千葉県から東京への通勤路線としてメジャーな総武線快速。そのせいか首都圏でも有数の混雑です。新型車両では座席配列を変えて詰め込めるようにしています。では、どの程度混んでいるのでしょうか。実際に最混雑区間の新小岩→錦糸町の混雑を見てみました。
写真1. 錦糸町で降りる人々
総武線快速の朝ラッシュ時の混雑状況まとめ
以下、長い本文を読む気がない人のために、簡単にまとめます。
・目視での混雑率は163%である
・上記の混雑率はドア付近に圧迫が生じ、座席前もやや圧迫されるというもの
・混雑のピークは8:20ごろである
・混んでいる車両は編成中ほどの2、3、6、7号車
・比較的空いているのは、編成両端の増1号車と11号車
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回の調査は錦糸町到着時(新小岩→錦糸町)について行いました。新小岩までの各停車駅で乗客が乗りこみ、錦糸町で総武線各駅停車に乗りかえて新宿方面に向かう人が降りるので、錦糸町到着時が最も混むのです。
混雑状況の分析
混雑状況の生データから細かく分析することにします。
生データを見る
まずは、生データをさらしましょう(表2)。
表2. 総武線快速混雑状況(平日朝ラッシュ、新小岩→錦糸町)
私が見た範囲では混雑率160%程度です。ただし、この中には最混雑時間帯ではないものもありますので、あくまでも後で解析する範囲で混雑率を見てみましょう。
混雑状況の分析
では、混雑状況を分析しましょう。まず、どの時間帯が最も混んでいるのかの分析です(表3)。
表3. "総武線快速混雑状況(平日朝ラッシュ、新小岩→錦糸町、時間別)
10分ごとに時間を区切ると、8:20ごろが最も混雑しています。この前後60分が最混雑時間帯とすると、混雑時間帯は錦糸町到着で7:50~8:50の1時間で、最も混んでいるのは8:20ごろということです。その60分の混雑率は163%です。混雑率163%は、「ドア付近に圧迫が生じ、座席前もやや圧迫される」というものです。公式発表の181%ほどではありませんが、混雑が認められます。
今回の混雑調査では混雑率163%、公式発表は混雑率181%です。両者の測定方法は基本的に現場で見ていますし、調査日によってそこまで混雑率が異なることもないでしょう。では、どうして数字がここまで異なるのでしょうか。
混雑率は(輸送している人の数)/(列車の定員)で求められます。公式発表の数字の「列車の定員」にはグリーン車や特急列車は含まれていません。特急列車の定員はたかが知れていますが、グリーン車の定員は無視できる数字ではありません。公式の混雑率181%という数字はグリーン車に乗っている人が0人という前提で計算しています。実際にはグリーン車の座席定員は180人(2両)です。立ちもいるので、実際にはグリーン車には200人乗っていることでしょう。
普通車の定員が140人/両とした場合、混雑率181%だと普通車13両に乗っているのは3294人です。ただし、実際にはグリーン車に200人乗っていますので、普通車に乗っているのは3094人です。この3094人が13両に乗っているとすると、本当の混雑率は170%になります。つまり、グリーン車に乗っている人を正確にカウントした場合の公式の混雑率は170%となり、私の観察結果の163%とだいぶ近くなります。
次に、車両ごとの混雑を見てみましょう(表4)。
表4. 総武線快速混雑状況(平日朝ラッシュ、新小岩→錦糸町、車両別)
この分析は最混雑時間帯60分に限定したものです。編成中ほどの2、3、6、7号車が混んでいて、両端の増1号車と11号車が比較的空いていることがわかります。
また、東京行きは気持ち空いていることもわかります。前後の列車に比べてわずかに空いているのです。実例を見てみましょう。
例1. 7:57発東京行きは、前の逗子行きと後の品川行きより空いている
例2. 8:09発東京行きは、前の大船行きと後の品川行きより空いている
東京までで降りる人は可能であれば、東京行きを選ぶとわずかに空いていて、少しでも快適に通勤できます。通勤快速は拍子抜けするほど空いていました。通勤快速は千葉-錦糸町で船橋しか停車しません。ということは、通勤快速の通過する稲毛、津田沼、市川と新小岩でそれなりの乗客が乗りこむことがわかります。
混雑を緩和するダイヤを考える
