相鉄直通時の東上線ダイヤを探る(2023年東上線ダイヤ改正)

記事上部注釈
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2023年3月18日。東武東上線のダイヤが大幅に変わります。その変化を探りました。

写真1. 快速が消滅した(池袋で撮影)

2023年東武東上線ダイヤ改正のまとめ

2023年の東武東上線のダイヤ改正のまとめは以下の通りです。

  • 一部の電車が相鉄直通に変わり、東武東上線史上初の新幹線駅(新横浜)直通の設定
  • 快速急行、急行、準急の停車駅増加
  • 日中時間帯のダイヤパターンの刷新

詳細は以下の章で述べます。

2023年東武東上線ダイヤ改正の概要

詳細について述べる前にダイヤ改正の概要を記します。

相鉄直通電車の設定により、新横浜まで直通

図1. 東上線と新横浜直結の概念図(東武鉄道のダイヤ改正プレスリリースより引用)

東急-相鉄線が開業し、相鉄から都心に直結する系統が新設されました。その系統は東急から地下鉄副都心線を介し、東武東上線にもつながっています。相鉄車は東武線に入れませんし、東武車も相鉄線に入れません。そのため、相鉄と東武の直通運転はないだろうというのが多くの予想でした。しかし、その予想に反し、東武東上線から相鉄への直通電車が設定されました。東武東上線としては史上初の定期列車による新幹線駅直結列車の設定です。例外的に急行や快速急行はあるものの、多くは東上線内は普通です。日中時間帯は池袋発着を振り替える形で設定され、池袋-川越市の普通は30分間隔から60分間隔に減便されます(池袋-志木は存続するため、池袋発着の普通そのものは減便されない)。

もともと東急車は東武への直通が可能で、東急東横線10両編成は相鉄直通対応工事がなされています。そうであれば、東急車は東武と相鉄の直通が可能です。東武から相鉄に直通(というよりも新横浜に直通すること)が重視され、東急車による東武東上線から相鉄直通電車が設定されました。東武的には新横浜折り返しでも良いのでしょうが、東急と相鉄の都合で新横浜折り返しとはならずにそのまま相鉄に入る格好です。

同じく東急車で西武線から相鉄に入る電車は設定できますが、西武鉄道の意向なのか、西武と相鉄の直通電車は設定されていません。東武と西武の間で新横浜や相鉄に対する重要度の違いを認識でき、興味深いことです。

急行、準急、快速急行の停車駅増加

図2. 停車駅の変更(東武鉄道のダイヤ改正プレスリリースより引用)

停車駅が増えました。種別ごとの停車駅の変更点は以下の通りです。

  • 準急上板橋に停車
  • 急行朝霞に停車
  • 快速急行:朝霞台に停車のうえ、川越以北での通過運転取りやめ。志木は通過に変更

全体的に速達性よりも利便性にシフトしている印象です。準急の上板橋停車は上板橋・東武練馬と下板橋の利便性向上、朝霞の急行停車は東上線第6位の利用者数(参考リンク)の朝霞の利便性確保と説明できましょう。快速急行の停車駅増加については、川越以南で急行より速達運転しつつ、川越以北で各駅にとまる種別の設定と認識できます。従前の快速急行に近い種別として川越特急があり、川越特急と役割が似ている種別を廃止した格好です。

川越以南で急行並みの速達輸送・川越以北でも速達輸送を担う快速については廃止されます。これは日中の川越市以北の減便・利便性維持にともなうものです。

東武鉄道側は「川越特急増発」とうたっていますが、その多くは快速急行からのシフトであり、従来の志木と和光市を通過するかわりに朝霞台にとまるという違いです。

日中時間帯のダイヤパターン刷新

日中時間帯のダイヤパターンは以下の通りでした。(池袋-森林公園は30分サイクル)

  • 快速:池袋-小川町1本
  • 急行:池袋-森林公園(60分間隔で小川町)1本、元町・中華街-森林公園1本、両者合わせて15分間隔
  • 準急:池袋-川越市1本(和光市で急行連絡)、池袋-森林公園1本
  • 普通:池袋-成増3本、池袋-川越市1本、新木場-和光市1本

池袋断面では15分間隔の急行(実際には半分は池袋断面では準急、急行は和光市乗りかえ)が走り、その間に快速または準急が走る格好です。その快速は川越市で準急に接続することで、川越以遠の快速通過駅との行き来にも快速を利用できます。反面、利用の少ない川越市以北は(毎時6回の乗車チャンスのために)毎時8本の運転が必要であり、毎時8本でありながら15分間隔が生じることになっていました。

