福岡のターミナル駅で列車を観察する(18年夏)

記事上部注釈
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福岡市内には2つのターミナルがあります。その2つのターミナルで行き交う列車群を観察しました。また、両者のターミナルではっきりと異なるものを探し、その理由も考えました。

博多:各方面へのターミナル

福岡市のターミナルの1つが博多です。ここから東は東京、南は鹿児島へと新幹線が伸び、九州の鉄道の拠点です。そのほか、福岡周辺の近郊輸送も担います。その博多で多くの列車を観察できました。

九州を走る特急列車たち

885系特急

写真1. 885系による特急

博多に来る特急のうち多いのが、885系でしょう。885系は振り子車両として設計・製造され、カーブ区間のスピードアップに貢献しています。博多-長崎と博多-大分の特急に充当されています。時刻表で「白いかもめ」「白いソニック」と書かれていますので、事前に予想できます。885系の威力を数字で示しますと、振り子ではない車両を使用している特急が長崎まで2時間8分なのに対し、885系使用の特急が1時間55分と、13分も速いのです。

その885系は日本は独創的な外観とも言われていますが、実際はドイツの高速列車に似た外観です。ドイツの高速列車がわからない?写真をお見せしましょう。

ICEとレイルジェット

写真2. ドイツの高速列車ICE-T(でも撮影したのはオーストリアのウィーン…、この記事で収録)

ただし、内装は日本に適したものになっていますし、外観が外国の列車と似ていても乗客的には文句ありませんね。

885系ドア付近

写真3. 885系のドア付近

885系デッキ

写真4. 885系のデッキ部分

その885系のデッキ部分の内装を撮影できました(写真3-4)。けっこう落ち着いていて良い内装といえます。いわゆるミトーカデザインですが、そこまでくどくないように思えます。

その885系の前身は883系です。これも独特のデザインです。

883系ソニック

写真5. 883系ソニック

時刻表を見ると、883系ソニックと885系ソニックでは特に所要時間差はないようです。以前の883系の内装は派手目でしたが、現在は落ち着いたものとなっています。885系にイメージを合わせたのでしょうか?この車両は博多-大分のみで活躍しているので、それ以外の特急を利用する人には縁がない車両ですね。

昔はつばめに限定して使われた車両、つまりスペシャルな車両でした。現在は九州の汎用特急として使われています。その車両が787系です。詳しい内装は特急かもめのグリーン車に乗る(博多→長崎、18年夏長崎・福岡鉄道旅行記)をご覧いただきましょう。

787系の先頭(博多)

写真6. 九州の標準車両787系の前面

このようないわゆる「昆虫顔」の車両です。私が乗って意外に思ったのが、グリーン車がモーター車であることです。インバーター車ではないので上品な走行音ですが、特別車両にモーター車を充当させるのがあまり例がありません。ただし、防音がきちんとなっていて、快適な道中を楽しめることは確かです。

今や九州古参の車両になってしまった車両が783系です。783系の特徴は、前面展望が良好なことと、出入口が車両中央部にあることです。佐世保線に入る特急は基本的には、この車両です。「ハイパーサルーンで運転」と時刻表に書いてあれば、この車両が使われています。日豊本線の特急の一部もこの車両が充当されます(日豊本線は基本的には787系のほうが多いです)。

783系(みどり塗装)

写真7. 783系の前面と出入口

783系(標準塗装)

写真8. 783系の標準塗装

私が見た783系は特急みどり用のもの(写真7)と標準塗装(写真8)です。写真7を見ると、出入口が車両中央にあることがわかります。これは当時、自由席、指定席、禁煙席、喫煙席という細かなニーズを短編成でまかなうために、1両をA室とB室に分割したためです。なお、現在は全席禁煙となったので、このような細かな区分を行う必要がありません。この車両の前面展望が日本の特急列車の中でもトップクラスと思います。

この他に、リゾート特急のゆふいんの森も見かけました。この列車も非常に人気が高く、「乗ってみたい、憧れる♥」という声も聞かれます。

ゆふいんの森

写真9. みんなの憧れ、ゆふいんの森

この車両は前面展望はそこまで優れないと聞きます。それでも、高い床で眺めが良い座席、売店などが備わり旅を楽しめる仕掛けなど、人々の心を惹きつける仕組みが備わっています。そのためか、4両編成から5両編成に増強されています。満席が続くようであれば、座席数を多くすることは正しい取り組みといえ、JR九州のその行動は賞賛に値します。

