京浜東北線(ダイヤパターン紹介)

記事上部注釈
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埼玉県から神奈川県まで伸びる京浜東北線。今でこそ都心を通り抜ける路線は多いですが、京浜東北線はその中でも古株に当たります。都心を通り抜けるということは、乗客の流れが逆になるということであり、ダイヤ上の苦労もあるでしょう。その苦労を乗り越えたダイヤを眺めてみました。

京浜東北線E233系(川崎)

写真1. 川崎に停車中の京浜東北線快速

復習:ダイヤパターンとは

具体的なダイヤパターンを紹介する前に、ダイヤパターンの基本概念について紹介しましょう。

多くの路線では鉄道ダイヤを作成する際に、基本的なパターンを形成しています。例えば、20分間隔で快速1本、各駅停車が2本が運転されている場合は、20分サイクルのパターンダイヤと呼びます。サイクルとは、列車の運転順序が1回りする時間を示します。例で示した路線の場合は、20分サイクルと呼びます。本記事ではこのような路線の場合、「20分サイクルで快速が1本、各駅停車が2本」というように呼ぶことにします。

多くの路線では、1サイクルを60の約数(何サイクルかすれば60分になる)としています。そうすると、毎時の発車時間が一定になります。

多くの路線では1サイクルに何本かの速達列車と各駅停車を混ぜています。(快速が各駅に停車する場合も含めて)各駅停車は平均10分に1本以上運転するようにしている路線が多いです。これは、どの駅でも10分程度待てば次の電車がやってくることを実現させるためです。

また、1サイクルの間に細かな繰り返しがあるパターンがあります。例えば、20分サイクルで快速2本、各駅停車2本が運転されていて、都心側は快速、各駅停車双方が10分間隔で運転されていて、郊外側で枝分かれするパターンです。この場合は厳密には20分サイクルですが、都心側のダイヤを論じる場合は10分サイクルと考えても差し支えはありません。このような、1サイクルの中で小さな繰り返しがある場合は疑似サイクルと呼ぶことにします。今回の例では、「疑似10分サイクルの中で快速1本、各駅停車1本が運転されている」と呼ぶという具合です。

ダイヤの実態は路線によって異なりますので、疑似サイクルの表記の方法については、適宜対応することにします。

京浜東北線の路線図

京浜東北線はJRの路線網のうち、重要な1つですが、逆にいうと1つに過ぎません。では、JRの路線ネットワークはどのようなものでしょうか(図1)。

JR東日本路線図

図1. JRの路線ネットワーク(JRの公式ホームページより引用)

京浜東北線は路線図の中央を南北に伸びる水色の路線です。大宮、上野、東京、品川、横浜を結びます。横浜から大船までは根岸線となっていますが、本記事では根岸線も含めた大宮-大船を扱います。ただし、東神奈川から乗り入れる横浜線については基本的に述べません。

京浜東北線は途中の東京で「上り」から「下り」に変わります。そのため、「上り」「下り」という表現は適切ではありません。玄人向けの表現では「南行」、「北行」と使われます。「南行」は「大船方面行きの電車」と、「北行」は「大宮方面行きの電車」と、表現が改められることもあります。

京浜東北線には快速も運転されています。山手線との並走区間の田端-田町(高輪ゲートウェイと品川はホームが別なのでここでは「並走」と扱いません)の一部の駅を通過します。具体的には、西日暮里、日暮里、鶯谷、有楽町、新橋の5駅(平日は御徒町を含めた6駅)を通過します。

快速電車は山手線に対してのものですから、京浜東北線どうしで追い抜きはありません。

快速運転時間帯でも、大宮や横浜から東京へはほどんどの区間が各駅停車です。これでは時間がかかり過ぎます。このような感想をいだく人もいるでしょう。しかし、(山手線との並走区間はともかく)快速は必要ありません。東海道線や宇都宮・高崎線が快速電車がわりに機能しているのです。

朝ラッシュ時の京浜東北線のダイヤパターン

京浜東北線E233系(神田)

