埼玉県方面から都心へのダイレクトアクセスを担っている地下鉄有楽町線。2017年には有料列車S-trainがデビューするなど、地味に話題が多い路線でもあります。そのような地下鉄有楽町線はコロナ影響下ではどのような状況なのでしょうか。実際に最混雑区間の夕方ラッシュ時の混雑を確認しました。
写真1. メトロ車による西武線直通電車
地下鉄有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑状況まとめ
以下、長い本文を読みたくない人のために、概要をまとめます。
・ラッシュ時のピークは飯田橋基準で17:51~18:50で、その混雑率は105%である
・最も混む車両は5号車、空いているのは9号車である
※前~真ん中の車両は混み、後ろよりは空いているという傾向
・西武線直通はやや空いている
※西武線直通はだいたい小竹向原で接続するので、混雑を避けたい場合は西武線直通がねらい目
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は、飯田橋発車時点での混雑状況を確認しました。最混雑区間は飯田橋→江戸川橋ですが、これは飯田橋以南は都心のオフィス街、江戸川橋以北は住宅地であることを示しています。
また、データ処理の際は、弊サイトの指標である混雑ポイントから一般的な混雑率に変換して計算しています。
復習:地下鉄有楽町線のダイヤのあらまし
写真5. 有楽町線開業を知る生き字引、7000系車両
簡単に夕方ラッシュ時の地下鉄有楽町線のダイヤを確認しましょう。鉄道ダイヤと混雑状況は密接な関係があるため、ダイヤを確認しないで混雑状況を語るのは難しいのです。
地下鉄有楽町線は基本的に4分間隔で運転されます。ただし、1時間に1本、S-trainが割り込みますので、S-trainをはさんだ各駅停車は5分程度間隔が開き、その直後の各駅停車は3分程度と間隔が詰まります。
有楽町線から西武線方面、東武線方面への直通もありますが、基本的に東武線直通は15分程度の間隔、西武線直通も同程度の本数です。しかし、間隔は一定ではありません。直通先のダイヤの都合、副都心線との関係で一定の間隔で運転できないのです。
ラッシュ時ピークこそ4分間隔ですが、ピークが外れると5分間隔になります。
地下鉄有楽町線の平日夕方ラッシュ時の混雑状況の生データ
まず、生データを示します(表2)。
表2. 有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑調査結果(飯田橋→江戸川橋、生データ)
この時間帯の平均混雑率は98%程度です。ただし、本当の夕方ラッシュピーク時だけのデータではありませんので、以下の章で解析を試みます。
地下鉄有楽町線の平日夕方ラッシュ時の混雑状況の分析
写真6. S-trainは快適通勤用の列車(ドアが1か所しか開かない)
生データだけ見てもわかりにくいです。どの種別や号車が混んでいるのか、空いているのか、という傾向を分析したほうが親切というものでしょう。そこで、私なりに混雑状況を分析します。
最混雑時間60分の推定
一般的に朝ラッシュ時の混雑をまとめる際はピークの60分間でまとめます。夕方ラッシュ時についてはそのようなセオリーはありません(※)が、本記事ではピーク時60分を決定して、その中でさまざまな分析をしてみましょう。では、どの時間帯が最混雑の60分なのでしょうか。10分ごとに解析します(表3)。
表3. 有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑調査結果(飯田橋→江戸川橋、時間別層別)
18:30~18:39が最も混んでいるように見えます。では、その時間帯を中心とする60分として良いのでしょうか。ここで、生データをもう1度見直します。18:34発と18:38発が遅れの影響で混んでいて、その前後の電車が空いているように見えます。
遅れでどの程度混雑に影響があるのかはわかりませんが、仮に乗車率15%ぶん混んでいた(前後はそのぶん空いていた)と仮定します。その計算結果は以下の通りです(表4)。
表4. 有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑調査結果(飯田橋→江戸川橋、時間別層別、データ処理)
