ヨーロッパでは毎年冬に新ダイヤに変更されています。では、2021年新ダイヤはどの部分が変わったのでしょうか。簡単にまとめました。
写真1. ナイトジェットは少しずつ拡充されている(2018年にウィーンで撮影)
※本記事では新型肺炎ウィルスの影響による一時的な運休についてはカウントいたしません。
国際列車関連
まずは、国際列車についてまとめましょう。
ナイトジェット関連
従来、デュッセルドルフ発着だったナイトジェットがオランダのアムステルダムに延長されます。これにより、アムステルダム-インスブルック、アムステルダム-ウィーンが直通となります。毎日運転のナイトジェットが西ヨーロッパに乗り入れるのは史上初のことです。
アムステルダム発19:30→ウィーン着9:19
アムステルダム発19:30→ミュンヘン着7:09→インスブルック着9:14
※両列車はニュルンベルクまで連結運転
ウィーン発20:13→アムステルダム着9:58
インスブルック発20:44→ミュンヘン発22:50→アムステルダム着9:58
※両列車はニュルンベルクから連結運転
また、ブリュッセル-ウィーンも週1回から週3回に増強されます。ブリュッセル発(19:32)は月曜、水曜と金曜、ウィーン発(ブリュッセル着9:55)は火曜、水曜と日曜です。
※ナイトジェットに関しては、中央ヨーロッパの夜行列車~ナイトジェットの概要をご参照ください。
ドイツ-スウェーデン直通夜行(ベルリンナイトエクスプレス)
写真2. ベルリン中央駅のイメージ(2018年に撮影、当該列車は地下ホーム発着だろう)
昔からベルリンからスウェーデンのマルメを直通する夜行列車は夏に運転されていました。しかし、2021年はその運転経路と運転区間が大幅に変更されます。
従来:ベルリン-マルメ間ノンストップ(途中ドイツとスウェーデンは船で移動)
今回:ベルリン-ハンブルク-コペンハーゲン-マルメ-ストックホルム(船の移動はなし)
ベルリン発19:02→ストックホルム着14:20
ストックホルム発16:20→ベルリン着8:52
中央ヨーロッパ関連
スイス-イタリア直通が大幅に増強されます。チューリッヒ-ミラノを直通するユーロシティ(国際特急列車)が1日10.5往復運転(チューリッヒ発は10本、ミラノ発は11本)されます。この系統はミラノからヴェネツィア、ジェノバなどに直通する便もあります。
基本的にチューリッヒを毎時33分に発車しますが、12:33、14:33、16:33、18:33はありません。ミラノは毎時10分に発車しますが、12:10、16:10はありません。
また、プラハ-リエーカの夜行列車が運転されます。プラハ、ブルノとチェコを通り、スロバキアの首都のブラチスラバを通ります。この後はハンガリー西部を通り、翌朝にスロベニアの首都リブリャナ、クロアチアのリエカに着きます。
図1. ハンガリーのチョルナを通る(googleマップより引用)
この列車はオーストリアの境界ギリギリを通り、冷戦時代の「東側」のみを通る点が興味深いです(冷戦時代であれば、チェコスロバキア、ハンガリーとユーゴスラビアですね)。けっこう、マイナーな路線をすり抜ける感じがあります。
また、ミュンヘン-チューリッヒ(リンダウ経由)が1日3往復から6往復に倍増されます。かつては4時間19分かかっていたものが4時間2分までの短縮です。この列車はドイツとスイスを結ぶ列車ですが、途中オーストリアを通ります(図2)。旅行者の国数稼ぎにはちょうど良い列車です。
図2. オーストリアのブレゲンツを通る(googleマップより引用)
各国内の変化
通勤列車の1本1本まで追っていたらきりがありませんので、国別に気になる箇所を簡単にまとめます。
ドイツ
ドイツは便利な鉄道網が整備されている国で、だいたい主要都市間は毎時1本の乗車チャンスが確保されています。それなりに遠距離のフランクフルト-ベルリンであっても、2時間に1本の速達列車、2時間に1本の主要駅停車列車(が2系統)と平均40分間隔が実現しています。
