22年3月小田急ダイヤを眺める

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合理化が進んだ印象の2022年3月小田急ダイヤ改正。本数が減少した一方、スピードアップも図られています。その小田急の様子を初日に確認しました。

写真1. 町田で引上線に引き上げる様子

復習:小田急ダイヤ改正の概要

最初に小田急ダイヤ改正の概要をまとめます。

  • 朝ラッシュ時上りの特急ロマンスカーを3本増加
  • 日中の特急ロマンスカーの所要時間短縮
  • 日中の新宿-新松田の急行を町田-新松田に区間短縮のうえ、新松田-小田原の各駅停車に統合
  • 日中の準急を急行に変更
  • 夕方を30分サイクルから20分サイクルに変更し、各駅停車と千代田線直通をそれぞれ毎時2本減便

ここでの着目ポイントは日中時間帯の減便です。日中時間帯に余剰気味だった新宿発着の急行と千代田線直通準急を、千代田線直通の急行として統合しました。そうすると、相模大野-小田原の速達列車が20分間隔と半減してしまいます。これではサービスが大幅に低下しますので、町田-小田原の急行を別途設定し、本厚木方面の速達列車を20分に2本確保しました。もちろん、相模大野で新宿-藤沢の快速急行に連絡します。

ここでパターンを簡単にまとめましょう。

ダイヤ改正前の内訳(特急を除く)は20分あたり以下の本数です。

  • 快速急行2本(新宿-小田原1本、新宿-藤沢1本※)
    ※休日ダイヤでは新宿-片瀬江ノ島
  • 急行2本(新宿-新松田1本、新宿-唐木田1本)
  • 準急1本(千代田線-向ヶ丘遊園1本)
  • 各駅停車2本(新宿-本厚木)

ダイヤ改正後の内訳(特急を除く)は以下の通りです。

  • 快速急行2本(新宿-小田原1本、新宿-藤沢1本)
  • 急行2本(新宿-唐木田1本、千代田線-向ヶ丘遊園1本)
  • 各駅停車2本

ここで興味深いのは、急行の運転系統を新宿-唐木田、千代田線-向ヶ丘遊園という組み合わせとし、千代田線-唐木田と新宿-向ヶ丘遊園の組み合わせにはしなかったことです。輸送力調整という観点ではこの組み合わせでも良かったのですが、多摩ニュータウンと新宿の直結が重要と考え、新宿-唐木田が必須という考えになったのでしょう。

この変更で新宿-町田でスピードアップされています。ダイヤ改正前の下りの所要時間は快速急行で32分、特急で30分、そして上りは快速急行で33分、特急で34分でした。ダイヤ改正後の下りの所要時間は快速急行で30分、特急で27分、そして上りは32分~33分、特急で27分です。あとで実感したのですが、下りの登戸→新百合ヶ丘でゆっくり走ることがなくなったのが、大きく寄与しているのでしょう。

実際の様子を観察する

さて、実際の様子を観察しましょう。

ステージ1. 新宿から町田への快速急行

今回、スピードアップした快速急行に乗って新宿から町田に向かいましょう。

写真2. 新宿の発車案内

新宿の発車案内です(写真2)。従来は快速急行は毎時01分、11分、…と完全な10分間隔で発車していましたが、ダイヤ改正後は毎時01分、10分、と9分間隔と11分間隔の交互です。そして、急行が毎時02分、12分、…と続き、速達列車は2分間隔と8分間隔でしたが、ダイヤ改正後は急行は毎時12分、32分、52分だけです。快速急行が11分開く箇所に急行を挿入し、新百合ヶ丘までの快速急行停車駅は9分間隔を確保しようという意欲を感じます。

写真3. 急行唐木田行きがやってきた

急行唐木田行きがやってました(写真3)。上で「新宿発着の急行は20分間隔」と述べましたが、休日ダイヤでは新宿断面で10:00~12:00までは町田→新宿の急行が20分間隔で増発されます。そのため、ダイヤパターンはやや異なります。小田原からやってきた快速急行でしょう。

写真4. 新宿を発車!

