中央ヨーロッパの夜行列車~ナイトジェットの概要と運行形態解析

ドイツは夜行列車大国ではありますが、先日ドイツ鉄道が運行する夜行列車(CNL)が廃止になるとの話がありました。かわりにオーストリア連邦鉄道によるナイトジェットが設定されます。そのナイトジェットのほぼ全系統をまとめました(2018年最新版)。

※2018年7月16日にナイトジェットの乗車記を記しました。別ウィンドウで開きます。
※2018年9月17日にドイツに関係しない系統もまとめました。網羅性が大幅に向上しています。
※2018年12月12日にベルリン-ウィーンの系統を追加しています(2018年12月ダイヤ改正の目玉を反映)




ナイトジェットネットワーク

図1. ナイトジェットネットワーク

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概要はわかった。では、どうやって予約するの?

・最もオーソドックスなやりかた。オーストリア連邦鉄道のサイトから予約する方法。
 ナイトジェットのネット予約方法(オーストリア連邦鉄道)
・JTBカードしか持っていない人必見。ドイツ鉄道のサイトから予約する方法。
 ドイツ鉄道からでナイトジェット(国際夜行列車)をネット予約

ナイトジェットの概要

まず、ナイトジェットが経由する路線について簡単に述べたあと、設備について簡単に触れます。

ナイトジェットの運行形態概要

CNLが廃止になり、その代替としてナイトジェットが運行されています。そのため、ドイツに関係する系統は(ザルツブルク-インスブルック間でドイツを通過する系統は除きます、この区間は特殊で幹線はドイツ経由なのです)を中心に述べます。

ドイツ国内を横断または縦断する系統

・ハンブルク-ベルリン-チューリッヒ(スイス)
→2018年にはハンブルク-チューリッヒ(スイス)、ベルリン-チューリッヒ(スイス)に分割され、途中駅で連結する運用に変化しています。
・ハンブルク-ウィーン(オーストリア)
・ハンブルク-インスブルック(オーストリア)
・デュッセルドルフ-ウィーン
・デュッセルドルフ-インスブルック

ドイツ発着で他国の距離が長いもの

・ミュンヘン-ミラノ(イタリア)
・ミュンヘン-ローマ(イタリア)
・ミュンヘン-ベネチア(イタリア)
・ミュンヘン-ブダペスト(ハンガリー)
・ミュンヘン-ザクレブ(クロアチア)
・ミュンヘン-リエーカ(クロアチア)
・ベルリン-ウィーン(オーストリア) (2018年12月新設)

ドイツを通らないもの

・ウィーン-ブレゲンツ
・ウィーン-チューリッヒ
・グラーツ-チューリッヒ
・チューリッヒ-ブダペスト
・チューリッヒ-ザクレブ
・ウィーン-ミラノ/ローマ
・ウィーン-ベネチア
・ウィーン-リヴォルノ(リヴォルノはイタリアの都市、ピサを通る)
・ウィーン-ワルシャワ(チェコを通過)
・ウィーン-コシツェ(コシツェはスロバキア東部の都市、チェコを通過)

どこかの国のように、実質1系統しかないのと大違いですね(余談ながらムーンライト信州と東武の夜行のしぶとさは意外です)。オーストリアは中欧であり高速鉄道が存在しないため、夜行が残存する余地があるのでしょう。

コブレンツを発車するナイトジェット

写真1. ウィーンからデュッセルドルフの系統(コブレンツで撮影)

DBの運営でもなく、ナイトジェットにもならないパリ-モスクワの系統はどうなるのでしょう?

ナイトジェットの設備概要

大本営発表資料を参照しますと、6人がけのコンパートメント(見知らぬ人と相席)、6人寝台(日本でいう3段B寝台です)、4人寝台(日本でいう2段B寝台)、1-3人用個室が存在するようです。個室といっても、あくまでも「豪華」な存在ではなく、昔のシングルデラックスに相当するレベルのようです。

私が御託を並べ立てるよりもオーストリア連邦鉄道のサイトに掲載されている写真を掲載したほうがよいでしょう。

ナイトジェット6人がけ座席の内装

写真2. 6人がけのコンパートメント

ナイトジェット6人簡易寝台

写真3. 6人用簡易寝台

ナイトジェット2人用寝台

写真4. 2人用のコンパートメント

中欧はそれなりに夜行列車が発達していると解釈できます。西欧の夜行列車はほとんどないはずです。私の記憶が正しければ、パリ-スペイン、パリ-イタリア、スペイン国内くらいだったように思います。

各系統の運行形態解析

それでは、各系統の運行形態を簡単に解析いたします。

ドイツ国内を横断または縦断する系統

ハンブルク-ベルリン-チューリッヒ

ナイトジェットネットワーク-1(ハンブルク~チューリッヒ)

