オーストリアからチェコへの移動。オーストリア側の拠点をウィーンに考えがちですが、リンツからチェコに入ることもできます。そんなマイナーな移動を楽しみました。

写真1. マイナーな系統らしく、リンツでは端のホームの端部に発着する
復習:リンツとチェコの行き来
最初にリンツとチェコの行き来の方法の概要を簡単に紹介します。
図1. リンツとプラハの位置関係(googleマップより引用)
リンツとプラハの位置関係を示します(図1)。プラハを中心に見ると、ウィーンは南東方向であり、オーストリアへの最短距離ではありません。では、プラハから南に向かうとどこに向かうのでしょうか?そう、リンツです。プラハからオーストリアへの最短経路ともいいかえることができます。
さて、リンツとプラハの列車設定状況はどうでしょうか?プラハとウィーンの間も2時間間隔が基本です。ウィーンよりリンツは人口も少なく、(ウィーンのほうが観光地としてもメジャーなことから)観光需要も低いと予想でき、それより本数が少ないことは予想できます。
表1. プラハ→リンツの時刻表
| プラハ | リンツ | |
| EC331 | 6:20 | 10:06 |
| EC333 | 10:20 | 14:06 |
| EC335 | 14:20 | 18:06 |
| EC337 | 18:20 | 22:06 |
表2. リンツ→プラハの時刻表
| リンツ | プラハ | |
| EC330 | 6:52 | 10:39 |
| EC332 | 11:54 | 15:39 |
| EC334 | 15:54 | 19:39 |
| EC336 | 18:54 | 22:39 |
時刻表にまとめました(表1、表2)。所要時間は3時間50分程度、本数は1日4往復(4時間間隔が基本)です。プラハ発は美しい4時間間隔ですが、リンツ発は5時間のダイヤホールが生じたり、3時間間隔に縮んだりとやや不規則です。EC332列車とEC334列車がそれぞれ1時間前倒しになれば、4時間間隔と待ち時間は一定になりますが、需要を考慮しているのでしょうか。
なお、リンツでのインスブルック方面への速達型のレイルジェットへの連絡はそこまで良好でなく、接続関係は下記の通りです(表3、表4)。
表3. リンツからの接続列車
| リンツ着 | リンツ発 | インスブルック着 | |
| EC333 | 14:06 | ||
| RJ166 | 14:45 | 17:44 |
表4. リンツへの接続列車
| インスブルック発 | リンツ着 | リンツ発 | |
| RJ765 | 8:17 | 11:15 | |
| EC332 | 11:54 |
逆にウィーン方面への連絡はそれなりに考慮されており、ウィーンとチェコ南部との行き来に力点を置いたのか、ダイヤの都合上の偶然なのでしょうか。広域アクセスを考慮すると、オーストリア西部との接続に力点を置くと良いとは感じます。

写真2. チェコ国鉄車によるユーロシティ(2等車)
これらのユーロシティは、(オーストリア国鉄車でなく)チェコ国鉄車で運行されます。

写真3. チェコ国鉄車によるユーロシティ(1等車)
ユーロシティだけあり、1等車もあります(写真3)。ヨーロッパ地区において、1等車は黄色の飾り帯が義務づけられていますので、(この列車に限らず)1等車の識別は容易です。

写真4. 2等車は昔ながらのコンパートメントスタイル
私が見た感じ、2等車は昔ながらのコンパートメントスタイルでした(写真4)。欧州地区のコンパートメント車は端に通路がありますが、中央通路方式の方が部屋の圧迫感も少なく、車両全体の定員を確保できる(コンパートメントだと横3列だが中央通路だと横4列)と感じ、設計を見直したほうが良いと思います。

写真5. 1等車は横3列の開放室
コンパートメントスタイルの2等と異なり、1等車は横3列の開放室です(写真5)。私が見たところ、中欧地区の「昔ながら」の列車であっても、1等車は開放タイプの車両に変わっていることが多いです。

