名鉄にはさまざまな路線がありますが、その中でも閑散路線ともいえるのが蒲郡線です。そのパートナー的な路線の西尾線とからめて実態を眺めてみました。
蒲郡線・西尾線の概要
実際に乗る前に各路線の概要を確認しましょう。
蒲郡線の概要
基礎データを示します。
名鉄蒲郡線の概要を復習しましょう。
- 区間:吉良吉田-蒲郡
- 距離:17.6km
- 途中駅:10駅(吉良吉田、蒲郡含む)
- 路線形態:全線電化、単線
蒲郡線は広見線の末端区間(新可児-御嵩)と同じく、車内精算式のワンマン運転を行っています。また、ローカル線でも1時間に4本の電車を確保する名鉄にしては珍しく、30分間隔の運転と本数が少ないです。このことは、蒲郡線がローカル線的な位置づけであることを示しているといえましょう。
西尾線の概要
基礎データを示します。
名鉄蒲郡線の概要を復習しましょう。
- 区間:新安城-吉良吉田
- 距離:24.7km
- 途中駅:14駅(新安城、吉良吉田含む)
- 路線形態:全線電化、単線(一部複線)
西尾線は急行が運転され、ワンマン運転を行っていないなど、準幹線的な位置づけであることがわかります。ただし、ダイヤ的には西尾-吉良吉田は30分間隔でしかなく、新安城-吉良吉田も急行と普通が各30分間隔とそこまで本数は多くありません。てっきり新安城-西尾は普通が15分間隔と思っていましたが、そこまで本数はないのですね。
実際の乗車記
実際に蒲郡から蒲郡線、西尾線と乗車しました。
西尾線:のどかなローカル線
蒲郡から名古屋へ向かうにはJR線が便利です。JRには快適な快速や新快速がだいたい15分間隔で運転され、40分程度で名古屋まで向かえます。そのような中、蒲郡から名鉄で名古屋に向かう人は少ないでしょう。そのようなことから、名鉄蒲郡線はローカル線としての役割を担っています。
写真1. 名鉄6000系がいらっしゃる
蒲郡に6000系が停車していました(写真1)。このようなローカル線には6000系が使われています。
写真2. 住宅街を行く
写真3. 住宅街を行く
名鉄蒲郡線はローカル線扱いをされていますが、あくまでも名鉄という都市圏を走る私鉄の中で「ローカル」扱いをされているだけです。そのため、実際には住宅街を走ることも多いです(写真2-3)。
写真4. 海沿いを走る
西浦を出たあたりで海沿いを走ります(写真4)。名鉄で海沿いを走る路線は多くないので、貴重な存在と思います。
写真5. 海沿いを走る
写真6. のどかな海岸沿いの街
写真7. 港湾機能がある
このように海沿いの区間は続きます。ただし、海岸線近くを行く区間はなく、海がずっと見えるわけでもありません。
写真8. 三河鳥羽に停車中
最後の駅が三河鳥羽です(写真8)。ここから外国人3人を迎え入れました。ローカル線といえども国際化が進んでいます。それが現代の日本なのです。
写真9. 吉良吉田に到着
最後の1駅は速度を出していました。最高速度は85km/hとされていますが、甲高いモーター音の効果か、それ以上の速さを感じました。もしかしたら、ローカル線の遅さを感じさせないために、6000系を使っているのかと感じたくらいです(まあ、そんなことはないでしょう)。
図1. 吉良吉田駅の地図
吉良吉田駅じたいは興味深い構造です。地図の下側に蒲郡線が発着し、地図の上側に西尾線が発着します。乗りかえ客はその間の「関所」を超える必要があります。この関所で、蒲郡線の乗客全員の乗車券のチェックを受けます。
西尾線への乗車
吉良吉田に用のない私はすぐさま西尾線に乗車します。
写真10. 5000系から眺める前面展望
私が当たったのは5000系でした(写真10)。5000系は簡単にいうと最新の車体+使い回しの機械で構成された車両です。名鉄は昔からこのような車両が好きですね。
写真11. 向こう側に蒲郡線の車両が見える
さきほどの図でも示しましたが、蒲郡線と西尾線はホームが離れています(写真11)。もともと三河線の線路が離れている場所にあり、その場所に蒲郡線のホームを設置したことがわかります。
写真12. のどかな風景を行く
さて、吉良吉田を発車しました。吉良吉田から西尾まではもともとワンマン運転を行っていた区間であることからわかるように、この区間はのどかですね。
写真13. 西尾の市街地が近づいてきた
西尾線の代表的な駅といえば、西尾でしょう。その西尾の市街地が近づいてきました(写真13)。
写真14. 西尾に停車中
西尾に停車中です(写真14)。ここで結構乗客が乗ったように記憶しています。ここから急行は「急行」らしく走ります。吉良吉田から西尾までは急行といえども各駅に停車しています。ここ西尾から急行の他に普通が運転されているので、律儀に各駅に停車させる必要はないのです。
写真15. 急行と行き違う
急行どうしの行き違いです(写真15)。向こうの車両は「準パノラマカー」といえる5700系ですね。こっちのほうが良かったなとも思いますが、現実は5000系に乗っています。このような現実を受け入れて先に進みます。
写真16. 新しい高架(渋滞への効果はあるのか?)
