小田急電鉄の金曜深夜の混雑状況(代々木上原→東北沢、現場調査結果)

記事上部注釈
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小田急小田原線。昔から混雑することで有名な路線です。東洋最大の繁華街ともいえる、新宿から出発していることもあり、金曜深夜は混雑が予想されます。では、実際はどうでしょうか。新宿方面と千代田線方面からの流動が重なる代々木上原で観察しました。

写真1. 千代田線からの乗客が新宿からの速達列車に吸い込まれる

金曜深夜の小田急の混雑状況まとめ

金曜深夜の小田急の混雑状況の概要は以下の通りです。

  • 21:40~22:55までまんべんなく混んでいる
  • 快速急行の混雑が特に激しく、新宿発着の急行も混雑する
  • 混雑する列車は混雑率120%~150%の車両が多い
  • 前よりの車両はやや空いている

詳細は以下の章で記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は新宿方面と千代田線(都心)方面からの流動が合わさる代々木上原で観察しました。

金曜深夜の小田急電鉄の混雑状況の生データ

写真5. 各駅停車は空いている(これは8両編成)

まず、混雑状況の生データを示します(表2)。

表2. 金曜深夜の小田急電鉄の混雑状況(生データ)

※快速急行とほぼ同時の発車だったため、21:47発準急向ヶ丘遊園行きは一部の号車は観測できず。当該の号車は前後からの推定値を記録(斜字で表記)

種別による混雑の差はありますが、全体として混雑していることがわかります。ただし、千代田線からの電車は比較的空いており、利用者の新宿志向がうかがえます。朝のラッシュ時は都心のオフィスに向かうのに千代田線を利用する人も、深夜は新宿の繁華街に寄るためかもしれません。

金曜深夜の小田急電鉄の混雑状況の分析

写真6. 千代田線からの急行(左)と新宿始発の快速急行(右)が並ぶ

生データだけでは不親切でしょうから、親切で有名な私は混雑状況を分析いたします(やさしー)。

生データでは混雑ポイント(=観測しやすい)を導入していますが、解析では混雑率に変換し、それを計算することにしています。これは混雑ポイントが順序尺度(160ポイントが80ポイントの2倍にならない)に対し、混雑率が比例尺度(160%は80%の2倍)であり、統計処理をしやすいためです。

復習:深夜の小田急電鉄のダイヤパターン

混雑状況を解析するにはダイヤパターンの理解が不可欠です。そのため、簡単に小田急線のダイヤパターンを紹介します。

平日の深夜時間帯は20分サイクルで以下の構成です。

  • 快速急行:2本、新宿-藤沢と新宿-小田原が1本ずつ
  • 急行:2本、新宿-唐木田と千代田線-伊勢原が1本ずつ
  • 各駅停車:2本、新宿-本厚木が基本だが、周辺状況で行先は異なる場合あり

10分に快速急行1本、急行1本、各駅停車1本という陣営です。このほかに特急が入ることもあります。

ただし、深夜時間帯ということもあり、(翌朝の運用を考慮するためか)変則的な場合もあります。例えば、急行のかわりに準急が設定される時間帯もあります。また、新宿断面で22:30以降は快速急行の運転がなくなり、小田原方面の急行が主体となります。

種別ごとの混雑状況

では、その種別ごとの混雑状況はどうなのでしょうか(表3、図1)。

表3. 種別ごとの混雑状況

快速急行が混雑しており、各駅停車は空いています。準急は各駅停車よりも空いていますが、補助的な種別であったり、新宿発着ではない(準急は千代田線直通)ことからと説明できます。

急行もそれなりに混んでいます。千代田線からの急行が空いているため、平均値をとると空いているのです。

図1. 種別ごとの混雑状況

図でも示してみました(図1)。こうすると混雑状況の違いがわかりやすいと思います。なお、新宿始発の急行は平均117%、千代田線始発は平均76%でした。

最混雑列車と混雑分散の分析

最混雑列車は22:36発急行唐木田行きでした。当該列車は(比較的空いていると予想できる)多摩線系統ですが、以下の通り、混雑する要素がありました。この列車の分析によって他の傾向も見えてくるので、混雑する理由を探りましょう。

  1. 直前の速達列車と11分も間隔が開いているために乗客が集中
  2. この直後に速達列車が設定されていれば混雑は分散するが、直後の速達列車も10分後と分散しにくい
  3. 比較的空いている多摩線系統であるが、新百合ヶ丘で各駅停車本厚木行きに接続し、本厚木まで先着(町田方面の乗客も利用する)

1については、単純な傾向です。利用者はランダムに駅にやってきますから、列車間隔が開いていると混雑します。そのため、前列車間隔が5分の場合よりも前列車間隔が10分の場合のほうが混んでいるのです。

2については、もう少し難しい傾向です。もしも2分続行で発車し、先発列車が吊革をつかめるくらいの混雑、次発列車がそれなりに余裕がある場合、利用者は次の列車に乗ります。そのため、混雑が分散します。この傾向は21:55発快速急行藤沢行きと、21:57発急行唐木田行きで見ることができます。

