東急東横線と目黒線。これらは別系統として知られていますが、実はダイヤ上は連携を取っています。それも目黒線各駅停車を東横線各駅停車として活用できたり、東横線各駅停車を目黒線各駅停車として活用できたり、という連携です。そして上り限定ですが、目黒線各駅停車の驚くべき活用方法を紹介します。
写真1. 東横線特急と目黒線各駅停車が並走し、接続をとる様子
東横線と目黒線の関係
もともと、東横線は首都圏屈指の混雑路線であり、目蒲線は比較的空いている路線でした。そこで、東急は目蒲線のうち、都心側の区間(目黒-多摩川)を改良の上、都心直結用の路線として整備し、東横線の改良区間(多摩川-日吉)と合わせて目黒線としました。目蒲線時代に重複していた区間(田園調布-多摩川)を含めた田園調布-日吉が東横線と目黒線の並走区間です(図1、Excelではこの程度が限界です)。
図1. 東横線と目黒線の関係(田園調布-日吉以外は主要駅のみ掲載)
実際には東横線は副都心線と直通しているので、東横線から新宿三丁目(新宿駅東側地区の繁華街)や池袋(とはいっても西の外れですけど)に直結します。また、目黒線は南北線と三田線に直通していますので、南北線の永田町や飯田橋、三田線の日比谷や大手町なども直結しています。
東横線と目黒線のダイヤ確認
東急線と目黒線のダイヤを軽く復習したあとに、接続のようすを確認しましょう。
東横線のダイヤ
直通先の兼ね合いもあり、厳密には60分サイクルです。ただし、渋谷-横浜は15分サイクルと考えて特に問題ありません。内訳は特急1本、急行1本、各停2本(半分は渋谷折り返し)です。厳密には池袋-菊名の各停が30分間隔で挿入されますが、単純のためにひとまず無視することにしましょう。
目黒線のダイヤ
直通先の兼ね合いもあり、厳密には60分サイクルです。ただし、目黒-日吉は15分サイクルと考えて特に問題ありません。内訳は急行1本、各停2本です。変則的なのは、各停が三田線直通と南北線直通が交互に来るのではなく、2本連続ということです。目黒線の乗客の多くは目黒乗降客(のように見えます)ですので、目黒線内のみの利用であれば直通先は関係ないというのが実態でしょう。
東急線列車と目黒線列車の接続風景
東横線と目黒線は並行しています。目黒線各停を東横線の特急や急行に接続させれば、渋谷へのチャンネルが強化されます。また、東横線各停を目黒線急行に接続させれば、目黒へのチャンネルが強化されます。このような接続がどのように実施されるのか確認しましょう。
目黒線各停を東横線各停のように利用する例
武蔵小杉の平日の12時台の発車時刻を示します(表1)。
表1. 武蔵小杉での接続状況
上り・下りともに東横線の特急と目黒線の各停が連絡していることがわかります。例えば、12:03発の下り特急で武蔵小杉に到着すると、同一ホームの反対側に目黒線の各停がいます。逆に、12:03発の下り各停から東横線の特急に乗り継ぐことも可能です。
このことで、以下のことが実現可能です。
・目黒線の各停を東横線の各停のように利用可能(渋谷方面-元住吉・日吉)
※元住吉・日吉間の行き来の際、自由が丘で連絡する各停を選択するよりも短い所要時間で移動することが可能です。時間にして3、4分ですが、それでも所要時間は短いほど良いのは確かでしょう。
・目黒方面から東横線の特急にリレー可能(目黒方面-横浜方面)
※当該の目黒線各停は急行に抜かれない。ただし、急行と比較して5分程度時間がかかります。
このような関係は上りでも成立します。
写真1. 武蔵小杉付近で東横線特急と目黒線各停が並走する光景(東横線特急から撮影)
次に、東横線の急行と目黒線の各停の接続を見てみましょう。例えば、12:00に東横線急行と目黒線各停がきちんと接続しています。しかし、上りはややずれており、接続関係が成立しません。ただ、このような接続関係は田園調布で成立しています(急行は武蔵小杉以外にも停車するので、リレーは武蔵小杉で行う必要はありません、写真2)。この接続によって、急行通過駅から渋谷までのスムーズなアクセスが可能なのです。
写真2. 田園調布での接続劇
東横線と目黒線の接続状況
・下りは東横線急行-目黒線各停のリレー関係は渋谷方面-元住吉のみで成立
・上りは目黒線各停-東横線急行のリレー関係は元住吉・新丸子-渋谷方面で成立
当該の下り目黒線各停を多摩川で1分余計に停車させれば、多摩川で東横線急行と目黒線各停が接続できますが、目黒線の所要時間が増加したことを嫌って下りの接続駅を武蔵小杉としたのでしょう。
東横線各停を目黒線各停のように利用する例
最後に、目黒線急行と東横線各停の関係を見てみましょう。下りは目黒線急行が発車する1分前に東横線各停が発車するため、接続できないように見えます。しかし、目線を田園調布に向けると同時刻に発車しており、接続関係が成立しています。上りについても田園調布で接続しています(写真3)。目黒線の急行が東横線の各停よりも所要時間が多いのは何となく納得できませんが…。
写真3. 田園調布での接続劇
菊名折り返しの役割
最初のほうで池袋-菊名の区間列車について省略しましたが、本当に役割はないのでしょうか。上下方向で考察します。
下りについては、田園調布-日吉で他の列車との接続はありません。元住吉で特急を待ちますが、この間に目黒線の各駅停車には抜かされません。
上りについては、元住吉で特急を待つ間に目黒線の各駅停車に抜かされます。この目黒線の各駅停車は武蔵小杉で特急に接続します。そのため、東横線各駅停車-目黒線各駅停車-東横線特急の順にリレーできます。日吉以遠の特急通過駅の綱島と大倉山から渋谷方面への速達リレーに目黒線の各駅停車を活用できるのです。
上で菊名折り返しの役割について述べました。では、実際の様子を見てみましょう!