実際の混雑は165%~170%程度とはいえ、混んでいることには変わりません。では、どのようにすればよりマシな混雑になるのでしょうか。1つは列車の増発です。7:54~8:53のピーク1時間に18本しか運転されていません。15両編成と長いとはいえ、この本数は少なすぎです。錦糸町や船橋などで後続列車が素早く進入できるように信号設備を改良、E235系化による加速性能向上による列車間隔の圧縮などで6本程度増加できましょう。もしも、錦糸町の停車時間がネックというのであれば、増発ぶんの一部は錦糸町通過としても良いでしょう。そうすると、混雑率は122%程度となり、だいぶ空くことでしょう。それが無理で3本しか増発できない(毎時21本運転)としても、混雑率は140%で首都圏基準ではマシなほうになります。これができればベストです。
その他の施策として、ピーク前後の増発も考えられます。例えば、8:59発は混雑率169%と非常に混んでいますが、この原因は前の快速と8分間隔が開いていることです。8:46、8:51、8:59となっていますが、8:51発を8:50発として8:56発を増発すれば、この電車の混雑は一気に解消されます。混雑が一気に解消されれば、最ピーク時の混雑に嫌気がさしている人の一部がこちらにシフトします。
また、錦糸町発7:16~7:36は5分間隔で運転されていますが、これを4分間隔に増発することや、錦糸町7:03発と7:16発の13分の間に1本増発することで、ピーク前の混雑が緩和されて、ピーク時からシフトする乗客もいることでしょう。また、特急の船橋停車も良いでしょう。船橋に停車すれば若干でも乗客を拾えます。1人でも乗客を拾えば、前後の快速の混雑が緩和するのです。
写真2. ノロノロ通過する成田エクスプレス
総武線快速の混雑まとめ
インターネット上では混雑が激しいとされる総武線快速ですが、公式発表ほどに混んでいないことが明らかとなりました。この理由として、グリーン車の輸送力が計算外であることが挙げられます。そうはいっても、それなりに混んでいて首都圏では標準以上の混雑であることは明らかです。利用者としてできる混雑回避策は両端の車両を選ぶことです。
また、本数はそこまで多くありません。他の路線の実績からもう少し増発が可能でしょう。もしもピーク60分間の増発がかなわないのであれば、ピーク前後に増発してピークから乗客をシフトさせる方策もアリです。このように、少しでも快適な通勤ができるように工夫してもらいたいものです。
・朝の混雑はわかった!じゃあ、夕方の混雑はどうなの?(快速と各駅停車の両方を収録しています)
総武線の混雑状況(平日夕方時間帯、錦糸町-亀戸、現場90分調査)
・乗りかえた先の各駅停車の朝の混雑はどうなの?
総武線各駅停車の混雑状況(平日朝ラッシュ時、錦糸町-両国、現場調査)
・「狭くて深い」ことはわかったけど、総武線の基本的な混雑データなどの「広くて浅い」ことを教えて!
総武線(混雑基本データ)
※それぞれ別ウィンドウで開きます。
コメント
この総武線快速は、まともな混雑率にするためには24本/h体制まで増発することが必要みたい(2分30秒間隔。千葉→津田沼が現状平均5分間隔くらいみたいだから、これをきっちり5分間隔に揃えてそのちょうど真ん中に津田沼発を出すと丁度よい計算)。
※今の混雑率では東京の恥と認識すべし。東京でオリンピックを開くのなら、外国人に見られても恥ずかしくないように・・・
が、
・総武快速線使用車両E217系の加速性能が2.0km/h/sと低い目(中距離電車の加速性能が低いのは国鉄時代からの伝統)
・列車線という性格上いろいろな性能の列車(貨物列車とか機関車牽引の団体列車とか…)が乗り入れてくるのは当たり前。
・一番ブレーキ性能の低い列車に合わせて速度制限パターンを設定せざるを得ない(担当者の保身を考えれば当然…
※国鉄時代からの『悪しき』伝統…とまでは言いたくないが、ぶち壊したい伝統ではある
というようなことを考慮すれば、2分30秒間隔は限界の数字。津田沼~東京駅間の六駅(船橋・市川・新小岩・錦糸町・馬喰町・新日本橋)がすべて交互発着不能。どこか一つでも隘路駅(停車時間が異常に長くなる駅)があればそこで詰まってしまうので列車増発はできない。
錦糸町が一番の隘路に見える。
