新幹線夜行列車構想~東京から鹿児島中央

現在、インバウンド需要が増加し、宿泊施設不足が言われています。これを解決する手法は多々ありますが、新幹線に夜行列車を走らせるということも有効かもしれません。さて、東海道新幹線系統を想定して、具体的な肉付けを行いましょう(世間ではこれを無駄で非生産的と言います)。

車両の選択

車両の概要

車両として現実的なのはN700系ベースとなる車両でしょう。私は庶民的な夜行列車を想定しているので、全個室などの車両を想定していません。想定しているのは、北斗星やトワイライトエクスプレスのような、B寝台~ハイグレード個室の混合形式です。この検討では、九州新幹線直通を想定しているので、ベースはN700系8両編成です。

8両編成の内訳

さて、この8両編成はどのような編成にしたら良いでしょう?まず、廉価な移動需要に応えるために、普通車指定席車は欠かせないでしょう。また、廉価な1人、2人用の個室も必要でしょう。(以下、B個室とします)
さらに、ややグレードの高い1人、2人用の個室も必要でしょう。(以下、A個室とします)
走るショーウィンドウとして、ハイグレードな2人用個室も欠かせないでしょう。

以上から、6種類の車両が必要になるでしょう。私の独りよがりな適切な判断により、以下の編成としましょう。

ハイグレード2人個室 2人A個室 1人A個室 2人B個室  1人B個室  座席車(2両)

各車両の概要

私が関係しそうな座席車から考えることにしましょう。車内設備の基準はサンライズ号です(私は貧乏人庶民感覚を持ち合わせた人なのです)。なお、「使用できる長さ」と表記しているのは、N700系7000番台において対応する号車のドア、機器室、トイレ、洗面所を除いた座席部分の長さです。

・7、8号車(座席車)
これは、N700系8両編成と同等です。夜行列車に充当するので、横4列が良いでしょう。現行と同じ定員と想定できますから、96名乗れますね。

N700系8両編成の車内

写真1. 普通車車指定席のイメージ (N700系8両編成)

・6号車(B寝台1人用個室)
現在、N700系8両編成の6号車は普通車9列+グリーン車6列の計15列ですね。これをシートピッチ(普通車1040mm、グリーン車1160mm)で単純に掛けると、16.320mです。出入口を1か所(5号車寄りの出入口をなくす)にすれば1000mmほど稼げるでしょう。また、これに若干のスペースを活用すれば、個室寝台は18mほどになるでしょう。つまり、サンライズ号のソロの配置(通路が中央で両脇に上下2段の個室)とすれば、定員は36名(9列×左右2列×上下2段)となります。通路幅をサンライズと同等とすれば、個室幅は約20cm拡大できます。

ソロの室内

写真2. サンライズ号のソロ (新幹線の車幅ならばこれより20cm拡大できます)

・5号車(B寝台2人用個室)、4号車
現実のN700系8両編成の5号車は18列ありますから、出入口を1つとすれば、20m程度を寝台スペースに活用できます。サンライズ号のシングルツイン(ソロの1Fと2Fを同一部屋としたと考えます)を参考にしますと、定員は40名です(対応するサンライズ号のシングルツインの写真はありませんでした…)。なお、4号車は20列です。5号車と同様に考えますと、定員は44名(10列×左右2列×1室2名)となります。ただし、シャワー室が必要でしょうから、5号車と同様に定員を40名と想定するのが良いかもしれません。

この考察では両者ともに2人用個室と考えましたが、占有スペースは1人用個室と同じです。そのため、乗客の趣向に合わせて1人用個室の割合を増加させることも可能です。その場合の定員は変わりありません。

・3号車(A寝台1人用個室)
A寝台の場合は、通路を片側に寄せて幅方向に広くするのが適切でしょう。3号車の座席部分の長さ方向は16mです。出入口を1か所にするかわりにシャワー室を設けましょう。サンライズのシングルデラックスを基本とすると、1室の長さ方向は210cm程度でしょう(サンライズ号の場合は230cmです)。きっと片側に8個の個室ができることでしょう。そのため、定員は8名です。

シングルデラックスの室内

写真3. サンライズ号のシングルデラックス

※新幹線の車体幅を考慮すると、幅方向に40cmのゆとりが生じます。

・2号車(A寝台2人用個室)
カシオペア号のカシオペアツインが参考になるでしょう(乗車経験がないので、写真はありません)。カシオペアツインの場合はベッドがL字型、長手方向のベッドが昼間がソファとテーブルに化けますので、1人用個室のようなテーブルはありません。長さ方向は2.8m程度必要で、現実に使用できる長さは20.8mですから、定員は7室14名です。

・1号車(A寝台豪華個室)
カシオペアやトワイライトエクスプレスに採用されているスイートのイメージです。当然ながら、貧乏人の庶民感覚を忘れない私は乗車経験がありません。なので、大雑把な考察になってしまいます。まあ、これらの寝台車より良い部屋に住んでいるから良いと自分に言い聞かせます。N700系8両編成の1号車の長さは12.4m程度ですが、客用扉は必要ないでしょう。よって、扉2枚ぶん(700mm×2) = 1400mm以上のゆとりが産まれます。そのため、13.8m程度の長さで算出すればよいことになります。今や伝説となった夢空間のスーペリアツインの場合は、長さ方向5m強です。そのため、2部屋設置できます。残りの部分は2号車と同じ部屋を設置すれば良いでしょう。なお、新幹線ですから展望席はありません。

・具体的な室内の装飾など
私よりもセンスのある人に任せましょう。あくまでも私は大枠を作成することが重要と考えています。
※センスがないから室内の装飾を諦めたわけではない、そう認識しましょう。

