東武伊勢崎線の混雑状況(平日朝ラッシュ時、小菅→北千住、新しい生活様式下、現場調査結果)

記事上部注釈
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民鉄で一番長い複々線区間を誇る東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)。その最混雑区間の混雑状況を実際に確認しました。意外な種別が空いていることがわかりました。

※本調査は「新しい生活様式」がある程度定着した7月上旬に実施いたしました。

東武10030系区間急行(北千住)

写真1. 区間急行北千住行きはそこまで本数が多くない

平日朝ラッシュ時の東武伊勢崎線の混雑状況まとめ

以下、長い本文を読む気がない人のために、要点をまとめます。

・「新しい生活様式」が根付いた2020年7月上旬時点では、混雑率は120%程度と、普段の2割減

・最混雑時間帯は7:51-8:20の30分間であり、混雑している1時間は7:36~8:35が該当する

・区間急行が最も空いており、急行と準急は最も混んでいる。日比谷線直通の普通はその中間程度の混雑

混雑調査の概要

今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。

簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。

弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。

表1. 混雑ポイントの概要

乗車ポイントの概要

せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。

混雑ポイント120ポイント相当

写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント140ポイント相当

写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)

混雑ポイント160ポイント相当

写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)

今回は最混雑区間の小菅-北千住で調査しました。急行線は北千住到着時、緩行線は小菅発車時に確認しましたが、わかりやすさを重視し、以下の記述では北千住到着時で統一いたします(小菅発車の時刻ではなく、北千住到着の時刻で書くということです)。

また、データ処理の際は、弊サイトの指標である混雑ポイントから一般的な混雑率に変換して計算しています。

混雑状況の生データ

東武50050系急行(北千住)

写真5. 急行が朝ラッシュ時の輸送の要

ラッシュ時の東武伊勢崎線はおおむね20分サイクルのパターンダイヤです。急行線・緩行線ともに基本的に10分に3本が運転されていて、急行線は準急が20分に1本、区間急行が10分に1本、急行が20分に3本(準急と合わせて10分に2本)が基本です。ただし、ピーク時間帯を外れると、10分に2本の急行や準急のうち1本が区間急行(北千住行き)に置き換わります。

そのようなことをご認識いただき、生データをご覧いただきましょう(表1)。

表1. 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、生データ)

20.7 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、生データ)

調査そのものは7:30~9:20まで実施(急行線は7:20から実施)しました。また、北千住は2層構造ですから、1度で確認できません。そのため、2回に分けて実施しました。また、調査時間も110分とかなり長くとっています。我ながら自らの情熱にあきれているところです。

平均混雑率は116%程度です。ただし、このデータだけではよくわからないのが本音でしょう。そこで、私なりに解析いたします。

混雑状況の分析

メトロ13000系(小菅)

写真6. 日比谷線直通の普通もそこそこ混んでいる

生データを私なりに調理いたしましょう。

最混雑時間帯の推定

ラッシュ時の混雑はピーク時60分で議論なされます。では、最混雑時間帯60分間はどの時間帯なのでしょうか。そこで、10分ごとに区切り、推定しましょう(表2)。

表2. 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、時間帯ごと層別)

20.7 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、時間帯ごと層別)

7:51-8:20の30分間が最も混雑していることがわかります。では、これを含む60分間はどこなのでしょうか。適当に60分を抜き出して、その混雑率を集計しました(表3)。

表3. 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、ピーク60分間推定)

20.7 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、ピーク60分間推定)

7:31からの60分間、7:41からの60分間、7:51からの60分間での混雑率を集計しました。すると、7:41からの1時間が最も混んでいることがわかりました。しかし、本当にそうでしょうか。7:31からの60分間も拮抗しています。このようなときは両者の中間にピークがあることが予想されます。そこで、7:36からの60分間も集計しました。この集計結果は両者とほぼ等しいものです。つまり、このあたりであれば大差ないということです。

5分間隔で区切ってみてもそうかわらなかったことから、本記事では便宜上7:36~8:35をピーク60分間として扱うことにしました。この時間帯の混雑率は120%程度です。

以下、この60分間の混雑状況を主に分析いたします。

新型肺炎ウィルスによる利用減の考慮

世間では新型肺炎ウィルスの脅威が語られていて、その影響で在宅勤務や時差通勤が叫ばれています。その影響を考えなければなりません。

実際に在宅勤務や時差通勤の影響で7:30~9:30の都営地下鉄の利用者はおおむね30%減少しています。つまり、朝ラッシュ時の混雑はだいたい従来の2/3です。

公式発表によると、東武伊勢崎線の混雑率は150%です。しかし、現実には120%と「いつも」の8割程度の利用です。

では、都営地下鉄の3割減という結果と辻褄があわないのはなぜでしょうか。2020年7月現在、海外からの渡航制限がかかっています。そうすると、東京観光の人は減ることでしょう。都内の宿泊地から都内を観光するために、都営地下鉄や山手線(そして東京メトロ)に乗る人も大幅に減っているはずです。

仮に、都心の電車の割合が通勤・通学客9割、観光客1割だとすると、都営地下鉄3割減、東武鉄道2割減というのも納得できます。東武伊勢崎線の朝の上りは観光客が基本的に乗らない路線でしょう。そうすれば、地元の人が乗っているだけの路線は都営地下鉄ほど利用が減らないのです。

まとめると、(時差通勤を含めて)2割の人が通勤電車に乗らなくなり、1割の観光客が都心の通勤電車に乗らなくなったのでしょう。

種別ごとの混雑状況

では、種別ごとによる混雑状況は異なるのでしょうか。ピーク60分の傾向をまとめました(表4)。

表4. 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、ピーク60分間種別ごと)

