京王線の2022年3月ダイヤ改正を解析する

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準特急の廃止と特急の停車駅増加という衝撃的な内容の京王線のダイヤ改正。その内容をまとめ、解析しましょう。

写真1. 準特急は廃止された!

京王線の2022年3月ダイヤ改正の概要

2022年3月ダイヤ改正で京王線の変更点は以下の通りです。

  • 特急の停車駅を準特急と同等(笹塚、千歳烏山、高尾線各駅を追加)とし、準特急の設定取りやめ
  • 京王ライナーを明大前にも停車
  • 夕方時間帯の相模原線特急(改正前は準特急)の所要時間短縮

以下の章で、これらの詳細を記します。

ダイヤ改正のポイントの概要

京王9030区間急行

写真2. 日中時間帯の区間急行には大きな変化はない

上で3点のポイントを記しましたが、それらの概要をまとめましょう。

特急の停車駅変更と準特急との統合

2022年1月時点で、準特急は2015年ダイヤ改正で特急の停車駅に笹塚と千歳烏山を加え、日中時間帯の主力となっていました(特急よりも本数が多い)。千歳烏山の利用が多いことや笹塚での都営新宿線方面への乗りかえが多い(※)ことがその要因でしょう。

※新宿で京王線と都営新宿線のホームは離れているため、同じホームの笹塚で乗りかえるのが楽です。また、都営新宿線(=京王新線)の新宿駅は新宿の繁華街から離れた、甲州街道沿いにあることもあり、主力列車を都営新宿線直通にすることへの抵抗もあります。

また、このダイヤでは準特急が千歳烏山で接続することにより、千歳烏山-布田(調布の1つ新宿寄りの駅)の各駅にも速達性を提供することができており、受益者が多いことも特徴でした。

今回、準特急に統一することとし、名称を特急に統一することにしました。

2001年ダイヤ改正時に京王線は特急準特急で統一され、このときには日中時間帯の特急は新宿から京王八王子まで34分で結んでいました。2013年に分倍河原と北野を追加、2022年に笹塚と千歳烏山を追加と、だいぶ停車駅が増えています。このときの爆走を知っている身としては、いささか後退しているようにも感じます。個人的には、無理に停車駅をそろえる必要もなかったように感じます。

停車駅増加による具体的な影響を各時間帯のダイヤ解析で述べますが、新宿から京王八王子までは4分の増加と、サービス水準の後退を感じさせるものです。

京王ライナーの明大前停車

明大前そのものはそこまで大きい駅ではなく、駅前もそこまで発展しているわけでもありません。とはいえ、明大前は井の頭線との連絡駅で、渋谷方面と京王線沿線への重要なジャンクションです。その明大前から下り列車に乗る場合、始発はないことから座席確保は困難です。そこで、ライナー列車が重宝されるのですが、従来は京王ライナーは明大前を通過し、渋谷方面からの乗客にとっての京王線の着席サービスはないに等しいものでした。今回、京王ライナーが明大前に停車し、渋谷方面から京王線への着席チャンスは増加しました。

相模原線特急の所要時間短縮

従来、夕方ラッシュ時の相模原線準特急は調布で特急京王八王子行きを待ってから発車していたのですが、これを待ち合わせなしで発車することにし、相模原線への所要時間を短縮しました。従来は後続が速達性の高い種別でしたので、待ち合わせも意味があったものかもしれません。しかし、準特急特急が統合されたので、そこまで気を遣う必要はありません。そのような意味から調布での待ち合わせはなくなりました。

また、これにともない、別の電車が調布で特急京王八王子行きと接続できるようになりました。そのため、調布で特急京王八王子行きと相模原線の各駅にとまる電車が接続し、ジャストタイミングで発車することで、新宿から相模原線の各駅への所要時間も短縮されています。

なお、相模原線内では特急準特急も停車駅は同じですので、今回のダイヤ改正で特に停車駅が変わるわけではありません。

各時間帯のダイヤの解析

京王7000系急行(笹塚)

写真3. 朝ラッシュ時はほとんど変化ない(笹塚で撮影)

上の章でダイヤ改正の概要を確認したところで、それぞれの時間帯のダイヤについて改正前後の変化点を探りましょう。

朝ラッシュ時上り

朝ラッシュ時上りの明大前発車時刻を示しましょう(表1)。

表1. 朝ラッシュ、明大前上りの時刻比較

22.03 京王ダイヤ改正(朝ラッシュ、明大前上り)

