名鉄常滑線の混雑状況(平日朝ラッシュ現場調査、豊田本町→神宮前)

記事上部注釈
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今や名鉄でも看板路線の1つとなった中部国際空港方面への路線。それが常滑線です。その常滑線も従来からの路線ということもあり、それなりに混雑します。そんな常滑線の混雑状況を確認しました。

写真1. 急行金山行きは珍しい存在

名鉄常滑線の混雑状況のまとめ

名鉄常滑線の混雑状況をまとめると以下の通りです。

  • 普通は4両編成であっても比較的空いている
  • 特急、快速急行、急行の混雑状況の差はそこまでではない
  • 神宮前基準で7:35~8:34が最混雑時間帯であり、その混雑率は107%程度である

詳細は以下の章で記します。

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は常滑線で名古屋の都心部に最も近い、豊田本町→神宮前の混雑を確認しました。

名鉄常滑線の混雑状況(平日朝ラッシュ時)の生データ

写真5. クロス車といえども3ドアで乗降性はそれなり(だと思う)

まず、名鉄常滑線の混雑状況の生データを示します。

表2. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ時、生データ)

神宮前到着時点での種別を本表に記載しています。神宮前から種別変更があっても金山までは停車駅の違いはなく(神宮前と金山は隣駅で両駅とも全列車停車)、名古屋までの違いも山王の停車有無だけで、名古屋まで先着するためです。

普通が空いていることが目立ちます。

また、それなりに混雑しており、乗降性を重視すると一般車の3ドア化は悲願であった点も分かりました(2ドア車が現役の時代に興味がないこともありませんが)。

名鉄常滑線の平日朝ラッシュ時の混雑状況の解析

写真6. 名古屋から離れる方向もそれなりに利用される

上で生データを示しました。しかし、それだけではわかりにくいかもしれません。そこで、以下の章で詳細に解析いたします(やさしー)。なお、列車ごとの混雑を分析するに当たり、弊サイトの指標である混雑ポイントから、一般的な混雑率に変換しています。これにより、序列指標から定量的な指標に変換され、計算などが便利になるためです。

復習:名鉄常滑線の朝ラッシュ時のダイヤパターン

混雑と列車ダイヤは無縁ではありません(逆に列車ダイヤも混雑を考慮して決定されます)。そのため、ダイヤに関する最低限の知識はあると理解が深まるでしょう。そこで、名鉄常滑線の朝ラッシュ時のダイヤパターンを簡単に紹介します。また、常滑線は途中の太田川で河和方面の河和線と分岐します。したがって、太田川以遠は河和線列車と常滑線列車に分かれ、本数が減少します。

図1. 名鉄常滑線の停車駅(河和線、知多新線、空港線を含む)(ButuCC - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33729629による)

以下の種別が運転されます。

  • ミュースカイ:全席指定制(名鉄では全車特別車と案内される)。日中時間帯は中部国際空港までノンストップだが、朝ラッシュ時は停車駅が増える。
  • 特急:朝ラッシュ時は河和方面からの運転。特別車と一般車を併結。名古屋近くだと太田川から名古屋市内の神宮前までノンストップ。
  • 快速急行:朝ラッシュ時を中心に運転。基本的に大江を通過する急行というイメージだが急行の通過する聚楽園停車も存在。
  • 急行:太田川から神宮前まで大江のみに停車。ただし聚楽園停車も存在
  • 普通:各駅に停車。基本的に金山までの運転。名古屋以遠へは乗りかえが必要だが、金山で名鉄名城線(栄方面)や多数設定されている名古屋本線列車に乗りかえ可能という割り切りか。

参考に、名鉄の公式サイトに掲載されている路線時刻表から、太田川→名古屋のダイヤを作成しました(図1)。

図2. 名鉄常滑線の朝ラッシュ時のダイヤパターン(OuDiaで作成)

図2を参考に名鉄常滑線のダイヤを解析すると、15分程度のサイクルで、1サイクル当たり急行快速急行各1本、特急またはミュースカイ1本、急行1本(太田川まで普通)、普通1本の組み合わせです。急行快速急行が続行する場面では聚楽園と大江に分担停車しています。