人々の足、通勤電車

博多には通勤電車(※)も多く乗り入れます。その車両についても探ってみましょう。

※弊サイトでは特別な意図がある場合を除いて、旧国鉄の区分でいう「近郊型車両」についても「通勤車両」と分類しています。車両のつくりが異なっても、いつもの日常で使う車両であることには違いがないためです。

博多にやってくる最新の通勤電車が817系3000番台です。それまでクロスシート車が中心だった博多地区にロングシート車を導入したという意味で、インパクトが大きな存在です。後述の811系が全てロングシートに改造されるのは、この車両のロングシートが好評だったためでしょうか。

817系ロング車

写真10. 817系ロングシート車の外観

817系3000番台内装

写真11. 817系ロングシート車の内装(以前の記事から引用)

独特のロングシートが特徴ですね(写真11)。意外と座り心地は悪くないのですが、ちょっと特徴的すぎる座席ですね。多くの人が毎日使う乗り物なのですから、もう少し「普通」の内装にしないのでしょうか。水戸岡先生にとってこれが「普通」なのかもしれません…。

福岡地区の主力の電車が813系電車です。前述の817系3000番台と連結したり、後述の811系と連結したりして、最短3両編成から9両編成まで組みます。3両、6両、7両、9両ですね。10両以上は組みません。九州には12両編成の快速列車がありますが、この車両ではありません。

813系(博多)

写真12. 813系の外観

JR九州のカラーである赤色を前面に出した車両です。車内の座席も赤(と黒)がベースの独特なものです。この車両はドア間に転換クロスシートが5列あるのですが、窓は3つしかありません。したがって、窓割と座席割が一致しません。これは811系も同様です。

長期間に渡って増備されましたので、時期によって外観が多少異なります。最もわかりやすいのが、窓でしょう。当初は窓にカーテンがついていたので窓ガラスはそれほど着色されていませんでした。しかし、そのうち窓ガラスを着色するかわりに、カーテンを省略しました。そのため、窓ガラスが着色されているかどうかで前期型が後期型かがわかります。その他にもさまざまな区分ができますが、その詳細に立ち入ることはやめておきましょう。

その813系とともに活躍するのが811系です。4両編成のみです。811系どうしが連結して8両編成になるか、813系などと連結して7両編成を組むことができます。10両編成以上を組むことはありません。

811系(博多)

写真13. 811系の姿

この車両は転換クロスシートですが、現在リニューアル工事を行っており、ロングシート化改造される運命です。817系3000番台のロングシートが好評だったのでしょうか。旅には転換クロスシートが良いと思いますが、旅で利用する人よりも通勤客のほうが多いという現実はあるのでしょう。

古参の415系も乗り入れます。

415系(博多)

写真14. 415系の姿(2012年5月に撮影)

九州には12両編成の快速があるのですが、それに使われるのはこの車両です。常磐線には415系の15両編成がありましたが、ここの12両編成もそれなりに迫力があります。

輸送力と輸送量のバランスが取れていない!

811系は4両編成が基本です。これでは足りない場合は8両編成を組成します。では、乗客の多い列車が8両編成で、少ない列車が4両編成なのでしょうか?基本的にはそう(と信じたい)ですが、例外がありました。

写真15. 普通(二日市→福間)が1番線に停車中

8両編成の普通福間行きが停車しています。この列車は博多で快速に抜かれるため、しばらく停車しています。

写真16. 2番線に快速門司港行きが到着

そして、4両編成の快速門司港行きが到着しました(写真16)。混雑しやすい快速が4両編成で、空いている普通が8両編成というのは、ちょっとどうかと思います。

写真17. 快速は混んでいる(乗車率100%程度?)

それでも快速がそこまで混んでいなければ文句はありません。しかし、実際にはドア付近がぎっしり詰まっています(写真17)。この状況を見ると、快速は813系による6両編成か811系による8両編成が妥当に思えます。

写真18. 普通福間行きは階段に近い車両でも乗車率60%

その一方、普通赤間行きは階段に近い車両でも座席がそれなりに埋まり、少しだけ立ちが生じている程度です。これであれば、4両編成でもじゅぶん足りそうです。他の時間帯や区間の兼ね合いもありますが、(リニューアル後のことを考えると)普通は811系4両編成、快速は813系6両編成(たまにロングシート車の817系をつなげる)を基本として、足らない時間帯は普通は8両編成、快速は9両編成とすれば、近距離はロングシート、長距離はクロスシートとなり、本来の使い分けに近づくでしょう。

福岡(天神):地元住民主体のターミナル

博多と並ぶターミナルが西鉄の福岡(天神)です。博多がビジネス地区だとすれば、天神は商業地区です。その天神をターミナルにしているのが、西鉄です。西鉄は福岡県しか路線を伸ばしていないこともあり、長距離ターミナルという性格はあまりありません。そのため、地元住民が使う「真の福岡」という印象があります。

