北海道新幹線の将来像:あえての提言~夜行列車復活

北海道新幹線が札幌まで延長した際の夢物語として、夜行列車を運行することを考えてみましょう。「夢物語」といっても、採算性が悪いということはありません。ダイヤや車両の概要を考えたあと、採算性も簡単に検討しています。


夜行列車の必要性

今後、札幌まで延伸する北海道新幹線。弊ブログではその将来像について簡単に考えました。どんなに頑張っても、東京-札幌間は4時間はかかってしまいます(妥当な線でいえば5時間は切るくらい)。これでは、なかなか航空機に対抗できません。
※ここでは東京-札幌が開通した後の状態を考えています。

ところで、航空機の弱点は何でしょう?そう、終機(というのでしょうか?正しくは最終便)が早く、早朝便が遅いことです。2017年3月時点での航空機のダイヤを示します(表1)。

表1. 航空機のダイヤ

航空機ダイヤ

空港到着は30分前(荷物検査が15分前と言われています)、空港出発は15分後を想定しました。乗り継ぎ列車はそれを満たすようにしています(いずれも平日ダイヤ)。ややギリギリの設定で、航空機にやや有利な表であると思います。

この表によると、都心発が20:30が実質的な最終であり、都心着が9:00が実質的な朝イチであることがわかります。この隙間を埋めることが航空機に対抗する1つの手段です。つまり、20:30以降に都心を発車し、都心着が9:00以前であれば航空機に対抗できるのです。

私の予想では所要時間が5時間ですから、「(単純計算では)23:50に出発しても4:50に到着する」となりますが、そうは簡単にいきません。その理由と対処法を以下に記しましょう。

夜行列車運転の前提検討

ここで、さまざまな条件を加味して、より具体的に考えてみましょう。こんなこと具体的に考えなくても良い、そんな現実からは目を背けます。

新幹線の前提:夜間は走行不可

新幹線の大前提として、0:00~6:00までは運転が不可能ということがあります。これは、保線の時間を確保するためです。これでは新幹線夜行列車は無理ではないか、そんな気もしますね。この抜け穴は途中駅で6時間停車するということです。つまり、始発駅を20:30に発車して、0:00まで走行。0:00に達した駅で待機。そして、6:00になったら再び走行ということです。この点での懸案事項は、1) 電気の供給 2) 車内の治安面です。前者は技術的努力で、後者は駅の締め切りで何とかなると仮定しましょう。

このことを考えますと、走行時間5時間+待機時間6時間=11時間が所要時間になります。この場合、20:30に出発したら7:30に到着するということになります。幸か不幸か途中駅で待機することで、ちょうど良い時間になっていますね。

鉄道の特性:定員は多いほど良い

鉄道の特性として、多くの人数を運搬できるというものがあります。また、営利活動という側面から捉えますと、定員は少しでも多いほうが良いでしょう。同じコストをかけるならば、少しでも実入りは多いほうが良いためです。

定員を稼ぐためには2階建て車両が必須となりますが、E4系(オール2階建て車両)の最高速度は240km/hに過ぎず、現代の水準(E5系:320km/h)から見ると低いと言わざるを得ません。せめて、275km/hは欲しいところです。今回は技術的進歩でオール2階建てでも275km/h運転が可能(=E2系レベル)と仮定しましょう。275km/h運転であれば、所要時間の伸びは抑制できるでしょう。

前提の検討まとめ

・新幹線の保守時間帯は途中駅で長時間停車
・オール2階建て車両で定員確保

夜行列車運転の具体策

以上の前提条件を基本に具体案を考えます。

ダイヤの検討

前回の検討で、「最高速度275km/hのオール2階建て車両で運行」と述べました。そこで、それを前提としたダイヤを考えます。また、0時から6時までは駅で待避せざるを得ません。

1からダイヤを考えるのは面倒なので、現行ダイヤをベースに考えます(札幌延伸時に現行ダイヤをベースにするのかという疑問はありますが、このような疑問は都合よく忘れることにしましょう)。