写真2. 朝ラッシュ時の神田に停車中の京浜東北線

朝ラッシュ時のダイヤは南行と北行で異なりますから、それぞれに分けて記します。

南行(埼玉県→東京)のダイヤパターン

京浜東北線の南行の最混雑区間は川口→赤羽で、意外と郊外よりです。以前は上野→御徒町でしたが、上野東京ラインの開業で、上野から京浜東北線に乗りこむ人が減ったので、この区間は最混雑区間からは外れました。

赤羽断面で7:18~8:17の間は23本運転され、ピーク時は2.5分間隔です。ただし、赤羽断面で7:53以降は3分間隔で運転されます。赤羽始発は最混雑時間帯には設定されておらず、8:43までありません。

全ての区間が2.5分間隔ではありません。4本に1本程度が南浦和始発で、大船まで向かうのは10分に1本程度です。蒲田、鶴見、磯子などで折り返す電車が多いのです。品川を過ぎれば、ラッシュとは逆方向です。そうであれば、ある程度の電車を手前に折り返して、ラッシュ後の北行の輸送力に充当したほうがプラスです。

22年3月ダイヤ改正以前

その赤羽断面で7:28~8:28で2.5分間隔で運転されています。毎時24本運転です。最混雑区間が川口→赤羽ですので、この時間帯には赤羽始発はありません。赤羽始発は8:43には設定されていますが、これはラッシュピークを外した時間帯です。

以前は2.5分間隔(2分30秒間隔)ではなく、2分20秒間隔でした。赤羽断面ではまだ混んでいます。そうであれば、運転間隔を10秒短縮して、毎時26本運転とすることも検討するべきでしょう。車両が足らないのであれば、加速度向上(現在は2.5km/h/sですが、E233系は3.0km/h/sは対応できます)による所要時間短縮や、北行の区間快速化で運転時間を削減すれば、車両や人員は確保できるでしょう。

2.5分間隔といっても、全ての区間が2.5分間隔ではありません。4本に1本程度が南浦和始発で、大船まで向かうのは10分に1本程度です。蒲田、鶴見、磯子などで折り返す電車が多いのです。品川を過ぎれば、ラッシュとは逆方向です。そうであれば、ある程度の電車を手前に折り返して、ラッシュ後の北行の輸送力に充当したほうがプラスです。

北行(神奈川県→東京)のダイヤパターン

北行の最混雑区間は大井町→品川です。7:40~8:39の60分間を抽出すると、25本運転されています。2分20秒間隔であれば26本あるはずです。これは、一部が2分20秒間隔で、その前後は2分30秒間隔であることが読み取れます。ホームドアが付いている東急田園都市線でも2分15秒間隔を実現しています。京浜東北線の混雑率は上位に位置します。加速度の高くできるE233系電車に統一されているのですから、高い加速度で運転し、少しでも運転本数を確保してもらいたいものです。

半分強の電車が大船から運転されます。このほかに、磯子、桜木町、鶴見、蒲田の各駅始発が加わり、品川断面では2分20秒~2分30秒間隔となっています。途中駅始発を設定することにより、途中駅からの着席チャンスも確保しているのです。

大宮まで行く電車は5~10分間隔です。このほかの多くは南浦和行きで、少ないながらも赤羽行きもあります。

ところで、北行の秋葉原から田端まではかなり空いています。並走する山手線もそうです。両線ともにラッシュ輸送があるので、本数は多く3分も待ちません。そうであれば、京浜東北線の快速運転をしても問題ありません(※)。これを仮に区間快速と命名しましょう。秋葉原→田端で快速運転を実施すれば、4駅通過によって4分程度の所要時間短縮につながります。

※混んでいる区間で快速運転を実施すると、通過駅利用者が快速停車駅で山手線に乗りかえます。そうすると、乗りかえ客でホームが混雑します。そのため、混んでいる区間で通過運転するのは得策ではありません。