ターミナルの雰囲気を味わう

福岡(天神)の入口

写真19. 福岡(天神)の入口

福岡(天神)は頭端式のターミナルです。いわゆるヨーロッパのターミナルと同じです(ヨーロッパのターミナルには3線しかない駅はそう多くないでしょう)。私鉄に多いタイプですね。そのターミナルの入口を見ます(写真19)。

福岡(天神)の停車駅案内

写真20. 停車駅案内

停車駅案内が掲げられています(写真20)。速達列車が特急、急行だけというのはシンプルですね。ただし、急行が途中から普通に化けるパターンもありますから、実際はここまで単純ではありません。大牟田まで急行運転する急行もそう多くありません。なお、特急は大牟田まで特急として運転します。

福岡(天神)のターミナル

写真21. 改札口前

改札口前の光景です(写真21)。改札口の先にホームがあり、そこに列車が停車しているのはターミナル感がありますね。ただし、その先が3線というのは、ちょっと貧弱ですね。小田急や京王(新線含む)は新宿で5線確保していることから考えると、見劣りしてしまいます。

車両を観察する

たまたま、最新型の9000形が停車していました。9000形は旧式のロングシート車を置き換えることが目的ですから、当然ながらロングシート車です。

西鉄9000形

写真22. 西鉄9000形の前面

行先表示はフルカラーLEDになっています(写真22)。西鉄は行先パターンがそこまで多くないので、従来の字幕式が見やすいと思いますが、メンテナンス性を考慮したのでしょうか。

西鉄9000形

写真23. 西鉄9000形の側面

9000形の側面を眺めます(写真23)。やはり、ロングシートですね。

現在の西鉄のフラッグシップトレイン(看板的な車両)の役割を担うのが3000形です。

水都3000形

写真24. 水都のラッピングをまとった3000形

水都というラッピングをまとっています(写真24)。柳川観光を盛り上げようという意図を感じます。実際、この車両に乗って、大牟田から福岡(天神)まで西鉄特急を堪能しています。毎回思いますが、西鉄特急の人気は相当のものです。薬院で混雑調査を行うと、特急への乗客集中がはっきりとわかります。

西鉄のイメージキャラクターには出てきませんが、今も西鉄の主力車両は5000形です。得てして現実はイメージとは異なるものなのです。主に普通電車と急行電車で見かけます。少し待つだけで巡り合うことができます。

西鉄5000形

写真25. 西鉄5000形の先頭

左右が非対称な顔が特徴的です(写真25)。運転時の作業性を考慮して運転席側は視界が広くとれるように工夫し、逆側は平面ガラスを活用することで、コストダウンしたのです。

西鉄5000形

写真26. 西鉄5000形

西鉄5000形

写真27. 西鉄5000形

運転席と客席の間の仕切についても、左右非対称です(写真27)。運転室の作業環境改善のために、運転席側だけ奥行を広くしたことがわかります。このように、作業環境改善と客席面積の確保を両立する工夫がなされています。

2つのターミナルの雰囲気の違い

この2つのターミナルの大きな違いは何でしょうか?列車種別の多さ?本数の違い?このような違いを挙げる人も多いことでしょう。しかし、私は違うことを感じました。それは、駅の静かさです。博多駅はひっきりなしに自動放送と駅員の放送が流れていました。さながら音の洪水です。一方、福岡(天神)はそこまで放送がありません。にぎやかな博多駅と上品な福岡(天神)駅という違いを感じました。

この違いはさまざまな理由を挙げる人がいることでしょう。一番の大きな違いは利用者層にまとめられます。JRは新幹線や在来線特急を通じて、日本全国に行くことができます。いいかえると、日本全国から福岡のことを知らない人がやってきます。そのため、1から案内するために放送の量が増えてしまいます。一方の福岡(天神)からは福岡県にしか列車でアクセスできません。いいかえると、福岡のことをよく知る地元民の割合が高く、勝手知った客が多いことを示します。そのため、細かなことまで放送で案内しなくて構いません。このような利用者層の違いが案内の多さ(少なさ)に関係しているのです。

前後を読みたい!

さて、前後ではどこに行ったのでしょうか?

←(前)西鉄特急に乗る(大牟田→福岡天神、18年夏)

福岡のターミナル駅で列車を観察する(18年夏):今ココ!

福岡の地下鉄の素顔を探る(18年夏)(次)→

※それぞれ別ウィンドウで開きます。

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