常磐線から新宿への路:山手貨物線と常磐線の直結を考える

記事上部注釈
弊サイトでは実際に利用したサービスなどをアフィリエイトリンク付きで紹介することがあります

現在、常磐線から新宿に直結する経路が存在しません。千代田線は原宿近辺を通るのですが、惜しくも新宿も渋谷も外しています。私の中では若干の工事(羽田アクセス線程度の工事)で実現していると考えています。これから、その概要を晒すことにします。

現状調査

常磐線から新宿へは線路が繋がっていないのでしょうか?いいえ、違います。その証拠として、常磐線から新宿を経由して鎌倉まで結ぶ列車が昔、存在していました。私は乗ったことがありますが、当時中学生であったことから写真を撮影しませんでした。余談ですが、クラス全体で行ったのですが、1人の女子が「渋谷で降りたい」と言っていました。ただし、渋谷は通過だったんですよね…

写真1. 在りし日のホリデー快速ときわ鎌倉号(wikipedia先生から譲渡済み)

では、この列車の経路はどのようなものだったのでしょうか?復習してみましょう。

取手(通常の経路)三河島(常磐貨物線)田端操車場(山手貨物線-湘南新宿ラインと同じ-)逗子

ここでのネックは、田端操車場でスイッチバックをしなければならない点です。したがって、通常の通勤電車が行き交うルートとしてはふさわしくありません。では、なぜ田端操車場でスイッチバックするのでしょう?そう、常磐貨物線と山手貨物線を直結する経路がないためです。

それならば直結する経路を設定すれば良い、そのように鋭い私は考えてしまうのです。以下、詳細な現場調査も含めて常磐貨物線と山手貨物線を直結する方法を探ることにしましょう。

他のブログであれば現場調査を行わないでしょうから、足で稼ぐという私の人格者ぶりが分かるというものです。そして、簡単なダイヤ提案(具体的な時刻設定は識者に任せます)まで行うという、徹底ぶりですね。
※無駄で非生産的な検討、社会的に役立たないという指摘は無視します。

山手貨物線との接続部

山手貨物線との接続部を考察してみましょう。分岐点として適切なのは、中里トンネル付近でしょう。中里トンネルの手前(新宿側)で分岐させるという発想です。現場の写真も晒しましょう。

写真1. 分岐点付近の様子(arrowsで撮影、左側が中里トンネル、手前が駒込駅(新宿方面)、右が田端駅(常磐線方面)、金網が左下にあることは触れないのが約束です)

これで分岐点の考察は完璧ですね。あれ?常磐線下りと湘南新宿ライン南行(大宮方面→新宿→横浜方面)が平面交差してしまいますね。首都圏に平面交差でOKという計画はうぬぼれと言われてしまいます。また、ここには立体交差する土地の余裕もありません。
困りましたね…。そんなことも忘れて巣鴨に来てみました。すると、保線用車両を留置するスペースがありますね。このスペースを活用しましょう。

写真2. 巣鴨駅付近の様子(arrowsで撮影)

一番右側に見える線路が保守用の側線です。この側線を貨物線の本線に変えましょう。従来の貨物線は常磐線下りに活用します。巣鴨→田端は地下の新線を建設するのです。ここには常磐線上りのスペースがない、そんな疑問が聞こえます。これに対してどのように対応するのでしょう?そう、対処しないというのが答えです。そもそも下り線を巣鴨付近で分岐させるのは平面交差を避けるためでした。常磐線上りは平面交差が存在しませんから、中里トンネル付近で分岐させるだけの話です。

地下に新線を建設することによって、駒込で地下鉄南北線と干渉することが指摘できます。駒込では山手線の線路の下に地下鉄南北線のコンコースがあり、その下に南北線のホームがあります。手元に資料がないのですが、地下20mにホームがあるとしましょう。つまり、地下30m程度の場所に新線を通さねばならないのです。

JRの最急勾配は40‰(何線にあるかわかりますか?)、巣鴨-駒込で700m程度という情報を基にしますと、30m近く潜れることが分かります。そのため、何とか干渉しないと仮定できます。え?そんなに長い上り勾配だと坂道の途中で止まったときに大変?案ずることはありません。下り勾配なのですから…。