下りはやまびこ221号のスジを使うことにします。つまり、東京20:56発、仙台23:03着ということです。仙台から盛岡までノンストップで44分(2008年3月ダイヤ-275km/h運転-でのノンストップはやて号の時刻)ですから、盛岡に到着するのは23:50ごろとなるでしょう。翌朝、盛岡を6:00に出発して新青森のみ停車して新函館北斗に7:50に到着、そこから札幌まで65分程度と見積もられますので、札幌到着は8:55となるでしょう。

上りはやまびこ206号のスジを活用しましょう。つまり、仙台6:50発、東京9:04着ということです。急ぐ人は仙台ではやぶさ号に乗り換えてもらうことにしましょう。これにつなげることを考えます。盛岡から仙台まで44分で走行可能ですから、盛岡を6:03に発車すれば間に合います。前日の23:50に盛岡に到着することを考えますと、新函館発車は22:00、札幌発車は20:55となります。

上記のダイヤ案では盛岡以北は260km/h運転、青函トンネル区間は140km/h運転であることを前提としています。青函トンネル以外の区間で275km/h運転が実現すれば、10分ほど所要時間は短縮します。また、青函トンネルの275km/h運転が可能になれば、15分ほど所要時間が短縮できます。ここでは双方がそれなりに実現して、20分スピードアップしたと仮定しましょう。この時間は札幌での滞在時間増加に割り当てましょう。つまり、札幌に早く着き、札幌を遅く出発するということです。

これらをまとめると、以下の通りとなります。

・下りは東京を20:56に出発して盛岡で6時間停車、札幌に8:35に到着
・上りは札幌を21:15に出発して盛岡で6時間停車、東京に9:04に到着

また、多客期は東京での滞在時間を重視した設定も良いでしょう。

・東京を22:00ごろに出発して札幌に10:00ごろ到着
・札幌を20:00ごろに出発して東京に8:00ごろ到着

という臨時便です。

定期便のダイヤと航空機のダイヤを比較すると、以下の通りとなります(表2-3)。

表2. 新幹線夜行と航空便のまとめ(下り)

北海道新幹線夜行下り

表3. 新幹線夜行と航空便のまとめ(上り)

北海道新幹線夜行上り

航空便の最終便よりも遅く出発し、航空便の早朝便よりも早く到着するのが重要です。

下りに関しては品川断面では同じ時刻、札幌到着では15分程度早くなっています。東京駅地区では新幹線が有利、渋谷、新宿、池袋などの地区からだと埼京線で大宮へのチャンネルもありますから、やはり有利でしょう。

上りに関しては圧倒的に有利です。

サンライズ瀬戸(17年5月に高松で撮影)

写真1. 航空機に対して有利にたっているサンライズ号

車両の考察

前々回の記述でオール2階建て車両が良い、と述べました。その車両について考えてみましょう。

前提は以下の通りです。

・一部区間では終電、初電の役割も担うので、座席車が必要
・夜9時から朝9時までの滞在なので、豪華な設備は不要
・上記の滞在時間なので、食堂も不要
・H5系は10両編成なので、やはり10両編成が妥当(と思います)

これらを具体化してみましょう。新幹線は大断面で車体幅は3380mm(と700系の新車ガイドにありました)、在来線と異なり極端な裾絞りは不要ということから、車内の有効幅は3150mmとしましょう。通路の最低幅は500mm(と415系の何かの特集で1900番台-番台という割には1両しかありません-の通路幅について取り上げていました)とされています。もう少し余裕を持って550mmとしましょう。

このような制限を基にB寝台個室車を想定しました(図1、階下と階上は線対称)。車端部のうち、1/4は個室用スペース、他はトイレや機器室と想定しました。1両当たり1人用個室14部屋(階下に6部屋、階上に6部屋、車端部に2部屋)、2人用個室8部屋(階下、階上にそれぞれ4部屋)、3人用個室2部屋(階下、階上にそれぞれ1部屋)と想定され、合計の定員は36名です。既存のサンライズエクスプレスではおおよそ22名程度ですから、1.5倍程度の生産性が期待できます。

夜行列車普通寝台車

図1. 普通寝台車の配置図

サンライズのシングル

写真2. 普通寝台車(1人用)の内装(イメージ)

