高輪ゲートウェイの訪問記

山手線で30番目の駅、高輪ゲートウェイ。駅名や駅名標に多くの意見がありますが、新しい街の象徴となる駅であることは事実です。そのような駅を訪問してみました。

高輪ゲートウェイ

写真1. 高輪ゲートウェイの入口は1つだけ(オンリーワン!)

前提知識:高輪ゲートウェイの基本知識

いきなり現地に向かう前に高輪ゲートウェイ駅開設に関する簡単な歴史を紹介しましょう。

昔、田町電車区という車両基地がありました。九州方面の夜行列車の車両などが置かれていた由緒ある施設です。しかし、新幹線や航空機へのシフトなどにより、夜行列車が縮小され、田町電車区の規模を縮小しても良い情勢になりました。この事情は尾久電車区も同様です。そうであれば、田町電車区の一部の機能を尾久電車区に移すのも良い選択です。そして、田町電車区の余った土地を再開発するのも良いでしょう。なにせ、都心の1角の港区ですから、再開発は成功するに決まっています。

しかし、そう単純にはいきません。21世紀になったころ、東海道線と東北線の線路は直接つながっておらず、そのような融通は不可能だったからです。

では、どうすれば良いのか?東海道線の東京と東北線の上野をつなぐ線路を建設し、車両の融通を利かせれば良いだけです。もともと自分らの再開発のためのものです。下手に沿線自治体にお金を出させると、都合の良い運用は不可能です。そこで、全て自腹で東京-上野を建設することにしました。周囲には「日本有数の混雑区間の東京-上野の混雑緩和のため」と言っておけば、イメージアップもバッチリだね!

そうして、田町の車両基地を縮小させました。田町の車両基地を中心に東側に東海道新幹線、西側に山手線が通っていました。山手線を移設せずに駅を設置すると、再開発する場所が線路に囲われた場所となってしまいます。これでは、周囲との行き来は非常に不便ですよね。そこで、山手線(と京浜東北線)の線路を東側にスライドさせました。

ここまでの経緯をまとめると以下の通りとなります。

1) 田町電車区の一部の機能を尾久電車区に移設できるようにする

2) 実際に移設できるように、東京-上野の線路を新たに建設(といっても純粋な建設工事は神田駅付近だけです)

3) 実際に機能を移設し、田町の車両基地の規模を縮小

4) 縮小したスペースに山手線の線路を移設し、その線路の場所に駅を設置

5) もともとの線路部分を再開発(これは駅開業後に実施)

ここまでは細かな正確性を無視した大まかな説明とご認識ください。

実際に高輪ゲートウェイ駅を訪問する

実際に訪問してみましょう。

ホームの様子

私は京浜東北線でやってきました。山手線の新駅と言われつつ、京浜東北線の新駅でもあるのです。

高輪ゲートウェイ

写真2. 高輪ゲートウェイの駅名標

高輪ゲートウェイの駅名標です(写真2)。2020年のJR東日本の標準デザインです。どこでも同じデザインであることは利用するうえで重要です。いたずらに「未来の駅」をイメージした独特のデザインにしていなくて安心しました。(そのため、私は観光地にある古風な駅名標には反対です)

高輪ゲートウェイ

写真3. 京浜東北線のホームの様子

京浜東北線のホームの様子です(写真3)。最近の流行は、木の香りを感じさせるようにしつつ、開放感ある駅です。その一端をホームでも感じさせました。この流行にのっとっているのが小田急の代々木八幡駅です。

小田急線は複々線化が完了しましたが、新宿発着の各駅停車は10両編成にならず、2019年3月にようやく10両編成が運転開始されました。この理由は代々木八幡のホームが10両対応になっていなかったためです。2019年3月にホーム移設を伴って新駅舎も完成しました。その素顔を見てみましょう。

高輪ゲートウェイ

写真4. 京浜東北線のホームの様子

このような様子は一部分ではなく、ホームのずっと先まで続きます(写真4)。私の記憶が正しければ、都会の駅でホーム床面が石目調やコンクリートではなく、木目調なのはここだけでは?2020年代の都市駅の標準アイテム、ホームドアも完備しています。

高輪ゲートウェイ

写真5. ホームの品川よりは新たな撮影スポット?