これらをまとめたのが、以下の配線図です。

図2. 巣鴨-田端付近の簡単な配線図(赤線が山手貨物線-常磐線接続線です)
※こんな配線図は手抜きと言ったのは誰ですが?分かれば良いんですよ。

想定問答集
読者の疑問に先回りして疑問点をお答えする、そんなコーナーです (やさしー)。

Q1. 巣鴨から駒込まで地下に潜るとあるが、線路の下をくぐる道路とは干渉しないのか?
A1. 現地のことを何も知らないんですね…。巣鴨から駒込駅東側までは線路が地上より低い地点を走っているので、線路の下をくぐる道路はありません。そのため、このような問題点は存在しません。

Q2. 常磐線から池袋や新宿に向かう流動はあるの?
A2. 常磐線からの流動の1/3は池袋方面に向かうので、流動は存在します。

工事効果の検証

所要時間の算出

読者の皆さまには釈迦に説法ですが、厳密な所要時間を算出する際には、以下の2つの情報が必要です。

1) 通過する経路の線形 (カーブの半径や勾配の程度、ポイントの制限速度)
2) 通過する車両性能(加速性能はどうか、曲線通過速度は本則と比較してどの程度か)

しかし、私は常磐線-山手貨物線の接続部分や既存の貨物線の線形を全て把握しているわけでも、車両性能の加速度曲線を描けるわけでもありません。困りましたね…。でも、心配するに及びません。なぜなら、我々の目的は所要時間の概算です。所要時間は速度と距離があれば求められるので、それらを算出しましょう。

速度の計算

ここでは、全区間で同じ速度を出すと仮定しましょう。仮定するには以下の要素を考慮する必要があるでしょう。
1) (最高速度の考察)貨物線ですから、(安定的に出せる)最高速度はせいぜい70km/hでしょう。
2) (最低速度の考察)山手貨物線と常磐貨物線の分岐点などのポイント部分の通過速度は45km/hでしょう。

実際の走行速度は計算上、最低速度(45km/h)と最高速度(70km/h)の中間、すなわち55km/hとなります。実際に走行する際は、制限速度よりも低い速度で走行すると考えますと、50km/h程度となります。

走行距離の計算

池袋から常磐線(ここでは北千住としましょう)までの走行経路は以下の通りです。

池袋(山手貨物線)分岐点(新規建設路線)田端(常磐貨物線)三河島(常磐線)北千住

重要なことは、池袋から田端まではいわゆる山手線にほぼ併走していることです。つまり、この区間の距離は山手線の営業キロから算出できます。時刻表を眺めると同区間は5.2kmとあります。また、常磐貨物線は1.6kmとされています。三河島から北千住は4.0kmです。これらの合計で、池袋-北千住は10.8kmです。

走行時間の算出

走行速度は55km/h前後、走行距離は10.8kmと出ました。池袋-北千住間ノンストップとすると、13分弱です。両駅停車のロスを考慮すると14分弱でしょう。余裕時間を考慮すると池袋-北千住は14分と決定できます。

新経路の効果

新経路の効果をケーススタディで考えます。

例1. 池袋-北千住

池袋-北千住は14分と算出できましたが、この所要時間は魅力的か判定します。現状では千代田線利用が最速でしょう。西日暮里での乗り換え時間は5分とします。

(現状) 22分 池袋(山手線11分)西日暮里(千代田線6分)北千住
(新経路) 14分 (直通利用)

池袋-北千住で8分短縮であれば、所要時間的には優位に立てますし、池袋から常磐線各駅停車の駅に向かう場合でも(池袋での待ち時間含めても)同等と期待できます。

例2. 新宿-柏

この他に、新宿から柏の所要時間も比較します。現状は日暮里経由です。ここでは日暮里での乗り換え時間を3分とします。

(現状) 49分 新宿(山手線21分)日暮里(常磐線快速25分)柏
(新経路) 37分 新宿(直通20分)北千住(快速17分)柏

※新経路の新宿(発)-池袋(発)を6分で計算。新経路と同じ経路を経由する湘南新宿ラインは5-6分。
新経路では新宿-柏を12分も短縮しています。これは大変な魅力ですね。

