独特な風情の常滑。名古屋から日帰りで充分に満喫できる場所です。そんな常滑と名古屋の間は特急などが運転されています。代表的交通手段の名鉄特急に乗りました。

写真1. 常滑に入る名古屋方面の特急
復習:名古屋と常滑の移動方法
簡単に名古屋と常滑の移動方法を記します。
- 駅:名鉄名古屋駅(金山駅、神宮前駅なども利用可能)-常滑駅
- 距離:35.1km
- 所要時間:33分(日中時間帯の特急の場合)
- 運賃:680円
図1. 名鉄名古屋駅と常滑駅の位置関係(googleマップより引用)
名鉄名古屋駅と常滑駅の間はだいたい35kmです。日中時間帯の場合、特急だと33分(下りは31分)で結びます。準急だと43分です。日中時間帯は準急は後の特急より先着します。日中以降は特急と準急が30分間隔で運転されます。つまり、30分に2回の乗車チャンスです。
特急の場合、特別車(別途料金が必要)と一般車(別途料金は不要)が付いており、快適さか安さを選ぶことができます。名鉄の場合、特急券でなく特別車両券を購入することになります。これは、特急の一般車の場合は特別料金がかからないためです。
名鉄名古屋(あるいは金山など)から向かう際は中部国際空港行きに、常滑から向かう際は中部国際空港行き以外に乗ることになります。

図2. 名鉄常滑線の停車駅(河和線、知多新線、空港線を含む)(ButuCC - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33729629による)
参考に名鉄常滑線の停車駅を示しました(図2)。この図では名鉄名古屋発着のように書かれていますが、名鉄の路線網は名古屋をスルーする形態で延びており、名鉄名古屋行きはごく少数です。そのため、常滑から名古屋に向かう際は名古屋行きでなく、他の行先が主体となるのです。
なお、名古屋に向かう電車の場合は「名古屋方面」と案内されることが多いです。
特別車を利用する場合は、インターネット予約だと座席場所を指定でき、(2024年3月の料金改定以降は)安く乗れる時間帯があります。
名鉄ネット予約サービスにアクセスすると、特別車両券を購入できます。
名鉄の特別車の車内
先の章で「特別車」という単語を出しました。では、その特別車とはどのような車両でしょうか。常滑方面で使われている車両(2200系)の車内を紹介します。

写真2. 特別車の車内
特別車の車内全体です(写真2)。リクライニングシートが並んでいます。上質な空間が広がっており、特別車両券450円(料金改定後、車内購入で500円、2024年3月の料金改定前まで360円)とは安く感じます。

写真3. 座席の様子
座席の様子です(写真3)。日本の特急車としては一般的な回転リクライニングシートです。

写真4. 座席から眺める
座席から眺めた様子です(写真4)。出入口付近には荷物スペースがあり、中部国際空港利用の場合の大型荷物に対応しています。

写真5. 座席背面の様子
座席背面の様子です(写真5)。背面テーブルとチケットホルダがあります。

写真6. 座席背面の様子
座席背面の様子です(写真6)。物入れがあります。

写真7. 補助照明がある
窓枠付近にも補助照明があります(写真7)。荷棚の補助照明と合わせ、現代的な空間になっています。荷棚下に照明があるのが「西」の民鉄特急車を感じさせます。

写真8. デッキ付近
デッキの様子です(写真8)。床の模様や寒色系のアソートカラーでモダンな空間を演出しているように見えます。

写真9. デッキの光景
デッキの光景を少し異なるアングルで撮影しました(写真9)。デッキのドアなどが両開きで通路幅を確保していることがわかります。名鉄名古屋駅の停車時間が限られていることや、中部国際空港利用者の大荷物に対応しているように見え、この車両の隠れた特徴ともいえます。

写真10. デッキにあるトイレなど
デッキにはトイレなどがあります(写真10)。ここも青系の色が使われ、メタリック感も合わせ近未来的な空間が演出されます。
ここに名鉄の書体で車体番号(2262)が書かれています。近未来的な内装とそぐわない雰囲気ですが、この書体は名鉄の伝統です。

写真11. 洗面台がある
洗面台があります(写真11)。関東民鉄の有料座席車(特急車でない)にはない設備であり、展望席のない車両といえども、名鉄特急の上質さが読み取れます。

写真12. トイレの様子
トイレです(写真12)。大型の洋式便座です。
名鉄といえばパノラマカーというのが鉄道ファンのイメージですが、2200系はあえてそのイメージから離れ、近未来的な車両として設計された印象です(個人的には展望車は存置しても良いと思いましたが)。展望車がないという点ばかりがクローズアップされますが、内装的に決して劣らない車両という印象でした。
常滑から名古屋の車窓を楽しむ
実際の車窓を楽しみましょう!

