パリの移動に欠かせないのが、地下鉄(メトロ)です。また、郊外に行くとトラムもあります。単に観光やビジネスなどの移動で使うだけではなく、路線による違いなどに着目するのも面白いものです。そんなパリの都市鉄道に触れました。また、始発と終電の時刻表も掲載しています。
写真1. 地下鉄1号線は古い路線ながらもきれいな駅がある
パリの都市鉄道のあらまし
パリ市内の移動には多くの方法があります。徒歩から自家用ヘリまで含めればその方法はかなり多いでしょう。しかし、鉄道に関して絞ると、地下鉄(メトロ)、RER(郊外電車)、トラム(路面電車)に限られます。地下鉄はパリ市の多くの地域をカバーし、RERはパリ市郊外(パリ市の外)とパリを結びます。トラムはパリ市の中心部にはなく、パリの端や市外にあるのみです。
パリ市内を移動するメインは地下鉄です。パリ市をくまなく結んでいるためです。エッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、ノートルダム大聖堂いずれも地下鉄の駅から歩けます。なお、フランス語圏では地下鉄はメトロと呼びます。東京や大阪でも地下鉄はメトロと呼んでいますが、こちらが本家です。余談ですが、フランス語を使うヨーロッパの国の1つにスイスがあります。そのスイスのローザンヌ(フランス語圏)の地下鉄もやはりメトロです。一部の路線では地上や高架を通りますが、おおむけ地下にあるので景色を眺める楽しみはありません。
ただし、メトロは駅が多く移動に時間がかかります(走りは速いですが)。そこで、高速に移動したい場合に使うのがRERです。RERはパリの郊外からパリ市内までを結ぶ路線です。そのパリ市内では駅が絞られていて、ピンポイントで使うには便利です。パリ中心部は地下路線ですので、景色を眺める楽しみはありません。
トラムはパリの外れにあり、通常の観光であれば乗る機会はありません(私は強引に機会を作りました)。それでも、パリにとってトラムは重要です。例えば、トラムの3aはパリの南西部から南東部まで結びます。この界隈を鉄道で移動するには従来は中心部まで行く必要がありましたが、トラムがあればその必要はありません。このように地道ながら中心部の混雑を緩和するのに大きな役割を果たしています。
文章ばかり続くとわけがわからなくなるでしょうから、最後に路線図を示しましょう(図1)!
図1. パリの路線図(公式サイトの路線図ページからダウンロードできます)
お金の話がありませんでしたね。この件については別の記事で触れています(クリックすると別ウィンドウで開きます)。
パリの市内移動に必要なチケットの解説(地下鉄等、ナヴィコ、パリ到着時に購入!、19年夏)
メトロ(地下鉄):パリの大動脈
パリの大動脈であるメトロです。メトロは歴史が古く1900年に開業しています。でも、花の都パリにしては遅いですね。ブダペストに4年も遅れています。この理由は多くありますが、構想から開業までさまざまな利害関係が衝突していたためです。例えば、国とパリ市のどちらが運営するかという点です。結局は市の運営になりました。市が運営し、国鉄と直通運転をさせない(直通運転するとパリ市外に人口が流出してしまうという懸念があった)ために、右側通行(フランス国鉄は左側通行です)にしたり、車体幅を小さくしたりしました。
そのような歴史のあるメトロの印象深い3路線について簡単に紹介しましょう。そのほかの路線は最後に記します。
1号線:パリの有名どころを結ぶメジャーな路線
1号線はパリの有名どころを結ぶメジャーな路線です。ルーブル、凱旋門、真のパリを結び、パリでも有名な長距離ターミナル駅であるリヨン駅も結んでいます。
写真2. 真のパリ、シャトレに停車中の1号線
地下鉄1号線の典型的な光景です。地下鉄1号線は古い路線ですが、ホームドア完備、完全自動運転(運転席に人もいない)の先進的な路線に生まれ変わっています(写真2)。車両も新しいタイプです。パリの地下鉄は相対式ホーム(上下線が別のホームにある)の駅が多数を占めます。そのため、行先に応じてホームを探す必要があります。また、ホームの案内はお粗末で、東京の地下鉄のように地下鉄の全駅の案内表示がホームの階段にありません。
1号線のラインカラーは黄色ですが、車体は緑色です。これは、ラインカラーと車体色を合わせる意図がないためです。JRの地方都市と同じ考えですね。このようなことを考えると、東京の地下鉄が先進的であることを実感します。
