ベルリンからシュチェチン(Szczecin)に鉄道で日帰りで旅をしました。シュチェチンへの行きかた(時刻表やお得な乗車券)、シュチェチンの歩き方、そして意外とインターネットやガイドブックに記載されていないベルリン近郊の路線図(掲載されているのはベルリン市内の路線図です)も掲載しました。かなり実用的な内容になっていると自負します。
シュチェチンの概要
いきなり「シュチェチン」と言われても「何それ?」というのが本音でしょう。そこで、シュチェチンの概要からお話しましょう。
図1. シュチェチンの位置(便宜的に代表駅にマークしました)
まずはシュチェチンの位置を示しましょう。ポーランド北西部にあり、ドイツとの国境にほど近い位置にあります。ポーランドでも端に位置しており、ワルシャワ(ポーランドの首都)から列車で6時間以上かかります。ポーランドで端ということは、ドイツからはとても近く、ベルリンからわずか2時間で到着できます。この時刻表については後で触れましょう。
シュチェチンは長らくドイツ領でした。これが変わる大きなきっかけは、第二次世界大戦です。この大戦でドイツは負けてドイツの東側の領土(※)はポーランド(とロシア)に引き渡されました。このとき、シュチェチンはドイツからポーランドに変更されたのです。その後、70年以上ポーランドの一都市として発展を続けました。
※後に成立した東ドイツ(ドイツ民主共和国)のことではありません。ここで述べる土地は東西ドイツのどちらにも入りませんでした(図2を参照)。
図2. 分割占領と領土を割譲されられたドイツ(1945年、白い地域がドイツから別の国に編入された地域です)
ベルリンからシュチェチンに行く
鉄道の概要
シュチェチンはかつてはベルリンから最も近い国内の港でした。その時代に鉄道が建設されています。戦争だの領土変更だのということがあっても鉄路はそのまま残っています。そのため、今でも鉄道が直通しています。一般的な旅行記では「シュチェチンに行きました~」という記述だけでしょうが、弊サイトではちゃんと時刻表を記します。
表1. ベルリンからシュチェチンへの時刻表
表2. シュチェチンからベルリンの時刻表
ベルリンからシュチェチンに向かう列車はベルリン中央駅ではなく、ベルリンゲズントブルンネン駅に発着します(たまにベルリンリヒテンブルク駅発着になるようです)。また、多くの列車がアンガーミュンデに発着します。ベルリンからアンガーミュンデまでの列車は斜字で示しました(やさしー)。ここからわかることは、本数が少ないことです。
チケットの入手
私はポーランドに有効な鉄道パスを所持していませんでしたし、特急列車の席も予約していませんでした。なぜかって?ベルリンからシュチェチンは普通・快速列車しか通っていないからです。また、シュチェチンもベルリンも含めてブランデンブルク州チケットを使用できます(ブランデンブルク州はベルリンの周囲の州です)。そこで、私はベルリン中央駅でブランデンブルク州チケットを購入しました。
いきなり、ベルリン・ブランデンブルク州チケット(以下ブランデンブルク州チケット)という名称が出てきて戸惑ったことでしょう。
ブランデンブルク州チケットの概要は以下の通りです。
- ブランデンブルク州のDB(ドイツ鉄道)系の全路線に乗り放題
- ICやICEや利用不可
- 値段は29ユーロ
- 9:00以降に利用可能(土日は終日利用可能)
- 同一行動であれば、5人まで利用可能
※5人で行動すれば1人当たり6ユーロ足らず!