新宿を発車しました(写真4)。快速急行は4番ホーム、急行は5番ホームから発車します。

写真5. 南新宿を通過!

各駅停車新宿行きとすれ違います(写真5)。各駅停車は空いているのに10分間隔が必要ですか?と言いたいところですが、意外と乗っています。

写真6. 代々木八幡を通過!

代々木八幡を通過します(写真6)。一部の人はこのあたりの駅を「都心部」と表記していますが、東京の都心の定義は千代田区、中央区と港区だけですので、渋谷区のこのエリアは都心部ではありません!

写真7. 代々木上原に停車!

代々木上原に停車します(写真7)。ここで千代田線からの乗りかえ客が乗りこみます。千代田線と小田急線のつながりは強いもので、代々木上原の乗りかえ客は多いです。

写真8. 代々木上原を発車!

代々木上原を発車しました(写真8)。ここから下北沢付近は地下線を走ります。私のようなマニアはずっと高架線を走るほうが楽しいのですが、そうもいかない事情もあるのでしょう。

写真9. 高架に出る

高架に出ます(写真9)。梅ヶ丘付近です。各駅停車が並びます。各駅停車に邪魔されずに走れることは複々線の恩恵の1つです。この複々線は登戸まで続きます。

写真10. 経堂を通過!

経堂を通過します(写真10)。ダイヤ改正前は急行と各駅停車または準急の接続があり、通過駅の千歳船橋と祖師ヶ谷大蔵への接続が確保されていましたが、今回は千代田線直通急行と各駅停車の接続駅が成城学園前に変わったことで、新宿から千歳船橋と祖師ヶ谷大蔵への乗車チャンスは3分間隔と17分間隔の交互になってしまいました。

千代田線直通急行に連絡する各駅停車を経堂で2分余計に停車させると、登戸での接続が確保されなくなります。これを解決するには、千代田線からの各駅停車を3分後に続行させるしかありません。

写真11. 複々線を走る

複々線を走ります(写真11)。細かなカーブがありますが、用地買収の苦労がしのばれます。ここまでの下り線とここからの上り線が直線になっています。ここまでは上り線側の用地買収ができ、ここからは下り線側の用地買収ができ、結果として中心線がずれてしまったのでしょう。

写真12. 速達列車とすれ違う

速達列車とすれ違います(写真12)。藤沢からの快速急行かな?1000形のリニューアル車が増えた印象があります。最新車両と同等の内装を実現しているので、乗客的には新車と同じです。

写真13. 各駅停車に追いつく

各駅停車に追いつきます(写真13)。ここで追い抜かしても、登戸で待つ結果になります。これは、都内の各駅と神奈川方面の行き来を考慮した結果なのでしょう。

写真14. 登戸に停車!

登戸に停車します(写真14)。ここでもそれなりの乗客が乗ってきて、乗客の流動は新宿一辺倒ではないことを知ります。徐々に役割が大きくなっている、南武線との流動もあるのでしょう。

写真15. 向ヶ丘遊園を通過!

向ヶ丘遊園を通過します(写真15)。ここに向ヶ丘遊園どまりの急行が停車していました。この急行を延長すると新百合ヶ丘で09分着の各駅停車、11分着の急行、12分着の快速急行と3分間に3本が連続することになってしまいます。これは無理な相談ですから、快速急行の到着時刻は後にずれてしまいます。このことで、快速急行の所要時間が伸びてしまいます。

写真16. 百合ヶ丘を通過!

百合ヶ丘を通過します(写真16)。2018年新ダイヤが施行された当日に乗ったときは読売ランド前から新百合ヶ丘までノロノロと走っていた記憶がありますが、減便の成果なのか、ノロノロ運転はありません。曲線が多いので爽快な速度は出しませんが、ストレスにはなりません。

写真17. 新百合ヶ丘に停車!