写真3. 美しい車内
写真4. 美しい車内
車内はこのように新しくて美しいものとなっています(写真3-4)。ヨーロッパの通勤電車はボックスシート配置が多く、パリも例外ではありません。ただし、1号線の車端部はロングシート配列です。
写真5. 見やすい案内表示
観光客が多く乗る路線なのか、案内表示はしっかりしています(写真5)。目的の駅がいくつ先なのか、まだなのかを知ることができます。日本語表記はありませんが、目的地かどうかは手元のガイドブックのフランス語表記とこの案内表示の表記を見比べれば何とかなります。
写真6. 古いホームと新しいホームドアの対比
このような古い駅(ここはシャルル・ド・ゴール・エトワール)にもホームドアがあります(写真6)。古い駅(パリの地下鉄のほとんどは戦前のものです)と新しい設備の対比が感じられます。
写真7. リニューアルされた駅もある
シャンゼリゼ通りにある駅です。このようにリニューアルされた駅もあります(写真7)。新しい駅のホームと見間違えそうです。
6号線:エッフェル塔アクセスに使える風光明媚な路線
パリでも絵になる路線です。セーヌ川を地上で渡り、そこからエッフェル塔を眺めることができます。理論上は。
6号線はパリの南半分を通る半環状線です。2号線が北半分を通る半環状線です。そして、両者を合わせるとパリの環状線になります。乗客本位を謳うのであれば、両者を直通運転するべきでしょう。
写真8. 6号線の始発駅、シャルル・ド・ゴール・エトワール
その始発駅のシャルル・ド・ゴール・エトワールです(写真8)。こちらの車両は古びたものです。6号線のラインカラーは薄緑色ですが、車体も緑色です。これは合致していますが、たまたまです。
写真9. レトロな駅ホーム
その駅に電車がやってきました(写真9)。6号線の車両は新しいタイプではありません。ドアを開けるのも手動です。
写真10. レトロな車内
車内はボックスシートが並んでいます(写真10)。ドアは手動で中央のハンドルをひねると開きます。シューという音がしたらドアを開けて良いタイミングです。私は降りる際に最速で開こうとして、周囲の乗客が若干引いていました。このことで1秒早いかどうかでしょうが、意味もなくこだわりたかったのです。
写真11. レトロな車内
このようなレトロな車内で移動空間を堪能することができます(写真11)。でも、なぜか空いていますね。エッフェル塔に向かう路線なのにね。
そう、この先でバスによる代行輸送が行われていました。だから、地下鉄の車内からエッフェル塔を見られずじまいでした。代行バスでパリの街を眺められたからよしとすべきなのでしょうか(でも代行バスの本数が少なくて混むことはいかがなものです)。
写真12. 本来であればこの鉄橋を渡る
そう、この鉄橋を渡る部分がパリの地下鉄のハイライトです(写真12)。私はエッフェル塔に行くときにここから歩きました。
写真13. 代行バス
6両(だったかな)の地下鉄の代行に単車のバスだったら混むでしょうね(写真13)。
14号線:高速でフィットすれば便利な路線
パリの地下鉄の多くは戦前に開業していますが、14号線は21世紀の開業で、戦後唯一の新路線です。戦後しばらくはRERが建設されていたので、パリの都市鉄道はきちんと発展していたことは付け加えます。
14号線は駅が少なく、拠点を早く結ぶことに特化しています。例えば、リヨン駅からシャトレ駅まで地下鉄1号線だと5つめですが、14号線だとノンストップです。私はリヨン駅(TGVで到着した)からシャトレ駅(宿泊先)まで14号線でノンストップで行けることに気づき、感銘を受けました。1号線だとスリも多いと聞いていたので、1号線を避けたかったのもあります。
写真14. シャトレ駅の構内
真のパリの駅のシャトレ駅です(この駅の写真が多いのは宿泊先があったためです、写真14)。
写真15. シャトレ駅のホーム
14号線も相対式ホームです(写真15)。そのため、行先に応じてホームを使い分ける必要があります。島式ホームのほうが修正が利きやすいので、親切なように思います。
写真16. 近代的なホーム
さすが21世紀に開業した路線だけあって、ホームも近代的です。ホームドアも完備しています。パリの地下鉄のホームドアは車両のドアと同時に開閉していましたので、ホームドア設置による所要時間増加もありません。日本の鉄道会社もこの技術を導入するべきです。
