山手線(ダイヤパターン紹介)

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東京をぐるりと1周する山手線。東京の電車の代名詞のように語られ、待たずに乗れる路線の代名詞としても語られる路線です。そのような山手線もダイヤが決められています。普段は気にしない山手線のダイヤを紹介しましょう。

山手線E235系(渋谷)

写真1. 夏の渋谷駅と山手線

復習:ダイヤパターンとは

具体的なダイヤパターンを紹介する前に、ダイヤパターンの基本概念について紹介しましょう。

多くの路線では鉄道ダイヤを作成する際に、基本的なパターンを形成しています。例えば、20分間隔で快速1本、各駅停車が2本が運転されている場合は、20分サイクルのパターンダイヤと呼びます。サイクルとは、列車の運転順序が1回りする時間を示します。例で示した路線の場合は、20分サイクルと呼びます。本記事ではこのような路線の場合、「20分サイクルで快速が1本、各駅停車が2本」というように呼ぶことにします。

多くの路線では、1サイクルを60の約数(何サイクルかすれば60分になる)としています。そうすると、毎時の発車時間が一定になります。

多くの路線では1サイクルに何本かの速達列車と各駅停車を混ぜています。(快速が各駅に停車する場合も含めて)各駅停車は平均10分に1本以上運転するようにしている路線が多いです。これは、どの駅でも10分程度待てば次の電車がやってくることを実現させるためです。

また、1サイクルの間に細かな繰り返しがあるパターンがあります。例えば、20分サイクルで快速2本、各駅停車2本が運転されていて、都心側は快速、各駅停車双方が10分間隔で運転されていて、郊外側で枝分かれするパターンです。この場合は厳密には20分サイクルですが、都心側のダイヤを論じる場合は10分サイクルと考えても差し支えはありません。このような、1サイクルの中で小さな繰り返しがある場合は疑似サイクルと呼ぶことにします。今回の例では、「疑似10分サイクルの中で快速1本、各駅停車1本が運転されている」と呼ぶという具合です。

ダイヤの実態は路線によって異なりますので、疑似サイクルの表記の方法については、適宜対応することにします。

山手線の方向を示す単語:外回りと内回り

(運転系統上の)山手線は環状運転をしています。どこかの駅を起点として、「上り」「下り」と決めてしまうと、不都合が生じます。そのため、山手線では上り、下りという表現を使用せず、「外回り」「内回り」という表現としています。

外回りは、品川→渋谷→新宿→池袋→上野→東京→品川
内回りは、品川→東京→上野→池袋→新宿→渋谷→品川

と回るパターンです。

山手線路線図

図1. 山手線の路線図(wikipediaより引用)

日本の鉄道路線は左側通行ですから、外回りが円の外側を通り、内回りが円の内側を通るので、このような名称となりました。

本記事でも外回り、内回りという表現を活用いたします。

基本的な考えかた.1周の所要時間と運転間隔

これからの記述では、「1周の所要時間は○○分で、その間に××本運転」というような書きかたをしています。この意味を簡単に紹介します。

抽象的な書きかたではわかりにくいので、あえて1周の所要時間を60分として書きましょう。

1周の所要時間が60分ということは、ある列車が大崎を発車して再び大崎を発車するまで60分かかるということです。

たとえば、1周する間に列車を1本しか使わないのであれば、運転間隔は60分です。では、1周する間に列車を2本使うのであれば?60÷2=30分間隔です。

逆の考えかたも可能です。1周60分のときに3分間隔を実現したい場合は?そう、60分÷3分=20本の列車が必要です。

ここまで1周が60分で考えましたが、1周が120分になったらどうでしょうか?仮に20本の列車を使うとしたら、120分÷20本=6分間隔です。さきの例で1周60分の場合は3分間隔でした。それが同じ車両数を使うとしても、2倍の6分間隔になってしまいました。