ただし、朝ラッシュ時ということもあり、上記パターンの通りでないことも多く、大まかな理解のための記述とご理解ください。

混雑時間帯の分析

写真7. あこがれのパノラマ席も朝ラッシュ時は逆向きで太陽のまぶしい席でしかない

一般的に混雑時間帯は最混雑時間帯60分について解析されます。そこで、最混雑時間帯60分間を推定します。再度、各列車の混雑率を示しました(表3)。混雑率を視覚的に分かりやすくするために、10%刻みで示しました。

表3. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ時、列車ごと視覚化)

これを10分ごとに分けて示します(表3、図2)。(後述する)普通が空いている関係で普通が入る時間帯では空いて見えたりしますが、ここではそのような細かな点を無視し、近似解を求めるという意味で機械的に分けました。なお、着席前提の特別車については集計から除外しています。

表4. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ時、時間帯ごと)

図3. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ時、時間帯ごと)

ここから、神宮前基準で7:35~8:34最混雑時間帯60分間と判断しました。集計結果、混雑率は107%程度でした。

種別ごとの混雑状況

上で最混雑時間帯60分間を推定したところで、そのなかで種別ごとの混雑率を分析します(表5)。

表5. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ最混雑60分、種別ごと)

図4. 名鉄常滑線の混雑状況(豊田本町→神宮前、平日朝ラッシュ最混雑60分、種別ごと)

ここでは急行系と一括して表示しました。知多半田から太田川まで特急と急行の停車駅は住吉町だけであり(朝ラッシュ時は中部国際空港方面からの特急は設定なし)、太田川から神宮前でも基本は1駅のみの違いです。そのため、特急と急行系の混雑率が近いことも納得です。

急行の一部は太田川までの普通です。というよりも河和線や常滑線太田川以遠の普通が各15分間隔で、両者が合流する太田川からその半数が急行になっているという表現が適切でしょう。その急行はややっ空いているものの、太田川以遠の数駅に限れば停車駅の違いはそこまでないことから、そこまでの差はありません。

一方、普通は空いています。聚楽園や大江という乗降客の多い駅には急行系が停車し、多くの場合は両駅で速達列車を待つので、ある程度の距離を乗る場合は急行系に乗るのでしょう。そのため、普通利用者は短距離利用が主体となり空いてしまいます。

混雑状況から名鉄常滑線のダイヤを考える

写真8. 今や古豪になりつつある車両による普通金山行き

混雑状況から名鉄常滑線のダイヤを考えてみます。まず、思い浮かぶのは、通勤ライナー的な利用がなされつつも利用率がそこまで高くないミュースカイを一般車併結の特急とすることです。ただし、この場合は車体傾斜装置を使用できず(車体傾斜装置が付いた一般車を名鉄は保有していない)、所要時間が増加するリスクがあります。とはいえ、朝ラッシュ時は過密ダイヤですから、このリスクはそこまで大きくありません。

瀬戸線を除く名鉄全線にいえることですが、速達列車に気を取られるばかり普通の設定が薄いです。先述の通りミュースカイに一般車を連結したかわりに、太田川まで普通の急行を終始普通で運転し、近距離利用と遠距離利用を両立することが考えられます。こうすれば、普通も約10分間隔で設定でき、近距離利用客も取り込めるでしょう。また、この際に普通用車両の起動加速度を向上させ、線区全体のスピードアップも考慮するべきでしょう(現行の名鉄車は速達列車の中速度からの加速度を重視した設定です)。

また、急行系が4両編成か6両編成ばかりなのも気になります。8:42着と8:50着が4両編成なのはどうかしています。9:14着を8両編成から4両編成にするかわりに、両者を6両編成にするのが良いと思います。もちろん、9:14着を含め3本とも6両編成にすることも良いでしょう。可能であれば、7:44、8:08、8:24をそれぞれ8両編成にして混雑を緩和するのが望ましいです。

そして、太田川断面で河和線普通と常滑線速達列車、常滑線普通と河和線速達列車をジャストタイムで接続させることを前提とした配線が望ましかったです(現状は河和線上りは3Fに隔離され、2Fの常滑線と同一ホームで接続できません)。

一般に日本の鉄道は線路が乏しく、なかなか理想のダイヤを組めません。山岳国で限られた平野に人口が集中する日本の特性のためでしょうが、良いダイヤには良いインフラというのが原則を改めて思い知りました。

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