写真6. 1等車には「ビストロ」も連結される
1等車の一角には「ビストロ」も連結されています(写真6)。ヨーロッパ地区のビストロとは、売店(場合によっては自動販売機)スペースがあることを指すと理解しています。飲みものや軽食をここで頼むことはできるのでしょう。

(参考)写真7. 私が思い浮かべるビストロの例(やみつきビストロ公式サイトより引用、ビストロ 新宿で検索した結果であり、他意はありません)
ビストロというとこのような飲食店のイメージですが(写真7)、欧州の列車に乗るとこのようなイメージを覆されます。
なお、オーストリアでもチェコでもユーロシティの座席は任意指定制ですので、座席指定は必須ではありません。予約した座席だけ指定席であり、予約していない座席は自由席ということです。東京地区に住んでいる人には、都区内発着のJR東日本の在来線特急の定期列車と似たシステムと説明するとわかりやすいでしょうか。座席上に予約区間が明示されているのは基本ですが…。
ヨーロッパ地区ではよくあることですが、早期にキャンセル不可・変更不可のチケットを買うと安く着きます。この日はハルシュタットから通しの1等車の乗車券を買いましたが、32.8ユーロでした。
リンツからチェスケーブジェヨビツェまでのECに実際に乗る
御託はこの程度にして、実際に乗りましょう!

写真8. リンツに停車中のユーロシティ
リンツに停車中のユーロシティです(写真8)。端のホームというのに、それも先頭よりに停車していると乗りかえに不便…。

写真9. 機関車はホームの先頭ギリギリ
機関車はホーム先頭ギリギリです(写真9)。これでは機関車の写真をまともに撮影できません(撮影できなくとも困るのは私のようなマニアだけなので利用上の問題はないけど)。

写真10. 機関車を別の角度から撮影
機関車を別の角度から撮影しました(写真10)。

写真11. 1等車の車内
1等車の車内です(写真11)。横2列+1列の横3列配列と、ヨーロッパ地区の1等車としては通常の配置です。

写真12. 座席の向きは固定される
座席の向きは固定されます(写真12)。これは欧州では一般的な傾向です。

写真13. ボックス席にはテーブルがある
ボックス席にはテーブルが設置されています(写真13)。折り畳み式のテーブルです。座席割と窓割が一致していないのは、ヨーロッパ地区ではよくあることです。日本のように窓割と座席割を一致させ、任意の向きに回転できる、回転リクライニングシートを標準装備したら良いと感じてしまいます。

写真14. ボックス席の視点から
ボックス席の視点から眺めました(写真14)。前のご夫婦(に見えた)は窓側を予約していましたが、幸いなことに車窓に興味なさそうで、ご主人が通路側に移動してくれました。
教科書の記述を信じると、予約区間が記載されている座席を避けるのですが、チェコ国鉄車で国外のオーストリアでは本領発揮できないのか、一切の表示が消えていました。モニタはチェコ国鉄のマークだけ表示、予約区間は非表示というありさまです。よって、座席予約していない私はどこに座って良いのか困りました。とりあえず空いていそうな席に座りましたが、前述の通りご夫婦の席でした。
このような場合、(乗客側の態度はともかく)車掌さんに食ってかかるのが日本で見かける光景ですが、欧州では乗客どうしで解決してしまいます。前日の列車でも同様の光景がありましたが、これが日本と欧州の違いと感じました。
日本だと、私が予約済の席に座ったことで、「(予約していないほかの席に座った人が)他の席に移動し、その人がどかされたらどうしよう?」と心配してしまいますが、そのときはそのときです。他の席で何とか解決するのでしょう。

写真15. 食事のメニューが置いてある
1等車だけのサービスかもしれませんが、食事のメニューが置いてあります(写真15)。写真付きのメニューで親切です。上から2番目の料理をいただきましょう!
車掌さんとは別に食堂スタッフが巡回しており、注文をとる形です。料理が来る前に検札があった記憶があります。