このように、1周の所要時間は運転間隔に大きく影響するのです。

山手線の朝ラッシュ時のダイヤパターン

神田に到着するE231系山手線

写真2. 朝ラッシュ時の神田

朝ラッシュ時は外回り、内回りともに混雑する区間があります。そのため、両方向に分けて記します。

朝ラッシュ時の外回りのダイヤパターン

朝ラッシュ時の外回りの最混雑区間は上野→御徒町です。宇都宮・高崎・常磐線で都心に向かう人が上野から乗ってくるためです。現在は「上野東京ライン」が開業したので、そのような乗りかえ需要は減っていますが、これら3路線の半数は上野行きですので、ゼロにはなりません。

1周は68分程度かかり、その間に18本(2023年ダイヤ改正以前は19本)の電車が設定されています。平均運転間隔は3分45秒(2023年ダイヤ改正以前は3分35秒)程度です。上野断面で混雑のピークとなる時間帯への配慮も見られません。経営状況が厳しいにしても、これはやり過ぎです。せめて2021年ダイヤには復帰できるように準備はするべきでしょう。

2022年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

1周は68分程度かかり、その間に22本の電車が設定されています。平均運転間隔は3分5秒程度です。混雑のピークとなる時間帯への配慮も見られません。上野東京ライン開業以前は2分20秒間隔でしたから、実に3割以上の減便です。上野東京ラインが毎時12本程度の輸送力を有していることは考慮しても、ちょっとやりすぎな気はしてしまいます。

可能であれば、各駅の停車時間を4秒ほど短縮(ホームドア開閉のタイミングの適正化)して、1周の所要時間を120秒短縮(1周66分運転)とし、平均運転間隔を完全な3分にするなどの努力も必要でしょう。

2021年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

1周は68分程度かかっています。この間に23本の電車が設定されています。このため基本的に3分間隔です(毎時20本ベース)。ただし、一部3分間隔を切る時間帯もあります。

以前の2分20秒間隔と比べると、だいたい22%の輸送力減少です。ただし、現在は上野東京ラインは13両編成(普通車のみ)がだいたい3分間隔で走るので、山手線の11両編成で考慮すると毎時24本程度運転されていることと同じです。京浜東北線のことを考慮しても山手線が毎時12本増発されていることと同じです。つまり、上野東京ライン開業前の毎時25本運転から5本減少したものの、上野東京ラインが毎時12本相当設定されているので、毎時32本あることと同じです。

(以前)山手線のみ毎時25本

(現在)山手線毎時20本、上野東京ライン毎時12本相当 → 合計毎時32本相当

つまり、現在は以前よりも毎時7本相当の増発が行われていることになります。

ただし、毎時25本の設定能力があるのであれば、そこまで設定して混雑をさらに軽減するのが本来の方向です。そのような意味ではやや残念なのが現在の状況です。ただし、JRが自己負担で1系統を新設したという事実は重要な輸送改善であることは間違いありません(そして山手線の減便があれどトータルでは輸送力増強にもなっています)。

朝ラッシュ時の内回りのダイヤパターン

朝ラッシュ時の内回りの最混雑区間は新大久保→新宿です。もともと池袋→新宿の利用が多く、さらに高田馬場で西武線からの乗りかえ客が加わります。新大久保駅周辺は住宅も多く、この駅まで「降りる人」よりも「乗る人」が多いです。

1周68分で、この間に21本の電車が運転され、平均3分05秒間隔です(一部は3分間隔の箇所もありましょう)。新宿断面で8:20~8:30の間を手厚くフォローするということもなく、平均的に運転されているように見えます。

2022年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

1周68分です。この間に24本の電車が運転され、平均2分50秒間隔です。2021年ダイヤ改正以前は新宿断面で8:20~8:30の間は手厚い本数が確保されるなどの配慮がありましたが、そのような配慮はなくなりました。この時間帯に限ると、運転間隔が2分30秒間隔(150秒間隔)から2分50秒間隔(170秒間隔)に開き、単純に混雑が10%以上減少しています。混雑率が150%だとしたら、170%になっているということです。いくらなんでも本数を減らしすぎでしょう。