20.7.7-10 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、ピーク60分間種別ごと)

普通が空いていそうなイメージがありますが、意外なことに区間急行が最も空いています

普通はすべて日比谷線直通です。日比谷線は今でも伊勢崎線から都心へのメインルートです(千代田線で向かう人も多い)。区間急行や急行から北千住で日比谷線に乗りかえるのは不便です。一方、西新井であれば同じホームで乗りかえられます。このため、普通が適度に利用されているのでしょう。

急行や準急は一番混んでいます。半蔵門線経由で北千住から大手町まで29分程度で、千代田線経由の所要時間18分よりは11分程度長いです。しかし、北千住での乗りかえ時間5分程度を考慮するとそこまでの差はありません。また、半蔵門線沿線への通勤には便利です。そのため、半蔵門線直通という付加価値があり、乗客が集中するのです。

急行と準急の混雑の違いは少ないです。何となく急行が混みそうな気がしますが、準急もある程度選ばれているということです。なぜでしょうか。これは、越谷以南での停車駅が同じで集客条件が同じであること、越谷以北の急行通過駅の人が準急に狙って乗ることが混雑が均一となっている要因でしょう。

区間急行は都心に向かうという付加価値がないため、比較的空いています。特に、北千住行きの区間急行は穴場的な存在です。このため、ダイヤ改正ごとに徐々に北千住行きの区間急行は地下鉄半蔵門線直通に変更されています。

号車ごとの混雑状況

では、どの車両が混んでいて、どの車両が空いているのでしょうか。何となく、区間急行、日比谷線直通(普通)と半蔵門線直通(準急と急行)で傾向が異なる気がしましたので、それぞれの種別で車両ごとにまとめました。

表5. 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、種別車両ごとの混雑状況)

20.7 東武伊勢崎線朝ラッシュ時混雑調査結果(小菅→北千住、種別車両ごとの混雑状況)

基本的に後ろよりの車両が混んでいます。最後尾車両は女性専用車ですが、その隣の車両と混雑率がだいたい同じであることに驚きました。急行の3号車と4号車が最混雑車両です。逆に、急行の後ろ2両は空いています。急行を使わないといけないとしても、2号車(女性は1号車)に乗ると比較的快適でしょう。

そのほかの気づき

ラッシュ時の特急は基本的に満席と思いますが、意外と空いています。席の半分が埋まるかどうかという程度です。特急りょうもうは東武動物公園-北千住ノンストップ、特急きぬは春日部-北千住ノンストップ(東武動物公園は通過)のため、近距離の着席需要を拾い切れていないのが1つの要因でしょう。また、都内のターミナルが浅草と通勤に不便な場所なこともその要因でしょう。その弱点を埋めるためにTHライナーが運転されたのです。

また、ラッシュピーク時を過ぎると6両編成の区間急行が走ることも意外でした。いくら前後に半蔵門線直通の準急に固められているとはいえ、北千住8:50前に6両編成が設定されていることは想定していませんでした。この6両編成の区間急行は前後1両はとても混んでいます。8両編成を想定してホームに並んだ人が一気に6両の各先頭車にあわてて乗りこむ光景が容易に想像できます。

ダイヤ案を考える

東京メトロ8000系(小菅)

写真7. 半蔵門線直通には古い車両も使われる(東武車による運用のはず)

区間急行が空いていますので、これを急行にするのが最もスムーズです。とはいえ、区間急行は久喜以遠から都内への直通需要も満たしていたり、北千住-浅草の普通を兼ねていたりと、やすやすと置き換えられる存在ではありません。

しかし、南栗橋発北千住行きの区間急行であれば、そのような問題は生じません。具体的には7:23着、8:17着と8:35着の2本です。急行は北千住断面で8:20、9:10、9:49と大きなダイヤホールが生じています。特に、8:35着を急行に振り替えれば、ラッシュ直後の急行のダイヤホールは、現在の50分から35分に緩和されます。このほかの2本についても急行振り替えは効果がありましょう。

急行にすることで8両編成から10両編成に増強できます。また、これにより8両編成×3本=24両の車両が余ります。この24両を活かして、多くの区間急行の編成両数を増強できます。2013年ダイヤ改正前までは館林から10両編成で運転していたので、技術的な不都合はありません。

東武伊勢崎線の混雑情報へのリンク

ここまで朝ラッシュ時の混雑をまとめましたが、他の時間帯の混雑状況についての情報はないでしょうか。

昼間についてはこちら!

・休日日中時間帯の東武伊勢崎線(スカイツリーライン)の混雑状況(拠点で観察、現場調査)

日本の民鉄で最も長い複々線区間をもつ東武伊勢崎線(スカイツリーライン)。その割には日中時間帯の本数はそこまで多くありません。ということは空いているのでしょうか。実態を北千住と新越谷で確認しました。

夕方ラッシュ時についてはこちら!

・東武伊勢崎線(スカイツリーライン)混雑状況(夕方下り、北千住→小菅)

民鉄で最も長い複々線を誇る東武スカイツリーライン。その贅沢なインフラや半蔵門線直通の定着などで混雑は緩和してきました。では、その実態はどうなのでしょうか。実際に夕方のラッシュ時間帯の混雑を100分調査しましたので、まとめます。

まとまったデータについてはこちら!

・東武伊勢崎線(スカイツリーライン)(混雑基本データ)

このページでは東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の混雑状況について基本的なデータをまとめています。また、私が実際に現場で調査した結果へのリンクも記しています。
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