多摩ニュータウン鉄道ライバル物語

多摩ニュータウン。そこは高度経済成長から発達した街であり、東京都心との結びつきが前提の場所です。そんな多摩ニュータウンには3本の鉄道があります。そのうち2本が新都心の新宿に直結しています。そんな2本の鉄道を比較してみました。

京王8000系(京王多摩センター)

写真1. 京王多摩センターに停車中の準特急

多摩ニュータウンと新宿の鉄道

多摩ニュータウンは主に多摩市に建設されたニュータウンです(図1)。

図1. 多摩ニュータウンの範囲(googleマップより引用)

多摩ニュータウンの範囲は広く、一言で「便利な鉄道」と処理できない面があります。例えば、多摩境駅周辺であれば京王電鉄が便利でしょうし、唐木田駅周辺であれば小田急電鉄が便利でしょう。そのため、本来であれば細かな分析が必要でしょう。しかし、多摩ニュータウンの中心部は多摩センター付近とされています。

図2. 多摩センターの位置(便宜上、京王の駅にマークしました、googleマップより引用)

その多摩センター駅には3つの路線が乗り入れています。小田急多摩線、京王相模原線、そして多摩都市モノレールの3つです。小田急多摩線と京王相模原線は主に都心部と多摩ニュータウンを結ぶ役割を、多摩都市モノレールは多摩地区を縦断する役割を担っています。

小田急多摩線と京王相模原線の両者は(列車の運行上)新宿を起点としています。では、新宿との行き来にはどちらが便利で、実際にはどちらが選択されているのでしょうか。

京王と小田急の徹底比較

E233系による急行(小田急多摩センター)

写真2. かつては小田急多摩センターから地下鉄直通が走っていた(小田急多摩センターで撮影、JR車)

さて、京王と小田急を比べてみましょう。

京王と小田急のスペック

まず、京王と小田急の基本について確認しましょう。

京王相模原線は調布-橋本の路線で、途中で京王多摩センターを通ります。調布から都心よりは京王電鉄京王線に直通し、新宿方面に直通します。小田急多摩線は新百合ヶ丘-唐木田の路線で、途中で小田急多摩センターを通ります。京王多摩センターと小田急多摩センターは隣接しており、同一駅とみなして差しさわりがないくらいです。

新宿から京王多摩センターまでは29.2km、新宿から小田急多摩センターまで30.6kmです。ぱっと見、距離の短い京王のほうが優勢のように見えますが、実際にはどうなのでしょうか。

運賃はどうなの?

鉄道はお金を支払って輸送サービスを提供してもらうものです。分析要素はいろいろありますが、経済性も重要な観点です。では、京王と小田急の運賃はどうでしょうか(表1)。

表1. 京王と小田急の運賃

 京王小田急
運賃(IC)325円377円
1か月定期12,150円13,190円
3か月定期34,630円37,600円
6か月定期65,610円71,230円

参考までに、通勤定期券の価格も掲載しました。いずれにしても京王のほうが安く移動できることがわかります。

ダイヤの比較

では、京王と小田急のどちらが新宿に早く着けるのでしょうか。所要時間をまとめてみました(表2)。

表2. 京王と小田急の所要時間の比較

 所要時間(京王)運転間隔(京王)所要時間(小田急)運転間隔(小田急)
朝ラッシュ上り46分約10分間隔40分約10分間隔
日中時間帯下り30分20分間隔39分20分間隔
日中時間帯上り31分20分間隔40分(34分)20分間隔
夕ラッシュ下り36分10分間隔38分30分間隔

朝ラッシュ時は複々線の威力を発揮した小田急のほうが所要時間が短いです。しかも、10分間隔運転を行っていて、京王と運転間隔で遜色ありません。小田急の種別は通勤急行に統一されているのも高頻度運転の要因でしょう。京王はラッシュ時には準特急や特急の運転はなく、そのぶん時間がかかっています。また、調布から笹塚までは列車本数が多く、速度が出せないことも影響しています。

朝ラッシュ時以外の時間帯は小田急よりも京王のほうが早いです。小田急は複々線が完成したとはいえ、複線区間がありその区間で速度を出せない点も影響しています。また、最高速度が京王が110km/hなのに対し、小田急は100km/hであることや、小田急の停車時のオペレーション(停車駅の出発信号が進行現示でなく停止現示なので駅停車時にノロノロになる)も影響していましょう。

日中時間帯は京王、小田急ともに最速列車は20分間隔(京王は準特急、小田急は急行)ですが、京王は新宿-多摩センターを先着する組み合わせが20分に3回(新宿-調布で特急か準特急利用)あるのに対し、小田急は20分に2回のチャンスしかありません(平日の下りは20分に3回)。また、京王は調布での乗りかえが同じホームでできるのに対し、小田急は新百合ヶ丘での乗りかえが別ホームです。そのため、余計に京王のほうが便利なように思えてしまいます。日中時間帯は京王のほうが圧倒的に便利でしょう。

