吾妻橋や蔵前を通過するくらいなら良いかもしれないが)。

都心の地下鉄としてはそれなりに本数があり、利用しやすい都営浅草線。これからの国際化時代、さらにその役割が大きくなっていくことでしょう。

都営浅草線の混雑に関する記事の一覧

ここまで特定の駅の特定の時間帯という「深くて狭い」視点から都営浅草線の混雑について見ました。では、逆に広くて浅い記事はないのでしょうか。

都営浅草線(混雑基本データ)

他の時間帯の混雑調査結果もあります。以下にその一覧を示します。

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