長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)の理想像と現実

九州新幹線西九州ルート(以下長崎新幹線と呼びます)の建設が始まっていますが、このルートについてはさまざまな声があります。この声について着目し、理想像を考えました。


前提知識:長崎新幹線の概要

まず、長崎新幹線の概要を確認しましょう。

長崎新幹線のルート

図1. 長崎新幹線のルート

博多側を建設するのではなく、長崎側を建設中であることが議論の的になることですし、理想像から離れる原因でもあります。現在は、武雄温泉から長崎まで建設中で、博多側(新鳥栖)-武雄温泉が建設されていません。博多から連続して線路が敷設されずに、飛び地のように建設することが問題の根源です。

建設区間の軌間は1435mmで、在来線のまま残る区間の軌間は1067mmと直通運転が不可能な事実も重要です。両者を直通するための技術としてフリーゲージトレイン(※)が検討されていましたが、フリーゲージトレインの実用化が不可能であるという結論が下されています。

※現在、ヨーロッパではフリーゲージトレイン(スペイン直通用や旧ソ連直通用)が運転されていますが、これらはいずれも客車のみが直通しています。動力の付いた台車のゲージを2種類対応にすることは世界のどこでも実用化されていません。

部分開業で博多-長崎の所要時間は1時間22分、全線フル規格での開業での所要時間は51分と見込まれます。

787系の先頭(博多)

写真1. 現在はこの車両が直通しているが…

部分開業による問題点

部分開業による問題点は何でしょうか?乗客にとってどんな線路を通ろうが、軌間がいくつであろうが、重要なことは所要時間や乗りかえの回数です。部分開業すると、博多から長崎までの移動の際に武雄温泉で必ず乗りかえねばならなくなります。ライバルとなる高速バスは福岡と長崎をノンストップで結びます。それも拠点側で細かく直通できます(博多なら天神、長崎なら大波止など)。その中で鉄道利用だと絶対に乗りかえが必要となれば、乗りかえを嫌う層がバスにシフトする可能性があります。

九州新幹線の新八代-鹿児島中央の開業時のように、乗りかえと引き換えに大幅に所要時間が短縮されています。このような圧倒的な改善点があるならともかく、15分程度しか所要時間が短縮されません。これでは、乗りかえ発生のデメリットを打ち消すことは困難です。

問題点改善の方策

このような問題点を改善するための方策は何があるでしょうか。

全線フル規格

1つは新鳥栖-武雄温泉もフル規格で建設することです。そうすれば、博多から長崎の乗りかえがなくなるどころか、新大阪から長崎まで1本で結ばれることになります。全線フル規格だとすると、新大阪-長崎は3時間15分前後となります。そうすれば、シェアは7割程度とれることでしょう。現在、関西地区と長崎地区の航空機の輸送量は年間81.5万人、片道40.8万人、1日あたり1117人です。つまり、1日当たり800人程度の利用増加が見込まれます。首都圏からは6時間程度となるでしょうから、首都圏と長崎を航空機で往来する人(年間173万人)のシフトは期待できないでしょう。

全線フル規格は効果は最も高いですが、費用が最もかかるという問題があります。また、並行在来線問題をかかえたくない佐賀県がこの方策には反対しています。この点からもすぐにこの方策にすることは難しいです。

スーパー特急方式

新幹線の線路には新幹線しか走らせないと誰が言ったのでしょうか?新幹線は在来線の上位互換と考えることができますから、新幹線の線路に在来線の列車を走らせても良いはずです。この考えかたがスーパー特急です。新幹線に比べて在来線の軌間は狭いので大出力のモーターを搭載することは難しいでしょう。すなわち、時速300km/hだの320km/hに対応することは無理でしょう。しかし、ほくほく線では160km/hで運転していた実績がありますから、200km/h程度の運転であれば特段問題ないでしょう。新幹線区間は200km/h運転、在来線区間では130km/h運転の特急車両を製作すれば、博多-長崎までを直通することは技術的に可能です。武雄温泉-長崎の所要時間は増えてしまいますが、乗りかえがなくなるぶん所要時間はそこまで変わらないでしょう。

この場合のメリットはもう1つあります。博多-佐世保の線路には影響ありませんから、博多-佐世保の直通は継続的に可能です。この他に、長崎-武雄温泉をスーパー特急、武雄温泉-佐世保を在来線経由の長崎-佐世保の特急も運転可能です。このようにすれば、長崎県内の移動は最適化できます。

建設方法の検討

では、どのように建設すれば良いのでしょうか。答えは、4線化にあると考えています。武雄温泉以東の将来像が明確ではない以上、武雄温泉以西(以南)の建設は拡張性を持たせることが必要です。当面はスーパー特急で建設するために軌間1067mmとして、将来的な全線フル規格に対応するために、1435mmにも対応するように準備工事を行うのです。3線化だと中心線がずれるので、4線化とするのです。これで、武雄温泉以東のフル規格工事が完成していない段階ではスーパー特急を運転し、武雄温泉以東のフル規格が完了したら、そこに新幹線列車を走らせるのです。

現在は法律の壁などがあるため、このような柔軟な対応ができないのでしょう。フリーゲージトレインの実用化が前提の計画ですが、それがダメだった場合の逃げ道も確保すべきです。物ごとは逃げ道を多く確保するのが常道なのです。


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