夕方時間帯は京王が準特急と急行を各20分間隔(合わせて10分間隔)、小田急は快速急行を30分間隔で運転していて、圧倒的に京王が便利です。とはいえ、小田急も快速急行を運転して、所要時間は38分と京王とそこまで違いはありません。小田急は直通する快速急行こそ30分間隔ですが、15分間隔で運転される町田方面の快速急行に乗れば新百合ヶ丘で乗りかえ可能ですから、新宿から多摩センターまでの乗車チャンスが30分間隔ということではありません。

ダイヤを眺めると、インフラで勝負する小田急とオペレーションで勝負する京王という感じがあります。個人的にはインフラで優位に立っている小田急がオペレーションを改善して、1分でも所要時間を縮めてほしいと感じます。

コラム.小田急の新宿シフトはどうなの?
以前のダイヤをご存じの人であれば、2018年3月ダイヤ改正以前では小田急の速達列車が原則的に千代田線直通であったことを思い出すはずです。2018年3月ダイヤ改正前は京王とガチンコ勝負の新宿をあえて放棄し、千代田線に活路を求めていました。

ここで気になるのが、2018年ダイヤ改正で千代田線から新宿にシフトしてどうだったかという点です。それでは、多摩センター駅の乗降人数を分析してみましょう。

2017年度(=ダイヤ改正直前)の京王多摩センター駅の乗降人数は87,411人で、2019年度(=ダイヤ改正の効果が出た)の乗降人数は90,353人です。一方、小田急多摩センターの乗降人数は2017年度が50,319人、2019年度が51,315人です。京王の増加率が+3.36%で、小田急の増加率が+1.98%です。つまり、ダイヤ改正によってシェアは京王のほうが増えていることになります。

とはいえ、話はそう簡単ではありません。京王側は京王ライナーの運転や運賃値下げといった策を講じています。特に、定期の価格の値下げはかなり効いているはずです。定期運賃の支給は会社が負担することが多いです。となると、合理的な理由がない限り、通勤経路は最安値の経路が指定されます(定期代という「金」を支給するので、会社側は「口」を出す権利がある)。朝ラッシュ時の利便性こそ小田急が勝っているものの、他の時間帯は京王のほうが利便性が高いです。そうであれば、多くの通勤客が京王を利用するでしょう。

このように、ダイヤ改正の成果の判断は難しいものです。もしも、ダイヤ改正をしていなければ現在より利用が多かったのか、少なかったのかの評価はできないのです(京王が何も変わっていないのであれば話は別です)。

直通先の評価

ここまで多摩センターから新宿への行き来について評価しました。とはいえ、東京都心の目的地は新宿に限りません。東京は発達した大都市であり、多くの場所が目的地となりえます。京王電鉄は都営新宿線に直通し、小田急電鉄は地下鉄千代田線に直通します。小田急多摩線と地下鉄千代田線の直通はほぼありませんが、代々木上原で同じホームで乗りかえができます。

市ヶ谷、神保町という都営新宿線沿線に向かうには京王のほうが便利でしょうし、表参道、大手町という地下鉄千代田線沿線に向かうには小田急のほうが便利でしょう(御茶ノ水地区であれば両者が重なりますが)。新宿からこれらの沿線に目的地がシフトした瞬間、競争関係から棲み分けに変化するのです。

どちらかというと、都営新宿線よりも地下鉄千代田線沿線のほうが目的地となる場所が多いように感じます。すると、小田急の利便性がクローズアップされてきます。このように、東京の鉄道は単純な比較でなく、ネットワークで比較することも重要です。

多摩ニュータウンの鉄道まとめ

写真3. 京王多摩センターから小田急の駅はよく見える

今回、多摩ニュータウンのライバル鉄道について比較しました。対新宿への利便性は朝ラッシュ時を除き、京王のほうが便利という結論が得られました。とはいえ、東京の目的地は新宿だけではありません。千代田線沿線であれば、小田急のほうが便利になりましょう。

多摩ニュータウンも成熟してきたと聞きます。そうなると、単に特定の2点の乗客を争うだけでなく、途中経由地の違いを生かしたネットワークの形成、場合によってはライバルどうしの協力(京王線沿線と小田急線沿線の流動など)も必要になりましょう。競争によってサービスが向上するのは良いことですが、ライバルどうしが全く協力せずに鉄道の機能が低下することは望ましくありません。今後もこの2社には良きライバルとして切磋琢磨してもらいたいものです。

小田急と京王のダイヤを確認したい!
今回の両者の都心よりのダイヤは別の記事でまとめています。

小田急小田原線(ダイヤパターン紹介)
京王電鉄京王線(ダイヤパターン紹介)

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