ホームの品川よりに向かいましょう。ここからは車庫や線路を走る電車が見えます。ちょうど京浜東北線の南行と東海道線の上りがすれ違いましたので、その写真を撮影してみました(写真5)。「撮り鉄」の皆さんであれば、私よりも上手な写真を撮れることでしょう。

高輪ゲートウェイ

写真6. ホームから田町の留置線が見える

田町電車区が縮小されたといっても、運転のオペレーションを考えると、都心に留置線は必要です。その留置線が見渡せます。ちょうど朝に品川にやってきて、夕方に常磐線に向かう電車が留置されていますね(写真6)。

高輪ゲートウェイ

写真7. ホームの田町よりを見る

ホームから田町よりを眺めてみましょう(写真7)。立体交差が見えます。この立体交差で方向別複々線から線路別複々線に変わります。つまり、高輪ゲートウェイは線路別、山手線と京浜東北線は別ホームです。そのため、品川や新橋などに向かう際は、山手線と京浜東北線のどちらが先に発車するかを確認してからホームに向かわねばなりません

どうせなら、立体交差を高輪ゲートウェイ-品川に設置すれば、高輪ゲートウェイは便利になりました。JRさんは再開発に熱心でありながら、そこまで利便性向上には熱心ではない、という印象を抱いてしまいます。そして、品川をかつての南千歳のような配線とすれば(1番線:山手線内回り、2番線:京浜東北線大船方面行き、3番線:山手線外回り、4番線:京浜東北線大宮方面行き)、渋谷方面と川崎方面行きの行き来は楽になります。

高輪ゲートウェイ

写真8. 185系も留置されている

留置線を眺めてみましょう。185系も留置されています(写真8)。特急用車両も留置されているのです。

高輪ゲートウェイ

写真9. ホームからコンコースへの入口

ホームからコンコースへはエスカレータ、エレベータともに完備しています。これは2000年以降の駅であれば当然の設備です。

高輪ゲートウェイのコンコース

せっかくやってきたところです。ホームだけではなく、駅舎も堪能しましょう!

高輪ゲートウェイ

写真10. ホームとコンコースを結ぶエレベータ

誰もいないことを良いことに、エレベータ内部も撮影しました(写真10)。

高輪ゲートウェイ

写真11. ホームを眺める

コンコースからホームを眺めます(写真11)。このように眺められるということは、コンコースとホームは建造物として分かれていないということです。すなわち、風通しの良い駅であることです。

高輪ゲートウェイ

写真12. 天井も半透明で光が差し込む

天井を見てみましょう。独特の造形であり、光が差し込むように半透明です(写真12)。このような開放的な駅を見て、フランス・パリのシャトレレアール駅を思い出しました。

パリには長距離ターミナルではないものの、市の中心部に大きなターミナル駅があります。その名はシャトレ・レアールといいます。パリ中央駅というべき存在です。その隠れた中央駅を訪問してみました。

高輪ゲートウェイ

写真13. ガラスが多用されている

ガラスが多用されている様子がよくわかります(写真13)。地震のときに大丈夫かな?

高輪ゲートウェイ

写真14. 外の光が差し込む

この日はあいにくの曇りでしたが、光は差し込んでいます。コンコースも開放感ありますね(写真14)。

高輪ゲートウェイ

写真15. コンコースの様子

しかし、よく見てみましょう。そこまでコンコースは大きくありません(写真15)。そして、右側に駅の出口がないこともわかります。そう、駅の出口は西側にしかありません。東側には車両基地が広がっているためです。

