休日昼間の小田急新ダイヤを観察して考察する(新ダイヤ初日)

記事上部注釈
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実際に乗ることで、小田急新ダイヤの実態がどのようなものであるかを観察しました。ただ「〇〇という種別を撮影できた!」という類のものではなく、現場での観察から実態を把握しようというものです。そして、今後のあるべき姿も簡単に考察しました。

小田急新ダイヤの概要

2018年3月3日(3月17日ではない!)から代々木上原-登戸の複々線が使用開始された小田急線。その小田急が3月17日から複々線を活用したダイヤに改正されました。これが俗にいう「新ダイヤ」ですね。

この新ダイヤでの特徴は以下の通りでしょう。
・快速急行が登戸に停車
・朝のラッシュ時に登戸を通過する通勤急行を新たに設定
・多摩線の急行を千代田線直通から新宿発着にシフト
・千代田線直通の準急や各駅停車を新たに設定

別のページで新ダイヤを詳細に解析しましたので、ここでは上記の特徴を並べて終了にしましょう。

実際に新ダイヤを観察する

今回の主眼を実際に乗車してダイヤを観察したというものです。新ダイヤを待ちきれなくなった私はダイヤ改正当日に取材に出かけました。この日であれば趣味者の数も多いので、私の奇行行動も目立たないだろうという読みもありました。

快速急行で新宿から新百合ケ丘へ

下りのダイヤパターンの復習

私が乗車したのは、快速急行小田原行きです。特急が毎時0分、20分、40分に発車していて、快速急行がその1分後の毎時01分から10分間隔、急行が快速急行の2分後の毎時03分から10分間隔、各駅停車が毎時05分から10分間隔で発車します。各駅停車は新宿から代々木上原まで8分かかりますから、理論上は代々木上原まで逃げ切れます。ここで、各駅停車は代々木上原の少し先まで線路を共用することを押さえておきましょう。

特急の発車時刻が毎時0分から20分間隔というのはとてもわかりやすく、好感が持てます。快速急行のうち、毎時01分、21分、41分は小田原行き、毎時11分、31分、51分は片瀬江ノ島行き(平日は藤沢行き)となっています。急行は新松田行きと唐木田行きの交互です。新松田行きは毎時03分、23分、43分に発車し、唐木田行きは毎時13分、33分、53分に発車します。急行唐木田行きは向ヶ丘遊園で特急の通過待ちを行うことが多いです。なぜ「多い」のであり「必ず」といわないかは、特急待ちを行わない急行唐木田行きもあるためです。特急待ちを行わないのは、そもそも急行唐木田行きの直前に特急がない場合と、後の特急が新百合ケ丘に停車する場合があります。

海老名・本厚木方面への速達列車は、快速急行が01分、21分、41分と発車し、急行(新松田で各駅停車小田原行きに接続)が03分、23分、43分に発車します。そのため、一見03分~21分の間に18分のダイヤホールがあるように見えます。しかし、快速急行片瀬江ノ島行きに乗車すると相模大野で急行新松田行きに乗り換えられるため、実質的には10分間隔で発車することと同じなのです。

急行新松田行きと新松田-小田原の各駅停車はわざわざ別の列車を設定しています。これを1本化すれば当該の列車の所要時間を3分ほど短縮でき、後続の快速急行の所要時間を2分程度短縮できるでしょう(後続の快速急行は新松田で2分少々停車しているようです)。まあ、そのためには、開成-足柄までの5駅を10両対応のホームに延伸せねばなりません。

急行新松田行きは秦野で特急待ち、快速急行は終点まで逃げ切ります。上りの快速急行は海老名で特急待ちをするようです。

実際に快速急行からダイヤを観察する

さて、そんな御託はともかく、実際に観察してみましょう。今回の主眼は複々線区間の観察と列車が詰まると予想される向ヶ丘遊園-新百合ケ丘の実態調査ですので、新百合ケ丘までの観察としました。

