ダイヤ改正後の東急田園都市線を観察する

記事上部注釈
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2021年3月、東急田園都市線のダイヤパターンが刷新されました。30分の約数のサイクルを採用してきた東急電鉄では珍しく、20分サイクルを採用したこともあり、世間の注目度は高いです。そんな田園都市線のダイヤを堪能しました。

東武50050系(渋谷)

写真1. 今回のダイヤ改正では準急が台頭した(渋谷で撮影)

復習:日中のダイヤパターンの変化

2021年3月の田園都市線のダイヤは大幅に変わりました。従来の30分サイクルから20分サイクルに変更するとともに、本数も毎時14本から毎時12本に減少しています。2014年6月のダイヤ改正前は渋谷断面で毎時12本でしたので、それに戻る格好です。

田園都市線日中時間帯パターン

図1. 東急田園都市線のパターン変化

ダイヤ改正前は渋谷発着の急行が毎時4本、準急が毎時2本でした。これを急行、準急ともに毎時3本ずつに変更されました。これによって、従来の30分サイクルから20分サイクルに変更されます。このため、大井町線の急行も毎時2本から毎時3本に変更されます。従来は大井町線内は急行が毎時4本設定され、うち半数は田園都市線直通でした。この毎時4本の急行が毎時3本に変更されたうえで、大井町線内折り返しの急行がなくなった格好です。

従来、渋谷を通る各駅停車は毎時8本あり、うち毎時2本は渋谷折り返しで地下鉄半蔵門線には入りませんでした。そのため、下りにおいては他の各駅停車よりも利用が少なく、上りは続行の準急が半蔵門線内で混んでいるという事態が発生していました。そのようなアンバランスさを是正するために、渋谷発着の各駅停車が廃止されました。

これだと渋谷から二子玉川の比較的利用の多い区間で各駅停車が毎時6本しかやってきません。そのような状況を考えて、渋谷発着の速達列車をすべて急行にするのではなく、半数を準急にしたのでしょう。こうすれば、渋谷-二子玉川では20分に3回の乗車チャンスが確保できます。また、二子玉川-溝の口では毎時6回しか乗車チャンスがないように思いますが、準急と接続する格好で大井町線の各駅停車が二子新地と高津に停車します。これを活用すれば、二子玉川-溝の口でも毎時9回の乗車チャンスが確保されることになります。

二子玉川-中央林間では20分に3本の速達列車がやってきます。うち1本は大井町発着で渋谷を通りません。しかし、二子玉川で渋谷発着の各駅停車に連絡します。この乗りつぎを活用することで、渋谷から中央林間までは20分に3回の乗車チャンスが確保されることになります。

従来は長津田で折り返す各駅停車がありましたが、今回のダイヤ改正ではそのような設定はなくなりました。長津田-中央林間は準急が各駅にとまりますから、各駅停車は20分に1本で良いはずです。そして、各駅停車が中央林間まで運転されているせいで、下りの急行は2分余計に時間がかかっています。急行は毎時19分(※)に中央林間に到着します。大井町線の急行の所要時間から類推すると、毎時17分に着くことも可能です。しかし、毎時16分発の各駅停車が存在するために、毎時17分に着くことができません。この各駅停車を廃止すれば、毎時17分に中央林間に着くことができ、急行の所要時間が41分から39分に短縮できるのです。

※39分と59分もありますが、簡単のため毎時19分の電車のみを取り上げます。以下、同様に取り扱います。

なお、朝夕も含めた詳細な解析については、以下の記事をご覧ください。

2021年3月の東急田園都市線のダイヤ改正を探る

2021年3月に大幅にダイヤが見直された東急田園都市線。世間では終電の繰り上げが話題となりましたが、日中時間帯のダイヤパターン刷新など、他にも注目点があります。そんな田園都市線のダイヤを解析してみました。

実際に田園都市線のダイヤを堪能する

今回、多くの列車を体験するという意味で、1本の列車に固執せずに複数の列車を堪能しました。時系列で紹介することにしましょう。

渋谷と二子玉川の様子

写真2. 渋谷を5分間隔で発車!