同様に、特別寝台車の配置も考えました(図2、階上のみの設定)。「快適に過ごしたい」という要望に合わせての設定です。普通寝台車との違いは以下の通りです。

・起きている時間を過ごすための椅子(2人用個室は窓を向く)の設定
・朝起きてから身だしなみをゆっくり整えるための洗面台
・快適に睡眠できるためにベッド幅を100cmに拡大

夜行列車A寝台車

図2. 特別寝台車の配置図

シングルデラックスの室内

写真3. 特別寝台車(1人用)の室内(イメージ)

このような寝台車と普通座席車をつなげた10両編成で考えます。1~4号車は座席車として横5列の配置、6~9号車は普通寝台車、10号車は特別寝台車と普通寝台車の併用としましょう。E1系のように先頭車の車両長を長くすれば、運転席があるからといって先頭車の定員は減少しないでしょう。

1~4号車:シートピッチ1040mmで定員100名/両
5~9号車:普通寝台車として運用、定員34名/両
10号車:特別寝台車を併用、定員24名/両(特別寝台車は7名、普通寝台車は17名)
まとめると1~3人用の普通寝台(個室)、1人用、2人用の特別寝台(個室)、そして普通座席車が設定されるということです。

価格の設定

どの程度の価格が妥当か検討しましょう。

東京-札幌は1035.2km、新青森-札幌は360.3kmと想定されています。現行の運賃体系がそのまま適用されると、12960円、新幹線料金は14500円(現行の新幹線+北斗の合計よりやや高い)と想定できます。すなわち、合計が27500円前後と想定できます。現行のサンライズから考えると、寝台料金は7500円前後と想定できます。これらの合計が35000円です。東京-札幌の夜行列車利用料金は35000円(運賃等込み)ということです。

JALのホームページを軽く見ますと、1週間程度先の航空便の運賃は25000円程度とされています(軽く見た程度です)。また、ビジネスホテルの価格は5000円~8000円程度です。これらの合計は30000円~33000円程度です。空港と市内(都内)のアクセスを考慮しますと、価格面は互角でしょう。

※特別寝台車(とこの連載では述べています)の価格はもっと高価です。プラス5000円程度でしょうか。しかし、この車両は特別な設備という付加価値があるのです。

夜行列車の採算性

これらの条件から、採算が合うか簡単に検証しましょう。検証の条件は以下の通りとします。

・簡単のために、夜行列車運行に関する追加の費用と、追加の収入のみを検討します
・追加の費用は車両導入、運転士の人件費のみとします
・追加の収入は寝台車の収益のみとします
・寝台車の乗車率は60%とします

収入の試算

これらから収入面を考察します。

定員は194名(うち特別寝台車は7名)、1人当たりの収入は35000円と仮定します。
つまり、1日当たり、194名×0.6×2(往復)×35000円=814.8万円 の収入です。

支出面

乗務時間は12時間、乗務員は3名、時給は3125円(日本人の年収の中央値が450万円、年間労働時間が1800時間から逆算、これに深夜手当25%増し)としますと、1日当たりの人件費は以下の通りです。

3名×12時間×3125円/時間×2(往復)=22.5万円

車両の減価償却を簡単に考察します。車両を15年間使用し、1両当たり3億円、4編成導入と仮定しましょう。その費用は以下の通りです。

3億円×10両×4編成=120億円

この120億円を15年(=5475日)でペイさせるのですから、

120億円÷5475日=0.0219億円/日=219万円/日

人件費と車両の減価償却費の合計が1日当たり241.5万円と計算できます。

収入と支出の比率

収入が1日当たり800万円強、支出が250万円程度と考えられます。この中で昼行列車からシフトしたぶんもあるでしょうが、収入がはるかに多いことがわかります。もちろん、車両のメンテナンス費用など他にも経費はかかるでしょう。それでも大幅な赤字にならないと推定できましょう。

つまり、この構想は「採算性を度外視したマニアのたわごと」ではないと推定できます。

現在、海外から日本に金づる旅行客を誘致するというのが日本国のお題目1つのテーマです。限られた日程で1か所でも多くの観光地をめぐりたいというニーズ(こんなことを言うのは日本人くらいかな?)、そしてホテル不足の改善など、波及効果も無視できないでしょう。


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