新宿に到着する8000形

写真1. 新宿に到着する8000形

私の目的を知ってか知らずか、8000形がやってきました(写真1)。8000形の御託は省略しますが、前面展望しやすいことだけは指摘します。他は3000形の前面展望も良好ですね。

新宿をえのしまが発車。この1分後に快速急行が発車

写真2. 先発の特急ロマンスカーが発車

13:40発の特急えのしま号が発車しました(写真2)。この1分後に快速急行が発車するのです。信号機の表示が警戒表示になったらすぐに発車ベルが鳴り、すぐに発車しました。かろうじて13:41に発車しました。

急行とすれ違う(南新宿)

写真3. 急行とすれ違う

南新宿で急行とすれ違いました(写真3)。この急行は新松田始発です。この急行は新宿で折り返し快速急行として小田原に向かいます。このようすについては、後で述べましょう。

7000形とすれ違う

写真4. 7000形とすれ違う

7000形とすれ違います(写真4)。この車両はそろそろ引退ですが、出会えました。私の日頃の行いの良さが反映された形なのでしょう。

代々木八幡を通過、ホーム新設工事中

写真5. 代々木八幡を通過

代々木八幡を通過します(写真5)。代々木八幡では10両編成対応の新ホームが建設されています。複々線完成後のなお小田急は輸送改善を続けています。これが完成すれば、新宿発着の各駅停車が8両編成から10両編成に増強できて、さらにラッシュ時の混雑が緩和するのです。

下北沢地区のトンネルに入る

写真6. 地下トンネルに入る

代々木上原を出ると、複々線がスタートします。新宿からの複線は急行線につながり、千代田線からの複線は緩行線につながります。代々木上原では小田急線は千代田線を抱え込むようにしていますので、急行線は外側に位置します。小田急の急行線は内側じゃないかって?そうです。でも、ここでは急行線は外側です。急行線を内側に位置させると、大多数を占める新宿発着の速達列車がスムーズに発着できません。では、どこで内側と外側を入れ替えるでしょうか?

東北沢を通過、急行線が下にいく

写真7. 東北沢を通過

代々木上原の隣、東北沢を通過します(写真7)。ここで急行線が下に位置し、緩行線が上に位置するようになっていることがわかります。下北沢は上下2層構造になり、その後に急行線と緩行線を入れ替えるのです。

地上にあがり梅ヶ丘を通過

写真8. 梅ヶ丘を通過

下北沢を発車すると世田谷代田を通過して、地上に上がります(写真8)。ここで、急行線が内側に入れ替わっていることがわかります。

豪徳寺で各駅停車を追い抜く

写真9. 豪徳寺で各駅停車を通過

その高架複々線区間に入ると、各駅停車を追い抜きます(写真9)。この前の列車(特急えのしま号)は世田谷代田付近で追い抜いたと想定します。以前なら、この区間で追い抜くことはできませんでした。さっそく、複々線になった効果があらわれているのです。このように複々線区間を快走します。これは2004年からの光景ですね。

登戸手前で停止

写真10. 登戸手前で詰まる

登戸手前で詰まりました(写真10)。時刻表を見ると、急行→特急→快速急行が連続しています。登戸断面で急行と快速急行が4分間隔で発車します。つまり、前の特急と2分間隔で発車しているのです。急行が何かの影響で遅れたのでしょう。そうすれば、続行の特急も遅れて登戸に一時停車したのでしょう。それで、快速急行も一時停止したのです。

登戸を発車。下り線は急行線と緩行線の区別はない

写真11. 登戸を発車

その登戸を発車すると下り線は緩行線も急行線も区別がありません(写真11)。登戸-向ヶ丘遊園は上り線のみが線増されています。ここの下り線も線増されていれば、特急がこの区間で急行を追い抜いたり(各駅停車の登戸発車は13:49と14:00、急行発車は13:54のため、急行が緩行線を走行しても各駅停車の邪魔にはなりません)、各駅停車が快速急行と同時に登戸を発車できます。ある意味、この区間が新たなボトルネックなのかもしれません。

