JR東海で最も新しい電化路線の武豊線。電化されたとはいえ、名古屋都市圏のJR線ではローカル線の風情が強く、ワンマン運転もなされている路線です。そんな武豊線を堪能しました。

写真1. 武豊駅に停車中のワンマン列車
復習:武豊線の概要
まず、武豊線の概要を示します。
- 区間:大府-武豊
- 距離:19.3km(営業キロ、換算キロは21.2km)
- 形態:単線電化(直流電化)
- 本数:おおむね30分間隔
武豊線は大府と武豊を結ぶ単線電化の路線です(図1)。大府から武豊まで20km足らずの路線ですが、30分~40分かかります。これはひとえに単線で上下列車の行き違い待ちをするためです。
図1. 武豊線の経路(googleマップより引用)
本数は30分間隔が基本です。ただし、平日の朝夕は15分~20分間隔になり、ラッシュ時に対応しています。その朝夕は武豊線列車は名古屋まで直通し、名古屋から武豊線の各駅に乗りかえなしで向かうことができます。基本的に東海道線内は通過駅のある区間快速として運転されます。
東海道線に直通する場合、名古屋から武豊までの所要時間は60分前後です。半田や武豊までは名鉄線が名古屋を結んでいますが、特急の所要時間は武豊まで40分足らずです。
文章だと分かりにくいと思うので、名古屋と半田・武豊までの所要時間をまとめました(表1)。
表1. 名古屋と半田・武豊までの所要時間
JR | 名鉄 | |
---|---|---|
半田(朝) | 52分 | 37分 |
武豊(朝) | 58分 | 43分 |
半田(昼) | 44分 | 30分 |
武豊(昼) | 52分 | 37分 |
半田(夕方) | 50分 | 32分 |
武豊(夕方) | 58分 | 39分 |
※朝は8:30ごろに名古屋着の列車
※昼は12:00ごろに名古屋発の列車
※夕方は18:30ごろに名古屋発の列車
名鉄のほうが速達性が勝っていることがわかります。また、名鉄はこれよりも遅い急行も同等の本数が設定されており、運転頻度も勝ります。そのため、武豊線が名鉄より便利という意味合いはそこまで強くなく、沿線の細かな需要を拾うという意味合いが強いです。そのような背景か、2023年11月現在は全定期列車が各駅にとまります。
武豊線に実際に乗る
さて、実際に武豊線に乗ります。

写真2. こぢんまりとした武豊駅
こぢんまりとした武豊駅です(写真2)。武豊町そのものがそこまで大きい都市にみえませんが、郊外に位置する印象があります。駅の東側に出入口がありますが、駅に西側に出入口がないのは名鉄との競争上、得策ではないと感じました。

写真3. 2両編成のワンマン運転
私が乗ったときは午後で、まだ名古屋直通電車が走っていない時間帯でしたので、大府行きです。コストミニマムで走らせるためか、ワンマン運転です(写真3)。ただし、313系1000番台の車内なので、基本的には快適です。
313系1000番台シリーズの内装を紹介しています。

写真4. 武豊発車前の車内はガラガラ
武豊発車前の車内はガラガラです(写真4)。30分間隔でも過剰と思ってしまうくらいです。

写真5. 武豊を発車!
武豊を発車しました(写真5)。古い家もありますが、駐車場もあり、新興住宅街に近い雰囲気を感じます。

写真6. 線路が増えた
線路が増えます(写真6)。武豊線は歴史が長く、工業地帯という立地上、日本全国に貨物輸送を行っていたことを感じさせます。

写真7. 東成岩に停車!
東成岩に停車します(写真7)。東の付かない成岩駅は名鉄線にありますが、むしろ青山駅のほうが近いです(図2)。青山には名鉄の特急もとまり、JR線と競合する駅は手厚くする面もありそうです。
図2. 東成岩駅と青山駅の経路(googleマップより引用)