写真13. 常滑に入線する特急岐阜行き
常滑に特急岐阜行きがやってきました(写真13)。このときは一般車4両+特別車2両の6両編成でした。特別車は後ろ2両です。

写真14. 古い住宅街を走る
常滑を発車し、高架から地上に下ります。古い住宅街を走ります(写真14)。

写真15. 矢田川を渡る
矢田川を渡ります(写真15)。

写真16. 海が見える
海が見えます(写真16)。海の向こう側は三重県でしょうか。このあたりはちょっとしたリゾート地のように見えました。

写真17. 新舞子に停車!
常滑を出て最初の停車駅である新舞子に停車します(写真17)。大荷物を持った人が待っています。この特急は中部国際空港始発ですが、途中停車駅でも特別車の需要があることを改めて実感します。

写真18. 工業地帯を走る
工業地帯を走ります(写真18)。

写真19. 朝倉に停車
朝倉に停車します(写真19)。特急といえども、太田川までは5分程度の間隔で停車します。2000年代に名鉄は特急を全車指定制から一部特別車に政策を変更しました。これは乗客へのサービスアップ(特別車両券がなくとも特急に乗れる)であるとともに、特急と急行の統合も意味していました。このように多くの停車駅があるのは、かつての急行の役割も担っているのでしょう。

写真20. 高架を走る
高架を走ります(写真20)。太田川で常滑線と分岐する河和線と比較し、住宅が少ないように見えます。この差は普通の本数にも現れており、河和線方面の普通が15分間隔、常滑線の普通が30分間隔です。

写真21. 尾張横須賀に停車!
朝倉を出てすぐに尾張横須賀に停車します(写真21)。

写真22. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真22)。常滑を発車して初めて都市近郊の風景が広がったように思います。

写真23. 太田川に停車!
太田川に停車します(写真23)。ここから河和線系統の列車も合流し、特急は30分に2本に増えます。また、それをサポートする急行・準急も30分に2本に増えます。そのため、特急は太田川から名古屋よりの近距離輸送を担わずに済み、太田川から神宮前までノンストップです。

写真24. 太田川を発車!
太田川を発車しました(写真24)。海の方角に工業地帯が見えます。

写真25. 天白川を渡る
天白川を渡ります(写真25)。この川を渡ると名古屋市です。

写真26. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真26)。このような場所でも普通は平均15分間隔で、やや不便な印象は免れません。

写真27. 多くの車両が停車中!
多くの車両が停車中です(写真27)。

写真28. 大江を通過!
急行停車駅の大江を通過します(写真28)。

写真29. 山崎川を渡る
山崎川を渡ります(写真29)。都市高速らしき道路も見え、いよいよ都市の中心部に近づいてきたと実感します。

写真30. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真30)。道路の幅が広く、東京地区との違いを感じます。

写真31. JR線をまたぐ
JR東海道線をまたぎます(写真31)。

写真32. 神宮前に停車!
名古屋市内への入口に位置づけられる駅の神宮前に停車します(写真32)。名鉄の絶対停車駅で乗務員も交替する駅ですが、JR線には駅はありません。

写真33. 熱田をスルー
今度はJRの熱田をスルーします(写真33)。あちらは普通のみの停車駅です。ここは複々線区間で常滑線系統は内側線を走ります。

写真34. 金山に停車!
金山に停車します(写真34)。栄方面は金山で降りたほうがショートカットできます。

写真35. 金山を発車!
金山を発車しました(写真35)。名古屋市内といえど、速度はそれなりに出します。

写真36. まもなく名鉄名古屋
まもなく名鉄名古屋です(写真36)。このあたりで地下線に入ります。名古屋で降りるためにデッキに向かいましたが、ちらりと見えた一般車は立ちが出る程度は混んでいました。

写真37. 名古屋に到着!
名古屋に着きました(写真37)。ここからさらに走り、岐阜に向かいます。昼下がりの特別車、かなり空いています。

写真38. 岐阜に向けて発車した
岐阜に向けて発車しました(写真38)。
常滑から名古屋まで特急に乗って

写真39. 常滑に停車した特急岐阜行き
今回、常滑から名古屋までの移動に名鉄特急の特別車を利用しました。高品質な車内という印象でした。また、停車駅の多さが気になりましたが、停車駅を増やすかわりに本数を確保する姿勢も感じました。特急の場合、中部国際空港へのアクセスと沿線輸送を兼ね、細かな輸送を拾うことで全体としての本数を確保するという姿勢です。
確かに展望車というのも楽しくて良いでしょう。しかし、輸送機関として見た場合、それより重要なことはいつでも乗れることです。名鉄常滑線の特急はそれを満たしているように見え、交通機関としての本質をおさえている印象です。
あえていえば、上りの所要時間がやや長いことと、一般車の混雑です。速達列車への乗客集中は永遠の課題です。今後はこのような細かな点をさらに改良いただきたいものです。