地下鉄からの景色を眺める
パリの地下鉄は地上区間を走るものもあります。その地上区間で景色を撮影できたので、何枚かさらしましょう。
写真17. セーヌ川を越える場面
パリで有名な川はセーヌ川です。そのセーヌ川をこえる路線は多くありますが、地上を通る路線はそう多くありません。そのうちの1つに5号線があります。その5号線からの景色を取り上げてみましょう(写真17)。走りながら景色を撮影するのは難しいです。
また、地下鉄6号線はセーヌ川を渡る区間以外にも地上区間があります。パリ南部の(治安は悪くないものの)観光客が行かない区間の地上区間の景色をさらしましょう。
写真18. サンジャック駅
サンジャック駅です(写真18)。サンジャックの塔からは離れています。この駅から東側はしばらく地上区間を走ります。
写真19. パリの街中を走る
中心の東西軸を形成する1号線に対して、南に反れて走っています。そのため、地上を通る区間も多いのでしょう。地上区間の景色は中心街や観光地のそれではありません(エッフェル塔の近くを通りますが、エッフェル塔もパリの中心にはありません)。
写真20. 次の駅に停車!
次の駅に停車します(写真20)。パリの地下鉄の駅名標は次の駅の表示がなく不便です。と思ったら、ドイツ、スイスやオーストリアのような「きちんとした」ヨーロッパの国にもそのような表示はありませんでした。
写真21. 住宅街を走る
写真22. 住宅街を走る
このような住宅街を走ります(写真21-22)。中心部の観光地をあせくせと回ることも旅行の楽しみでしょうが、このような住宅街を通ることもまた楽しいものです。
地下鉄の始発と終電の時刻表
パリの地下鉄は始発が5:30ごろ、終電が1:00ごろです。では、具体的な時刻はどのようなものでしょうか。具体的な時刻表を撮影しましたので、掲載いたします。
写真23. 1号線と2号線の時刻表
1号線と2号線の時刻表です(写真23)。始発駅基準で5:30~0:40が運行時間と考えて良さそうですね。
写真24. 3号線の時刻表
3号線も似たようなものです(写真24)。
写真25. 4号線と5号線の時刻表
4号線は1-3号線と異なり、パリ市内を南北に結ぶ路線です。この路線も似たようなものです(写真25)。
写真26. 6号線と7号線の時刻表
6号線と7号線の時刻表です(写真26)。似たような時刻で運転されています。このように路線ごとの差がないと利用するほうは計算しやすくて助かります。
写真27. 8号線の時刻表
8号線の時刻表です(写真27)。この路線は長い路線で所要時間がかかるためか、始発は全線通しだけではなく、途中駅始発もあります。
写真28. 9号線の時刻表
9号線の時刻表です(写真28)。この路線は長い路線で所要時間がかかるためか、始発は全線通しだけではなく、途中駅始発もあります。
写真29. 10号線と11号線の時刻表
10号線と11号線の時刻表です(写真29)。事情は似たようなものです。
写真30. 12号線の時刻表
写真31. 13号線の時刻表
写真32. 14号線の時刻表
12号線から14号線の時刻表です(写真30-32)。いずれもそこまで始発や終電の早い、遅いはありません。
トラム:パリ郊外をのんびり走る
パリの郊外にはトラムがあります。いずれも、郊外と郊外を結ぶ交通機関として整備されています。1号線、2号線、3a号線、3b号線があります。路線図ではTで示される路線です。今回は3aに乗る機会に恵まれました。
写真33. ポンデュガリクリアノに停車中のトラム
ポンデュガリクリアノはパリの南西部に位置する駅です(写真33)。RERのC線と交差しています。ここからパリの南部を通り、パリ東部のポルトドヴァンセンヌ(地下鉄A線との交差)までを結びます。ここから先はトラムの3bとなり、パリ北東部を通り、パリ北部のポルトドシャベルに向かいます。
写真34. 途中駅に停車した様子
このように途中駅も停留所が整備されています(写真34)。安全でない「安全地帯」で電車を待つ必要もありません。パリのトラムは近年に再整備されました。環境意識の高まりなどさまざまな要因はあるでしょうが、公共交通機関を整備するその姿勢は素直にうらやましいです。
写真35. 前面展望も良好!