ダイヤ概論

ダイヤ的に可能か検討します。ダイヤを検討する前に前提条件を確認せねばなりません。

前提条件の確認

1) 施設面の制約

この計画では山手貨物線を通ります。つまり、池袋以南は埼京線に割って入る必要があります。

2) 流動面の前提

常磐線方面から池袋で降車する人の割合を簡単に考察します。この割合が少ない(=新宿に向かう人の割合が多い)場合は池袋止まりではNG、多い場合はOKとします。計算によるとおおよそ3割です(詳細は以下のコラム参照)。3割(7割は新宿に向かう)ということは池袋止まりの場合、乗車率150%として15両編成の列車から1000人近くの乗客が別の列車に放たれることを意味します。この乗客を埼京線が受け入れるとは考えにくいです。それを避けるため、新宿直通にする必要があります。

補足. 池袋降車客計算の過程

求めたいのは「割合」なので厳密ではなくとも良いのがポイントです。また、我々の目的は厳密解を求めることではなく、概算です。そのため、細かなデータを参照することもしません(人はこれを手抜きと呼びますが、私は合理化と正当化します)。私の手元に2010年度都市交通年報があります。池袋ー大塚(下り)の通過人員は33.96万人/日、池袋から乗車するのは11.03万人/日です。ここから、山手線の池袋-大塚の利用客のうち、池袋から乗る乗客は32.48%、つまり3割と推定できます。

厳密には「常磐線から乗り換えた乗客における池袋下車の割合」「山手線各駅から池袋・新宿方面に向かう人の池袋下車の割合」は異なるでしょう。ただし、実際には近いと推定しますし、近似解を求めるという目的では同じとみなして問題ないでしょう。

3) 線路容量の確認

池袋ー新宿に列車をいかに割り込ませるかがポイントになるでしょう。現在、最も過密運転をしている路線の1つが田園都市線でしょう。田園都市線では渋谷駅が制約条件と言われています。すなわち、停車時間が60秒、追い込み時間が65秒であり、両社の和である125秒が最小運転間隔なのです。

田園都市線の10両編成に対して山手貨物線の15両編成ですから、追い込み時間はおよそ1.5倍の100秒と考えられます。そのため、池袋ー新宿の最小運転間隔は100秒=1分40秒となります。

あれ?停車時間を考えていないのでは?という声もあるでしょう。人格者の私ですから、そんな声を無視する訳がありません。池袋と新宿は片方に対して2線あります。交互発着すれば良いのです。新宿で折り返すとしますと、引上線が必要です。そのため、新宿駅南方に引き上げ線が必須です(下記コラム参照)。
ゴリ押し感はあるものの前提となる要素はあるものの、毎時36本運転は見込あるという結論に達しました。

新宿駅のホームを変更できない理由

山手貨物線でホームが3面あるので、そこで折り返せるのでは?」そう、新宿駅の5、6番線で折り返せるので、それで良いという考えかたです。以下、それはできない理由を示します。

※常磐線新宿直通以外にも応用できる内容です。常磐線新宿直通に興味がない方は、単純に「北側からの新宿折り返し」の場合と読み替えてください。

・5、6番線を使用して折り返す場合

現在の配線図を示します(図1)。これに常磐線列車が新宿で折り返す線路を青で記しました(図2)。

図1. 現在の配線図(中央線とつながる経路は示していません、左が渋谷方、右が池袋方です)

図2. 現在の配線で5、6番線で折り返す場合

図2の右側、現実に即していえば、新宿の池袋方で北側からきた新宿折り返しと、南側からきた池袋方面行きがぶつかってしまいます(図2の赤丸)。平面交差が発生する現状では、朝ラッシュ時の運用は不可能といえます。

・3、4番線を折り返し専用とする場合

図4. 新宿の3、4番線で折り返す場合

それでは、3、4番線を折り返し専用とする場合はどうでしょうか?中央線特急のように上下線の間で折り返せば、平面交差は生じません。この場合、2つほど渡り線を設置する必要があります(図4の赤線部分)。このようにすれば、3番線の到着と4番線の発車が同時に実施できないという問題点があるとはいえ、運用自体は可能です。現実でも成田エクスプレスなどの特急を3、4番線発着にして、5、6番線を埼京線・湘南新宿ラインホームとすればダイヤが乱れるリスクは軽減します。

