相鉄の都心直通プロジェクト実現が延期されるようですね。ここで、相鉄直結の概要を振り返るとともに、「都心」のどこに直結するのか考えてみます。
相鉄の都心直通の公式発表を振り返る
私の記憶が確か、そう言っても説得力がないでしょうから、大本営公式発表のリンク先を示します。その発表によると、JRとの直通は2019年、東急との直通は2022年になるようですね。
※相模鉄道による発表はこちらです。内容量はそう多くありませんので、読んでみましょう。
相鉄の都心直通プロジェクトの概要
"相鉄・JR直通線は、羽沢駅(仮称)から東海道貨物線に入り、途中から横須賀線を経由し、その後いわゆる湘南新宿ラインのルートを通り、渋谷・新宿方面に向かうルートを基本として想定しています。
相鉄・東急直通線は、羽沢駅(仮称)から新線にて新横浜(仮称)を通り、日吉より東急東横線にて渋谷に、東急目黒線にて目黒に向かうルートを基本として想定しています。"
門外漢の私ですが、ここで簡単に考察したいと思います。
相鉄の都心直結の概要を考察する
相鉄の意図の再確認
ここでは、当事者の相模鉄道側の意図をまとめます。
・ルートは何であれ、相鉄沿線から都心までの所要時間を短縮し、乗り換えをなくしたい
・上記により、東京都心勤務の居住地の候補地に相鉄を挙げてもらうこと
(以上、鉄道ジャーナル2014年7月号を参照)
この効果を最大限に引き出すために、所要時間が短く、なおかつ運行本数が多いルートが最適解でしょう。そのため、JR側では東京方面に直通することは考えられて(※)いないのでしょう。また、JR側は山手線西側(渋谷・新宿方面)、東急側は山手線東側(新橋・大手町地区-三田線が通ります-)とすみ分けしたほうが、相鉄側としても便利でしょう。
※横須賀線内の本数が制限されるため、そこから新宿方面と東京方面に分散すると、1ルート当たりの本数が少なくなることを意味しています。
受け入れ側の確認:東急
ここで、受け入れ側について考察してみましょう。まずは東急についてです。相鉄・東急直通線は日吉まで建設される計画です。日吉からは東横線と目黒線が存在します。
本数の推定
東横線の受け入れ体制はあまりないのが現状といえましょう。"東""横"線という名称が示すように、東京と横浜を結ぶのが重要な役割です(日吉も横浜市ですけどね)。その役割を考えますと、横浜(あるいは元町・中華街)まで結ぶ電車を相鉄直通に振り替えることは得策ではありません。現状の武蔵小杉折り返しや菊名折り返しを振り替えるのが精々でしょう。
現状の途中駅折り返しの運行本数から(物理的に可能な)相鉄直通本数を算出すると、朝は15分間隔、日中は30分間隔、夕方以降は15分間隔です。現在は各駅停車が主体ですが、乗客の速達列車傾向を踏まえれば、これを急行か特急に変更した上で相鉄直通とすることは可能でしょう。
メインとなるルートは、目黒線でしょう。現在の目黒線は日吉までですので、極端な話、目黒線全列車が相鉄と直通することも可能です。乗客が増加した場合、6両編成から8両編成に変更することで対応が可能です。
所要時間の推定
次に、所要時間を概算で求めましょう。西谷から日吉まで12.7kmで途中3駅とされています。北総線急行の京成高砂-新鎌ケ谷がちょうど12.7kmで途中3駅で13分で結んでいます。そのため、西谷-日吉は13分とします。現状の通勤特急が17分(夕方上り)~22分(朝上り)で日吉-渋谷を結びますから、二俣川-渋谷は朝ラッシュ時40分、日中34分で結べます(いずれも二俣川-日吉間各駅に停車と想定)。
同様に、二俣川-目黒は朝ラッシュ時40分、日中34分で結べます(偶然ですが、渋谷-日吉と目黒-日吉の所要時間は同じなのですね)。目黒-大手町は18分ですから、二俣川-大手町は朝ラッシュ時58分、日中52分で結べます。
ただし、これは日吉-西谷を各駅停車とした場合です。新綱島、横浜羽沢や鶴ヶ峰を通過すれば、あと3分程度短縮可能です。また、目黒線奥沢で追い抜きが可能になればあと2分程度短縮可能です。これが実現すれば朝ラッシュ時の所要時間は53分になります。
朝ラッシュ時について現行と比較しましょう。現在は横浜乗り換えで二俣川-渋谷の単純な所要時間の合計は42分、これに乗り換え時間を含めて52分程度です。同様に計算しますと、(横浜-東京間は東海道線)二俣川-東京の単純な所要時間の合計は45分、これに乗り換え時間を含めて55分程度です。
東急方面のまとめ
東急方面との直通は渋谷方面で所要時間の効果は大きそうで、本数は目黒方面に振れそうということです。東京駅そのものを目的地にする場合は所要時間の効果はありません(乗り換えなしで所要時間は変わらない)が、三田線や南北線沿線そのものが目的地の人も多いでしょうし、山手線に直結するのは間違いないでしょう。
写真1. この電車が相鉄線まで行くのでしょうか?
受け入れ側の確認:JR
横須賀線の鶴見(ホームはない)まで相鉄の線路を建設します。そこから都心側は従来の横須賀線の線路を走ります。逆にいうと、鶴見から蛇窪(ここから都心側は2方向に分かれる)は線路容量がパンパンです。現在の鶴見→蛇窪(いずれもホームはありません)の朝ラッシュ時は、線路容量がギリギリなので、毎時2本が限界でしょう。日中も同様の本数となるでしょう。これでは相鉄直通の本数が少なすぎで利便性は低いです。個人的な考えですが、JRとの直通は不要では、と考えてしまいます。少しでも本数を増加させるためには、蛇窪の改良も必要でしょう。