ひょんなことから(具体的には羽田に向かう用事があったため)、夜間の京急線の混雑調査を実施できました。夜間の京急は一部の快特が12両編成だったり、羽田空港に向かう電車に停車駅が増えたり、と日中時間帯と異なるパターンを採用しています。そのパターンは理にかなっているのでしょうか?実際に観察しました。
写真1. 品川始発の快特に乗り込む人々
夜間の下りダイヤパターン
夜間の京急は20分サイクルのパターンダイヤを採用しています。内訳は京急ウィング1本、快特2本(1本は品川始発)、エアポート急行2本、普通2本です。京急ウィング号以外はほぼ10分間隔を保っており、エアポート急行が羽田空港行きであること以外は、全て横浜方面行きです。
※21時以降の京急ウィング号は30分間隔となっています。そのため、21時以降は正確には60分サイクルといえます。
ここで特筆されることは、快特に品川始発が設定されていること、品川始発ではない快特については品川で増結がなされていて、品川での着席チャンスが10分間隔で確保されていることです。並行する東海道線、横須賀線、京浜東北線ともに品川始発がないことを突いた形ですね。
品川での混雑調査:生データ
実際に混雑状況の生データを示します。前後に予定があったので、15分程度しか観察していませんが、大まかに傾向はつかめると思います。弊サイトでは混雑ポイントという指標を導入していますので、まずは混雑ポイントの定義を示します(表1)
表1. 混雑ポイントの概要
表2. 実際の生データ
暖色だと立ちが発生していることを示します。私が見た限り、京急ウィング号は満席とはほど遠いものでした。
生データからの考察:乗車体験も含めて
ここで論点になるのは、1) 羽田空港行きが快特ではなくて良いのか、2) 品川始発だとどうなのか、ということでしょう。この2点について考えます。
羽田空港行きが快特でなくて良いのか?
羽田空港行きが快特ではありません。そのため、羽田空港行きに混雑が集中してしまい、三崎口行きが混雑しないという問題点が想定されます。まずはこの点について考察します。
結果からいうと、問題ないと判断します。三崎口まで行く快特と羽田空港まで行く急行で、そこまで混雑状況は異なりません。これは混雑がうまく分散していることを示します。また、私が羽田空港まで乗車した際は、糀谷、大鳥居、穴守稲荷での下車が目立ちました。逆に、羽田空港に到着するときにはガラあきでした。快特だと糀谷、大鳥居、穴守稲荷を通過することになり、多くの乗客にとって乗りにくい電車になってしまいます。ただし、エアポート急行である必要があるかどうかは疑問です。特急でも良いかもしれません。私の実感では立会川で降りた乗客はあまり多くなかったためです。エアポート急行を特急に変更したところで1分しか所要時間が変わらないこと、都営線から立会川への直通需要を勘案した結果と解釈します。
品川始発と都営線からの直通の差
明らかに都営線からの快特が、品川始発の快特よりも混んでいます。ただし、混雑を均等にしようというオペレーションが見えます。以前は品川始発の快特(12両編成)と都営線からの快特(8両編成)の組み合わせでしたが、現在は都営線からの快特を12両編成に増強して、品川始発の快特は減車しています(トータルの輸送力は変わりません)。このことで、混む電車の輸送力を上げたのです。混雑均等化の仕掛けの1つでしょう。もう1つの仕掛けは、品川での増結車両を後ろ4両にしたことです。京急品川は後ろ寄りに階段や改札が存在します。つまり、後ろの車両ほど混むのです。品川で乗る人は空の車両に乗って、都営線からの乗客と分離しようとしている様子がわかります。その成果なのでしょうか?車両ごとの混雑の差はそこまで見られません。京急のスジ屋は職人芸と言われますが、夜間の品川でもその芸を発揮しているのです。
全員着席ということを考えますと、品川始発の快特を12両編成にすること(車両が足りるか検証していません)、京急ウィング号の一部を自由席とすることも手でしょう。それでも、そこまで混雑しておらず、その混雑も均等であることがわかりました。
夜間の品川での現場調査のまとめ
日中時間帯と比較してダイヤが変わっています(羽田空港行きが快特ではなく、エアポート急行など)。これは現状に則した形であり、おおむね妥当であることがわかりました。また、品川始発の快特と品川増結の快特を巧みに組み合わせることで、着席チャンスをほぼ10分で提供するとともに、混雑を上手に分散していることもわかりました。
混雑基本データへのリンク
ここまで特定の駅での調査という「狭くて深い」情報を提供いたしました。では、公式発表の混雑率などの「浅くて広い」情報はないのでしょうか。そのような声にお応えして、基本的なデータをまとめたページを作成しました。