高輪ゲートウェイ

写真16. やはり東側には出口はない

このようにすっきりしたコンコースになっているのは、駅の出口が片側だけという面もありましょう。

高輪ゲートウェイ

写真17. コインロッカーもある

近年、インバウンド需要も増えており、コインロッカーの需要も高まっていることでしょう。そのような需要に合わせてか、コインロッカーも完備されています(写真17)。駅の改札内のコンコースの一番北側、トイレに近い場所にコインロッカーがあります

高輪ゲートウェイ

写真18. コインロッカー付近からの眺め

コインロッカーからコンコースを眺めます(写真18)。開業段階では駅の北側に主要な施設が集中している印象があります。

高輪ゲートウェイ

写真19. 人工知能搭載(なのかな)の案内装置

改札近くにはJRご自慢の案内装置があります(写真19)。近くの飲食店情報なども充実しています。田町駅近くの飲食店を案内したのにはやや呆れましたが…。利用者目線だと、ちょっとしたことでも聞ける装置があるのはありがたい限りです。

ただし、このときの私は飲食店情報を自らの足で収集しました。

駅の外観を観察する

高輪ゲートウェイ

写真20. 駅入口の看板

駅入口の看板です。視認性の悪い明朝体です。このような看板は視認性に優れたゴシック体を選択するのが良いように思えます。いたずらにデザイン性を重視するのはいただけません。

高輪ゲートウェイ

写真21. 曲線が多用されている

自然界には直線がないと聞きます。自然回帰なのでしょうか、2000年代以降には曲線を多用した駅舎が多くなってきたように思います(写真21)。

高輪ゲートウェイ

写真22. 2020年代の駅舎という感じ

2020年代の流行は木とガラスが多用された駅というものでしょうか(写真22)。良くも悪くも好みがなく、ネガティブな印象を与えない建造物、というのは不特定多数が利用する駅舎には良い選択なのでしょう。

駅周辺の散策

さて、駅周辺を散策してみましょう。

図1. 高輪ゲートウェイ駅の位置(googleマップより引用)

駅は地域とのかかわりがある場所ですので、どこにあるかが重要です。そこで、地図を示します(図1)。訪問した2020年の初夏の段階では、開発は進んでいません。それもそうです。2019年の年末近くまでは現役の線路の場所です。線路をはがし、駅のアプローチ道路を建設しただけ上出来でしょう。

写真23. 道路から駅舎を眺める

道路から駅舎を眺めます。再開発が進めば、駅の出口から直接ビルに入れるのでしょうが、今は地上の道路にしかに向かえません(写真23)。

写真24. 駅前のイヴェントスペース

いずれは再開発される運命の駅前です。今はイヴェントスペースとして活用…されていません(写真24)。2020年になって新型肺炎ウィルスの脅威が語られて、イヴェントは諸悪の根源のような扱いをされているためです。

写真25. 駅周辺以外は封鎖されている

2019年11月から半年で全ての線路をはがして人が入れるようにするのは難しいです。そのためか、駅周辺以外の再開発用地は封鎖されています(写真25)。

写真26. 道路の駅側も立ち入れない

駅から田町寄りに道路があります。この道路の駅側(写真25の逆側)も立入禁止です(写真26)。単に立入禁止では殺風景ですから、絵画が飾られています。何で私に絵画の依頼が来なかったのだろう(注.私の絵はたいへん下手です)。

写真27. 道路から駅舎を眺める

道路から駅舎を眺めます(写真27)。みごとに空き地です。

写真28. 京浜国道までやってきた

もう少し進むと、京浜国道までやってきました(写真28)。ここは既存の市街地です。2011年の道路地図を見て気づいたのですが、この道路を田町駅のほうに進むと、モザンビーク大使館があります。港区に集中する大使館の多くは六本木地区にありますが、高輪ゲートウェイ地区にもあるのです。

なお、高輪ゲートウェイは都営地下鉄(と京急電鉄の)泉岳寺の近くにあります。従来、品川から横浜までのJR京浜東北線と京急電鉄の競合は1駅北側の高輪ゲートウェイ(京急は泉岳寺)から横浜に拡大したのです。

