地下鉄半蔵門線は、渋谷と大手町を通り、有名ではないもののそれなりに利用の多い路線です。両端で私鉄と直通運転したり、東京の全ての地下鉄に乗りかえられる路線でもあり、意外と利用している人も多いでしょう。では、実際の利用状況はどうでしょうか。休日に利用の多そうな渋谷-表参道で確認しました。
写真1. 渋谷に到着した半蔵門線の電車
休日日中時間帯の地下鉄半蔵門線の混雑状況まとめ
以下、長い本文を見る気がない人のために、簡単に結論をまとめましょう。
・混雑率は50%程度で、平均すれば少し立ちが生じるレベルである
・ただし、電車によってムラがあり、田園都市線内急行と準急が混雑する
・中央林間よりの車両が空いている
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は休日でも利用の多そうな渋谷-表参道で30分間確認しました。この区間を選んだ理由は、休日でも利用が多そうと予想した(休日であれば大手町や神保町よりも渋谷や表参道に向かう人のほうが多いでしょう)ためです。30分確認した理由は、直通運転している東急田園都市線が30分サイクルのパターンダイヤを採用していて、30分の中で混んだ電車と空いた電車があると予想したためです。
混雑状況の分析
混雑状況の生データから細かく分析することにします。
生データを見る
まずは、生データをさらしましょう(表2、表3)。
まずは、渋谷から表参道に向かう電車です(表2)。
表2. 休日日中時間帯の半蔵門線の混雑状況(渋谷→表参道、生データ)
一部の電車で遅れが発生していたので、通常の混雑状況とは異なりますが、傾向はそう変わらないでしょう。だいたい混雑率は50%~60%程度です。つまり、多少の立ちは生じているということです。
次に、表参道から渋谷に向かう電車です(表3)。
表3. 休日日中時間帯の半蔵門線の混雑状況(表参道→渋谷、生データ)
一部の電車で混雑状況を確認できませんでした(これは反対方向の電車と同時だったので見られなかったためです)が、おおむね混雑率は50%程度です。
混雑状況の分析
地下鉄半蔵門線は種別ごとに混雑状況が異なりますので、ダイヤパターンを理解してから解析することが望ましいでしょう。そのため、ダイヤパターンを復習します。押上方では東武線内のダイヤパターンが影響しますが、渋谷よりではそこまで影響は出ないでしょう。そのため、ここでは東急田園都市線のダイヤについて解析することにします。
東急田園都市線は30分サイクルのパターンダイヤになっています。これは30分周期でパターンが繰り返されるという意味です。30分周期の間に急行が2本(休日は15分間隔)が運転され、その間に各駅停車2本が運転されます。これとは別に準急が30分に1本加わります。準急と各駅停車のうち1本はセットで運転され、準急に続けて各駅停車が運転され、その各駅停車は渋谷発着です(つまり半蔵門線には直通しません)。別の表現をすると、15分間隔の急行の間に各駅停車が2本運転されるのが基本ですが、30分に1回は各駅停車が準急に置き換えられます。これでは各駅停車しか停車しない駅は不便になりますので、渋谷発着の田園都市線で完結する各駅停車を運転しているということです。
渋谷発着の各駅停車は下りは準急の直後に運転され、上りは準急の直前に運転されます。ここで認識しておくことは、田園都市線内準急は渋谷で直前の各駅停車渋谷行きからの乗客を乗せるという事実です。
これらの予備知識をもとに、種別ごとの混雑率を示しましょう(表4)。
表4. 種別ごとの混雑状況まとめ
明らかに田園都市線内急行が混んでいます。逆に、田園都市線内各駅停車は空いています。ただし、渋谷→表参道では1本だけ混んでいる電車(渋谷13:37発の各駅停車)があります。この電車は鷺沼から渋谷、ひいては半蔵門線内まで先に到着するため、急行に乗客が逃げないという特性があります。さらに、この電車は二子玉川で急行大井町行きの乗客を受けます。つまり、急行大井町行きから渋谷に向かう乗客が乗る各駅停車も混んでいるのです。
平均すると準急はその中間の混雑ですが、田園都市線発の準急(表4でいう渋谷発の準急)が混んでいます。これは、直前に各駅停車渋谷行きが運転されていて、この電車からの乗りかえ客で混むためです。
ただし、この混雑を渋谷から乗る際に予見するのは難しいです。なぜならば、半蔵門線に入ると東武線内の種別を案内するためです(普通に考えると、田園都市線内の種別情報は不要)。では、区別する方法はあるのでしょうか。ダイヤ作りの妙で東武線内の行先も30分周期です。久喜行きは田園都市線内急行か準急です。一方、南栗橋行きは田園都市線内各駅停車です。つまり、久喜行きは渋谷時点では混んでいて、南栗橋行きは渋谷時点では空いている傾向にあるということです。押上行きはそのような法則性はありません。将来的なダイヤ改正で組み合わせは変わる可能性はありますが、現時点ではこのような見分けかたが可能ということです(田園都市線内の種別と東武線内の種別の整合性は不要※なことに注意)。
※基本的に田園都市線内と東武線を乗りとおす人は少数です。重要なのは、東武線内から渋谷まで向かえること、田園都市線内から押上まで向かえることです。そのため、「東武線内急行だから田園都市線内急行にしよう」とかは基本的に考えないということです。また、「東武線内南栗橋発着は田園都市線内各駅停車にしよう」という積極的な意図もありません。運用上の制約で現在はそうなっているというだけです。東武線内の事情あるいは田園都市線内の事情が変われば、組み合わせはいとも簡単に変更されます。
全体的に中央林間よりの車両は空いている傾向にあります。渋谷での乗りかえが押上よりの車両の便利という事情もありましょう。
ダイヤが適切か検討する
現在の半蔵門線は(田園都市線内ではいろいろな事情がありますが)5分間隔で運転されています。現在はムラこそあるものの、多少の立ちが出る程度であり、そこまで問題ではありません。つまり、総合的には待ち時間も少なく、混雑も大きな問題ではないので、現在の運転本数は適正レベルです。
ただし、各駅停車渋谷行きの後に続く久喜行きが混んでいる点は気になります。実は半蔵門線の定期外利用者(=日中に利用すると予想される人)は渋谷寄りが多く、押上よりでは少ない傾向にあります。実際に、渋谷-表参道の利用者を100とすると、永田町-半蔵門の利用者は82程度しかありません。現在、渋谷発着の田園都市線であっても半蔵門まで回送しています。ということは、この電車を半蔵門、せめて永田町まで延長運転すれば、1本だけピンポイントで混んでいる電車が空くのです。
おおむね問題ない状態の半蔵門線ですが、一部で混雑面で弱点となる電車も存在します。このような弱点を補うような細かな改善を施してより使いやすい地下鉄として地道にその役割を果たしてもらいたいものです。東京の地下鉄で唯一、全ての路線に乗りかえられるのですから。
半蔵門線の混雑データへのリンク
ここまで特定の駅での混雑調査という「狭くて深い」データを示しました。では、公式発表の混雑データなど半造温泉の混雑状況について述べた「広くて浅い」内容をまとめたページはないのでしょうか。そのような声に応えて、以下のページを作成いたしました。