簡単にいうと、平日の朝以外は終日ブランデンブルク州の普通・快速列車に乗り放題です。5人まで利用可能ですので、利用前に利用する人の名前を書きます。名前を書かずに利用したら、不正になることでしょう。なりすましを防ぐために身分証を携帯する必要もあります。
今、私は平然と「ベルリン中央駅でブランデンブルク州チケットを購入しました。」と書きましたが、どのように購入したのでしょうか(一般的な旅行記を読んで、「その手順を知りたいんだよ!」と思ったのです)?自動券売機の画面を撮影し忘れたので、手順を思い出しながら、以下の囲み記事に書きましょう。
自動券売機のトップ画面は(日本とは異なり)乗りかえ検索です(この設定が後で助かることになります)。
1) 出発駅と目的駅を入力
※Berlinはなんなく入力できますが、シュチェチン(Szczecin)は出てきません。これは、出発駅と目的駅がドイツ国内に限定されているためです。何かの設定で国外も設定できますから、そのように設定しましょう。
2) 時刻を入力
私はベルリン中央を8:00ごろに出発すれば良いことを知っていましたから、そのような時刻を入力しました。
3) 候補となる列車がヒットしたら、そこを押す
候補となる列車が出てきたので、そこを押しました。「そんなんでチケットが発売されるの?」という疑問もあるでしょう。よく思い出してください。操作している端末は券売機です。券売機でチケットが発売されないなんてことはありません(そしたら、どこでチケットを購入するの?)。すると、ちゃちいチケットが出てきます(写真1)。29ユーロのありがたみはありません。こんなちゃちいチケットで良いのか不安になったのは事実です。
写真1. ありがたみが感じられないブランデンブルク州チケット(日付が入っているので、これを印刷しても不正利用できないよ!)
一般的な旅行ガイドには時刻表やチケットに関する情報がない(というよりシュチェチンじたいの情報がない!)ので、私が行きかたの概要を説明させていただきました(さすがー)。これで2000字超えるのはどうかと思いますが…。
実際に乗る
変更になった始発駅
さて、実際に乗って観光に行きましょう。前日にブランデンブルク州を購入した際には、「フリードリヒ通り駅からSバーンでベルナウ(Bernau)乗りかえ」と出てきました。この乗りかえ案内に従うと、シュチェチンへの列車は始発から乗れません。これはどうかと思います。私は乗り換え案内のソフトの出来を疑いました(本当に疑われるのは私の脳のほうでした)。そこで、私はあえて乗りかえ案内を無視して、ベルリンゲズントブルンネンに向かいました。そこで衝撃的な事実を目にします。シュチェチン行きの列車の発車案内がありません。どうやら、この日はベルリンゲズントブルンネン始発ではないようです(リヒテンベルク始発だったのでしょう)。そのため、Sバーンでベルナウに向かうことにしました。時刻表にあるから列車がちゃんとくると思い込んでいた私が間違いだったのです。前日に自動券売機で乗りかえ案内を確認したことが功を奏したのです。
写真2. 近郊列車とすれ違う
近郊列車の一部はちゃんと運行されています(写真2)。
写真3. 長距離線は工事中
長距離線は工事をしていました(写真3)。この経路を通るベルリン-シュチェチンの系統は運転できませんから、リヒテンベルク始発にしていたのでしょう。リヒテンベルクを経由してもゲズントブルンネン始発にできそうですが、しない理由はあるのでしょうか?
写真4. 工事現場
ここも工事現場であるようです(写真4)。
写真5. のどかな田園風景
Sバーンはのどかな田園風景も通ります(写真5)。ベルリン郊外に出ると、のどかな一軒家+田園風景という風情でした。このようにして、ベルナウに着きました。調べると、ベルリン市から出たようです。道理でのどかなんですね(ベルリン市に接する自治体のほとんどは人口20万人もありません、人口20万人を超えるのはポツダム市くらいかな)。
混雑した列車に揺られる
写真6. 2両編成の国際列車
人口350万人の大都会と人口40万人の中都市を結ぶ路線にも関わらず、直通列車が1日3本しかありません。そのためか、列車は大変混雑していました。だいたい2両の国際列車って(写真6)…。ベルリンシュチェチン線はパッソウから非電化区間ですので、ディーゼル車による運転です。
私は最初の停車駅、エーバースヴァルデで着席できました。ここは週末にのんびり過ごす場所としてそれなりに人気があるようです。窓側に着席できたので、ドイツ北東部ののどかな景色をご堪能いただきましょう。
写真7. のどかなドイツ北東部
写真8. のどかなドイツ北東部
写真9. のどかなドイツ北東部
写真10. のどかなドイツ北東部
ポーランドに入ると、家が増えます。シュチェチンに入ったのです。
写真11. ポーランドに入った