一般に海外の鉄道は前面展望に優れませんが、このトラムはそのようなこともありません。
写真36. パリ南部の住宅街を走る
写真37. パリ南部の住宅街を走る
写真38. パリ南部の住宅街を走る
パリ南部の住宅街を走ります(写真36-38)。けっこう編成は長いですが、意外と混雑し立ちも出るくらいです。単に慈善事業として整備したのではなく、それなりの需要を見込んで整備した結果なのでしょう。パリの郊外どうしの行き来が不便だったので、この路線のおかげで助かっている人も多いでしょう。
写真39. 落ち着いた風情の街で降りる
このような風情ある街で降りました(写真39)。今回私が取り上げた路線はパリの南部のものが多かったですが、これは偶然ではありません。パリ北東部のような治安の悪い場所を避けた結果でもあるのです。
注意点:工事による運休
パリの地下鉄は14路線あり、トラムも充実の3路線、そしてRERも5路線あり、理論上は22路線が使える国際都市、それがパリです。しかし、理論は理論でしかなく、実際と異なります。どういうことでしょうか。
私がパリに着いたときは6号線は豪快に運休、11号線は1駅運休など、半分程度の路線が工事による運休に関連していました(RERは全路線!)。特に、私がエッフェル塔を訪問した際は関係する2路線とも運休となっていました。このように、地下鉄が運休して(代行バスが運転されるにしろ)所要時間がかかり、計画通りに動けないことは大いに想定されます。
事前に調べた路線が運休すると、現地で代替経路を探す羽目になります。このような作業に夢中になっているときほどスリのねらい目です。このような作業はホームのベンチなど比較的安全な場所(=人の目があり、そのような作業とはばれにくい)で行いましょう。パリの地下鉄では「スリに注意しましょう」という日本語放送が流れています。正直、そのような放送を流し、駅で特別な案内員を付けるくらいであれば、通常通り運行するのがスジでしょう。これがフランスの頭の悪いところです。線路配線切替工事のようにやむをえない事情があるのであれば話は別ですが、多めにみて4日もあれば完成するはずです。どう見てもそれ以上の期間運休しています。運休するのは仕方ないにしても、せめてフランス語だけではなく、英語のポスターでも案内するべきです。
写真40. 運休による代行バスを案内する表示
最後にパリの地下鉄の現実を示すために、あえて負の側面を掲げさせていただきました。そのような場面に対応するにはあらかじめ複数のルートを想定しておくことです。パリの地下鉄を利用する上での最も重要な考えはこのようなことかもしれません。
さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?
←(前)シャトレ・レアール駅を楽しむ(パリ7大ターミナル紹介、19年夏パリ観光)
パリの地下鉄(メトロ)とトラムを楽しむ(始発・終電情報あり、19年夏パリ観光)←今ココ!
パリの郊外電車(RER)と国鉄を楽しむ(一部始発・終電情報あり、19年パリ観光)(次)→
★パリの観光についてまとめたページはこちら。パリ観光の計画に大いに役立ちます!
パリのおすすめスポット10選まとめとモデルコース(19年夏パリ観光)
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ハンガリー、スイス、フランス旅行のまとめと振り返り
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