小田急3000形。有名なロマンスカーと同じ番号の形式ですが、標準型という概念が導入された通勤車両でもあります。しかし、初期型はどことなく小田急独自という印象が漂います。そんな3000形初期車の車内を観察しました。
写真1. 多摩線に出没した小田急3000形(初期車)
復習:小田急3000形の概要
まず、小田急3000形の概要を記します。
- 編成:6両編成、8両編成、10両編成
- 形態:4ドアロングシート
- 車体:ステンレス車両(日本車輌製造の標準車)
2000年ごろに登場した通勤型車両です。それまでの2000形までの車両とは異なり、小田急テイストが薄れた車両です。3000形の初期車両は車体に独自性が見られましたが、後期型は車体から独自色が薄まっています。
3000形の初期型はドア幅1600mm、戸袋窓ありと、前身の2000形の車体に近づけようとしています。そんな3000形初期車の内装はどのようなものでしょうか。
小田急3000形(初期車)の内装を眺める
では、小田急3000形の内装を眺めましょう!
写真2. 先頭車の全景
先頭車の様子です(写真2)。赤~紫の色相を活用した座席が印象的です。
写真3. 車内を別方向から見る
車内を別方向から見ました(写真3)。ドアというドアは木目を意識した色合いになっています。
写真4. 客室の様子
もう少し別の角度からも撮影しました(写真4)
写真5. 座席全景を眺める
座席全景を眺めます(写真5)。ドア横の仕切板は小さめです。上部が黒いのはモダンな印象を演出したためでしょうか。
写真6. 座席の様子
座席の様子です(写真6)。7人掛けのシートで、1人ずつ分けられています。定員着席には必要な工夫です。座席端の仕切板の座席側にモケットが張られています。
写真7. 天井の様子
天井の様子です(写真7)。壁と同様、白系の明度の高い化粧板が採用されています。蛍光灯にはカバーがなく、関東の標準仕様です。
写真8. 先頭付近の様子
先頭付近です(写真8)。車いすスペースがあり、その部分には折り畳み座席がありました。現在はトラブル防止の観点からか、座席を引き出すことはできません。運転席仕切り壁には大きめの窓が3枚あり、前面展望は良好です。
現在は下北沢と成城学園前付近がそれぞれ地下化されています。そのため、左側の窓のカーテンが閉まっていることも多いです。地下区間のみ自動で幕が閉まるように設定できれば、左側の窓のカーテンが閉まっている時間は短くなり、車内がさらに開放的になって良いと思います。
写真9. 大きいドア
大きいドアが目立ちます。それもそのはず、幅が1600mmと、関東の標準的な幅の1300mmよりも広いです。これは、座席数と乗降性の両立を狙ったものです(2000mm幅のドアだと開閉に時間がかかり、さほど効果は大きくなかったと聞いています)。
写真10. ドアをさらにピックアップ!
ドアをさらにピックアップしました(写真10)。木目の色あいとともに、微妙に柄もそのような風合です。わかりにくいですが、ドア窓は複層ガラスです。
写真11. ドア上の電光掲示板
ドア上には電光掲示板もあります(写真11)。電光掲示板そのものは大きくありませんが、周囲を黒い縁取りで囲み、存在感を出しています。
写真12. 車端部の様子
車端部の様子です。3人掛けの座席が並んでいます(写真12)。優先席とあって、座席のパターンが逆になっています。モケットを共通化しつつ、印象を変えるという高等テクニックです。
写真13. 座席モケットの比較
わかりやすさを重視し、両者を横に並べてみました。
写真14. 照明の色が異なる
照明の色が異なります(写真14)。優先席以外は白色(色温度が高め)、優先席付近は暖色系(色温度が低め)です。
写真15. 車端部の壁とドア
車端部の壁とドアです(写真15)。ここのドアも木目系の色です。座席端部にもモケットが張られています。
小田急3000形(初期車)を眺めてみて
写真16. 戸袋窓のある車体が特徴的
今回、小田急3000形の初期車の車内を眺めてみました。旧式車両よりも車体幅が狭く、収容力という意味ではやや劣る車両です。これは標準型の車体を選択したがゆえの犠牲なのでしょうか。
一方、車内ではそれなりの意匠性も感じられ、一部のファンが言うほどの悪い車両ではないように感じました(個人的にはそこまで嫌いな車両ではありません)。ただし、標準型車両を目指すなかで、ここまでの独自性がコスト的に見合っておらず、次の車両からはさらに標準型に近くなっていきました。
オリジナルと標準型の狭間で生まれた3000形初期車。数も少なく、地味に走り続けることになるのでしょう。