写真16. 料理が運ばれてきた
料理(スヴィーチコヴァ・ナ・スメタニェ)が運ばれてきました(写真16)。料理をいただくためのテーブルでしたか!ビストロではサンドイッチ程度しか出されないと想定していたので、良い意味で誤算です(手元のカメラの撮影時刻を見ると12:14に提供されていました、発車20分後のことです)。

写真17. 食堂車スタッフが車内販売も実施!
食堂車スタッフが車内販売も実施していました(写真17)。これはオーストリアでもチェコでもです。

写真18. リンツを発車!
そのようなやり取りはありましたが、リンツを発車してしばらくしたらそれも落ち着き、車窓を眺めます(写真18)。

写真19. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真19)。

写真20. のどかな住宅街が広がる
のどかな住宅街が広がります(写真20)。

写真21. 渓谷を眺める
渓谷を眺めます(写真21)。

写真22. ルンギッツ付近を走行中
ルンギッツ付近を走行中です(写真22)。リンツを出るとプレーガルテンまで停車せず、(人の出入りがないため)落ち着いた車内空間が実現しています。

写真23. 雄大な風景が展開
雄大な風景が広がります(写真23)。

写真24. 徐々に高度を稼ぐ
オーストリアとチェコの間はやや標高の高いです。それに向かい、徐々に高度を稼ぎます(写真24)。このあたりで先述の料理がきました。

写真25. 街が現れる
街が現れます(写真25)。オーストリアらしく整備された感じです。

写真26. プレーガルテンに停車!
最初の停車駅、プレーガルテンに停車します(写真26)。ここで乗車があり、陣取っている席に座席指定済の客が現れる可能性も考えましたが、降りる人のほうが目立ちました。

写真27. のどかな風景を走る
のどかな風景を走ります(写真27)。

写真28. のどかな風景を走る
引き続きのどかな風景を走ります(写真28)。

写真29. のどかな風景が広がる
のどかな風景が広がります(写真29)。

写真30. 急に線路が増えてきた
のどかな風景のなか、急に線路が増えてきました(写真30)。国境に近いズンメラウに停車です。

写真31. のどかな風景が広がる
のどかな風景が続きます(写真31)。

写真32. オーストリアからチェコに入る
オーストリアからチェコに入ります(写真32)。

写真33. 架線柱が変わった
今や、オーストリアもチェコもEU加盟国かつシェンゲン協定加盟国です。そのため、国境での手続きは特になく、あっさりと通過します。国が変わったことを実感するのが、架線柱の形状です。

写真34. ホルニー・ドボジシュチェに停車!
ホルニー・ドボジシュチェに停車します(写真34)。ただし、ここは運転停車という意味が強く、客扱いはありません。ここで乗務員が交替するのでしょうか。オーストリアで検札を受けましたが、チェコでも再度検札を受けました。

写真35. のどかな風景は続く
国境を越えたとはいえ、のどかな風景が続きます(写真35)。

写真36. 次の停車駅が表示される
次の停車駅が表示されます(写真36)。チェコに入り、液晶画面から情報が提供されるようになりました。ここまでは「国外」だったから運行情報を取得できなかったの?そのような眼で見ると、座席予約区間も表示されるようになりました。

写真39. 建物が見える
建物が見えます(写真39)。さきほどの駅舎といい、建物のようすがオーストリア側と異なります。このような光景も旅行する舞台がオーストリアから別の国に変わったことを実感します。

写真40. 牧草を乾燥させている様子
牧草を自然乾燥させている様子も見えました(写真40)。このあたりは工業地帯というよりも農業地帯なのでしょう。

写真41. 建物が増えてきた
しばらく走り、建物が増えてきました(写真41)。南ボヘミア(※)地区最大の都市、チェスケーブジェヨビツェ(人口:10万人弱)に近づいてきたのです。
※ボヘミア:チェコ西部を指す地理用語。プラハも含まれる。チェコ東部はモラヴィアと称される

