新横浜線の混雑状況(平日日中時間帯の現場調査結果)

記事上部注釈
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2023年3月に華々しく開業した東急新横浜線と相鉄新横浜線。平日朝夕は新横浜のニーズがありますが、日中時間帯は横浜駅周辺をスルーするのが弱点です。では、実際の混雑状況はどうなのでしょうか。日中時間帯に調査しました。

写真1. 日吉に入線する相鉄車による急行海老名行き

新横浜線の混雑状況のまとめ

新横浜線の混雑状況の状況を要約すると以下の通りです。

  • 日吉断面では座席の半分程度が埋まる混雑であり、系統による混雑差はそこまで大きくない
  • 西谷断面では座席の1/4~半分が埋まる混雑である
  • 特にJR線直通は空いている

詳細は以下の章で記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

新横浜線の混雑状況の生データ

まず、東急新横浜線(日吉断面)、相鉄新横浜線(西谷断面)の混雑状況の生データを示します。

東急新横浜線(日吉断面)の混雑状況

写真5. 相鉄からの渋谷方面行きは空いている

まず、日吉断面(東急線内)での混雑状況を示します(表2)。

表2. 東急新横浜線の混雑状況(日吉-新綱島)

一部車両はそれなりに乗っていますが、全体的に空いていることがわかります。

相鉄新横浜線(西谷断面)の混雑状況

写真6. 西谷にやってきたJR新宿行き

次に、西谷断面(相鉄線内)での混雑状況を示します。

表3. 相鉄新横浜線の混雑状況(羽沢横浜国大-西谷)

東急線内よりも空いています。それより空いているのはJR線直通です。

新横浜線の混雑状況の解析

写真7. 新しくてきれいな新横浜駅

生データだけでは不親切でしょうから、親切で有名な私は混雑状況を分析いたします(やさしー)。

生データでは混雑ポイント(=観測しやすい)を導入していますが、解析では混雑率に変換し、それを計算することにしています。これは混雑ポイントが順序尺度(160ポイントが80ポイントの2倍にならない)に対し、混雑率が比例尺度(160%は80%の2倍)であり、統計処理をしやすいためです。

復習:新横浜線のダイヤ

写真8. 羽沢横浜国大の上り方で東急線方面とJR線方面が分岐

混雑はダイヤに依存します(逆にいうとダイヤも混雑を考慮して作成されます)。そこで、新横浜線のダイヤパターンを簡単に紹介します。

東急新横浜線は日吉-新横浜の路線、相鉄新横浜線は新横浜-西谷の路線です。そして、それぞれ途中に1駅あります。相鉄新横浜線の途中には羽沢横浜国大があり、ここでJR線が分岐します(営業上は羽沢横浜国大はJRの駅でもあります)。

図1. 新横浜線の概要(神奈川東部方面線のホームページより引用)

日中時間帯の構成は以下の通りです。

  • (都営三田線-)東急目黒線-相鉄線(海老名方面):30分間隔(東急線内急行、相鉄線内各駅停車)
  • (地下鉄南北線-)東急目黒線-新横浜:30分間隔(目黒-新横浜は上記と合わせ15分間隔)
  • (地下鉄副都心線-)東急東横線-相鉄線(湘南台方面):30分間隔(東急線内急行、相鉄線内各駅停車)
  • JR線-相鉄線(海老名方面):30分間隔(各駅停車)

日吉-西谷を通しで運転する電車は30分に2本です。都市鉄道の東急線内でこの運転間隔で不足すると考えられたためか、東急線内を運転する電車は30分に1本追加され、目黒線から新横浜までは15分間隔で運転されます。

このほかに、JR線新宿から相鉄線に直通する電車が30分間隔で運転されます。そして、(偶然かもしれませんが)目黒線-新横浜線の電車をそのまま西谷方面に延長するとJR線直通電車と時刻がほぼ重なります。

相鉄線内は東急目黒線-海老名方面、東急東横線-湘南台方面と振り分けられています。これはJR線新宿-海老名方面と直通しており、東京側の目的地が重なる東横線直通を海老名直通を避けた結果でしょう。

