高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤの変化

西日暮里以来の山手線では久々の新駅となる「高輪ゲートウェイ」が開業しました。では、高輪ゲートウェイの開業によって、山手線はどのようにダイヤが変わったのでしょうか。ダイヤ改正前後のダイヤを比較しました。

山手線E235系(東京)

写真1. 東京に停車中の山手線電車(2019年に撮影)
※本記事では高輪ゲートウェイそのものについての評価はありません。

復習:所要時間とダイヤの関係

まずは、基本的な事項を確認します。高輪ゲートウェイという駅ができることで、従来は高速で通過していた場所に、停車することになります。また、単に停車するだけではなく、ドアの開閉と乗客の乗り降りにも時間を要しています。つまり、新駅ができることにより、減速するための時間と乗り降りにかかる時間が余計にかかることになります。

この時間は従来の通過速度(時速300kmと時速15kmであれば停車時間のロスタイムは異なることが予想できましょう)と必要な停車時間(1つのドアで1人しか乗り降りしないのか、40人が乗り降りするのかで停車時間が異なることは予想できましょう)で異なります。しかし、通勤電車であれば1駅あたり1分と見積もれば、だいたい正しいです。

ここまでまとめますと、理論上「高輪ゲートウェイ」開業によって山手線(と京浜東北線)の所要時間は1分増加するということです。

山手線のような環状鉄道にとって所要時間はダイヤ作成上重要なものです。1周の所要時間がダイヤ作成上は重要ということです。「山手線を1周する人はファンか暇人だけ」という指摘もあるでしょう。ここでのポイントは「乗客にとって」ではなく、「ダイヤ作成上」という文言です。現在、山手線の日中の1周は65分かかっています。例えば、13編成使用していたら、65分÷13=5分間隔となります(実際は15編成使用です)。では、仮に1周が2倍の130分になったらどうでしょうか。運転間隔は130分÷13=10分間隔と開いてしまいます。

このように、1周の所要時間は運転間隔を決める重要な要素となります。日中時間帯は余っている車両を使えば、運転間隔を維持できます。では、朝ラッシュ時はどうでしょうか。朝ラッシュ時は持てる車両をフルで運用しています。つまり、朝ラッシュ時の所要時間増加は朝ラッシュ時の減便を招きかねません(余談ですが、小田急電鉄は複々線化で大幅に増発しましたが、車両はそこまで増やしていません。これは所要時間が短縮されたために、必要な車両がそこまで必要にならなかったためです)。

そう、本記事の主題は「高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線の所要時間の変化と減便の有無の確認」なのです。特に、朝ラッシュ時の減便が懸念されるところですからね。

山手線の運転間隔の考察

高輪ゲートウェイ開業に伴い、山手線の所要時間が増加し、結果として朝ラッシュ時の減便が懸念されるところです。では、実際に減便は行われたのでしょうか。山手線は外回り、内回りともに朝ラッシュ時に混雑する区間があります。そこで、外回り・内回りの発車時刻表をダイヤ改正前後で比較しましょう。

対象は平日ダイヤとします。朝ラッシュ時の外回りは上野→東京で混雑(実際の最混雑区間は上野→御徒町)し、内回りは池袋→新宿で混雑(実際の最混雑区間は新大久保→新宿)します。そこで、外回りは東京の、内回りは新宿の、それぞれ発車時刻を取り出しました。

まずは、外回りの東京を取り上げます(表1)。

表1. 山手線外回り発車時刻表比較(東京)

2020.3ダイヤ改正(山手線、東京外回り発車時刻表)

世の中マニアの数は多くとも、ダイヤ改正前後の発車時間を全て取り上げて、それを表にまとめるようなクレイジーな者はそういないでしょう。改めて自身の「おかしさ」を実感しているところです。

さて、ダイヤ改正前後の各時間帯(5時台なら5時台)の本数の増減を一番右に示しています。12時台に1本増えて、13時台に1本減っています。同様に、16時台に1本増えて、17時台に1本減っています。しかし、これは各時間帯の増減を示しているものではありません。ダイヤ改正前では13:00発なのがダイヤ改正後に12:59発となり、1時間ごとに区切ると1本の増減があるというだけのことです。16時台と17時台についても同様です。全体として、発車時刻は1分弱の前倒しになっていることに気づかされるものの、実際には増発も減便もなされていないことがわかります。

では、内回りの新宿ではどうでしょうか(表2)。

表2. 山手線内回り発車時刻表比較(新宿)

2020.3ダイヤ改正(山手線、新宿内回り発車時刻表)

もののみごとに発車時刻が変わっていません。つまり、増発も減便もなしということです。ただし、深夜において品川行きの最終電車が1分繰り上がるなどの変化点はあります(ダイヤ改正前は0:33、ダイヤ改正後は0:32)。余談ですが、東上線最終電車(上り)から山手線品川行きの最終への接続はなされなくなりました。1年前に最終の品川行きを繰り上げたばかり(※)なのに、またですか…。