車両定員

以上の考察から、各設備ごとの定員を算出しましょう。

普通車指定席 : 96名
B寝台1人用個室 : 36名(下記の2人用個室を減らして、これを増やしても良い)
B寝台2人用個室 : 80名
A寝台1人用個室 : 8名
A寝台2人用個室 : 16名(1号車も含んでいます)
特A寝台2人用個室 : 4名
合計 : 240名
なお、東京-博多では16両編成にできますから、多客期の定員は480名まで増加します。博多以南は8両編成で運転すれば良いのです。

ダイヤ作成

前提条件の確認

ダイヤを作成するにはいくつかの前提条件が考えられます。

前提1. 駅間の運転時間は現行と同じ
N700系8両編成は基本的にN700系16両編成と同等の性能を備えています。そのため、東海道新幹線区間では、通常の速度で走ることができます。山陽新幹線と九州新幹線では現行のさくら号と同様のダイヤで設定できます。 ただし、東海道新幹線での走行を想定して、車体傾斜装置を付加する必要があります。

前提2. 深夜時間帯はフルには運転できない
現在、新幹線で夜行列車を運転できないとされる大きな理由は0時から6時まで運転しないという取り決めがあることです。ただし、絶対にダメということはないでしょう。山陽新幹線では開業前に夜行列車を運転するという計画がありました。この計画では一部区間を双単線として片方を保守、片方を運転という計画でした。双単線にするには複雑な信号システムが必要で、この計画は断念されたのです。

この計画から類推できることは、片方さえ保守できれば良いということです。上下線を同時に運行しようとするから費用がかかるのです。深夜時間帯であっても、片方さえ充分な保守間合いが取れれば良いのでしょう。

前提3. お客のニーズに合ったダイヤとする
いくら机上で素晴らしい計画を練ったとしても、お客のエゴニーズに合っていなければ意味がありません。では、顧客ニーズを最大化するには?日本の中で最も多いのは私に代表されるサラリーマンでしょう。暇なジジババお時間にゆとりのある人生経験の多い方のニーズはここでは考えないことにします。私のように充実して忙しいサラリーマンにとっては、東京発18時や19時はお話になりません。理想は22時ごろの出発でしょうが、前提2の制約条件を踏まえると難しいでしょう。そのため、21時過ぎの出発としましょう。

前提4. 停車駅は適度に
夜行列車の停車駅の数は悩みどころです。こだま並みに停車駅を多くするのか、それとものぞみやみずほ並みに厳選するのか?
私の勝手な判断私の熟考により、以下の停車駅とします。
東京、品川、新横浜、静岡、浜松、名古屋、京都、新大阪、新神戸、姫路、岡山、福山、広島、徳山、新山口、小倉、博多、新鳥栖、久留米、熊本、川内、鹿児島中央

前提を踏まえた具体的ダイヤの提案

次に、これらのパラメータを考慮したダイヤを考えてみましょう。

・下り列車
東京21:26→静岡22:21→浜松22:43→名古屋23:11→京都23:45→新大阪23:58→新神戸6:00→姫路6:16→岡山6:38→福山6:54→広島7:16→徳山7:39→新山口7:54→小倉8:05→博多8:22/8:34→新鳥栖8:47→久留米8:52→熊本9:12→川内9:48→鹿児島中央10:00
新大阪から新神戸へは夜中に適当に移動することにしましょう。新神戸からはさくら号に準拠したダイヤとします。博多でみずほ号の待ち合わせを行うことにしましょう。

・上り列車
鹿児島中央19:33→川内19:45→熊本20:22→久留米20:42→新鳥栖20:47→博多21:00/21:12→小倉21:28→新山口21:50→徳山22:04→広島22:27→福山22:51→岡山23:08→姫路23:28→新神戸23:44→新大阪0:00→京都6:00→名古屋6:35→豊橋7:00→浜松7:19→静岡7:42→東京8:40
これも新大阪から京都に6時間かけています(前提2を反映)。なお、博多でみずほ号を待ち合わせ、名古屋で後続ののぞみ号に乗り換えられます。このことで、鹿児島中央を19:51に出発することが可能になりますし、東京に8:20に到着することが可能になります。なお、名古屋からはひかり502号のスジを借りています。

回送列車が東京から品川までの線路容量を食ってしまいますので、多客期には東京から品川まで減便せざるを得ません。これに対する解決策は、臨時列車の一部を品川始発に変更して、「品川駅利用者に配慮しました」というスローガンを掲げて利用者に恩を着せることです。

上下列車いずれも昼行列車的な利用方法が考えられますので、座席車を設定したのです。

ダイヤ上の競争力の検証

東京から主な都市への発車・到着時刻と航空機との比較を行います (表1)。航空機の最終便より遅く発車して、航空機の始発便より早く到着することが重要ですから、その観点から比較します。

表1. 夜行列車と航空機の比較表(下り)

東京発車21:26というのは航空機の最終便より遅いです。広島到着は航空便の始発より早く、福岡(博多)でも互角です。熊本や鹿児島でも相応の競争力があるでしょう。

表2. 夜行列車と航空機の比較表(上り)

東京到着8:40という時刻は、時間帯に優位に立っています。広島は滞在時間が1時間40分以上延長できると、大幅に優位に立っています(広島空港のアクセスを考慮するともっと優位に立てます)。博多(福岡)と熊本についてはほぼ互角の戦いでしょうが、搭乗手続きに必要な時間を考慮すると、新幹線夜行が優位に立っています。鹿児島であっても悪くない戦いでしょう。

深夜時間帯の運行に制約があってもある程度競争力のあるダイヤが可能ということが分かりました。

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