減速信号に引っかかる(向ヶ丘遊園→新百合ケ丘)
写真12. 減速信号に引っかかる

その登戸を発車すると、減速信号によく引っかかります(写真12)。これは生田と読売ランド前の間の記録と認識していますが、結局最後までこの調子でした。登戸断面でみると、13:49に各駅停車が発車した後に13:54に急行が発車します。この各駅停車に急行が追いついてしまい、急行に続く特急と快速急行が徐行を強いられているという場面が想像できます。登戸-向ヶ丘遊園の下り線が急行線と緩行線で分離できれば、各駅停車の発車時刻を13:48に変更でき(快速急行と各駅停車が同時に発車できるため)、結果として快速急行も1分程度スピードアップできるでしょう。

このようにして新百合ケ丘に着いたのです。やはり、登戸-新百合ケ丘が新たなボトルネックになることを実感したのです。

新百合ケ丘を発車する8000形(快速急行小田原行き)

写真13. 小田原に向けて発車する快速急行(新百合ケ丘)

新百合ケ丘から各駅停車と準急で代々木上原へ

帰りは快速急行に乗らずに(でも代々木上原から乗ったけどね)、新宿に引き返すことにしましょう。新百合ケ丘から登戸までは各駅停車に、登戸から代々木上原までは準急を選択しました。

新百合ケ丘から各駅停車に乗る

新百合ケ丘6番ホームに着く各駅停車

写真14. 新百合ケ丘に入線する各駅停車

新百合ケ丘発14:19の各駅停車を選択しました。驚いたのは、6番ホームから発車したことです(写真14)。つまり、副本線から発車したことを意味します。現在のダイヤでは、上りの各駅停車は新百合ケ丘で速達列車を待ちませんから、本線側の5番ホームからの発車でも良いように思います。それをあえて6番ホームから発車させますと、ポイント通過で若干スピードが落ちてしまいます。時刻表をよく見ますと、14:17に急行が発車しています。この急行が5番ホームから発車しているのでしょう。快速急行が6番ホームから発車しているからこうなるわけなので、快速急行を5番ホームから発車させれば良いのです。

※多摩線急行と小田原からの快速急行の接続は現在の方式でやるしかありません

生田に進入、それなりに待ちがいる

写真15. 生田でのホームの様子

各駅停車しか停車しない駅の1つに生田があります。その生田では乗り降りが少ないと思いきや、それなりに多くの乗客が各駅停車を待っています(写真15)。また、私が乗車していた先頭車は座席の7割程度が埋まっていました。また、途中駅で降りる乗客も見られましたので、各駅停車しか停車しない駅でもそれなりに重要であることがわかります。

その各駅停車が向ヶ丘遊園に到着する直前にこのような放送が流れました(一言一句を覚えているわけではありません)。

「新宿方面にお急ぎのお客さまは、登戸で快速急行にお乗り換えください。次の向ヶ丘遊園は快速急行は通過します。快速急行は登戸を出ますと、下北沢、代々木上原に停車します。快速急行は代々木上原で各駅停車に連絡します。」

このように、新宿へ急ぐ場合の乗客がどこで乗り換えるのが適切かを教えてくれます。どこかのJRではこのような案内がないので、大変良心的ですね。

登戸から準急に乗る

登戸からもかぶりつきで観察したかったのですが、その部分だけ乗客が多くて前面展望を断念しました。

登戸に入る準急(急行線)
写真18. 登戸に入線する準急

登戸からは準急に乗車します。日中時間帯の新ダイヤの1番の目玉かもしれません。千代田線直通の準急を新設して千代田線-世田谷ゾーンのセグメントを重視しようとしたのでしょう。代々木上原-登戸の各駅停車のみ停車の各駅といえども乗降客が多く、従来の各駅停車だけでは輸送力がやや不足していたのかもしれません。この区間の各駅停車を増発したいけど、新宿発着にはできない(新宿-代々木上原の容量が足りない)から千代田線直通にしようというダイヤ上の要請と、重要視したいセグメントが一致していたと理解しています。

