和光市と渋谷を結ぶ地下鉄副都心線。実際には池袋、新宿(厳密には新宿三丁目ですが)、渋谷といういわゆる副都心を結ぶ路線としてイメージされていることでしょう。そして、渋谷からは東急東横線に直通して横浜に直結し、北側では東武東上線や西武線と直結し、埼玉県から神奈川県まで直結する南北軸として機能しています。そして、南北を直結する流れや、南北から副都心への流れが交錯しています。その大きな目的地が新宿でしょう。その新宿近辺では混雑はどのような具合なのでしょうか?
写真. 東急車が多い副都心線
副都心線の混雑状況(生データ)
私は、副都心線でも混雑が予想される新宿三丁目-北参道で混雑を実際に調査しました(表1、表2)。赤字の各駅停車は東急線内急行であることを示します。混雑ポイントという独自の指標を使用していますので、その基準も示します(表3)。簡単にいうと、青が空いていて、赤が混んでいる、そして暖色系だと立ちが発生しているということです。
表1. 休日昼間の新宿三丁目→北参道の混雑状況
表2. 休日昼間の北参道→新宿三丁目の混雑状況
表3. 混雑ポイントの概要
簡単に分析すると、以下の2点がわかります。空いている車両や空いている列車を選択すると快適に移動できます。
・急行は混雑しており、各駅停車は空いている
・ホームの渋谷よりの車両は比較的空いている
混雑の詳細な分析
通常の利用時には、上の混雑状況の分析でじゅうぶんでしょうが、私のようなマニアはより深く分析したがります。そこで、もう少し分析しましょう。
まずは層別してみる
分析のセオリーは層別することと聞いております。そのセオリーにしたがって、種別ごとに混雑状況を層別しましょう(表4)。
表4. 種別ごとの混雑状況まとめ
ここで、種別ごとの乗客分担率を求めるために、急行(10両編成)もあえて8両編成として乗車率をまとめています。ここで混雑「ポイント「ではなく、混雑「率」に換算していることにご注意ください。乗車率に換算する計算過程は誰も興味ないでしょうから、ここでは示しません。
急行が混雑していることは明白ですが、東急線内急行の各駅停車の混雑率が北行と南行でかなり異なることが読み取れます。南行のほうが東急線内急行の各駅停車の混雑率が低いのです。この理由を考えてみましょう。
これはダイヤを見れば簡単にわかります。北行と南行で以下のような違いがあるのです。
北行は急行(東横線内特急)の直前に各駅停車(東横線内急行)が到着する
→東急線内では急行(東横線内特急)と各駅停車(東横線内急行)の間隔は適度に散らばっており、各駅停車(東横線内急行)に乗る人も多い
南行は急行(東横線内特急)の直後に各駅停車(東横線内急行)が発車する
→新宿三丁目から東横線に向かう人は急行(東横線内特急)に集中する
現に、南行のほうが北行よりも急行が混雑していることがわかります。参考までに、急行と各駅停車(東横線内急行)の混雑率の平均を求めてみましょう。北行は55%、南行は54%とほとんど同じです。このため、絶対数の違いではなく、集中率の違いと考えることができます。
ここで、もう1つの事実がわかります。それは、新宿三丁目での乗り降りが多そうだということです。仮に、新宿三丁目での乗り降りが少ない場合、北行も急行に乗客が集中します。それは、各駅停車(東横線内急行)は新宿三丁目-池袋で急行に抜かされます。このことがある程度周知されていれば、東横線内からの乗客は各駅停車(東横線内急行)を避けるはずです。したがって、急行に乗客が集中します。しかし、現実には北行の急行への乗客集中はそれほど生じていません。これは、新宿三丁目での乗り降りが少ないという仮定が誤っていたことを示します。データではなく実感でも新宿三丁目での乗り降りが多いです。
ダイヤパターンから分析する
分析のセオリーの1つに傾向の違うものを分析せよ、というものがあります。そのセオリーにしたがって、池袋発着の各駅停車に注目します。池袋発着の各駅停車は東横線の元住吉から一切追い抜きがありません。これは意外と集客するポテンシャルがあることを示します。それにも関わらず、空いています。ここからわかることは、池袋発着であることが敬遠されているということです。もう1つ推定できることは、東横線から乗車した乗客は渋谷あたりで降りることが多いということです。ただし、東横線内も空いている可能性もありますから、東横線から乗車した乗客は渋谷あたりで降りることが多いとは言い切れません。そのため、東横線から乗車した乗客は渋谷あたりで降りるとは断言しないことにします。
池袋発着であることが避けられる理由は明らかです。そう、池袋よりも北側が目的地である乗客が多いことがうかがえます。もしも、北参道-新宿三丁目を利用する乗客のほとんどが池袋以南の利用客であれば、池袋発着を避ける理由がありません。逆にいえば、池袋以南の急行通過駅を利用する乗客はそれほど多くないのです。この理由は、近くに山手線の駅があり池袋、新宿、渋谷に向かうのにはそちらが便利であること、そして2008年開業と新しいことから駅周辺が街の中心ではないことが挙げられるでしょう。私が目白と雑司が谷の中間に住んでいたら、間違えなく山手線を利用するでしょう。
西武線方面と和光市方面で利用状況に差があるかどうかも見てみましたが、明らかな差は見られませんでした。小竹向原まで向かえば別系統の接続があることが認識されているのかもしれません。
簡単なダイヤ提案
池袋発着が空いていること(そして池袋以南の各駅の利用が振るわないこと)、急行が混んでいることがはっきりとわかります。それであれば、池袋発着を急行に変更して東急線内も特急運転することも1つの手でしょう。幸いなことに相鉄直通が控えています。副都心方面からの相鉄直通はJRに譲るとしても、新横浜まで直通することは確実です(新横浜までは東急扱いです)。それであれば、池袋-菊名の各駅停車を池袋-新横浜の特急(日吉停車の有無はここでは論じません)に振り替えるのが良いでしょう。
副都心線混雑データまとめへのリンク
ここまで特定の駅での混雑調査結果という「狭くて深い」情報を示しました。では、どの区間が混み、どの区間が空いているなどの「広くて深い」情報を示したページはないのでしょうか。そのような声に応えて、以下のページを作成いたしました。