東急新横浜線の混雑状況の解析

東急新横浜線の混雑状況を解析します(表4)。新綱島での乗り降りを無視できるレベルとすると、日吉-新横浜の混雑とも言いかえられます。

表4. 東急新横浜線の混雑状況

図2. 東急新横浜線の混雑状況(グラフ)

表とグラフでまとめました(表4、図2)。混雑状況は全員着席レベルをはるかに下回り、かなり空いています。混雑率そのものは目黒線系統のほうが高いですが、これは6両編成や8両編成の目黒線系統は10両編成の東横線系統より混みやすいためです。これであれば、東急東横線系統も8両編成を運転し、東急東横線の横浜系統に10両を充当したほうが良いと思います。

相鉄新横浜線の混雑状況の解析

東急新横浜線の混雑状況を解析します(表5)。羽沢横浜国大での乗り降りを無視できるレベルとすると、新横浜-西谷の混雑とも言いかえられます。

表5. 相鉄新横浜線の混雑状況

図3. 相鉄新横浜線の混雑状況(グラフ)

表とグラフでまとめました(表5、図3)。混雑状況は全員着席レベルをはるかに下回り、かなり空いています。混雑率そのものはJR線直通系統より東急線系統のほうが高いです。JR線直通の混雑率の低さを鑑みると、JR線直通は新横浜も横浜をスルーし、相鉄線沿線住民の日中時間帯のニーズに合致していない可能性を指摘できます。

土地や工事の問題はあれど、JR線と相鉄線の直通電車が横浜駅を通るルート(願わくば横浜駅はJR線に向かう電車はJRホームから発車、相鉄線に向かう電車は相鉄ホームから発車)とすれば、JR線直通電車もそれなりに利用され、(相鉄視点だけで)JR線直通と横浜発着のバランスに苦慮することもありませんでした。

新横浜線全体の混雑状況

日吉断面と西谷断面の混雑の傾向を解析したところで、新横浜線全体の混雑状況を分析します。

表6. 新横浜線全体の混雑状況(JR線は除く)

図4. 相鉄新横浜線の混雑状況

表とグラフでまとめました(表5、図3)。混雑状況は東急線内のほうがやや混んでおり、本数の違いもあって、新横浜で利用状況が異なることがわかります。すなわち、新横浜を境に相鉄側のほうが空いているということです。この利用状況を見ると、新横浜線の電車のうち、東急側で折り返す設定があることはそれなりに妥当と見えます。

新横浜線の利用状況からダイヤを考える

写真9. 車内は空いている

最初、新横浜線のダイヤが発表された際、東急線内であっても毎時6本なのは少なく感じました。しかし、実際にはそこまで混んでおらず、毎時6本で充分です。また、相鉄線は毎時4本です。これも毎時4本の設定が多すぎると感じるくらいの混雑です。いずれにしても輸送量に対して輸送力は充分に確保されています。

それもそうでしょう。もともと東急線沿線と相鉄線沿線の間には交流は少ないと見え、双方ともに横浜駅や横浜中心部の流動が主体です。相鉄線沿線の需要はもともと横浜に向いており、横浜駅周辺を無視する新横浜線の需要は高くありません(通勤時間帯は都内に向かう人も多いでしょう)。

では、この路線の新設は無駄だったのでしょうか。そのようなことはありません。「相鉄線の需要はもともと横浜に向いている」ことは事実です。これがある意味相鉄の弱さでもありました。東京に生活の拠点を持つ人は相鉄線沿線をあまり選ばない傾向があったことは否めません。新横浜線が建設されたのは、この傾向を変えるためであったのも事実です。新横浜経由で東急と相鉄が結ばれるというのが徐々に浸透すると、相鉄沿線と東急沿線の流動も増えることでしょう。

世間的に注目されるのは開業当初だけです。しかし、それよりも重要なことは地道な日々の運行の積み重ねです。鉄道に限らずインフラは縁の下の力持ちとしての役割を全うするのです。

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