図2. ハンブルク-ベルリン-チューリッヒの運転区間

ナイトジェットの時刻:ハンブルク-チューリッヒ
図3. ハンブルク-ベルリン-チューリッヒの運転時刻

ハンブルクからまっすぐスイスには向かわず、1回ベルリンに立ち寄る点が興味深いです。ハンブルクを20:52、ベルリンを23:02に出発し、チューリヒに到着するのは9:05です。逆にチューリヒを20:00に出発し、ベルリンに6:06、ハンブルクに8:30に到着します。ドイツ国内の利用にはちょっと厳しい(深夜出発か早朝到着)ような印象を抱きました。

<追記>
2018年冬ダイヤではハンブルク-チューリッヒの系統とベルリン-チューリッヒの系統が分離されて、フルダで連結されているようです。ベルリン発車時刻は21:06、ベルリン到着時刻は7:54となっています。

ウィーン/インスブルック-ハンブルク/デュッセルドルフ

正式には4系統ですが、ここでは便宜上まとめて紹介します。

ナイトジェットネットワーク(ウィーン-ハンブルク等)

図4. ウィーン/インスブルック-ハンブルク/デュッセルドルフの運転区間

ナイトジェットの時刻:ウィーン-デュッセルドルフ

図5. ウィーン-デュッセルドルフの運転時刻

ナイトジェットの時刻:インスブルック-デュッセルドルフ

図6. インスブルック-デュッセルドルフの運転時刻

ナイトジェットの時刻:ウィーン-ハンブルク

図7. ウィーン-ハンブルクの運転時刻

ナイトジェットの時刻:インスブルック-ハンブルク

図8. インスブルック-ハンブルクの運転時刻

南行きの発車時刻は
デュッセルドルフ20:54、ケルン21:21、ハンブルク20:29。

南行きの到着時刻は
ミュンヘン7:05、インスブルック9:14、ウィーン8:19。

北行きの発車時刻は
インスブルック20:44、ミュンヘン22:52、ウィーン20:39。

北行きの到着時刻は
ケルン8:15、デュッセルドルフ8:41、ハンブルク8:36。

興味深いことは、これら4系統は単独運転ではなく、途中駅で相手を変えながら併結運転することです。停車時間の長いニュルンベルクで連結・切離すると思いますが、私はそこまで詳しくないので、断定できません。

わかりやすく有楽町・副都心線系統で例えると、以下のようになるでしょう(余計わかりにくい?それを言わないのが大人の約束ですよ)。

a) 新木場時点では西武線飯能行きと東武線川越市行きを連結
b) 渋谷時点では西武線飯能行きと東武線川越市行きを連結
c) 両系統が合流する小竹向原で連結相手を変更
d) 西武線に入る時点では新木場方面始発と渋谷方面始発を連結
e) 東武線に入る時点では新木場方面始発と渋谷方面始発を連結

デュッセルドルフ行きに乗れば、朝にライン川沿い(マインツ→コブレンツ)を走りますから、車窓も期待できます。ミュンヘンとドイツ北部を連絡する夜行列車としても利用価値はありそうです。

ライン川沿いの景色(偽ローレライ))

写真5. ライン川沿いの美しい景色(2016年に撮影)

深夜のニュルンベルクでの連結風景も含めて興味深い列車です。書いている私が乗りたくなってしまいました。

ドイツ発着で他国の距離が長いもの

ウィーン-ベルリン

正式にはナイトジェットではないようですが、ここでは紹介します。どうやら1-3人用個室もあるようです。

ナイトジェットネットワーク ウィーン-ベルリン

図9. ウィーン-ベルリンの運転区間

ナイトジェットの時刻:ウィーン-ベルリン

図10. ウィーン-ベルリンの運転時刻

ドイツとオーストリアという2つのドイツ圏国家(オーストリアもドイツ語を話します)の首都を結ぶ系統です。途中でチェコを通るのが興味深いといえます。途中駅からの利用はしんどそうです。
※いつの間にかベルリン-プラハの運転は中止されています。2017年12月ダイヤで区間短縮されたのでしょう。

(2018年12月追記)この経路とは別の経路でベルリン-ウィーン間が復活しています。

ナイトジェット ウィーン-ベルリン(地図)

このような経路でベルリンとウィーンを結びます。途中、ポーランドを通過する点がミソです。ポーランド南部のヴロツワフ(ポーランド第4の都市)やチェコ東部のオストラバ(チェコ第3の都市)という、有名ではない都市を通ります。