それと同時に電化区間に入りました。ただし、ドイツとポーランドでは電化方式が異なるようです。国境の辺境を通って、ポーランドの路線網に入ったように感じました。私はシュチェチンの裏口から入ったようのでしょう。
写真12. シュチェチン中央駅に並ぶ電車
シュチェチンの市街地の郊外地区(無機質な団地が多かったです)を通り、中央駅に到着です。ドイツ鉄道は白と赤のデザインが共通項として挙げられますが、ポーランド国鉄の車両は全く色が異なりますね(写真12)。異なる国に入ったことを実感しました。
写真13. シュチェチン中央駅
シュチェチンの街歩き
私はシュチェチンにきたことに満足していました。しかし、何もせずに変えるのはもったいない。そこで、軽く観光することにしました。
旧市街を探索する
まずは旧市街です。
図3. シュチェチン旧市街の位置
シュチェチンの旧市街の位置を示しましょう。図の下にあるのがシュチェチン中央駅です。ここから北に1kmほど離れたところが旧市街です。地図で示した場所は私が昼食で入ったカフェです。このあたりには多くの店があるので、食べるのには大きな苦労はしないことでしょう。
写真14. ポーランド国鉄の列車が通る(駅に戻る時にあわてて撮影したことは秘密♥)
駅を出て左に進みます。すると、鉄道橋が見えます(写真14)。ここをくぐります。
写真15. シュチェチンの美しい姿
シュチェチンの美しい街が広がります(写真15)。
写真16. シュチェチンの美しい姿
写真17. シュチェチンの美しい姿
写真18. シュチェチンの美しい姿(Bazylika Archikatedralna pw. św. Jakuba Apostołaという教会)
このように美しい街を通り、旧市街近辺まで到着しました。シュチェチンには川が流れています。
写真19. 西オーデル川の川岸
川がありました(写真19)。せっかくなので、川を渡って対岸から旧市街を眺めましょう。
写真20. 西オーデル川から旧市街を眺める
旧市街を眺めることができる絶好のポイントのようです(写真20)。このように見ると絵になりますね。その旧市街を訪れてみましょう。
写真21. 美しいシュチェチン旧市街
写真22. 美しいシュチェチン旧市街
写真23. 美しいシュチェチン旧市街
写真24. 美しいシュチェチン旧市街
美しいシュチェチン旧市街の光景をお伝えします(写真21-24)。確かにきれいな街なのですが、団地群も含めて何か違和感がありました。何だろう?
シュチェチン城の跡を訪ねる
次に、城跡を見学しましょう。
図4. Pomeranian Dukes' Castleの位置
シュチェチンの城の跡を示します(図4)。旧市街のもう少し奥に位置します。
写真25. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
写真26. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
写真27. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
写真28. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
写真29. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
写真30. Pomeranian Dukes' Castle(シュチェチン城と訳すようです)
川から目立つので、城跡にも立ち寄りました。私が感じていた違和感の正体がわかりました。人が少なくて街が死んでいるように感じたのです(結婚式か何かをやっている団体もいたので、活気があるところもあるのでしょう)。私が行ったのが土曜の午前中と人がいない時間帯だったこともありましょう。
ただし、シュチェチンが良くない都市というつもりではありません。私が入ったカフェではあっさりしておいしいスープが出されましたし、そこのお客さんがのんびりと過ごす様子もあり、のどかな街と好感を持ったことも事実です。まあ、ベルリンからの日帰りがちょうど良いと思いました。シュチェチンは戦前はドイツ領であり、現在もすぐ隣がドイツという事実はありますが、料理はドイツとは異なり、旧市街の佇まいもドイツのそれと異なる(ように見えました)という現実もありました。不思議と国境で雰囲気が変わるものです。
シュチェチンからベルリンに戻る
シュチェチンを満喫したら、ベルリンに戻りましょう。帰りは直通列車には当たらず、アンガーミュンデでの乗りかえです。Anなんとか行きという認識で大丈夫でしょう。
シュチェチンからアンガーミュンデまで
写真31. 美しいDBの車両
往路に利用した車両よりも新しそうな車両です(写真31)。しかも3両編成でした。その3両編成はガラガラでした。車両運用のプロではありませんが、これを往路に使用すれば良さそうです。混雑した2両編成とガラガラの3両編成。どこかちぐはぐです。
