電車の混雑に関する基礎知識①:混雑とは何か?

記事上部注釈
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電車が混んでいる、空いているということはよく言われます。では、混雑とは何でしょうか。感覚的にわかっていても厳密に説明するのは難しいのではないのでしょうか。まずは、混雑は何を示しているのか明らかにしましょう。

写真1. 人が待つホームに通勤電車が入る(中央林間で撮影)

鉄道の「混雑」の基礎知識のまとめ

混雑について、こと鉄道という場面では以下の通りです。

  • 混雑は定員に対しどれだけ乗っているかで求められる
  • 通勤電車の場合、定員は着席人数ではない
  • 混んでいる、空いているというだけでは議論が成り立たないので、指標が必要

混雑の定義

混雑の定義はどのように示されるのでしょうか。実は、小学校の算数で習っている概念です。以下のような文章題に見覚えはないでしょうか。

文章題に見た問題

(問題)ある電車の定員は100人です。この電車に144人乗っていた場合の混雑率は何%でしょうか。

(解答)144%

(解きかた)144人÷100人×100%=144%

この問題のように、混雑率は実際に乗った人数を定員で割ることで求められます

混雑率が高いほど混んでいて、混雑率が低いほど空いている、これが1つの真実です。いいかたを変えると、混雑率が高いほど混んでいるということです。もうすこしいいかたを変えると、実際に乗っている人数が多いほど混んでいるということです。

定員の定義:座席の数が定員ではない!

さっきの章で、「ある電車の定員は100人」という1つの例を出しました。では、ある電車の定員が100人というのはどのように決められるのでしょうか。99人や101人ではいけないのでしょうか。

写真2. 一般的な通勤電車の車内(ロングシートの場合、小田急8000形)

いちおう、定員の算出方法は決められています。基本は床面積を0.35m2で割った数字が定員です。ただし、クロスシート車(写真3)の場合は0.40m2で割った数字です。0.35m2というのは、おおよそ60cm四方の四角に相当します。人間の肩幅は45cm程度ですから、人と人の間隔が15cmしかない状態で立っていることになります。通勤電車の定員はこのように計算すると140人程度、通勤電車の着席定員は50人程度ですから、座席定員は本当の定員の1/3強しかないのです。

写真3. クロスシートの車内(JR221系の車内)

では、床より上部が膨れている車両の場合はどうでしょうか。

211系電車(名古屋)

写真4. 床より上が膨れている(JR東海211系)

人間の体形の特徴として足(電車の床に相当)部分よりも胴体部分のほうが面積を取ります。写真4のような車両の場合は、人間の胴体部分の面積が広いです。実際の混雑はこの部分で考えると良さそうです。そこで、このように膨れている車両は、床面積のかわりにこの部分の面積を採用しています。

評価指標の重要性

電車の混雑を表現するのに、よく「混んでいる」「空いている」という表現が使われます。日常会話ではこの程度の内容で問題ありませんが、電車の混雑をきちんととらえようとすると、このようなふんわりとした表現では問題が生じます。

「混んでいる」「空いている」という表現では話し手の主観に委ねられます。そうであれば、ある人にとって「空いている」電車が、別の人にとって「混んでいる」と感じられるかもしれません。

写真5. この電車は空いている?混んでいる?(西谷で撮影)

ある電車を撮影しました(写真5)。この電車はゆったりと立てるレベルです。これを「座れないから混んでいる」と評価することもできますし、「ゆったりと立てるから空いている」と評価することもできます。それには正解はありません。正解がないということは、人との意思疎通ができないということです。そのため、このような主観による評価ではなく、混雑率○○%という誰の目にも明らかな指標にしましょうということなのです。

このような混雑の指標をもとに各種統計がなされています。

今回は「混雑」は定量的に測定でき、その評価指標の重要さも示しました。次回は、混雑が生じる理由を考察しましょう。

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