準急の停車駅は多いですが、これはサブ各駅停車という位置付けで設定されたためと理解しましょう。緩行線のホームを通過する光景に釘付けとなっていたファンの姿が多かったことが印象に残っています。途中駅でそれなりに乗車が見られた状態で代々木上原に着きました。運転席後ろに陣取ったファンはともかく、乗り合わせた人は「いつもの列車に乗った」ような様子でした。このことも印象に残っています。

新宿での速達列車折り返し

今回の新ダイヤで新宿発着の速達列車が毎時3本増加しました。具体的には、20分間隔で運転される唐木田発着の急行が増加したのです。新宿のホーム不足は問題点となっています。では、その新宿でのホームのやりくりはどうなっているのでしょう?ホームのやりくりの中で、特に交差支障について考えます。

新宿でのホームの活用方法

新宿は5線存在し、3線が地上にあり2線が地下にあります。地上の3線では速達列車が発車して、地下の2線は各駅停車が発車します。各駅停車は8両編成が最長ですから、(速達列車を8両編成にしない限り)各駅停車と速達列車の運用をわける必要があります。

速達列車のうち、1線はロマンスカー専用、2線が一般の速達列車が使用できます。各駅停車は10分間隔で2線を使用できるため、特に論じる必要はないでしょう。では、速達列車はどのように折り返すのでしょう?

速達列車の折り返し

新宿での折り返しパターンを簡単にまとめます(表1)。

表1. 新宿での折り返しパターン
小田急新宿折り返し新ダイヤ

特急は特急として折り返します。急行は快速急行として、快速急行は急行として折り返します。快速急行と急行は同等の車両を使用しますので、このこと自体に全く問題ありません。

ダイヤ上、小田急の新宿はよくできています。地上ホームと地下ホームの干渉を考える必要がないためです。つまり、速達列車どうしの折り返し、各駅停車どうしの折り返しだけを考えればじゅうぶんなのです。

2番ホームは下り側、5番ホームは上り側に位置します。5番ホームに到着する場合、2番ホームから発車する場合については、他のホームの在線状況に関係なく動けます。また、発車パターンの解析を行えば、到着パターンの解析も同時に行えますので、発車パターンのみ解析しましょう。

・00分発の特急の場合は、特に問題ありません(同時に他のホームに到着しようと全く干渉しません)
・01分発と11分発の快速急行の場合、干渉するのは上りロマンスカーだけです。ロマンスカーは07分着なので、干渉は問題になりません。
・03分発と13分発の急行の場合、それぞれ05分着と15分着の急行と干渉する可能性があります。通常ならば干渉しないでしょうが、新宿を発車する急行が少し遅れると、上りの急行の到着も遅れます。

可能ならば、4番ホームから急行が発車して、5番ホームから快速急行が発車すればさらにスムーズになることでしょう。01分発も11分発も直後に到着するのが各駅停車なため、干渉がおこらないのです。

以前のダイヤは各駅停車と速達列車が集中して発車・到着していたために無理が生じていました(その顕著な例が小田原方面からの快速急行の半数が代々木上原→新宿で7分かかっていました)。各駅停車の運行タイミングを変更(新宿-梅ヶ丘逃げ切りから新宿-代々木上原逃げ切りで良くなったため)して、新宿折り返しの無理が解消されたことを確認できました。

新ダイヤに触れてみて

若干寒かったものの、天候に恵まれた新ダイヤ初日でした。小田急の新ダイヤの今後は晴れ晴れとしていることを示す天候だと良いと思います。利用者、事業者ともに慣れてスムーズな運行を行うとともに、細かなボトルネックを少しずつ解消してより使い勝手の良い路線となってもらいたいものです。

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