鉄道について考える~ホームドアについて

ホームでの事故防止という観点から、ホームドアの整備が声高に叫ばれています。では、ホームドアは(費用がかかる以外の)デメリットは皆無なのでしょうか?多くの人が意識していないホームドアのデメリットを挙げるとともに、そのデメリットをなくす方法についても考えます。


ホームの危険性とホームドアの有効性

私たちは何食わぬ顔で鉄道を利用しています。ホームで列車を待ち、適切なタイミングで乗降します。ホームからは簡単に線路に転落してしまう構造となっています。もしも列車が入線する直前のタイミングで線路に転落してしまったら、最悪命を犠牲にしてしまうことになります。大多数の利用者はそのような危険を承知で(そしてそれほど気にせずに)鉄道を利用していますが、他のことで注意力が削がれた場合、ホームから線路に転落するという危険性と隣り合わせなのです。

では、どのような策が有効なのでしょうか?その1つの答えがホームドアです。

山手線E231系(日暮里)

写真1. ホームドア使用例(日暮里)

列車のドアが開くタイミングだけホームのゲートが開く方式です。このようにすれば、列車の乗り降りのタイミング以外はホームから転落のしようがありませんから、転落することは避けられます。

※強い意志でゲートをまたがれると、結局は事故になってしまいます。それでも「強い意志」がなければ線路に転落しないのはより安全です。

ホームドアの問題点

そんなホームドアですが、欠点がないわけではありません。その欠点を見てみましょう。

停車時間が長くなる

1つ目の欠点は、停車時間が長くなってしまうことです。例えば、山手線の場合は以下の要領でホームドアが作動します。

1) ホームドアが開く
2) その2秒後に、車両のドアが開く
3) 乗客が乗り降りする
4) 車両のドアが閉まる
5) ホームドアも閉まるが、車両のドアが閉まり終わる3秒後にようやく閉まり終わる

ここで、ホームドアが存在しない場合と比較して、停車時間が5秒余計にかかっています。ホームドアと車両のドアが閉まるタイミングが一致しない(させない)のは車両とホームの隙間に取り残されないためと解釈できます(タイミングが一致しなければ車両かホームのどちらかに移動できる)が、ホームドアと車両のドアの開くタイミングが一致しないのは時間の無駄でしかありません。たかが5秒と考えるかもしれませんが、山手線は29駅(17駅という人もいますが…)ありますので、1周で2分25秒のロスとなってしまいます。所要時間が増加するということは、輸送力が低下(※)してしまいます。

※1周60分と120分で考えた場合、同じ車両数(例えば30編成)でどちらがより多くの本数を確保できるか考えてみましょう。運転間隔が30秒異なるだけで混雑率が異なる東京の電車の場合、少しでも輸送力は多くしたいのです。そのため、ホームドア導入で輸送力が低下する懸念が存在します。

駅間所要時間の増加

次のデメリットは「駅間の所要時間が増加」するというものです。ホームドアが設置された場合は、ホームドアの位置と車両のドアの位置をある程度合わせる必要があります。位置合わせがシビアになるということは、当然ながら運転操作が慎重になることを意味します。運転操作が慎重になるということは、どうしても所要時間が増加してしまいます。

※私の職場の最寄駅はホームドアは付いていませんが、平気で乗車位置から1m以上離れた場所に停車します。ホームドア設置駅ではできない芸当です。

運用する車両が限定される

次の問題点は、運用される車両が限定されるという点です。例えば、東急渋谷駅に導入されているタイプのホームドアは4ドア車しか対応できません。近年の通勤ライナー型車両(TJライナーや運転開始前のS-TRAINなど)は4ドア車で(通勤車としての使用も考慮されているとはいえ)中途半端な存在といえます。日中の無料列車と朝夕のライナー(と朝ピーク時は都心から離れた運用)であれば3ドア車でも対応可能であり、供給座席数は増加します。これを行わない理由はいくつかあるのでしょうが、その1つがホームドアでしょう。すなわち、ホームドアがあるがゆえに車両設計に余計な制約が存在してしまうのです。

このようにホームドアは安全性は確実に高まりますが、(整備する鉄道会社のコスト負担以外にも)伴う負担が大きいのも事実です。

故障の機会が増える

ホームドアは言ってしまえば、1つの設備です。この設備を保有するということは、故障の確率が増えるということです。例えば、2018年1月22日は都内で大雪が降りましたが、このときに巣鴨でホームドアに雪がはさまったのか、発車が遅れてしまうことがありました(私はその電車に乗っていたのです)。このことを想定したためか、巣鴨などの各駅には設備関連の人員が配置されていました(このあたりはさすがプロフェッショナルと思います)。ただし、本来は合理化となるはずの設備なのに、余計に人員を割かなければならなかった事実は残ります。ホームドアがなければこのような問題は発生していませんでした。

ただし、このような大雪でもホームから線路に転落しなくて済むようにホームドアが設置されていますので、これをことさら取り上げて、「ホームドアがまずい」という指摘をするつもりはありません。このように設備を1つ付けたら、それを維持・管理するのに人員が割かれてしまうということを利用者の一員として改めて実感したのです。

ホームドアの問題点の改善

ホームドアについての問題点を4つ挙げさせていただきました。

1) 停車時間の増加
2) 駅間所要時間の増加
3) 運用される車両の限定
4) 新規設備設置によるメンテナンスコストの増大

これらの問題点を改善するホームドアがあったので、動画を挙げさせていただきます。

東急田園都市線 つきみ野駅 昇降スクリーン式ホーム柵  実証実験

この動画をご覧いただければわかりますが、ホームドアが作動する前後の挙動は以下の通りです。

1) 列車の到着直前にホームドアが上方に開く
2) 車両のドアが開く
3) 客扱いをする
4) 車両のドアが閉まる
5) 発車する
6) 発車後にホームドアが下方に閉まる

この方式はホームドアが動作するがゆえのロスタイムはありません。そのため、1つ目の問題点(停車時間が長くなる)は解消されます。また、停車位置を厳密に合わせる必要もありませんので、2つ目の問題点(駅間所要時間が長くなる)も解消されます。さらに、ドア位置を決める方式ではありませんので、3つ目の問題点もありません(あえて言えば、車両の長さが異なると対応できません)。
なお、バータイプのホームドアは数種類ありますが、上記のように車両のドアが開く直前に開ききり、なおかつホームドアが完全に閉じる前に発車できるのであれば、このような形式でも構いません(写真2)。

拝島のホームドア

写真2. 拝島駅に導入されたタイプ(16年夏ごろに撮影)

ただし、このようなタイプは安全性にやや問題があります。ホームドアが完全に閉まる前に発車するとなると、発車時の巻き込み事故は防ぎきれません。それでも、利用客が多くてこのような危険が予想される駅はホームドアの動くタイミングをカスタマイズすれば良いわけですし、ホームドアがない状態よりも安全なことは間違いないでしょう。
このように、ホームドアのデメリットを少しでもなくすように進化されれば、なんて思います。


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