西尾線は準幹線という位置づけでしょうが、1時間に4本しか運転されていません。この本数では高架に切り替えることによる効果は限定されているように感じてしまいます…。
写真17. 普通とすれ違う
普通ともすれ違います(写真17)。この区間は1時間に4本といえども、普通のみの停車駅は30分に1本しか乗車チャンスはないですね…。
写真18. JRをまたぐ
宿敵であるJRをまたぎます(写真18)。
写真19. 新安城に到着
新安城に到着です(写真19)。ここで西尾線の旅は終わりですが、この先の尾西線まで電車は直通します。西尾線と尾西線直通!これはオヤジギャグで直通させるわけでなく、両者が4両編成が適正であるため、たまたま直通しているだけです。それに乗客の多くは名古屋から先どこに行くかはどうでも良いことです。
写真20. 名古屋本線を行く
名古屋本線を走ります(写真20)。新安城からは1時間に4本ある急行の補完列車として走ります。名古屋本線の急行は6両編成か8両編成が多いですが、この急行は4両編成ですからどうしても混雑してしまいます。
写真21. 普通を追い抜く
それに輪をかけるように、普通を追い抜きます(写真21)。休日の昼間というのに、座席が埋まるどころか立ちも多く発生していました。なお、このあたりで小さい子供を含む家族連れが乗ってきました。子供は前を見たがっていました。私はその席を譲ったのでしょうか。
写真22. 堀田に停車!
そのような中、堀田に停車しました(写真22)。私が前の景色を撮影していることが答えですね。
写真23. もうすぐ名鉄名古屋
このように名古屋に着いたのです(写真23)。
蒲郡線と西尾線の性格を分析する
たった1回の乗車ですが、両線の性格を分析してみましょう。現在は戸籍上の境界点である吉良吉田で運転系統も分かれていますが、私の印象では西尾で性格が分かれているように感じました。
端的にいうと、新安城から西尾までは都市型路線(広域需要を拾う路線)、西尾から蒲郡までは地域密着型路線(広域需要がない路線)と感じました。蒲郡線に乗車している際は、各駅で乗客が乗り降りしており、蒲郡から吉良吉田まで乗り通した人はそこまで多くありませんでした。一方、西尾線は名古屋方面に向かう乗客が多く見られました。西尾から吉良吉田はその中間的な位置づけかもしれません。ダイヤからもこのような傾向が見られます。
蒲郡線は廃線という噂も聞こえます。現在はローカル線では破格の30分間隔、そして乗りかえ1回だけで名古屋に直結するという運営ですが、油断は禁物というのが現状なのでしょう。それでも私が乗車した際は座席の多くが埋まりました。この日は形原で多くの乗客が降りたので何らかのイヴェントが開催されたためかもしれませんが、そこまで閑散としている様子ではありませんでした。そのため、廃線の「噂」というレヴェルなのでしょう。名鉄のローカル線廃止は落ち着きましたので、美しい海岸線でお出かけ需要を喚起して根元の西尾線ともども活性化してもらいたいものです。