2021年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

新宿断面で8:20~8:30といったピーク時間帯は2.5分間隔で運転され、前後はおおむね20分に7本の運転です(時刻表を読む限り2分50秒間隔ベース)。この区間は以前(といっても1980年代半ばですが)は山手線1本でしたが、埼京線、湘南新宿ライン、地下鉄副都心線が開業し、山手線への負荷は軽減されつつあります。

それが顕著に現れているのが現在のダイヤなのでしょう。基本的に2分50秒間隔で対応し、どうしても乗客の集中するピーク時は2分30秒間隔で対応しています(時刻表には秒単位の記載がないのであくまでも私の計算です)。以前の2分30秒間隔のダイヤからは後退しています。

いくら最混雑時間帯以外は相対的にゆとりがあるとはいえ、もう少し前後の時間帯も手厚くしてもらいたいものです。ただし、JR化後も池袋の立体交差工事を行って、15両編成の列車を新宿まで引っ張り、輸送力増強をしたという事実は非常に大きな努力と思います。

山手線の日中時間帯(昼間)のダイヤパターン

山手線E235系(池袋)

写真3. 日中に池袋駅の8番線を使うのは珍しい(2017年に撮影)

山手線の1周の所要時間は65分です。高輪ゲートウェイ開業で1分も増えていません(※)。ただし、以前は1周にかかる所要時間は60分でした。ホームドア対応のための停車時間増加を考慮しても増えすぎです。

※高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤ変化については、高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤの変化で詳しく述べています(別ウィンドウで開きます)。

平日は5分間隔で運転され、時刻表を見る限り、両方向で田端と田町で京浜東北線快速との相互連絡をしています。これはこれで利便性向上につながります。

休日は17本運用で平均運転間隔は3分50秒です。そのため、京浜東北線との相互連絡はありません。5分間隔まで減便すると、池袋-新宿-渋谷の混雑が激しくなるのがその理由でしょう。まずは、これらの各駅の行き来に便利になるように、埼京線の新宿発着と埼京線-相鉄線直通の新宿発着を1本化して、埼京線・湘南新宿ラインの池袋-渋谷の直通を毎時7本から毎時9本にすることです。

2022年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

この65分の間に15本の電車が運転されています。もう少し短い時間でいうと、13分の間に3本の電車が運転されています。つまり、平均4分20秒間隔で運転されています。以前は60分の間に15本の電車が運転されていて、4分間隔でした。1周の所要時間が増えたぶん、20秒運転間隔が開いてしまったのです。

ホームドアのドアが開くまで2~3秒のタイムラグがあるように見えます。このタイムラグを各駅で2秒短縮すれば、1周の所要時間は2秒×30駅=60秒短縮できます。そうすれば、1周は64分に短縮されます。すると、運転間隔は4分16秒となり、現在よりも混雑は緩和します。

また、京浜東北線快速との接続がランダムな点も疑問です。現在は埼京線(湘南新宿ライン)渋谷駅が便利な位置に移設されました。そして、新宿発着の相鉄と新宿発着の埼京線を直通させることはダイヤ上可能です。これを組み合わせれば、池袋-大崎の埼京線各駅は毎時9本確保されます。これにより、渋谷駅利用者の一部は埼京線に誘導することも可能です。そうすれば、山手線を5分間隔まで減便することも可能かもしれません。

こうすれば、京浜東北線と運転間隔が一致します。田端-田町で所要時間の差を5分に統一すると、以下のことが実現できます。

・田端を京浜東北線快速と山手線外回りが同時に発車

・田町で京浜東北線快速が1本前の山手線と同時に到着

これにより、山手線と京浜東北線快速の接続がきちんと行われることになり、乗客のストレスは軽減されることでしょう。

休日はもう少し本数が増えます。外回りは65分に18本の運転で、平均3分36秒運転です。だいたい3分30秒~3分40秒間隔です。内回りは65分に20本の運転で、平均3分15秒間隔です。休日はいくら埼京線の本数を増やしても5分間隔は暴挙でしょう。休日は京浜東北線快速との接続改善はあきらめるしかありません。

