湘南新宿ラインの周辺需要の取り込み:東武特急と新駅設置

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池袋での東武日光の表示(2015年8月)

写真1. 池袋の湘南新宿ラインホームに表示された日光行き

当初、湘南新宿ラインは新宿-横浜の連絡を主目的としたのものでした。2004年10月ダイヤ改正でとりあえずこの体制は確立されたものとなります。新宿、横浜ともに多くの利用客を誇るものの、東京とその周辺のボリュームからすると、そこまで割合は高くありません。逆にいいますと、周辺需要を取り込むことができれば、さらなる乗客増加が見込まれるのです。以下の記事では、そのような周辺需要を取り込むための取り組みを見てみましょう。

このページの概要(目次、タップできます)
  1. 東武特急の新宿乗り入れ
  2. 武蔵小杉への停車
  3. 浦和への停車

東武特急の新宿乗り入れ

有名観光地、日光。そこには2種類の鉄道が乗り入れています。1つがJR、もう1つが東武。大昔、この両者による乗客争奪戦が繰り広げられてきました。この詳細は省略しますが、結果としては東武の圧勝に終わります。

JR日光駅から眺める東武特急

写真2. JR日光駅構内から東武線を眺める

ローカル列車がたまに発着するJRの日光駅構内から、特急が行き交う東武線を眺めるこの光景こそ、観光地日光へのアクセスの主体が東武に移行したことを示す光景でしょう(写真2)。

しかし、そんな東武にも弱点がありました。始発駅が浅草だったのです。戦前こそ浅草や上野は東京の中心地ともいえる立地でしたが、新宿を中心とする山手線西側の発展に伴い、相対的な地位が低下してしまいました。浅草は新宿や池袋から鉄道で1本で向かえず、渋谷からも地下鉄の端から端まで行くほどの距離でした。そのため、これらからのアクセスも良くないことも弱点の1つでした。新宿などのアクセスが悪いということは、新宿からの私鉄から浅草へのアクセスが悪いことも意味します。
サブターミナルとして北千住も活用していましたが、新宿へのアクセスが悪いことも同様でした。

これらの問題を解決するための簡単な方法は、東武特急を新宿から発車させることです。しかし、東武線の線路から新宿へは直通できません。JRが新宿からの直通快速を走らせましたが、宇都宮で向きを変えねばならないこと、宇都宮から日光まで単線であること、JRでは鬼怒川温泉に向かえないことから、主流となりませんでした。

ここで湘南新宿ラインが着目されました。湘南新宿ラインの経路を利用すると、栗橋までたどれます。栗橋で東武とJRの乗り換えが可能です。もし、ここで線路をつなげれば新宿から日光まで直結できます。そのような発想で栗橋駅構内でJRと東武の線路がつながりました。車両は東武側は従来の100系電車、JRは改造車を使用しました。このとき、JRも東武も手持ちの車両で何とかして、あまり費用をかけたくなかったのでしょう。

このような舞台裏はありましたが、2006年3月のダイヤ改正で新宿から日光・鬼怒川までの直通特急が運転開始となりました。
具体的には、以下のダイヤで運転されました。本数は2017年現在も変更されていません。

表1. 運転開始直後のダイヤ

2006年ダイヤ改正 JR-東武直通ダイヤ

2017年のGWには臨時列車が1日当たり2往復が設定されています。場合によっては、新宿経由八王子や千葉発着も設定されています。多路線を行くという理由のためか、2006年ダイヤ改正から本数は増加していません。このように、広い意味で湘南新宿ラインのネットワークが拡大したのです。

武蔵小杉への停車

近年、南武線や横浜線、あるいは武蔵野線の躍進は目覚しいものがあります。これは大きな意味で東京が膨張しているためでしょう。私も仕事の都合で平日の朝に南武線や武蔵野線に乗車しましたが、いわば混雑方向と逆方向でも混んでいることが印象に残りました。

ところで、湘南新宿ラインは武蔵小杉付近で南武線と交差しているものの、駅は存在していませんでした。南武線沿線から渋谷方面に向かう乗客は、その武蔵小杉で東急に乗り換えていました。南武線自体のポテンシャルが上昇しているにも関わらず、その乗客をみすみす東急に渡すわけにもいかないでしょう。そのような意図があったのでしょう。武蔵小杉に横須賀線にホームを設置する工事が進められました。その工事の大方が完成した2010年3月ダイヤ改正で横須賀線に武蔵小杉が開業しました。この区間は湘南新宿ラインも通っていましたので、湘南新宿ラインも武蔵小杉に停車することとなりました。

このとき、隣の西大井や新川崎を通過する快速や特別快速さえも停車したのです。武蔵小杉から新宿までは最短18分、渋谷までは最短13分で直結するようになったのです。従来は川崎を経由する経路で運賃を計算していましたが、武蔵小杉-品川を短絡する経路が完成したことから、一部の駅から都内までは運賃値下げがなされました。これは見方を変えると、湘南新宿ラインのネットワークが南武線沿線まで広がったことを意味します。ただし、武蔵小杉に停車した影響か新宿-横浜の所要時間が最短27分から最短29分に伸びたのは非常に残念です。新宿-大崎でもう少し速度が出せれば良いんですけどね。

ともかく、武蔵小杉に横須賀線と湘南新宿ラインが停車してからは武蔵小杉の利用客は伸びました。2009年度(開業効果はほとんど出ていないでしょう)は約76000人だったのに対し、2015年度は約124000人と伸び率はすさまじいものがあります。また、武蔵小杉そのものの人気が上昇しているようです。こうした意味で武蔵小杉への停車は大いに意味のあることだったのでしょう。

浦和への停車

湘南新宿ラインは赤羽-大宮間はノンストップでした。宇都宮・高崎線は長いあいだ途中の浦和に停車していたのでしたが、湘南新宿ラインが経由する貨物線には浦和にホームがなかったので、通過していたのです。当初は池袋発着でしかなく、それも増発扱いだったので問題とはなりませんでした。それが新宿延長となり、上野発着列車の振替を伴うと、浦和と埼玉県内の行き来が不便になってしまいました。埼玉県内から浦和に通勤する人が意外と多いのです。私が所用なり趣味なりで宇都宮・高崎線に乗車した際に驚いたものです。考えてみれば、浦和そのものは駅前にデパートがあったり、埼玉県の県庁があったりと決して小さな街ではないのです。

そこで、浦和駅構内立体化を実施するタイミングに合わせて貨物線、すなわち湘南新宿ラインの線路にホームを設置したのです。2013年3月ダイヤ改正のことでした。同時に新宿発着の東武特急も浦和に停車したのです。

ただし、このダイヤ改正で新宿-大宮の所要時間が30分から32分に伸びてしまっています。池袋から中里トンネルまでの速度が遅い(並走する山手線に抜かされることもある!)ので、この区間を少しでも速度を上げて所要時間の伸びをおさえて欲しいものです。速く走っている区間をさらに速く走るようにするよりも、とても遅く走っている区間をそれなりの速度で走るようにしたほうが、所要時間短縮には寄与するのです。

ともかく、埼玉県の主要な街である浦和に湘南新宿ラインが停車するようになり、湘南新宿ラインのネットワークはさらに広がったのです。私は成田エクスプレスも浦和に停車させれば良いと思いますが、本稿の範囲外ですかね。

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