名鉄でも比較的地味な小牧線。しかし、21世紀になってから地下鉄と直通運転するなど、変化もみられる路線です。そんな名鉄小牧線に乗ってみました。
写真1. 犬山に停車中の小牧線の主、300系
名鉄小牧線の概要
名鉄小牧線の概要を簡単にまとめます。
・区間:上飯田-犬山
※平安通-上飯田は市営地下鉄上飯田線です
・距離:20.7km
・運転間隔:15分間隔(全線通し、日中時間帯)
※朝夕には平安通-小牧の区間運転の設定があります
名鉄小牧線は上飯田-犬山の20.7kmを小牧経由で結ぶ路線です。途中に小牧という都市を通るので、「小牧線」という名前です。名古屋から犬山へは犬山線のほうが便利なので、名古屋と犬山の行き来にはあまり活用されていません。
図1. 上飯田の位置(googleマップより引用)
起点は上飯田です(図1)。昔は上飯田まで名古屋の路面電車がやってきていましたが、路面電車が廃止されて以来、孤立したターミナル駅でした。近くの地下鉄の駅の平安通まで1kmを徒歩連絡するか、上飯田からバスに乗るかの選択を迫られていました。
これでは、沿線の発達も望めません。そこで、名古屋市が地下鉄上飯田線として、平安通-上飯田を建設しました。その地下鉄上飯田線と相互直通運転を行い、現在では平安通から小牧・犬山方面まで1本で結ばれています。
平安通には地下鉄名城線が通っており、名古屋でも有名な繁華街の栄などにも直通で向かえます。わずか1駅の直通でもそこには大きな意味があったのです。
なお、名鉄小牧線は全て普通電車です。急行だの快速だのという速達列車はありません。名古屋から犬山へは犬山線があり、速達輸送はそちらに任せているのです。平安通と名鉄名古屋であれば、名鉄名古屋のほうが立地条件も良いです。名鉄小牧線は沿線輸送が主体なのです。
名鉄小牧線の車両
では、そんな名鉄小牧線にはどのような車両が活躍しているのでしょうか。基本的には以下の名鉄300系と同仕様の名古屋市営地下鉄車が使われます。
写真2. 名鉄300系の外観
名鉄300系の外観です(写真2)。2000年代の名鉄車両らしいデザインです。ただし、小牧線の直通先の地下鉄上飯田線のカラーのピンクが他の名鉄車両と異なった味を出しています。
写真3. 行先は方向幕
行先は方向幕です(写真3)。フルカラーLEDよりも文字が見やすいように思います。
写真4. クロスシートも装備されている
2000年代の名鉄の通勤電車はクロスシートとロングシートの共存を考えていた時期です。その原則は300系にも受け継がれ、4ドアでありながらクロスシートが装備されています(写真4)。
写真5. ロングシートもある
ロングシートもあります(写真5)。これはこれで考えられている座席配列だと思います。混雑が比較的ゆるい名古屋都市圏では、このような多様な選択肢を与えるほうが良いことでしょう。
名鉄小牧線の乗車
さて、実際に名鉄小牧線に乗ってみましょう。今回は地下鉄上飯田線の平安通から乗ることにします。
地下鉄の駅と地下鉄区間
写真6. 名城線のホームからの光景
名城線からの光景です(写真6)。大曽根方面行きホームと上飯田線の乗りかえは階段を降りるだけで便利です。同一平面ではないのは、上飯田線を都心に伸ばせるように考慮しているためでしょうか。この先を南に伸ばすと、森下、新栄町、鶴舞と名古屋の鉄道空白地帯を埋めることができます。ただし、当分はないでしょう。
写真7. ホームへの階段
このように階段を降ります(写真7)。
写真8. 上飯田線のホーム
上飯田線のホームです。掲示物には「上飯田」方面と上飯田の文字がありますが、実際には「小牧」方面と書いたほうが親切でしょう。ただし、自らの管轄区域の上飯田という地名を前面に出したい名古屋市営地下鉄の気持ちは理解できます。
写真9. ホームドアの案内表示
ホームドアに案内表示があります。ここも名古屋市営地下鉄区間の上飯田までがメインです。ただし、犬山までの全駅が掲載されているという「配慮」は感じられます。
このようなことを考えながら、私は普通電車に乗りこみました。1駅だけの地下鉄はすぐに終わり、上飯田線はすぐにおしまいです。よそ者にとっては、この1駅だけ名古屋市営地下鉄の意味がわかりませんが、地元には地元の事情があるのでしょう。そのおかげで、平安通での乗りかえは改札を通る必要もありませんでした。
名鉄小牧線の区間
上飯田から名鉄に入ります。を発車した普通電車は地下区間から出ます。もともと上飯田付近は地下区間ではありませんでしたが、地下鉄との直通運転に備えて地下化された経緯があります。
写真10. 味鋺手前で地上に出る
地下区間から出ます(写真10)。もともと上飯田付近は地下区間ではありませんでしたが、地下鉄との直通運転に備えて地下化された経緯があります。味鋺は「あじま」と読みます。
写真11. 古い民家がある
古い民家もあります(写真11)。この区間は新興住宅街という感じはありません。長年ターミナルが上飯田というハンディキャップがあったため、沿線開発がなされなかったためでしょう。そういうと悪いように聞こえますが、このような古い民家が生き残るなど、昔ながらの街が残ったという側面もあります。
写真12. 高架区間を走る
といっても、名古屋都市圏を通る路線です。道路交通を円滑にするために高架になった区間もあります。新興住宅と古くからの民家が交じり合った日本らしい風景が広がります(写真12)。
写真13. 味美に停車!