写真32. DBの車内
写真33. DBの車内
その車内です。ボックス席、前向きのシート、後ろ向きのシートが混在しています(写真32-33)。さまざまな利用パターンを考慮しているのでしょうが、それならば転換クロスシートにすれば良いと感じてしまいます。
その車内から景色を堪能しましょう。
写真34. ドイツ北東部の景色
写真35. ドイツ北東部の景色
写真36. ドイツ北東部の景色
ドイツ北東部は平原という感じがします(写真34-36)。まるで夏のようですね。ベルリンに到着した日は寒かったのですが、2日経過したらもうこんなに暑い。GWごろのヨーロッパは気温変動が激しいのかもしれません。車内で検札がありました。私は特に問題ありませんでしたが、私の近くのご婦人2人組はひと悶着ありました。会話は全てドイツ語でなされているのでよくわかりませんが、車掌とご婦人の会話が続いたのです。何も問題なければ、会話は「Danke」なり「Thank you」で終わるはずです。
写真37. アンガーミュンデに到着
アンガーミュンデに到着です。シュチェチン系統はホームの先端に停車します(写真37)。ベルリン方面からシュチェチンに向かうときにアンガーミュンデ(Anなんとかという認識で問題ないでしょう)で乗りかえることもあるでしょう。そのときはホーム先端に列車が停車しているので、注意しましょう。
トラブルに見舞われたRE
図4. ベルリン近郊のRBとREの運転系統
※路線図は公式サイトからダウンロードしました。私がアクセスした際は各種案内ページ(https://www.vbb.de/fahrplan/liniennetze)から路線図をダウンロード(http://images.vbb.de/assets/downloads/file/475128.pdf)しました。
※各種案内ページからアクセスするよりも、ダウンロードのリンクをクリックするほうがやりやすいと思います。PDFファイルのダウンロードが始まります。
※リンク先の修正を実施(2018.9.24)
アンガーミュンデからベルリン(中央駅!)までは所要時間1時間20分足らずで1時間間隔でREが運行されています(図4)。私が乗車するのはRE3であり、この系統はベルリンの先まで向かいます。大宮で国府津行きに乗るようなものですね。路線図を確認すると、途中のエーバースヴァルデまでは各駅に停車、エーバースヴァルデからは快速運転を行うようです。途中の駅についてはRB24系統がカバーするようです。RB24はベルリン中央駅には向かわず、リヒテンベルク(ベルリン市街地から東側)から西に向かわず、そのまま南側に向かうようです。
写真38. アンガーミュンデ駅周辺
写真39. アンガーミュンデ駅周辺
3方向への分岐点とはいえ、アンガーミュンデ駅周辺はとてものどかです。ここからベルリンまで80分足らずとは信じられません。小田原よりものどかですね。
写真40. アンガーミュンデ駅周辺に入線するRE3
そのアンガーミュンデにRE3が入線してきました。
写真41. RE3の車内
機能的な車内です(写真41)。ベルリンへの通勤列車として使用されていますが、着席前提の2階建てというのが羨ましい限りです。
写真42. 美しい車窓
写真43. 素晴らしい車窓
このように美しい景色の中1駅ずつ丹念に停車してエーバースヴァルデに着きました。往路の経験からすると、ここで混雑するはずですが、空いてきました。おかしいですね。ついに電気が消えました。やっぱりおかしいですね。どうやら、ここで運転取りやめになったようですね。ベルリン郊外の駅で放置されてしまったのです。これを私はエーバースヴァルデ事件と命名しました。
周囲に合わせてRB24系統を待ちます。この日はベルナウ行きになっていました。せめてリヒテンベルクかオストクロイツまで運転しましょうよ。RE3からつまみ出された乗客も多く、車内はそれなりの混雑でした。
写真44. RB24系統の電車
写真45. RB24系統の電車(車内)
写真46. 森林地帯を走る
写真47. 森林地帯を走る
この電車は加速性能が良く、スピードは出せます。そのため、各駅に停車するというストレスはあまりありません。このようにして、ベルナウに到着したのです。ベルナウからはSバーン(だんだん飽きてきた…)に揺られて市内まで戻りました。本当ならばベルリンにもっと早く着いたのでしょうが、エーバースヴァルデ事件のせいでベルリンに着くのが遅くなりました。まあ、急ぐ旅ではありませんし、他の列車に乗れたのでよしとしましょう。
ベルリンの観光名所を見てみましょう!以下のページにまとめています。
ベルリン観光のおすすめスポットとモデルコース(18年ベルリン観光)
ベルリン観光では、前後でこれらを観光しました。
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