しかし、このような配線を採用した場合、ダイヤ上の問題よりも利便性に大きな問題が生じるのです。5、6番線は南側に寄っています。メインとなる東口や西口から向かう場合、長い連絡通路を歩く必要があります(写真3)。

新宿の長い連絡通路

写真3. 長い連絡通路

埼京線や湘南新宿ラインは当然ながら利用客は多いです。その多くの利用者が、メインとなる東口や西口から離れたと知ったなら、良い感情は持たないでしょう。あえてメリットをいえば、歌舞伎町で飲んでいる人が「埼京線のホームが遠いからもう間に合わないよ」と連れの女性に言えるという程度でしょう。位置的に不便なことが、5、6番線をメインとしない理由でしょう。

池袋-新宿間の列車配分

step3で池袋-新宿は毎時36本運転が可能と示しました。では、この枠をどのように使えば良いのでしょうか?あくまでも朝ラッシュ時のみの考察とします。

<現状の本数確認>
現状の朝ラッシュ時の池袋-新宿の本数を確認しましょう。
埼京線 18本(池袋7:44発~8:41発で計測)
湘南新宿ライン 7本(池袋7:49発~8:34発で計測)
※湘南新宿ラインの前後列車は7:41と8:44なので埼京線と時間帯を統一するため省きました。

<本数案>
常磐線の新宿直通はせいぜい8本あれば充分です(あまり多いと上野方面の列車が混んでしまいます)。残りの28本を湘南新宿ラインと埼京線に配分するわけですが、池袋での交互発着を考えると埼京線と(湘南新宿ラインと常磐線の和)が等しいことが望ましいです。そのため、湘南新宿ラインが10本、埼京線18本が適切でしょう。

埼京線 18本
湘南新宿ライン 10本
常磐線 8本(全て新宿折り返し)
渋谷での停車時間と追い込み時間を考慮すると、新宿以南は毎時24本運転が限界でしょう。逆算すると、新宿で折り返すのは毎時12本必要です。埼京線のうち、毎時4本が折り返す必要があります。

想定問答集

毎回好評(注. 自己評価)のQ&Aコーナーです。読者の質問に先回りして答える私はさすがですね(やさしー)。

Q. 1日の総本数はどの程度か?
A. 需要と関係線区との関係や各種制約を考慮して、総合的に決定できます。

Q. さっきの回答は回答になっていないが?
A. しつこいですね…。朝は毎時8本、日中以降は毎時4本と想定できます。

Q. 新宿に8:43に着きたいが、柏発何時の列車に乗れば良いのか?
A. この記事では大枠しか決めませんので、各論的な質問には答えかねます。

Q. 常磐線側のダイヤの大枠だけでも教えて欲しい。
A. (またですか…)まだ未検討のため、私が教えて欲しいところです。ただし、特殊系統は特殊系統と結ぶという原則(例. 小田急の多摩急行は、千代田線直通という特殊系統と多摩線直通という特殊系統を結んでいます)から、成田線直通を新宿直通にするのも1つの手と考えております。つまり、成田線(我孫子方面)から上野・東京直通はなくなるということです。どうせ成田線からの乗客の多くは東葛地区(柏・松戸)を目的地にしているでしょうし、我孫子市内の成田線沿線住民は天王台駅を利用しているから、ウダウダ言うこともないでしょう。

今回のまとめ

・工事は物理的には可能である。
・池袋-新宿の線路容量の増加と新宿駅の折り返し設備の増強が必要である
・逆にいうと新宿駅の受け入れ態勢が整わないと、この意味は大きく縮小する。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. ピーナッツバター より:

    山手貨物線との分岐部で立体交差は必要ないのではないか?品鶴線では上りだけで最大毎時20本近い電車を捌いているが、蛇窪の分岐部は平面交差である。であれば蛇窪より本数が少ないと見込まれる田端付近の分岐部も平面交差で事足りると思われる。

    • tc1151234 より:

      ピーナッツバターさま、コメントありがとうございます。

      ご指摘の観点はもっともだと思います。ダイヤの安定のために立体交差が重要であると考えました。また、蛇窪のみ平面交差であれば蛇窪のみを考えたダイヤ構成で良く、ダイヤ調整もそこまで難航しないでしょうが、ダイヤ調整の基準が2つになると途端に難易度が上がるのも立体交差を提案した理由です。