さよなら!最終の内回り品川行きに当時の様子を記録しています。

外回り、内回りともに18:00~22:00まで10分に3本の運転です。一般的な路線では、夕方ラッシュ時だけ(18時台だけ)手厚くして、他の時間は手薄にしているというダイヤを採用している路線も多いです。しかし、山手線はそのようなダイヤにしていません。これは、深夜に至るまで利用が多いという利用状況と、運転本数の増減に伴う時刻調整(たとえば池袋止まりの直前の電車は池袋でしばらくとまって運転間隔を調整する)を避けたためでしょう。

所要時間の比較

高輪ゲートウェイ開業に伴う減便はありませんでした。一般的に1駅増加で所要時間が1分伸びるのにです。では、実際の所要時間はどうなのかを比べましょう。

・朝ラッシュ時:ダイヤ改正前後で68分と変わらず(時刻調整の関係でここからずれる電車あり)
・日中時間帯:ダイヤ改正前後で65分と変わらず
・夕方ラッシュ時:ダイヤ改正前後で66~67分と変わらず

つまり、高輪ゲートウェイ開業に伴う1周の所要時間増加はありません。品川-田町は従来は3分でしたが、これが4分に増えています。この1分の増加を他の区間で帳消しにしていることがわかります。外回りの東京の発車時刻が1分弱繰り上げられていることもこれで説明できます。仮に大崎の発車時刻をダイヤ改正前後で固定した場合、東京までの所要時間を短縮し、新駅の停車時間を確保せねばなりません。これは、山手線のオール新型化によるスピードアップ(E231系よりE235系のほうが高速域の加速が鋭いと聞いたことがあります)もその要因でしょう。逆にいうと、新駅開業があっても所要時間を一定にするために新型に統一したともとらえることができます。

京浜東北線との関係

従来の山手線は京浜東北線との連携は取れていませんでした。ダイヤ改正前後で発車時刻が変わっていないことからして、ダイヤ改正後も同様です。

山手線と京浜東北線は以下の関係が良いでしょう。

・日中時間帯:山手線と京浜東北線快速が田町と田端で接続(その間では接続できないでしょう)
・そのほかの時間帯:山手線と京浜東北線が交互に運転

※山手線が3分20秒間隔、京浜東北線も3分20秒間隔であれば、両者を交互に発車させて、両者合わせて1分40秒間隔にするということです。これで、田町-田端では待ち時間がかなり短縮されます。現在は同時にやってきたりと、待ち時間が最小になるようには工夫されていません。

日中時間帯は山手線・京浜東北線ともに5分間隔として、田町と田端で山手線と京浜東北線快速が接続というのがスマートです。山手線の田町-田端の所要時間は24分、京浜東北線快速の田町-田端の所要時間は19分です。つまり、山手線と京浜東北線快速が田町を同時に発車、京浜東北線を基準にすると、田端で1本前の山手線に追いつくという格好です。そうすれば、池袋地区や渋谷地区から上野や東京への所要時間が短縮されます。

ただし、このダイヤだと山手線の本数が減ります。13分に3本の4分20秒間隔運転から、15分に3本の5分間隔運転になり、ただでさえ混んでいる山手線西側の混雑がさらに悪化します。これについては、埼京線や湘南新宿ラインの渋谷駅移設による乗客のシフト、埼京線-相鉄線直通の新宿折り返しの解消による、池袋-渋谷・恵比寿・大崎の実質的増発(毎時7本から毎時9本)による乗客のシフトが重要です。また、池袋-大崎に救済電車をねじ込むことも手です。15分に1本程度の区間運転の電車を割り込ませ、池袋と大崎で発車10分前に入線して、急がない人をそちらに誘導するという手です。

朝ラッシュ時は無理して山手線と京浜東北線の時刻を考慮する必要はありません。待ち時間が短いためです。夕方ラッシュも同様です。夜間は考慮しても良いことでしょう。また、京浜東北線のラッシュ逆方向に「区間快速」を運転することも手です。乗り降りの多くない上野-田端の途中駅で、ラッシュの逆方向のみ快速運転をするのです。ラッシュ時の順方向で快速運転を行うと途中駅での乗りかえでホームが混乱するのでやらないのが無難です。

高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤまとめ

高輪ゲートウェイ開業に伴う山手線のダイヤを確認しました。懸念事項の朝ラッシュ時の減便もなく、他の時間帯も含めて本数は維持されていることが明らかとなりました。これは、高輪ゲートウェイの停車時間のロスタイムを別の区間で挽回することで、1周の所要時間を維持しているから可能になったことです。このような一連の施策から、高輪ゲートウェイ開業で山手線のサービス水準を低下させないというJR側の配慮がうかがえます。

ただし、良くも悪くもサービス水準は「維持」です。逆にいうと、サービスは向上もしていません。ダイヤ改正前から京浜東北線との連携は取れていません。今後は京浜東北線との連携の強化など、さらなるサービスアップを望みたいものです。

実際に高輪ゲートウェイの駅の訪問記も書いています。

高輪ゲートウェイの訪問記

山手線で30番目の駅、高輪ゲートウェイ。駅名や駅名標に多くの意見がありますが、新しい街の象徴となる駅であることは事実です。そのような駅を訪問してみました。
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