では、20分後の22:15発快速急行唐木田行きと22:17発急行唐木田行きでは混雑が分散していません。これはなぜでしょうか。これは千代田線の時刻表を見ると納得できます(表4)。

表4. 千代田線との接続状況

千代田線の代々木上原到着時刻を見ると、21:52、21:56と22:00と続きます。21:52着は21:55発快速急行に接続し、21:56着は21:57発と接続します。このように千代田線の接続状況は1:1となり、混雑が分散します。一方、20分後の千代田線の代々木上原到着時刻は22:09、22:14、22:20と続きます。そのため、22:14着から接続するのは22:15発快速急行であり、22:17発急行に接続はありません。したがって、(接続を受ける千代田線のない)22:17発急行は比較的空いているのです。

時間帯別の混雑状況

では、混んでいる時間帯と空いている時間帯はあるのでしょうか(表5)。

表5. 時間帯別の混雑状況

先に20分サイクルと記しましたので、その単位で区切りました(時間帯の区切りを間違えると、快速急行が多い時間帯と各駅停車の多い時間帯が登場し、種別ごとの混雑状況を反映する可能性がある)。

時間帯が遅くなるにつれて混雑している様子がわかります。これは利用者の多さもさることながら、22:30を過ぎると快速急行が間引かれるという要因も大きいでしょう。このことによって、数少ない速達列車に乗客が集中するのです。

利用者の1人としてはあまり遅くならないうちに帰宅するのが得策と思いますが、金曜の夜の用事は相手がある(飲み会など、下記コラム参照)ことですので、そうもいかないのが実態でしょう。

わかりやすくするために、グラフにも示します(図2)。

コラム.相手がいるから時間を制御できない?

上で「金曜の夜の用事は相手があることです」と述べました。これがどういうことか、シチュエーションをでっち上げて説明しましょう。

太郎(小田急線沿線住民)は金曜夜に合同コンパに出席していた。相手の女性陣とも意気投合し、2次会にも出席した。時刻は22時を過ぎ、ある程度親密になってきたころであった。太郎は「この時間を過ぎると電車が混むから、もう帰ります」と発言した。この発言に花子は「私たちよりも電車が大切なの?」と顔をしかめた。

事情が「終電がある」「翌日の用事がある」といった理由はともかく、電車の混雑ごときで会を抜けるのは非常識というものでしょう。

号車ごとの混雑状況

では、号車ごとの混雑状況はどうでしょうか。8両編成は10両編成の3~10号車として集計してみました(図3)。

図3. 号車ごとの混雑状況

1号車~3号車が空いている傾向にあります。これは新宿での階段位置が影響していると推定できます。新宿のメインの改札は10号車(進行方向後ろより)にあり、1号車よりにはありません。近年は南口エリアの開発も進み、以前ほどメインの改札の重要性は落ちていますが、やはり10号車よりが混雑します。

ただし、千代田線からの直通(=新宿の改札の影響を受けない)が中央よりの車両が混んでいることにも着目する必要があります。代々木上原発車時点で千代田線からの乗客も合わさるので、代々木上原での乗りこみは中央よりに集中すると読み取れます。

つまり、新宿での10号車よりに集中するという傾向と千代田線の中央よりに集中するという傾向が合わさり、それなりに分散しているとも評価できます。

混雑状況からダイヤを考える

写真7. 古豪8000形に乗りこむ乗客

混雑状況からダイヤを考えてみましょう。各駅停車の10分間隔は適正でしょう。快速急行や急行の混雑が激しく、これを緩和したいところです。

全体的に快速急行を増発することも魅力的です。例えば、20分に2本の快速急行ではなく20分に3本に増発するということです。そうすると、複線区間のダイヤが過密になり、所要時間が増加する可能性があります(複々線区間を中心に120km/h運転、駅進入時の停止定位を中止などでリカバリーできるとは思いますが)。あるいは快速急行の直前に新宿始発の急行向ヶ丘遊園行きを設定し、露払いするのも効果的でしょう。

とはいえ、これはダイヤパターンを大幅に変更することになり、変更のリスクもありましょう。ただし、最混雑列車の22:36発の急行唐木田行きの混雑を分散できないでしょうか。

急行唐木田行きの直前には特急が設定されています。このため、直前に露払いの電車を設定することは難しいです。やるにしたら千代田線からの電車でしょうが、新宿志向の深夜時間帯にはナンセンスです。そうであれば、直後に急行本厚木行き(新百合ヶ丘から各駅停車、本厚木まで先着)を設定し、町田方面はこの列車にシフトするのも手です。この場合、新百合ヶ丘以遠は各駅停車本厚木行きのスジとしますので、当該の各駅停車は新百合ヶ丘止めとします。この急行本厚木行きは金曜のみの臨時列車とし、(深夜時間帯が混まないと予想される)他の平日は現状で良いでしょう。

小田急の混雑に関する記事

写真8. 不審に思ったら110番!(この写真を撮り駅にたたずんでいた私は不審者か?)

ここまで特定の駅での混雑という「狭くて深い」情報をお伝えしました。では、小田急電鉄の混雑をまとめた「浅くて広い」情報はないのでしょうか。そのような声にお応えし、以下の記事を用意いたしました。

小田急線(混雑基本データ)

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