この4分短縮と、加速度向上による所要時間短縮(北行、南行で各2分程度)で往復8分程度の所要時間短縮につながります。現在は2.5分間隔ですので、8分÷2.5分=3本の車両が余ります。この余った3本ぶんの車両で、増発するのです。

京浜東北線の日中時間帯のダイヤパターン

田端(E233系とE235系)

写真2. 田端は山手線と接続するために快速も停車

美しい20分サイクルのパターンダイヤで運転されています。1サイクルの内訳は以下の通りです。日中時間帯はすべて快速として運転されます。

・大宮-大船:10分間隔

・南浦和-蒲田:20分間隔

・南浦和-磯子:20分間隔

都心では5分間隔、郊外では10分間隔で運転されるのが基本です。ただし、蒲田-磯子は10分間隔と5分間隔が入り混じります。蒲田-磯子は横浜線との共用(横浜線直通は東神奈川-桜木町で10分間隔で加わる)、桜木町-大船は貨物列車との共用という事情があると説明されます。

ただし、この説明では、「蒲田発着であること」の説明にはなりません。横浜線と共用する東神奈川での折り返しは無理にしても、鶴見発着にはできます。鶴見発着とすれば、川崎から都心へは5分間隔で利用できます。また、昔のダイヤでは蒲田発着は30分間隔でした。そうであれば、以下の組み合わせに変更できます。

・大宮-大船:10分間隔

・南浦和-鶴見:30分間隔

・南浦和-磯子:10分間隔と20分間隔の交互

さらにいえば、横浜線直通と連携する形で、鶴見発着を東神奈川発着とすれば、さらに便利になります。

これには車両運用の増加が必要に見えます。しかし、工夫をすればそこまで車両運用を増やす必要はありません。具体的には、最高速度を90km/hから110km/hにすることや、加速度を向上させることによる、所要時間短縮です。所要時間短縮は乗客にもメリットがありますが、「勤務時間」の短縮という形で会社側にもメリットがあるのです。

休日は山手線との接続は一定ではありません。これは山手線が3分~4分程度の間隔で運転していて、京浜東北線と運転間隔が一致していない以上、やむを得ません。山手線と合わせるには3分45秒間隔で運転する必要がありますが、3分45秒単位だと所要時間の差が微妙です(3分45秒差だと所要時間差が小さすぎ、7分30秒差だと大きすぎ)。だからといって、休日の山手線の運転間隔を5分にするのも、山手線の大幅なサービス低下です。そのため、山手線との接続は一定ではないことに目をつむるしかありません。

なお、2022年3月ダイヤ改正で平日の山手線が5分間隔になりましたから、平日については田端と田町で相互に接続しています。

京浜東北線の夕方ラッシュ時のダイヤパターン

京浜東北線E233系(新橋)

写真3. 新橋に停車するときの様子

夕方ラッシュ時はそこまで複雑なパターンではありません。おおむね3分間隔で運転されます。山手線と微妙に運転間隔が異なります。ということは、山手線と同時に走ることも、山手線の間を走ることもあります。山手線を微妙に増発して3分間隔とすれば、山手線と京浜東北線を交互に走らせることもできます。つまり、両方合わせて1分30秒間隔になるということです。

また、南行の田端→秋葉原はかなり空いています。そうであれば、田端から秋葉原まで快速運転をすると、所要時間を短縮できます。田端で山手線と接続するようにすれば、池袋方面から上野方面へのスピードアップにもなります。

京浜東北線のダイヤパターンまとめ

一見単純な京浜東北線のダイヤ。ただし、その裏には混雑する埼玉県区間の本数確保や、ラッシュ逆方向となる朝の下りは手前で折り返す電車を運転するなどの工夫が見られました。

ただし、現在のダイヤは未完成という感触もあります。ラッシュ逆方向となる方向・区間の快速運転や、夕方の山手線との連携など改善点もあります。京浜東北線はあまり有名な路線ではありませんが、山手線と並走区間も長く、重要な路線です。本数の多さにもその重要性が現れています。

今後も、潤沢な本数を確保し、都心と郊外を結ぶ重要な路線であり続けるでしょう。

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