味美にとまります(写真13)。味美と書いて「あじよし」と読みます。城北線にも同じ味美駅がありますが、乗りかえには不便です。城北線そのものは毎時1本なので、城北線との乗りかえ需要もそう多くないのでしょう。
写真14. 車庫のようなスペースがある
写真15. 車庫のようなスペースがある
車庫のようなスペースがあります(写真14、写真15)。何のための空間なのだろう?
写真16. 小牧に停車!
小牧線の主要駅の小牧に停車します。ここまで複線区間で、ここから単線区間です。小牧付近は地下化されていますので、沿線の風景を確認することはできません。小牧ニュータウンの中心的な駅です。駅前はニュータウン的な光景が広がります。小牧ニュータウンの人が名古屋に通うには、小牧線以外に自家用車やバスという選択をされた人もいることでしょう。
写真17. ピーチライナーの廃線跡を眺める
その小牧から桃源台ニュータウンまでピーチライナーが通っていました。ピーチライナーと小牧線で名古屋市内への通勤を可能にするためです。とはいえ、沿線住民は中央線の春日井駅を利用することが多く、ピーチライナーの利用は振るいませんでした。そのため、2006年に廃止されてしまいました。その遺構が残っています(写真17)。
写真18. ピーチライナーの廃線跡が分岐する
ピーチライナーの廃線跡が分岐します(写真18)。使われていない鉄道施設、あまり見ていて気分の良いものではありません。
写真19. 郊外住宅地を走る
郊外住宅地を走ります(写真19)。日本のいろいろな場所にある光景です。
写真20. 味岡に停車!
味岡にとまります(写真20)。高架にある駅です。
写真21. 郊外の住宅地を走る
郊外の住宅地を走ります(写真21)。
写真22. 楽田に停車!
楽田にとまります(写真22)。ここは昔から列車交換が可能な駅です。
写真23. 五郎丸信号場に停車!
楽田の次の羽黒を出ると、次は終点の犬山です。この間で不自然に速度が落ちます。五郎丸信号場で列車がすれちがうためです(写真23)。
写真24. 列車がすれ違う様子
列車がすれ違いました(写真24)。
図2. 五郎丸信号場の位置(googleマップより引用)
五郎丸信号場の位置です(図2)。この近くに病院がありますので、病院の場所で示しました。病院は巨大な産業です。通院、お見舞い、医師や看護師の通勤など、意外と多くの需要があります。ここですれ違うくらいであれば、ホームも付けて客扱いしたほうが良いでしょう。
写真25. 犬山線と合流
犬山線と合流します(写真25)。
写真26. まもなく犬山
まもなく終点の犬山です(写真26)。この付近で広見線とも合流しているはずです。
写真27. 犬山に到着
犬山に到着しました(写真27)。そういえば、名古屋市営地下鉄の車両は見ませんでした。まるはち交通センターの当該ページによると、名古屋市営地下鉄の車両の運用はほとんどありません。
名鉄車の予備車がないので、名鉄車の予備車的に運用されることはあります。これは、かつての特急あさぎり号のJR車の運用に小田急車が入っていたことを思い出させます。
名鉄小牧線の乗車記まとめ
私が乗ったのは日曜午前中の下り方向(=空いている条件)でしたが、4両編成の車内は座席の1/4程度が埋まる混雑でした。また、途中の小牧での乗客が入れ替わったことも印象に残っています。それだけ、沿線の交通手段として定着しているのでしょう。
地下鉄直通前は20分前でしたが、現在は15分間隔で運転されています。やはり、地下鉄直通によって都心にアクセスしやすくなったことは大きな改善なのでしょう。とはいえ、始発駅は地下鉄の平安通で、そこまで便利ではありません。それがゆえに名古屋駅直通の名鉄犬山線やJR中央線を選ぶ沿線住民もいると聞いています。
これを改善するには、地下鉄上飯田線の栄や名古屋への延伸ですが、名城線の乗客が減る施策を名古屋市営地下鉄がやるとも思えません。また、車両規格の関係から、地下鉄名城線への直通も難しいです(イギリス-フランス直通のユーロスタの例があるので不可能ではない)。
車両の製造が新しいこともあり、名鉄小牧線は今のまま推移するのでしょう。とはいえ、近くに総合病院がある五郎丸信号場の駅への格上げなど、細かな流動を獲得しながら、現在の沿線輸送をさらに便利にすることは考えてもらいたいものです。