下りは渋谷を5分間隔で発車するダイヤに改められました(写真2)。渋谷断面で毎時18分に急行が発車、毎時28分に準急が発車。そして、各駅停車は毎時23分と33分に発車です。毎時33分の各駅停車は桜新町で急行の通過待ちを行い、毎時23分の各駅停車は二子玉川で大井町線急行を待ち合わせます。

急行や準急は押上始発、各駅停車は東武線からの直通です。とはいえ、曳舟以遠-池尻大橋以遠の相互間の利用はそこまで多くないでしょうから、始発駅の組み合わせはそこまで議論の対象にはならないでしょう(東武線からの利用客の大方は渋谷までと予想されます)。

なお、上りは渋谷で最大4分間の時刻調整が発生しています。渋谷で乗客の大多数が入れ替わるとはいえ、やや残念なダイヤです。下りと同じパターンにしなかったのは、下りは渋谷を急行と準急を合わせて10分間隔で発車する点に、上りは長津田-溝の口の急行停車駅で(大井町線急行を含めて)速達列車を等間隔に近い間隔で運転することに重きを置いたためでしょう。

さて、急行の直後にやってくる各駅停車に乗り、二子玉川までやってきました。渋谷では立ちもいた車内が徐々に空いていき、二子玉川到着時には座席の半分程度しか埋まっていなかったように記憶しています。田園都市線の渋谷-二子玉川は途中駅でも利用が多いことを改めて実感しました。

写真3. 各駅停車が二子玉川に到着!

各駅停車が二子玉川に到着しました(写真3)。理論上、この各駅停車は大井町線の急行に連絡します。と思ったら、大井町線の急行はやってきません。実際は毎時18分に各駅停車が二子玉川に到着し、毎時19分に大井町線の急行がやってくるので1分間の余裕があるのです。

写真4. 大井町線の急行が到着!

大井町線からの急行が到着しました(写真4)。ここで乗りかえ時間が1分あり、同時到着よりもややロスタイムがあるように思えます。しかし、大井町線急行は7両編成で、田園都市線の各駅停車の10両編成より短いです。そのため、10号車から乗りかえようとすると、3両ぶん歩かなければなりません。その60mの歩行時間に1分という乗りかえ時間はぴったりなのです。

写真5. 多くの乗客が乗りかえる

多くの乗客が乗りかえます(写真5)。大井町線急行が混んでいるのに編成が短く、田園都市線の各駅停車が編成が長いのに空いているという光景が確認できます。

この光景を眺めると、大井町線急行(7両編成)-田園都市線各駅停車(10両編成)という組み合わせよりも、大井町線各駅停車(7両編成、大井町線内急行運転)-田園都市線準急(10両編成)という組み合わせも一案と思ってしまいます。でも、そうしないのは、田園都市線の各駅から渋谷に直通するのが20分に1本になるのはまずいという判断や、大井町線急行の利便性をRPしたいという意図があるのでしょう。

なお、大井町線急行と田園都市線の各駅停車は同時には発車せず、田園都市線の各駅停車は2分待ってから発車します。これは大井町線急行が二子玉川発車後すぐに田園都市線の線路に入るためです。大井町線急行が溝の口手前まで大井町線の線路を走るのであれば、田園都市線の各駅停車はすぐに発車でき、後続の準急ももう少しスピードアップできます。

写真6. 大井町線各駅停車がやってきた

上りの大井町線各駅停車が渡り線を渡ってきました(写真6)。基本的に大井町線の電車は二子玉川-溝の口で大井町線の線路(二子新地と高津にホームはない)を通りますが、一部の各駅停車は田園都市線の線路(二子新地と高津にホームがある)を通ります。その各駅停車がやってきたのです。なお、この各駅停車がやってきた直後に田園都市線の準急がやってきますが、写真に残し忘れました。

さて、二子玉川から溝の口まで大井町線の各駅停車に乗ります。

写真7. 大井町線の発車案内

写真8. 田園都市線の発車案内

大井町線と田園都市線の発車案内を撮影してみました(写真7、写真8)。すると、12:10発の田園都市線急行と大井町線各駅停車があることに気づかされます。田園都市線から大井町線に接続する意味はありませんが、逆であれば意味があります。では、実際はどうでしょうか。