錦糸町は、東京メトロへの乗換だけでなく 快速⇒各駅停車の乗換の人が多く 朝の上り快速なら半分くらいの人が降りることになるみたいなので、乗降に時間が掛かるのは道理でしかない。全員が降りるのなら話は簡単だが、降りる人と降りずに東京駅方面に向かう人とが混乗させられているので、降りる人は降りない人をかき分けて降りる/降りない人は押し出されないように抵抗する。
益々乗降に時間がかかるようになる⇒だから列車本数が増やせない。
卵が先か鶏が先か…。快速⇒各駅停車が対面乗換でなく階段を使わねばならない(国鉄はどうせそんなもの…)のも問題。降りる人の人数が多いにも拘らず階段の数が限られるので(列車を長くしたのならホーム延伸だけでなく階段も増やすべし!と言いたくなるが、赤字国鉄にそんなこと言っても無理…)。朝なんか次の電車が来るまでにホームの人が捌け切らず ホームに人がどんどん人が溜まり・・・となって、乗降に時間がかかるのを益々助長しているのも想像に難しくない。
悪平等の全列車各駅停車は止めて、例えば
通勤快速もどき:(千葉以遠→)千葉→稲毛→津田沼→船橋→(市川・新小岩・錦糸町通過:市川で先行快速を抜く)→馬喰町→新日本橋→東京
快速:津田沼発→船橋→市川→新小岩→錦糸町→馬喰町→新日本橋→東京
の交互なんてのにして、東京駅方面に行く人は極力通勤快速もどきに誘導/快速は錦糸町で降りる人を主に乗ってもらうようにすればよいであろうが、これでは反発が大きく実施は困難が予測できる。
それに、乗り換えた先の各駅停車がギュウギュウ詰めになるのも必ずしも看視できる問題ではなく、理想的なのは
・増発分6本/hは 錦糸町から秋葉原まで(緩行線に)乗り入れる
であろう。が、そのためには、かなりの設備投資(緩行線の錦糸町~秋葉原3.4kmの複々線化とか)が必要になるが、最悪レベルの満員電車解消のためだからこれくらいの投資はすべき…という方向に持っていくように東京都知事が頑張るべきであったであろう。
伝統壊しさま、コメントありがとうございます。
1) 加速度について
現在のE217系の起動加速度が2.0km/h/sと低いのは問題ですね。朝ラッシュ時の運転間隔は(総武線快速の場合は)錦糸町で決定されるように思えます。
運転間隔が決まるのは、(停車時間) + (前の電車が駅から離れる時間) + (後の電車が駅近くから停車位置に移動する時間) で求められることでしょう。(前の電車が駅から離れる時間)は等加速度直線運動で説明できましょう。物理学の教えるところによると、この時間は加速度の逆数の平方根に比例します。
現在のE217系の起動加速度は2.0km/h/s(0.556m/s2)です。E235系では3.0km/h/s(0.833m/s2)のポテンシャルがあるでしょう。仮に先行電車の最後尾がホームを外れるまで後続電車が入線できないとすると、300m離れる必要があります。E217系だと32.8秒かかります。一方、E235系だと26.8秒です。つまり、運転間隔が6秒短縮できます。この数字は馬鹿にはできません。
2) 列車種別について
通勤快速をご提案されていますが、現在の通勤快速は空いています。それを踏まえて、市川追い抜きを提案されたのでしょうか。机上の案では全体の本数を増やせますが、錦糸町に停車する残りの快速の停車時間がかさみ、かえって逆効果になるリスクもあります。また、遠近分離も同時に提案されていますが、千葉→錦糸町などの移動が大変不便になるというリスクも想定されます。
やるとしたら、船橋から馬喰町までノンストップの通勤特快(種別名は何でも良いです)を設定し、快速を市川で追い抜く程度でしょう。全体の本数確保のために、ラッシュピーク時に運転するかどうかでしょう。いずれにせよ、このような種別の導入は慎重に考えるべきでしょう。
3) 増発ぶんの行き場
総武線快速の増加を緩行線に流すことを提案されています。しかし、これにはかなりのコストがかかることは容易に想像できます。総武線各駅停車は日本でも有数の混雑路線です。この混雑緩和にも良いでしょう。ただし、どうせ錦糸町から秋葉原まで線路を増やすのであれば、毎時6本などけち臭いことをいわずに、もっと本数を確保したいものですよね。
ただし、このような線増はコストが莫大にかかるうえに、ネットワーク性は向上しません。このような費用があるのであれば、東京23区の外縁を通る環状線を建設し、23区外側と23区外側の流動が都心を通らないようにするほうが得策かもしれません。