写真42. 車両基地がある
車両基地があります(写真42)。

写真43. 新しい車両もある
新しい「国鉄車」もあります(写真43)。日本の趣味者においては「国鉄型」は郷愁を内包したニュアンスが使われますが、こちらでは国鉄は現役の組織であり、このような新しい「国鉄車」もあります。

写真44. 建物が古く見える
出発地のオーストリアより建物が古く見えます(写真44)。このような風景を見ると、国境越えを改めて感じます。

写真45. チェスケーブジェヨビツェに到着!
私はプラハまで乗らず、チェスケー・ブジェヨビツェで降りました(写真45)。2時間の列車旅でした。
オーストリアではEC332とだけ表示されていましたが、チェコ国内ではExという表示も見えます。特急列車と訳せばよいのでしょうか?チェコではICという案内もありますが、両者の違いだの難しく考えることはやめましょう!
ホームの反対側にはRのブルノ行きも停車しています。Rも日本語では特急列車に分類されますが、Exとの違いを考えることはやめましょう!ともかくいえることは、プルゼニ始発ブルノ行きと、リンツ始発プラハ行きという別の系統が同じホームで接続していることです。

(参考)写真46. 尼崎で別系統が連絡する様子(尼崎での接続風景に掲載の写真を高画質化のうえ掲載)
日本の例を示しました(写真46)。これは有名な接続例と思います。
余談ですが、このとき(資本主義国の西ドイツに吸収された旧東ドイツを除くと)、人生初の旧社会主義国の首都以外の都市に降り立ちました。これからどのような風景に出会うのでしょうか?
リンツからチェスケー・ブジェヨビツェまで国際列車に乗ってみて

写真47. リンツで乗り込む人たち
鉄道趣味者にもあまり取り上げられることのない、リンツからチェコへの国際列車。1日1往復の系統よりも本数は確保され、時間さえ合わせれば、オーストリア中西部からチェコへのルートとして便利です。2025年9月現在、プラハからチェスケーブジェヨビツェまでは一部区間で高速化がなされ、いずれはオーストリア直通も高速化なされるでしょう。そうなれば、この系統の有用性はさらに向上するでしょう。また、チェスケーブジェヨビツェでの列車連絡によって、チェコ西部やチェコ南部へのアクセスも整備されている点も見逃せません。
他方、短編成ながらも「古き良き」国際列車という風情も味わえました。いつまでも「古き良き」ものにこだわることは必ずしも正しいとはいえませんが、趣味的にはこのような趣向も良いでしょう。
趣味者にはあまり見向きされる様子はありませんが、そうでなくとも実用的で楽しいルートがあることを改めて実感しました。
そして、チェスケーブジェヨビツェ以南の高速化もお願いしたいところです。そうすれば、ハルシュタットとチェスキークルムロフという2つの有名な観光地の周遊旅行もやりやすくなるでしょうから…。
ここまで詳細に解説しました。公式サイトから予約できると思いますが、日本語で予約できないことに不安を感じる人もいるかもしれません。下記のサイトであれば、日本語で予約できるので安心です。
Omio:ヨーロッパ鉄道旅行交通予約サイト
また、その予約にはクレジットカードが便利です。
個人的にはエポスカード海外旅行に使えるカード:エポスカードで詳細を紹介しています。
果たして前後はどこに行ったのでしょうか?
(←前)アトナング-プーフハイムからリンツまでのレイルジェット乗車記
リンツからチェスケーブジェヨビツェへの列車旅:現在地
チェスケー・ブジェヨビツェ(České Budějovice)駅を歩く(構内図も収録!)(→次)
※この旅行の全体像は25年夏中欧・イタリア旅行のまとめをご覧ください。