これを見ると、以下の2点が目立ちます。

  1. 7:11発特急(相模原線始発)が減便されている
  2. 7:29発各駅停車(桜上水始発)が減便されている

2については、各駅停車が2分続行で2本連続しており、なおかつ1本は近距離の桜上水始発であることから、そのうちの1本が整理されたと考えると、そこまで影響は大きくなさそうです。しかし、1については利用の多い特急の減便であり、その影響は大きそうです。従来、多摩センター発の特急系は6:03、6:20、6:31、6:40、6:49、7:01と発車していたものが、6:04、6:16、6:36、6:50、7:01の発車に変更されており、2本の電車が1本に統合されたことがわかります。6:28には京王ライナーが発車しており、明大前停車もあいまってライナー誘導と勘ぐってしまいそうです。

では、所要時間はどうでしょうか。朝8:00、8:30、9:00ごろに到着する最速達列車の所要時間を見てみましょう(表2)。

表2. 京王ダイヤ改正(朝ラッシュ、上り所要時間)

22.03 京王ダイヤ改正(朝ラッシュ、上り所要時間)

調布から新宿までの所要時間が1分短縮されています。これは、上記の減便によるものよりも、乗客が減少し、多くの駅で停車時間を削減できた効果でしょう。なお、相模原線の8:00ごろ到着の所要時間が短くなっていますが、これは対象列車が区間急行から急行に変更したためです。

おおむね朝ラッシュ時は1分程度のスピードアップで(相模原線の特急が早朝に1本減便された以外は)大きな変化はありません

日中時間帯のダイヤ解析

次は、日中時間帯のダイヤを解析しましょう。ダイヤ改正前のダイヤパターンは以下の内訳の20分サイクルでした。

  • 特急:1本(平日は新宿-高尾山口、休日は新宿-京王八王子)
  • 準特急:2本(平日は新宿-京王八王子と新宿-橋本、休日は新宿-高尾山口と新宿-京王八王子)
  • 区間急行:1本(都営新宿線直通-橋本)
  • 快速:1本(都営新宿線直通-橋本)
  • 各駅停車:2本(新宿-京王八王子、新宿-高尾山口)

慣れれば大したことはありませんが、速達列車が特急準特急の2本立てでサポート種別が区間急行快速と種別が4つもあり、ややわかりにくかった点は否めません。下りでいうと、準特急を千歳烏山で降りると、すぐに仙川、つつじヶ丘と停車する電車に接続していました。そして、それが快速の場合はつつじヶ丘で各駅停車に連絡します。そして、特急には対応するそれがなく、千歳烏山を通過していたといえます。

今回は、そのベーシックなパターンは変わらず、従来、20分間隔で運転され、新宿から調布を14分(調布から新宿は16分)で結んでいた特急が廃止された格好です。この影響で、休日の新宿から京王八王子までの所要時間は38分から42分(京王八王子から新宿は40分から42分)に伸びています。ただし、平日の新宿から京王八王子の所要時間は42分のまま(京王八王子から新宿は43分から42分)ですし、新宿から北野までの速達列車が10分等間隔で運転されるというプラスの面もあります。

相模原線の停車駅は変わらず、新宿から多摩センターまで30分という所要時間は変わっていません(上りは改正前の31分から32分に伸びた)。

下りの特急は千歳烏山で快速か各駅停車に乗りかえることができ、千歳烏山から調布の各駅にも特急の恩恵があります。

なお、休日も速達列車の多摩センター-橋本は各駅にとまり、同区間を20分に3本から20分に2本に減便しています。

夕方ラッシュ時のダイヤ解析

従来の夕方ラッシュ時のダイヤは20分サイクルのパターンダイヤで以下の内訳でした。

  • 特急:2本(新宿-京王八王子2本)
  • 準特急:1本(新宿-橋本)
  • 急行:1本(都営新宿線-橋本)
  • 区間急行:1本(都営新宿線-橋本)
  • 各駅停車:1本(新宿-橋本、新宿-高尾山口)

日中時間帯と異なり、準特急よりも特急のほうが多いパターンです。また、相模原線の速達列車が10分間隔では少ないと判断され、なおかつ快速だと調布まで逃げ切れないことから、急行に変更されています。また、調布始発の各駅停車橋本行きが設定されています。

