前回の講座で電車に混雑が生じる理由を明らかにしました。では、その混雑は均一なのでしょうか。もう少し詳しく考察しましょう。
写真1. 先頭車が混む例(蒲田で撮影)
混雑にかたよりが生じる理由のまとめ
混雑にはどうしてもかたよりが生じます。その理由と傾向は以下の通りです。
- 需要は瞬間的に変わる一方、供給はある程度一定なので、瞬間的に需要と供給のバランスが崩れる
- 基本的に便利なところが混雑する
- 多少の工夫で混雑を避けることができる
混雑のかたよりが生じる本質的理由
混雑は瞬間的にみるとかたよりが生じます。この理由を簡単に考えてみましょう。
そもそも混雑は需要と供給のアンバランスで発生しています。言いかえると、輸送量が輸送力よりも大きい状態で混雑が発生するということです。
では、混雑はずっと一定なのでしょうか。それとも、混雑にはばらつきがあるのでしょうか。それを考えてみます。
例えば、スーパーマーケットのレジを思い出してみましょう。スーパーマーケットに来る人は常に一定ではありません。特にレジにやってくる人の数は常に変化します。ある瞬間にレジ待ちの列が伸びていたのに、少し経つとその列が解消されたという経験は誰しもあるでしょう。これは、店側がレジの対応力を一時的に大きくした(空きのレジを開ける)こともありますが、需要が刻一刻と変化していることもその原因です。
このことは鉄道にも当てはまります。需要は常に一定ではなく、刻一刻と変化しています。そのため、混雑も刻一刻と変化します。また、大都市の列車の編成は長いですから、便利な車両(=トータルの移動が楽)の需要が高く、不便な車両の需要が低いことも指摘できます。
このような原因から、電車の混雑は一定ではなく、空いている部分と混んでいる部分が発生するのです。
混雑するところの傾向
写真2. 種別によって混雑が異なる例(北千住で撮影)
混雑するところには傾向があるのでしょうか。これがわかれば、混雑を避けることができます。
もう1度、混雑のかたよりができる理由を思い出しましょう。そう、需要が高いところが混むということです。どのようなところが需要が高いかというと、多くの人が利用したがるところです。どのようなところが需要が高いのでしょうか。
混雑するのは便利な時間や日時です。一番身近な例は、平日の出勤時間直前の朝ラッシュ時です。私は多くの駅で定点観察してきましたが、多くの人の出勤時間直前が最も混雑するという傾向を見つけました。また、多くの人が利用するのに便利な場所が混雑します。例えば、主要駅で乗りかえに最も便利な場所の車両が最も混雑するなどです。
混雑を避けるには、少しの不便を甘受するしかありません。以下の方策が考えられます。
- (出勤時間を前後にずらせるのであれば)出勤時間を遅めにする
- やや不便な車両に変えてみる
朝ラッシュ時の細かな混雑の違いについて一般的な傾向をまとめています。
また、繁忙期の新幹線は自由席が混みます。指定席車両に立ちが発生することがあります(指定席券であり、指定車両券でないので、指定席の通路に立つことは規則違反ではありません)。当然、自由席に近いほうが便利ですから、自由席の近くが混むのです。
混雑のかたよりについてのまとめ
供給が一定のなか、需要が刻一刻と変化していることが多いです。そのため、(ミクロな視点で見ても)混雑は一定でなく、どうしてもかたよりが生じます。
では、各路線のかたよりはどのようなものなのでしょうか。これについては、弊サイトで(管理人が個人の趣味で行った)混雑調査結果を公表していますので、その記事をご覧いただくとかたよりの傾向がわかります。多くの記事で混雑時間帯などを示していますので、混雑を避ける大きなヒントになることでしょう。
すぐ上で混雑調査結果を公表していると述べましたが、そのいくつかを紹介します。
東海道線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、川崎→品川、現場調査)
東急田園都市線の混雑状況(コロナ影響下、朝ラッシュ時、池尻大橋→渋谷、現場調査結果)
地下鉄東西線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、最混雑区間現場調査結果、木場→門前仲町)