写真8. 住宅街を走る
東成岩を発車し、住宅街を走ります(写真8)。

写真9. 再開発中の土地を走る
再開発中の土地を走ります(写真9)。JR化前は本数が多くなく、宅地化が遅れたのか、新しい住宅が多いように見えます。

写真10. 半田に停車!
半田に停車しました(写真10)。ここで武豊行きとすれ違いました。半田で少し乗ってきたように記憶しています。

写真11. 川を渡る
川を渡ります(写真11)。名古屋地区は自動車社会で、鉄道と関係なく市街化された場所もある印象です。

写真12. 乙川に停車
乙川に停車します(写真12)。このあたりから名鉄線と離れた場所を走ります。

写真13. 住宅街を走る
住宅街を走ります(写真13)。やはり新しそうな建物です。

写真14. 亀崎に停車
亀崎に停車します(写真14)。ここは武豊線のなかで最も乗降人員が多い駅です。名鉄線が近くにないという事情も大きいです。
図3. 亀崎駅と名鉄線の位置関係(googleマップより引用)
参考までに亀崎駅と名鉄線の位置関係を示しました(図3)。確かに遠いです。

写真15. 建物も多い
建物も多いです(写真15)。

写真16. 田園風景が広がる
田園風景が広がります(写真16)。

写真17. 東浦に停車!
東浦に停車します(写真17)。そういえば西浦という駅もあったような。
図4. 東浦と西浦の位置関係(googleマップより引用)
東浦のほうが西にあるので、この両駅が対比関係にはなさそうです(図4)。

写真18. 建物が少ない
建物が少ない場所を走ります(写真18)。

写真19. 石浜に停車
石浜に停車しました(写真19)。私は進行方向右側の風景ばかり眺めていました(午後なので反対側だと逆光になるため)が、反対側は住宅が広がります。すぐに発車しません。

写真20. 武豊行きがやってきた
武豊行きがやってきました(写真20)。行き違い待ちがあるのは単線鉄道の弱点です。

写真21. 田園風景の向こうに市街地が見える
田園風景が広がります(写真21)。よく見ると、その奥には市街地が見えます。位置関係的には刈谷でしょうか。

写真22. イオンモールがある
イオンモールがあります(写真22)。都市部であっても重要な商業施設です。

写真23. イオンモールは大きい
そのイオンモールは大きいです(写真23)。

写真24. 緒川に停車
緒川に停車します(写真24)。例のイオンンモールから遠くありません(図5)。
図5. 緒川駅とイオンモールの位置関係(googleマップより引用)
自動車からのシフトを狙うのであれば、ホームの武豊寄りに出入口を設置すればもう少しスムーズにアクセスできそうです。

写真25. 田園風景を走る
田園風景を走ります(写真25)。

写真26. 尾張森岡に停車
尾張森岡に停車します(写真26)。ここと石浜はワンマン運転らしく客扱いするドアが限られています。

写真27. 東海道線が近づく
尾張森岡を出ると、東海道線に近づきます(写真27)。

写真28. 大府の市街地を走る
大府の市街地を走ります(写真28)。

写真29. 大府に到着!
大府に到着しました(写真29)。大府は3面4線の線路配線で、武豊線と東海道線快速系の乗りかえには階段を通る必要があります。武豊の時点でがら空きだった車内はいつの間にかある程度混んでいました。

写真30. 別ホームに東海道線快速が到着!
別ホームに東海道線快速が到着しました(写真30)。武豊線と名古屋への速達性を考えると新快速への接続が良さそうですが、何か理由があるのでしょうか。
武豊線に乗ってみて

写真31. ワンマン運転設備が印象的
武豊線沿線は都市化が進み、沿線には大型ショッピングセンターもあり、それなりに利用される素地がある路線に見えました。一方、日中時間帯に限れば区間運転の2両編成で足りるのが実態であり、名鉄との差は明らかです。
JR当初の日中40分間隔のダイヤからは大きく進歩していますが、やはり都市圏鉄道としては不充分に感じてしまいます。利用実態からは現在のままでも良さそうに見えますが、細かな点の改良が必要に感じました。例えば、武豊駅や緒川駅に見られるようにもう少しの改良で、駅へのアクセスが改善される可能性がありました。
また、大府駅の配線上仕方ありませんが、名古屋方面と武豊線の対面接続ができない点もサービス上最適でない印象があります。大手民鉄のように東海道線を外側、武豊線を内側とし、駅の前後に引上線があれば、対面接続が可能になります。
以前のサービスレベルと比較すると、武豊線のサービスレベルは大幅に向上しています。それでも、現状に甘んじることなく、バスと連携して面的ネットワークを形成し、公共交通全体のレベルアップに寄与してもらいたいものです。