写真29. 泉岳寺駅の入口(南側)がある

コラム.どんな駅名が良かったのか?
高輪ゲートウェイの駅名が発表されたとき、多くの批判が集中しました。この批判の根拠は(私が見る限り)以下の通りです。

・駅名が長すぎる

・歴史ある地名を採用していない

・外来語由来の駅名はどうかしている

というものです。個人的には、駅名は識別記号ですから、長すぎるのは考えものととらえています。では、代替案はあるのでしょうか。

代替案の駅名の列挙

主な代替案は以下の駅名です。

・高輪

・芝浜

・芝浦

・港南

・新品川

以下、その駅名の是非について考えてみましょう。

代替案の駅名の是非を考える

高輪はどうでしょう?駅の所在地は港南2丁目ですが、高輪にもほど近く、悪くない選択肢です。既存駅名との競合でいうと、高輪台や白金高輪がありますが、そう紛らわしくありません。この程度で紛らわしいというのであれば、多くの駅名が紛らわしくなってしまいます。「高輪にない高輪駅もどうか思う」という意見があるでしょうが、山手線の大塚駅も大塚にありませんでした(もともと巣鴨村の駅です)。そのような意味でも妥当といえましょう。

では、芝浜はどうでしょう?これも悪くない選択です。ただし、芝浜のイメージが付きづらく、そのような地名の場所もありません。そのような意味では悪い手ともいえます。全体として中くらいのものでしょう。

さて、港南はどうでしょうか?この駅そのものが港南にあるので、悪くなさそうです。しかし、東海道線の東側に広がる港南2丁目へのアクセスが不可能で、「港南に行くには困難(コウナン)な港南駅」と言われてしまいます。

ところで、芝浦はいかがでしょうか?芝浦といえば芝浦ふ頭をイメージするでしょう。その芝浦ふ頭から離れているので、駅名を「識別記号」と考えると、良くない選択肢です。
最後に、新品川という選択はどうでしょうか?もともと品川が品川区になく、新○○という駅名があまり好まれていない以上、新品川という手はないでしょう。

つまり、高輪か芝浜が妥当な選択肢です。JRは「ゲートウェイ」という単語を付けたばかりに批判を浴びてしまいましたが、それ以外では妥当な選択なのでしょう。

高輪ゲートウェイの訪問記まとめ

高輪ゲートウェイとE235系

写真30. 2020年代の象徴の駅と車両の組み合わせ

新しい駅だけあり、現代的な建築技術でまとめられた高輪ゲートウェイ駅。現在の機能は駅の北側に集中していますが、駅の南側からの行き来ができるような準備もなされています。

駅名についての賛否両論もありますが、駅名の違和感はそのうちなくなるでしょう。そして、駅前の空き地に新たなオフィス街ができるでしょう。そのうちにそのスペースに昔、電車が走っていたという事実も忘れ去られます。その瞬間がまさに高輪ゲートウェイという街ができあがり、高輪ゲートウェイ駅の本格開業の瞬間です。

このように、国際都市東京は日々その姿を変えているのです。日々姿を変えることこそ、都市が都市であるゆえんです。その営みの一環を実感する訪問となったのです。

印象の近い2つの駅の記事を読む!

本文中にも出した印象の近い2つの駅の訪問記へのリンクを貼ります。ぜひともご覧ください。

・シャトレ・レアール駅を楽しむ(19年夏パリ観光)

パリには長距離ターミナルではないものの、市の中心部に大きなターミナル駅があります。その名はシャトレ・レアールといいます。パリ中央駅というべき存在です。その隠れた中央駅を訪問してみました。

・新装になった代々木八幡駅を訪問!

小田急線は複々線化が完了しましたが、新宿発着の各駅停車は10両編成にならず、2019年3月にようやく10両編成が運転開始されました。この理由は代々木八幡のホームが10両対応になっていなかったためです。2019年3月にホーム移設を伴って新駅舎も完成しました。その素顔を見てみましょう。
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