新百合ヶ丘に停車します(写真17)。減速信号が現示されていますが、これは先行列車に詰まっているわけではなく、駅停車時に停止信号が現示されているためです。他の鉄道会社ではこのようなことをやっている例は多くなく、小田急のスピードアップの大きな阻害要因です。小田急には細かな遅れが多いと聞きます。出発信号の停止定位をやめ、遅れ発生時の回復用のマージンとするのが良いと思います。

写真18. 新百合ヶ丘に多くの人が待っている

その新百合ヶ丘もホームに多くの人が待っています(写真18)。10両編成の速達列車が10分間隔で運転されているなかでの光景ということを思い出すと、改めて東京大都市圏のダイナミックさを感じます。

写真19. 小気味良い走りは続く

新百合ヶ丘を出発しても小気味良い走りは続きます(写真19)。減便によるスピードアップの効果はそれなりにあるのでしょう。上りがスピードアップされていないのは、各駅停車が町田から登戸まで逃げ切るために、速達列車が登戸手前で速度を落とすためです。これを解決するには、新百合ヶ丘での急行と快速急行の接続を中止することです。

写真20. 多摩丘陵を走る

町田の手前で多摩丘陵をウネウネと登ります(写真20)。

写真21. 新宿行きとすれ違う

新宿行きとすれ違います(写真21)。

写真22. 町田でも乗り降りが多い

町田でも乗り降りが多いです(写真22)。ここでも多くの人が待っています。横浜線と小田急線が接続し、町田も東京都でも有数の大都市であり、常に多くの人であふれています。

写真23. 町田に到着!

町田に到着しました(写真23)。

町田での折り返し

今回のダイヤ改正で、町田-小田原の急行が設定されました。新松田-小田原は各駅停車扱いとして走り、この各駅は6両編成までのホームです。このため、当該の急行は6両編成で走ります。

この急行の様子を見てみましょう!

写真24. 町田に急行が到着!

町田に急行が到着しました(写真24)。座席の半分も埋まっておらず、がら空きという表現がふさわしいです。満員で海老名を発車した急行でも、相模大野で快速急行に乗りかえて、町田まで乗る人が少ないのです。

写真25. 引上線に引き上げる

玉川学園よりの引上線に向かいます(写真25)。これにより、上り電車は上りホーム、下り電車は下りホームという原則を徹底できます。

さて、実際に引上線まで向かい、その様子を見てみましょう!

写真26. 町田どまりの急行がやってきた

町田どまりの急行がやってきました(写真26)。

写真27. ノロノロと踏切を進む

ノロノロと踏切を進みます(写真27)。町田のホームから引上線までは2つの踏切があります。

写真28. ノロノロと動く

ノロノロと動きます(写真28)。

写真29. 引上線に到着!

引上線に到着しました(写真29)。

写真30. 踏切ギリギリに迫る

6両編成であっても踏切ギリギリです(写真30)。これでは、区間運転の急行を8両編成や10両編成にすることはできません。

向ヶ丘遊園での折り返し

向ヶ丘遊園での折り返しの様子も確認しました。

写真31. 登戸よりから急行がやってきた

登戸よりから急行がやってきました(写真31)。小田急線内では基本的に「アルバイト運用※」はありませんから、小田急以外の車両がやってきたら、それは他社線直通列車です。

※アルバイト運用:他社線内で完結する列車に入る他社車両のこと。例えば、千代田線で完結する運用にJR車や小田急車が入ること。アルバイトのようにひと稼ぎすることが語源と思われる

写真32. 向ヶ丘遊園に停車!

向ヶ丘遊園に停車します。44分に急行が到着、48分ごろに快速急行が通過、50分に各駅停車が発車し、引上線に入るには下り本線を横断することから、これら2列車を待ってから引上線に入ります。

別のアングルから見てみましょう!