大倉山に来てみました。ここから各駅停車池袋行きに乗ってみましょう。
写真3. 先発の各駅停車池袋行きは元住吉で通過待ち
先発の各駅停車池袋行きは元住吉を後の特急を待ち合せます。普通に考えれば、後の特急に乗りかえることは不可能です。
写真4. 各駅停車池袋行きがやってきた
その各駅停車池袋行きがやってきました(写真4)。東急車での登場です。今回の目的としては、どこの車両だろうが構いませんが、東武車や西武車がやってきたら混乱します(東横線の各駅停車は8両編成ですが、東武車や西武車は10両編成のため)。
写真5. 元住吉で目黒線各駅停車がやってきた
乗った各駅停車は元住吉で特急の通過待ちを行います。通過待ちの最中に目黒線の各駅停車がやってきました(写真5)。今回は三田線直通ですが、南北線直通であっても結果は同じです。
写真6. 目黒線と東横線がとまっている
目黒線(左)と東横線(右)がとまっています(写真6)。
写真7. 目黒線がまもなく停車
目黒線がまもなく停車します(写真7)。この乗りかえは日吉でも可能ですが、日吉だとホームの位置が異なり、乗りかえには不便です。そのため、乗りかえは元住吉のほうが良いです。
写真8. 東横線の特急と並走する
目黒線の各駅停車が元住吉を出るとすぐに左手に東横線の特急がやってきました(写真8)。あちらもなかなかの速度ですが、こちらもそれなりの速度を出します。素晴らしきデットヒート!
写真9. 武蔵小杉に到着直前
武蔵小杉に停車する直前です。やはり東横線の特急と並走しています(写真9)。これならば目黒線各駅停車-東横線特急の乗りかえが可能です。
写真10. 特急に乗りかえが可能
武蔵小杉に到着しました。特急が目の前で停車しており、乗りかえが可能です(写真10)。
このようにいわば「捨て目黒線」をはさむことにより、不可能と思われていた元住吉待避各駅停車から特急に乗りかえることに成功しました。このようなパターンは上りのみの展開です。
東横線と目黒線の接続風景まとめ
いずれの例も目黒線の各停を東横線の速達列車に連絡させたり、東横線の各停を目黒線の速達列車に連絡させることで、並走区間の小駅から渋谷や目黒への所要時間を1分~5分短縮しています。
いずれに挙げた接続関係も東横線と目黒線のどちらかが少しでも遅れると不成立となり、安定的にできるものではありません。実際、別日に乗車した日も東横線が少し遅れていたため、接続劇を拝見することはかないませんでした。
コメント
> 厳密には新宿三丁目-菊名の各停が30分間隔で挿入されますが、今回の考察には関係ないので、無視することにしましょう。
この列車(2019年改正で池袋発着になりましたね)こそが併走区間最大の醍醐味なのに勿体ない!!
菊名始発の各停池袋行きは、元住吉でFライナーの通過待避を行います。つまり大倉山と綱島から各停に乗り渋谷方面に急ぎたい乗客は、前を走るFライナーに乗り換えられず、自由が丘でも急行との接続がないため、渋谷まで各停に乗り続けなければなりません。
しかし元住吉での待避中、向かい側のホームに目黒線各停が到着します。この目黒線各停は武蔵小杉でFライナーと接続します。つまり、元住吉で目黒線に乗り換え、武蔵小杉で東横線に戻ることで、さっき逃げられてしまったはずのFライナーに乗ることが可能になるわけです。
「大倉山(菊名始発各停)元住吉(目黒線各停)武蔵小杉(Fライナー)渋谷」という乗り換えが先着になる。これはぜひ実際に生で味わってみてほしいです。
きくなちゃん、丁寧でわかりやすいコメントをありがとうございます。
目黒線各駅停車を媒介として、菊名発着各駅停車と東横線の特急が武蔵小杉で接続するのですね!確かに最大の醍醐味ですね。手持ちの東京時刻表で確認し、さっそく本文に加筆いたしました。もちろん東横線と目黒線が定時運行していることが前提ですが、大倉山、綱島から渋谷まで各駅停車乗りとおしと特急利用では、8分も到着時間が異なるので、これを知っていることと知らないことはだいぶ違いますね!
下りで同様のオペレーションが成立しないのがつくづく残念です。