その中で例外的な存在がベルリン-ドレスデンです。従来は2時間間隔のユーロシティ(ベルリン-プラハ直通)しか走っておらず、ベルリン-ドレスデンの区間運転はほとんどありませんでした。しかし、2020年ダイヤからはベルリン-ドレスデンの区間運転が2時間間隔で設定され、2時間に2本の乗車チャンスが確保されました。
今回、この系統はベルリンで南東部にある空港に寄るのが特徴で、所要時間は従来のユーロシティの1時間57分に対し、2時間19分かかっています。ベルリン中央駅は地下ホーム発着で、ベルリン・ブランディング空港で進行方向を変えるのかな?なお、この系統は実際にはベルリン発着ではなく、ロストック発着です。このようにドイツ、オーストリア、スイスは大都市をスルーする運転系統が多いです。
また、4/24からフランクフルト空港-ベルリンのICEは廃止されます。従来は2時間間隔でフランクフルト国際空港とベルリンの直通便がありましたが、それがなくなるということです。2経路あってわかりにくいことでしょう。そこで、私なりに書いてみましょう。
(a) フランクフルト中央-エアフルト-ベルリン:速達列車が2時間に1本、多停車型が2時間に1本
(b) フランクフルト中央-カッセル-ベルリン:2時間に1本
(c) フランクフルト空港-カッセル-ベルリン:2時間に1本
この3系統が運転されていました。フランクフルト中央-ベルリンは(a)と(b)が合わせて1時間間隔が確保されつつ、カッセル付近-ベルリンは(b)と(c)を合わせて1時間間隔が確保されていました。しかし、(c)が廃止されカッセル付近は2時間に1本に減便されました。
ただし、この措置は高速新線のアップグレードのためであり、7/16には終わります(新型肺炎ウィルス流行による措置ではありません)。
※全体像を知りたい場合はフランクフルトとベルリンの列車の時刻表をご参照ください。
また、ハンブルク-ミュンヘン系統も1時間に1本から2時間に1本に減便されます。ただし、減便となるのはハンブルク-ミュンヘンではなく、ニュルンベルク-ミュンヘンのみであり、この間はベルリン-ミュンヘン、フランクフルト-ミュンヘンの系統が毎時1本ずつ運転され、ニュルンベルク発着と接続します。つまり、乗りかえさえいとわなければ、ハンブルク-ミュンヘンの乗車チャンスは平均毎時1本確保されます。
スイス
写真3. チューリッヒ中央駅はスイスの要(停車しているのはICE)
スイス南部に新しいトンネルが開業し、ベリンツォナとルガノの所要時間が短縮されます。ルガノ何それ?そんな声が聞こえてきました。
図3. ルガノの位置(googleマップより引用)
これにより、ベリンツォナとルガノの所要時間が従来の26分から14分に短縮され、12分のスピードアップが実現します。この効果がミラノ直通にも派生しており、チューリッヒ-ミラノの所要時間が従来の3時間40分から3時間17分へと23分短縮されています。
今回の新ダイヤまとめ
写真4. 協調している例(ベルギー直通の高速列車、フランスのパリ北駅で撮影)
個別に確認するとそれなりの変化は見られますが、抜本的な改革が見られるわけではありません。それもそのはずです。ヨーロッパには多くの国があり、それぞれの意思で動いています。しかし、その多くの国どうしで直通しています。そのため、どこかの国で輸送改善しようとしても他の国と意思を統一せねばなりません。
それでも、確実に輸送改善が進んでいるのは事実です。特に、夜行列車が復権していることはうれしい傾向です。伝統的にヨーロッパ諸国は全体での連携が取れていました(冷戦時でも「西側」と「東側」の鉄道は連携していました)。今後もそのような動きをゆるめることなく、少しでも便利に楽しい交通機関で合ってもらいたいものです。
詳細な時刻はこちらから!(時刻表は地名と数字の羅列なので、英語版でもそれなりに理解できます!)