写真33. 向ヶ丘遊園で各駅停車と並ぶ

このように各駅停車と並びます(写真33)。2019年3月ダイヤ改正以前であれば、新宿発着の各駅停車は8両編成(※)ですが、今や10両編成の各駅停車は当たり前のように見つけられます。

※2018年ダイヤ改正で10両編成の各駅停車が登場しましたが、これは千代田線直通です。代々木八幡のホームが8両編成までにしか対応していなかったためです。

写真34. 引上線に向かって動き出す

引上線に向かって動き出します(写真34)。1番ホームという外側のホームから、内側の引上線に向かって動き、下りの本線を横断していることがわかります。

写真35. ノロノロと進む

ノロノロと進みます(写真35)。

写真36. 踏切はない

町田での引上げと異なり、踏切はありません(写真36)。

写真37. 引上線で待機!

引上線で待機します(写真37)。

写真38. 千代田線直通急行の表示

急行「千代田線直通」という表示があります(写真38)。

写真39. 急行我孫子の表示

急行我孫子の表示です(写真39)。我孫子は8番線まである大きな駅ですが(ただし8番線は休日ダイヤでは使わない)、小田急沿線住民にとってはなじみのない駅でしょう。その情報を補足するのが、千代田線直通という案内でしょう。綾瀬、北綾瀬、松戸、柏、我孫子、取手の位置関係がわからなくとも、千代田線に入ることさえわかれば、多くの人にとっては十分なのです。

写真40. 兄弟車と並ぶ

小田急4000形とJR車が並びました(写真40)。小田急4000形はJR車をベースに設計されたと聞きます。そのJR車との並びです。いわば兄弟車の並びです。

登戸での特急待避

従来、多摩線急行は特急に抜かれることはなく、新宿まで先着していました。しかし、特急のスピードアップのために急行を登戸で抜かすことになりました。その様子を見てみましょう。

写真41. 向ヶ丘遊園の発車案内

向ヶ丘遊園の発車案内です(写真41)。毎時07分、27分と47分の急行が該当します。

写真42. 登戸で特急を待つ

登戸で特急を待ちます(写真42)。登戸で待つくらいであれば、そのぶん新百合ヶ丘での発車時刻を繰り下げ(向ヶ丘遊園→登戸の上り線は2線です)、新百合ヶ丘→新宿の所要時間を短縮するのが良いように思います。

写真43. 特急ふじさんが通過!

特急ふじさんが通過します(写真43)。御殿場線からの特急ですが、本厚木などにもとまり、これらの駅から新宿に向かうには、始発駅の違いを考慮することもありません。

写真44. 特急が通過!

こうして特急が通過しました(写真44)。特急が通過しない場合でも、登戸で3分停車します。これは無駄な時間です。この影響を極力排除するために、新百合ヶ丘発車時刻を2分繰り下げ、快速急行との接続を中止することで、多摩センターから新宿までの所要時間を現在の47分から43分に短縮することは可能です。

22年小田急ダイヤ改正当日に乗ってみて

ダイヤ改正の小田急に乗ってみて、「無駄な列車を排除」することでスピードアップした印象を受けました。2018年新ダイヤでは鳴り物入りで登場した準急ですが、いささか無駄な印象がありました(空いていました)。これを減便することによって、不必要な徐行をなくしたのです。

代々木上原である程度列車を観察しましたが、どの種別にもまんべんなく乗客が乗っており、長距離移動の快速急行、中距離移動の急行、短距離移動の各駅停車と棲み分けがなされたことも確認しました。

ただし、上りの快速急行の遅さ(新百合ヶ丘で各駅停車が待避しないため)、急行の無駄な待避(上りは向ヶ丘遊園→登戸でやり過ごせる)など、細かな修正点も見られます。

今後は唐木田急行のスジずらしによる待避時間の削減や、列車停車時のオペレーション変更による実質的な速度向上など、より少ない所要時間(=人件費がかからない)の実現で、コスト削減とサービス向上を両立させてもらいたいものです。

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