写真9. 田園都市線の急行がやってきた

田園都市線の急行がやってきました(写真9)。このときには大井町線各駅停車はまだ姿も見えません。

写真10. 田園都市線の急行が発車した

田園都市線の急行が発車してしまいました(写真10)。ようやく大井町線各駅停車の接近放送が流れたように記憶しています。

写真11. 大井町線各駅停車がやってきた

大井町線各駅停車がやってきました(写真11)。ここからわかるように、二子玉川では大井町線各駅停車から田園都市線急行への乗りかえは不可能です。この各駅停車に溝の口まで乗りましたが、溝の口ではかろうじて接続されました。大井町線各駅停車が到着したときには、田園都市線急行は発車間際で、走れば間に合うという感触です。この接続のおかげで、大井町から中央林間までは20分に3本の乗車チャンスが確保されていることになります。

準急の通過待ちを堪能する

二子玉川-中央林間は速達列車3:各駅停車2の割合で運転されます。また、この間で緩急結合が可能な駅は、鷺沼と長津田です。速達列車の本数が各駅停車よりも本数が少ない時代は、この2駅で待ち合わせを行うことが約束されていました。しかし、速達列車の本数が多いと、各駅停車はこの2駅以外でも速達列車を待つ必要があります。そのような背景から、日中時間帯でも梶が谷と江田で各駅停車が準急の通過待ちを行うダイヤに変更されました。

なお、急行は従来通り、鷺沼と長津田で各駅停車に連絡します。

写真12. 休日の発車時刻表(溝の口)

時刻表が掲載されていました(写真12)。二子玉川には掲出されておらず、サービスの基本がなっていませんが、溝の口にはきちんと表示されており、合格点が与えられます。日中の各駅停車の表示を確認すると、DやらHやらの脚注があります。

写真13. 脚注の意味

時刻表の下側に脚注の意味が書かれていました(写真13)。Dは梶が谷で準急の通過待ち、Hは江田で準急の通過待ちという意味です。

写真14. 各駅停車がやってきた

各駅停車がやってきました(写真14)。溝の口断面ですでに2分後に迫っており、鷺沼まで逃げ切ることは困難です。次の梶が谷で準急を待ちます。

写真15. 梶が谷に停車した

梶が谷に停車しました(写真15)。溝の口は拠点らしい人の多さを感じましたが、隣の梶が谷は静かな住宅地という感じがあります。余談ですが、地名の表記は梶谷ですが、駅名は梶谷です。理由は知りませんが、東急の駅名は「ノ」や「ヶ」の類の表記は全てひらがな表記の「の」や「が」です。その原則にのっとって、梶が谷駅は梶谷と表記するのです。

写真16. 準急が通過

準急が通過します(写真16)。東急田園都市線は8500系がしぶとく残っているような印象があります。

写真17. 準急が通過した

準急が通過しました(写真17)。

写真18. 江田に到着!

鷺沼で1本後の各駅停車に乗り移り、江田に向かいました(写真18)。鷺沼で大井町線急行を眺めましたが、意外と混んでいる印象がありました。ダイヤパターンが変わろうとも、大井町線急行が田園都市線の速達列車として機能している面は変わりません。ある意味、田園都市線の準急として機能しているのでしょう。

写真19. 準急が通過!

準急が通過します(写真19)。ここでも古豪の8500系のお出ましです。東急は新しい車両が多い印象がありますが、8500系は例外といえましょう。最近は2020系が増備されていて、8500系の出番も減ってきているとも聞いています。

写真20. 準急が通過した!

準急が通過しました。この後、各駅停車を長津田で降り、急行に乗りかえましたが、急行は各駅停車よりも利用が多く感じました。準急だの大井町線急行だのが台頭していますが、やはり田園都市線急行は看板となる速達列車なのでしょう。

田園都市線のダイヤ改正まとめ

渋谷発着の減便が目立った2021年ダイヤ改正。数ある制約の中にありながら、最適なダイヤを模索する最大限の努力を感じることができました。しかし、渋谷断面よりも乗客の少ない中央林間断面ではより本数が多いなど、やや矛盾点も見つかるダイヤ改正です。

各駅停車の半数を長津田発着に短縮し、そのぶん田園都市線の急行をスピードアップ。また、二子玉川で転線する大井町線急行を溝の口で転線し、各駅停車の二子玉川での停車時間を削減し、そのぶん準急をスピードアップ。この2点くらいはすぐに実行いただきたいものです。

そして、多くの人が移動する世の中になり、鉄道が充実することを望みたいものです。

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