ナイトジェット ベルリン→ウィーン

ベルリンは中央駅を通りますが、その始発駅はシャルロッテンブルク駅です。この駅を出て、中央駅、東駅を通って、ドイツ東部国境からポーランドに進みます。どうせなら、ベルリン動物園駅やアレクサンダー広場駅に停車すれば便利なのに、と思います。ちょっと早め(18:41)の出発ですね。ウィーンには7:00に着きます。

ナイトジェット ウィーン→ベルリン(時刻)

ウィーンからベルリンに向かうのは、22:10の出発、9:36の到着です。ウィーンの滞在時間を重視していることがわかります。というより、ウィーン-ワルシャワ・クラクフ系統と連結して走るために、これらの系統と時刻を合わせています。何となく、ウィーン-ヴロツワフの系統を設定しつつ、ヴロツワフだけだと需要が少ないのでベルリンまで伸ばした感触があります。

ブダペスト-ミュンヘン

ナイトジェットネットワーク

図11. ブダペスト-ミュンヘンの運転区間

ナイトジェットの時刻:ブダペスト-ミュンヘン

図12. ブダペスト-ミュンヘンの運転時刻
ドイツからオーストリアを経由してハンガリーまで結ぶ系統です。ミュンヘンとウィーンの移動にも活用できそうです。

ミュンヘン-ローマ/ミラノ

ここでもミュンヘン-ローマとミュンヘン-ミラノをまとめて紹介します。理由は途中まで併結運転しているためです。

ナイトジェットネットワーク 南欧

図12. ミュンヘン-イタリアの運転区間

ナイトジェットの時刻:ミュンヘン-ミラノ

図13. ミュンヘン-ミラノの運転時刻

ナイトジェットの時刻:ミュンヘン-ローマ

図14. ミュンヘン-ローマの運転時刻

これらはミュンヘン断面では連結され、途中で切り離すという芸当を行います。ミラノやローマではウィーン発着編成としれっと連結しています。どこかで見たような気がしますが…。

ミュンヘン-ベネチア/ザクレブ/リエーカ

ベネチアがイタリアの都市であることはわかると思いますが、ザクレブ?リエーカ?っていう感じでしょう。ザクレブはクロアチアの首都、リエーカはクロアチア北部の海沿いの都市です。

ナイトジェットネットワーク 南欧

図15. ミュンヘン-ベネチア/ザクレブ/リエーカの運転区間

ナイトジェットの時刻:ミュンヘン-ベネチア

図16. ミュンヘン-ベネチアの運転時刻

ナイトジェットの時刻:ミュンヘン-ザクレブ

図17. ミュンヘン-ザクレブの運転時刻

ナイトジェットの時刻:ミュンヘン-リエーカ

図18. ミュンヘン-リエーカの運転時刻

途中のフィラハ(オーストリア)でベネチア行きを切り離し、さらに進んだリブリャナ(スロベニアの首都)でザクレブ行きとリエーカ行きを切り離すという系統です。ベネチアを除いて、ウィーン発着の系統が存在しないのが不思議なところです。

ドイツを通らない系統

もともと、このページはシティナイトラインの代替を紹介するという意図で紹介しましたが、ナイトジェットをきちんと紹介したほうが親切でしょう。そこで、ドイツを通らない系統を紹介します。

ウィーン-ブレゲンツ

ウィーン-ブレゲンツ

図19. ウィーン-ブレゲンツの運転区間

ウィーン-ブレゲンツの時刻

図20. ウィーン-ブレゲンツの運転時刻

オーストリア東部のウィーンと、オーストリア西部で3国の国境に近いブレゲンツを結んでいます。ブレゲンツはボーデン湖に近い小都市です。2018年冬ダイヤでは、以下の時刻で運転されています。

ウィーン22:55 → ブレゲンツ8:29
ブレゲンツ21:40 → ウィーン6:54

フェルトキルヒ-フィラッハ(チューリッヒ-ザクレブ)

フィラッハ-フェルトキルヒ(路線図)

図21. フェルトキルヒ-フィラッハの運転区間

キルヒ-フィラッハの時刻

図22. フェルトキルヒ-フィラッハの運転時刻

ナイトジェットの運行当初の運転系統はこのように書いていますが、実際はチューリッヒからザクレブの系統の一部です。ここで、チューリッヒ-ザクレブ間の補足をしましょう。ザクレブとはクロアチアの首都です。

ザクレブ-チューリッヒの運転時刻

図23. ザクレブ-チューリッヒの運転時刻

ただし、ヨーロッパ時刻表を眺めると、ザクレブはおろかベオグラード(セルビアの首都)に発着するんですよね。ベオグラード着は17:31、ベオグラード発は10:25です。

