JR化後急速に輸送改善が進んだ東海道線名古屋地区。2006年の快速系増結以降も、8両編成の快速が増えたりと細かな輸送改善が進んでいます。そんな勢いのある路線の利用実態を夕方ラッシュ時に確認しました。
写真1. 発車を待つ特別快速大垣行き
名古屋地区東海道線の夕方の混雑状況のまとめ
名古屋→枇杷島の混雑状況の概要は以下の通りです。
- 快速系、普通ともに混雑率は120%程度であり、吊革が埋まる程度の混雑である
- ただし、6両以上の普通は上記より混雑はややゆるい
- 快速の先頭車はやや空いている
詳細は以下で記します。
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は東海道線名古屋地区の岐阜方面(下り側)の最混雑区間の名古屋→枇杷島で確認しました。
東海道線名古屋地区の夕方ラッシュ時の混雑状況の生データ
写真5. 出入口付近が狭い311系電車による普通岐阜行き(この車両は金山始発快速に充当しては?)
まず、生データを示します(表2)。列車ごとの混雑率については、計算のしやすさ(混雑ポイントは序列指標であり、足し算ができない)から、混雑率で示しています。
表2. 東海道線名古屋地区の混雑状況(名古屋→枇杷島、生データ)
中ほどの車両を中心に混雑している様子がわかります。また、列車ごとの混雑状況を分かりやすくするため、列車ごとの混雑状況をグラフにしました(表3)。
表3. 東海道線名古屋地区の混雑状況(名古屋→枇杷島、混雑率視覚化)
空いている普通がありますが、18:15発は6両編成、19:02発は8両編成と、普通電車のデフォルトの4両編成より長いためです。4両編成に換算すると混雑率120%になることがわかります。
東海道線名古屋地区の混雑状況(夕方ラッシュ時)の解析
写真6. 8両編成の普通の先頭車はガラガラ
上で生データを示しました。しかし、それだけではわかりにくいかもしれません。そこで、以下の章で詳細に解析いたします(やさしー)。なお、列車ごとの混雑を分析するに当たり、弊サイトの指標である混雑ポイントから、一般的な混雑率に変換しています。これにより、序列指標から定量的な指標に変換され、計算などが便利になるためです。
復習:東海道線名古屋地区のダイヤ
東海道線名古屋地区は基本的に快速系、普通ともに15分間隔で運転されますが、夕方ラッシュ時については快速系が10分間隔に増発されます。増発となる快速は18時台は岡崎始発、19時台は金山始発です。すなわち、快速系が10分間隔、普通が約15分間隔ということです。
名古屋から岐阜方面について考える際、快速系の名称により違いはありません。金山や名古屋から米原までの停車駅は同じのためです。ただし、30分に1回、稲沢に停車する快速があります。考えかたとしては、増発となる快速が稲沢停車の快速になるというイメージです。混雑平準化のためか、18時台は米原行きが岡崎始発の特別快速で、稲沢停車の快速は大垣行きです。19時台は金山始発の快速が米原行きで稲沢に停車します。
快速と普通の運転間隔が異なり、快速の続行で普通が発車と固定できません。そのため、普通は名古屋発を13分間隔と17分間隔の交互とし、快速の5分前に発車するパターンがあります。当該の普通は尾張一宮で快速を待ちます。快速の8分前に発車する普通は岐阜まで先着します。岐阜まで普通の後続となる普通は岐阜まで21分かかっています。それなら、この快速を稲沢停車にすれば良いのに…。
時間帯ごとの分析
米原行きが30分間隔、快速の10分間隔と普通の約15分間隔ということを考慮すると、30分ごとに解析するのが良さそうです。そのような意味で、30分ごとに解析しました。
表4. 混雑状況の時間帯ごとの層別
図1. 時間帯ごとの混雑状況
基本的に時間帯による混雑の違いは大きくありません。ただし、17時台は快速系が15分間隔しかないことを考えると、18時台のほうが利用が多いことが分かります。
種別ごとの混雑状況
写真7. 普通が発車する脇を人々が通る
種別ごとの混雑状況は異なるでしょうか。そこで、種別ごとの混雑状況を示します(表5、図2)。なお、快速系の金山・名古屋からの停車駅は同じですので、快速系はまとめて集計しました。
表5. 種別ごとの混雑状況(本調査すべての時間帯)
図2. 種別ごとの混雑状況(本調査全ての時間帯、グラフ)
先入観と異なり、快速系と普通の混雑状況はそこまで変わりません。ただし、快速は10分間隔で8両編成、普通は15分間隔で4両編成という違いがあり、時間帯当たりの輸送力は快速48:普通16(+α)であり、普通の輸送力は快速の半分未満であることに注意する必要があります。
もう少し細かく解析するため、18時台の混雑率を示します。
図3. 18時台の混雑状況(便宜上、19:00発快速大垣行きと19:02発普通岐阜行きも収録)
18:15発普通と19:02発普通は空いていますが、前者は6両編成、後者は8両編成と普通にしては編成が長いためです。
快速系の混雑を分析します。米原行きや稲沢停車だから混んでいるということはありません。もしかしたらこれらは混雑の要因となっているかもしれませんが、米原行きや稲沢停車の役割を分けている(19時台は両者が集約されているが、そもそも金山始発なので運転距離が短く、岡崎・豊橋方面からの旅客と分離できている)ために混雑が分散されている可能性も指摘できます。
いずれにしても、4両編成換算の普通と、8両編成の快速は混雑に大きな差はありません。また、普通の間隔が17分開く箇所に稲沢停車の快速が挿入されている点も功を奏しているのかもしれません。
東海道線名古屋地区のダイヤを考える
写真8. 18:50発特別快速米原行きの2号車付近の様子
混雑状況を眺めると、普通の混雑率が130%を超えている例もあり、普通の6両編成化を求めたいです。普通の10分間隔化による岐阜先着も手ですが、岐阜先着の普通の直後の快速の所要時間は長く、普通の10分間隔化はやや過剰対応といえましょう。
また、18:00発の快速米原行きも混んでいました。直前の快速から15分のダイヤホールがあり、利用が集中している側面を指摘できます。快速の10分間隔化を17:30~にシフトしても良いでしょう。
このほか、普通のロングシート化における乗降時間短縮とそれによる線区全体のスピードアップも肝要に思いました。
いずれにせよ、東海道線名古屋地区は輸送改善が進み、今後も有望な線区でしょう。