今回、その基本的なパターンは変更されず、以下の内訳になっています。

  • 特急:3本(新宿-京王八王子2本、新宿-橋本1本)
  • 急行:1本(都営新宿線-橋本)
  • 区間急行:1本(都営新宿線-橋本)
  • 各駅停車:2本(新宿-高尾山口2本)

01分と12分に特急京王八王子行きが発車し、いずれも笹塚で都営線からの急行区間急行を追い抜きます。特急が11分間隔が開いているところに特急橋本行きが入り、09分に発車します。特急橋本行きは千歳烏山で接続列車がありません(接続列車は直後の特急京王八王子行きの直後です)。そうはいっても、千歳烏山を通過しても、調布で1分前に区間急行が先行しているので、スピードアップはできません。

特急京王八王子行きはダイヤ改正で停車駅は増えていますが、所要時間は43~44分から42~43分とかえって短縮されています。ただし、京王ライナー(京王八王子行き)の直後の特急京王八王子行きは45分から47分に増えています。これは直前の各駅停車が高幡不動で待避するため、その後続の特急京王八王子行きも速度を上げられないためです。

京王からのプレスリリースにもある通り、特急橋本行きの所要時間は短縮されています。従来は、後続の特急を調布で待つために3分停車していましたが、これがなくなりました。これは橋本行きが準特急、後続が特急という順番で、千歳烏山地区の乗客が準特急に集中するという懸念があり、後続の特急からも相模原線各駅に向かえるようにという配慮があったのが、どちらも同じ停車駅になり、そのような配慮が不要になったためと解釈しています。このことで、特急橋本行きの所要時間が短縮されています。

このことにより、別の列車が調布断面で特急京王八王子行きと同じホームで接続できるようになりました。そこで、各駅停車橋本行きか区間急行橋本行きに接続できるようになり、多摩センターまでの各駅への乗りかえ時間が短縮されました。このことによる副産物はまだあります。調布断面で速達列車の4分前に各駅にとまる電車が発車していましたが、これが6~7分間隔が開くことで、後続の速達列車が多摩センターまで本来の速度で走れるようになりました。

このことで、調布断面で京王線府中方面の各駅停車と後続の速達列車の運転間隔が縮み、後続の速達列車の速度が上がらないという懸念も感じるかもしれません。しかし、そのようなことはありません。今回、調布断面で府中方面と橋本方面の速達列車の発車タイミングがずれることにより、調布断面で「適切」なタイミングを変えています。したがって、これらがバッティングすることがないのです。

最後に新宿断面で18:30ごろの速達列車の所要時間を示します(表3)。

表3. 京王ダイヤ改正(夕方ラッシュ下り所要時間)

22.03 京王ダイヤ改正(夕方ラッシュ下り所要時間)

上記のダイヤパターン構築が巧みなのか、所要時間はむしろ短縮されています。特に、特急は停車駅が増えたのに所要時間がわずかに短縮され、ダイヤパターン構築の巧拙が所要時間に効くことがわかります。

2022年3月京王線ダイヤ改正のまとめ

写真4. 今も昔も明大前は輸送上の隘路

今回のダイヤ改正では特急の停車駅増加というショッキングな内容でしたが、ふたを開けてみると所要時間の伸びは最小限に抑制され、そこまで悪いものではありません。また、朝ラッシュ時の上りの減便も最小限に抑えられており、夕方ラッシュ時の減便もありません。

日中こそ最速達列車の所要時間が4分程度伸びましたが、その裏には等間隔運転の実現など悪い面ばかりではありません。今回のダイヤ改正は均等なサービスを提供しようという意図が見えます。とはいえ、懸念点がないわけではありません。新宿、笹塚(都営新宿線方面含む)、明大前(渋谷方面含む)と千歳烏山以遠の各駅の移動は特急が便利という構図になり、準速達列車の急行や区間急行が空いている一方、特急だけが混雑するという事態が予想されます。一方で、列車本数を減らさなかったことによる徐行運転も気になります。

京王線では2010年代のATC導入で駅停車時の速度制限が厳しくなり、各駅停車の所要時間が伸びたとも聞いています。そうであれば、ATCの速度パターンを見直し、各駅停車の所要時間短縮を実現し、後続の速達列車の所要時間を短縮するということも重要です。また、明大前や千歳烏山の2面4線化によるダイヤパターンの適正化も望みたいものです。

このように、都市鉄道といえども速度や所要時間への挑戦も忘れずに運営し、乗客サービス向上と運営コスト削減を両立してもらいたいものです。

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