ウィーン-チューリッヒ

オーストリアの首都ウィーンとスイスの代表都市チューリッヒを結ぶ系統です(注.スイスの首都はベルンです)。

ウィーン-チュリッヒの運転系統

図24. ウィーン-チューリッヒの運転系統

ウィーン-チューリッヒの運転時刻

図25. ウィーン-チューリッヒの運転時刻

図は2017年冬ダイヤですが、2018年冬ダイヤでも時刻は変わっていません。後で述べますが、チューリッヒ-ブダペストの系統もウィーンを通ります。

チューリッヒ-ブダペスト

さきほどの系統をブダペストまで延長したような格好です。2017年にナイトジェット運行開始時のPDFファイルには記述がありませんが、れっきとして存在します。

チューリッヒ21:40 → ブダペスト9:24(ウィーン着6:35)
ブダペスト20:40 → チューリッヒ8:20(ウィーン発23:25)

ナイトジェットパートナーとして運転されるようですから、ナイトジェット運転開始時のPDFファイルには記載がないのかもしれません。ウィーン発着の時刻が中途半端ですから、上記の系統が別にあると理解しています。

この系統はザルツブルクでミュンヘン-ブダペストと連結・切り離しをしつつ、チューリッヒ-ウィーンと連結・切り離しをしています。ミュンヘン-ウィーンの系統もあればザルツブルクでパートナーチェンジができたのに残念ですね。

グラーツ-チューリッヒ

グラーツはオーストリア第2の都市です。そのグラーツとチューリッヒを結ぶ系統です。

グラーツ-チューリッヒの運転系統

図26. グラーツ-チューリッヒの運転系統

グラーツ-チューリッヒの運転時刻

図27. グラーツ-チューリッヒの運転時刻

ウィーン-ミラノ/ローマ

ウィーンから南に向かう系統です。この系統は途中まで連結運転されるので、ここではひとまとめにして紹介します。

ナイトジェットネットワーク イタリア

図28. ウィーン-ミラノ/ローマの運転系統

ウィーン-ローマの運転時刻

図29. ウィーン-ローマの運転時刻

ウィーン-ミラノの運転時刻

図30. ウィーン-ミラノの運転時刻

ウィーン-ベネチア

イタリアでも人気の観光地であるベネチアと、古都ウィーンを結ぶ系統です。

ウィーン-ベネチアの運転系統

図31. ウィーン-ベネチアの運転系統

ウィーン-ベネチアの運転時刻

図32. ウィーン-ベネチアの運転時刻

ベネチアまで近いとはいえ、ウィーンからまっすぐイタリアに向かわずに、ザルツブルクに寄っています。ミュンヘンからの系統と連結するためでしょう。

ウィーン-リヴィルノ

リヴォルノというとあまり有名でないかもしれませんが、簡単にいうとピサを通る系統です。

ウィーン-リヴォルノの運転系統

図33. ウィーン-リヴォルノの運転系統

ウィーン-リヴォルノの運転時刻

図34. ウィーン-リヴォルノの運転時刻

2018年冬ダイヤでも運転時刻はほぼそのままです。リヴォルノ系統はミュンヘン系統がないので、ミラノより需要が少ないのでしょう。

ウィーン-ワルシャワ

今までは、ウィーンを中心に西方向、南方向、東方向が中心でしたが、北方向にはないのでしょうか。答えは「あります」です。ウィーンからクラクフを通り、ワルシャワまで結ぶ系統です。ナイトジェット運転当初はワルシャワ行きとクラクフ行きを連結していましたが、現在はクラクフ経由となっており、クラクフ系統とワルシャワ系統の途中で連結・切り離しはありません。

ウィーン22:10 → クラクフ6:18 → ワルシャワ9:11
ワルシャワ19:50 → クラクフ22:41 → ウィーン7:00

この系統は途中ボフミンでスロバキア東部のコシツェ発着の系統と切り離しします。

ウィーン22:10 → コシツェ9:08
コシツェ20:35 → ウィーン7:00

経路を見ればわかりますが、とても大回りしています。オーストリアとスロバキアは接しているのに、わざわざチェコを通り、ポーランド国境近くまで迂回するのです。

ナイトジェットの運行形態まとめ

かゆいところに手が届くとまではいきませんが、それなりのネットワークを確立しているといえます。ドイツ国内では、ミュンヘンとドイツ北部を結ぶ役割を担い、国境を越えた運行も平気に行われている様子もわかります。

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オーストリア連邦鉄道のサイト(JCB使用不可)やドイツ鉄道のサイト(JCB利用可能)からネットで予約する方法を懇切丁寧に解説いたしました。JCBを利用可能であれば、オーストリア連邦のサイトから予約すると良いと思います。

実際にウィーンからコブレンツまで個室寝台に乗車しました。室内の様子や朝食の様子などを収録しています。