このように見ると、飯田橋基準で18:51以降はそこまで混雑していないことがわかります。そのため、飯田橋基準で17:51~18:50が夕方ラッシュ時ピークと判断することにします。以下の解析はすべてこの60分に限定されたものです。
また、本当に混んでいる時間帯は18:31~18:40の10分間でしょう。もう少し大まかにいうと、飯田橋基準で18:30過ぎが最も混んでいると表現できます。
この60分間の混雑率は105%です。
直通先による混雑状況の違い
現場で確認している際に、西武線直通電車が空いていると感じました。果たしてそれは正しいのでしょうか。直通先に分けて混雑状況を分析します。ここでは、大まかに東武線直通、西武線直通と和光市行き(線内完結)に分類しています。西武線直通でも小手指行きと石神井公園行きでは異なるでしょうが、ここでは簡単のために無視しています(表5)。
表5. 有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑調査結果(飯田橋→江戸川橋、直通先層別)
※ピーク60分(17:51~18:50)で集計
データでも明らかな通り、西武線直通は空いています。データ上は東武線直通は線内完結よりわずかに混んでいますが、誤差の範囲でしょう。
西武線直通が空いていて、東武線直通と線内完結が同等の混雑ということは、(西武線直通のみが向かわない)小竹向原-和光市の乗客が多いことを示しています。多くの場合、西武線直通に乗ると、小竹向原で(副都心線からやってきた)和光市方面行きに接続しますが、多くの人は小竹向原での乗りかえを避けている模様です。
車両による混雑の違い
では、空いている車両や混んでいる車両はあるのでしょうか。ピーク60分間について分析します(表6)。
表6. 有楽町線の夕方ラッシュ時の混雑調査結果(飯田橋→江戸川橋、車両別)
前よりの2号車~6号車が混んでいて、後ろよりの9号車が空いています。大まかにいうと、前よりが混んでいて、後ろよりが空いているということです。
有楽町線の各駅の駅の階段の位置を調べると(公式サイトに書いてあります)、2号車~5号車付近が便利で、7号車~10号車付近が不便なことがわかります。このような結果が反映されたのでしょう。
混雑状況から有楽町線のダイヤを考える
写真7. 地下鉄で完結する電車でも東武車が使われる例
混雑状況から有楽町線のダイヤを考えましょう。まず、西武線直通の利用が悪い点を是正したいです。単純に考えるのであれば、西武線直通を削り、そのぶん和光市行きに振り替えることです。とはいえ、現在の小竹向原-練馬は副都心線直通を含めても毎時8本しかなく、これ以上本数を削るのはサービスダウンに直結してしまいます。
もう1つの手は、小竹向原での接続をきちんと取ることです。そうすれば、目の前に来た乗客にとってみれば、西武線直通でも構わないことになります。多くの人にとってのサービスを考えるのであれば、こちらの解決策のほうが賢明です。
現在、副都心線はだいたい15分に通勤急行1本、各駅停車2本です。つまり、毎時12本の運転です。有楽町線をこれに合わせるには、現在の4分間隔から3分45秒間隔に変更することです。そうすれば、有楽町線も副都心線も小竹向原以南で15分サイクルのパターンダイヤを実現できます。そして、接続も一定に保てます。
また、S-trainの空席が多い点も問題です。これは、S-trainの料金面の問題もありましょう。ただし、すぐにS-trainの料金を値下げするのも芸がありません。それならば、停車駅を増やしてきめ細かく乗客を拾うことほうが先です。都心部にあり、メトロの多くの路線が集結している永田町は第1の候補です。それでも座席が埋まらなければ、市ヶ谷も集客ポイントとなります。現在の停車駅の少なさ(メトロ線内豊洲、有楽町、飯田橋だけ)では利用したい人も利用できないという問題があります。停車駅を増やせば、前後の電車がわずかに空くというメリットもあります。
お金のかかる増発よりもS-trainの停車駅を増やすほうが即効性があり、同時に鉄道会社の収入も増えるというメリットがあります。
地下鉄有楽町線の混雑データ
ここまでは現場での調査結果をベースに分析などをしました。では、公的機関の調査結果を簡潔にまとめた記事はないのでしょうか。そのような声にお応えして、公式のデータをわかりやすく紹介した記事を作成いたしました。他の時間帯の混雑状況の現場調査結果へのリンクもあります。