山手線の夕方ラッシュ時のダイヤパターン

山手線E235系(渋谷)

写真4. 夕方ラッシュ時の渋谷

外回りは1周66~67分の間に20本運転されます。おそらく平均3分20秒間隔です。10分に3本の運転です。内回りは15本(2023年ダイヤ改正まで17本)運転され、平均運転間隔は4分30秒(2023年ダイヤ改正まで3分55秒)です。朝ラッシュ時と夕方ラッシュ時の運転間隔を見ると、全般的に新大久保-新宿の混雑に対応することが主眼になっているように感じます。19時半(2023年ダイヤ改正まで21時ごろ)を過ぎると、両方向ともに運転間隔は徐々に開きます。

2022年ダイヤ改正以前のダイヤパターン

内回り・外回りともに、1周の66分の間に20本運転されます。平均3分18秒間隔です。おおむね3分20秒間隔であるものの、たまに3分10秒間隔でやってくるということでしょう。できれば、もう2本増発して3分00秒間隔にしたほうが乗客としてはありがたいです。ただし、深夜までこの運転間隔を確保してくれているのは乗客としてありがたいものです。

山手線のダイヤパターンまとめ

山手線には快速などの設定はなく、ただ環状運転しているように見えます。しかし、時間帯によって(そして日中時間帯は平日と休日でも)運転間隔を柔軟に変えています。また、朝ラッシュ時の内回りは新宿の利用のピーク時に運転を充実させているなど限りある輸送力を有効に活用しようという意図も見えました。

環状線が内側の方向別配置

写真5. ドイツの首都ベルリンを走る環状線(ここも1周60分程度!)

ただし、以前よりも本数を減らしている部分は見えてしまいます。山手線は日本を代表する路線でもあります。世界に少ない地上を走る都市交通の環状鉄道です(日本のほかにはドイツのベルリンくらい?、写真3)。これからも効率的な運転ができるという特長を生かしつつ、全世界の都市鉄道のモデルとしても運営してもらいたいものです。

過去のダイヤ改正に関する情報

過去の一部のダイヤ改正について、改正前後の時刻を比べるなど、細かく考察しています。

高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤの変化

2021年3月の山手線のダイヤ改正を解析する(主要駅間の終電も網羅!)

2024年ダイヤ改正での山手線のダイヤを比較する

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コメント

  1. ラベルの塔 より:

    10年前と比べてホームドア等の時間を除いても乗降に時間がかかっている気がしています

    エスカレーターや階段付近のみ人が多く、混んでるドアから乗り込もうとして他の空いているドアに移動しようとしない人や航空機の預け入れ手荷物サイズの荷物を複数持っている人、電車のドアが閉まったのにも関わらずドア前にいてホームドアが閉められない状況が起こる(もう一度ドアをあけてもらってその電車に乗ろうとする)など、乗客の行動によって各駅の乗降時間が増えてしまったのも所要時間増加に繋がっていると思います。
    江ノ電の14分ヘッド化と同様、所要時間を増やすことによってダイヤの安定性を高める方を優先しているように感じます。山手線は長距離乗るような路線ではないですし。

    所要時間短縮には利用者一人一人の行動も重要であると感じています。

    • tc1151234 より:

      ラベルの塔さま、コメントありがとうございます。

      確かに乗り降りの速度は下がっている点は否定できません。かつてよりラッシュ時の混雑が緩和し、良くも悪くも以前よりも緊張感なく乗り降りできるようになりました。乗り降り速度の低下は緊張感がなくなったことによる副作用のようにも感じます。