成増以北は準急が各駅にとまりますから、成増以北の各駅には毎時8回の乗車チャンスが確保されています(成増-和光市は毎時6本ですが、両駅の間は駅がなく、両駅ともに快速・急行がとまるのでこれで問題ない)。

このパターンのうちの川越市以北のダイヤ問題点(運転本数の割に便利ではない)を解消するのが、今回のダイヤです。最も簡単なのは急行・普通ともに10分間隔で運転することです。ただし、池袋断面では急行・普通ともに10分間隔に減便するのは輸送力がやや足りなくなります。実際に混雑状況を確認すると池袋断面での速達列車の混雑率は33%程度であり、減便すると混雑率は44%になります。混雑率44%は立ちが若干発生するレベルですから、日中でも座れないレベルです。そのため、減便は得策ではありません。

そこで、池袋断面では速達列車を30分に4本、和光市以北では30分に3本にするようにしました。和光市以北の速達列車の本数は従前どおりで変わりません。この不等間隔を是正するために快速急行を設定し、所要時間差をつけたのです。

普通関連はそこまで変わっていません。新横浜直結を宣伝するために池袋-川越市の普通を池袋-志木と副都心線-川越市に分割したくらいです。このパターンが30分に1本でなく60分に1本なのは、この系統が東武車で運転できず、車両運用の関係なのでしょうか。どうせなら、東武車も相鉄に対応して30分間隔とすると良いでしょう!

これらをパターンにまとめると、以下の通りです。(30分サイクル当たりの本数)

  • 快速急行:元町・中華街-森林公園1本
  • 急行:池袋-森林公園2本
  • 準急:池袋-川越市2本(1本は和光市で快速急行連絡)
  • 普通:池袋-成増3本、池袋-志木・川越市各0.5本、新木場-川越市1本、新横浜方面(多くは湘南台)-川越市0.5本

池袋-和光市では速達列車が30分に4本、和光市-川越では速達列車が30分に3本という骨格は変わりません。また、(池袋-志木と地下鉄-川越市が重なる和光市-志木では毎時9本に増えますが)各駅にとまる系統が30分に4本というのも変わりません。

変わるのが川越市以北です。従来の快速+準急の組み合わせが快速急行に統合された形です。そのため、毎時8本(30分に4本)あったのが毎時6本(30分に3本)に減便されました。ただし、従来は15分の待ちが発生していた箇所はなくなり、ほぼ10分等間隔で運転されており、悪い話ではありません。

なお、森林公園-小川町は60分に3本から30分間隔に減便され、池袋直通が取りやめとなります(日中時間帯でも利用の多い時間帯は池袋直通は存続)。かわりにワンマン運転の普通が森林公園-寄居で運転されます。森林公園-寄居の普通は基本的に急行に連絡します。

各時間帯のダイヤを解析する

写真2. 東急線内を走る東武車(菊名3号踏切で撮影)

各時間帯のダイヤを解析しましょう。

朝ラッシュ時上り

東武鉄道では実は以下のようなリリースも出していました。

お客様の利用状況に合わせ、池袋駅着ピーク時(7:30~8:30)の列車本数を現行 24 本から改正後22 本に変更します。

東武鉄道ダイヤ改正プレスリリースより引用

では、どのような変化なのでしょうか?池袋到着7:00~9:30までを表にまとめました。

表1. 上り朝ラッシュ時の池袋到着時刻の比較

簡単に種別と時刻をまとめました(表1)。従来は5分に1本の速達列車と普通がペアとなって設定されており、速達列車のうちの1本は急行、もう2本は準急でした。朝ラッシュ時の準急停車駅の本数はある程度必要で、急行の本数は限られていました。ダイヤ改正後は11~12分サイクルに急行・準急各1本、普通2本としました。

乗客が減ったので減便(とそのかわりにスピードアップ)したいと考えた場合、普通も本数を削減することになります。とはいえ、改正後のダイヤでは普通の間隔が3分/8分と不等間隔になってしまいます。そこで、8分開くほうの普通は上板橋に準急に接続し、下板橋と東武練馬の乗客を準急に渡すことにしました。

そうすると準急が混んでしまいます。そのぶん急行を朝霞にとめて急行に乗客を分散することにしました。このぶん急行を増発しています。単に急行や準急をとめて利便性を向上させるのだけが目的ではなく、ダイヤは全体のバランスを考慮していることがわかります。もっとも日中時間帯にはこのような目的は薄いはずですので、様子見として「朝霞停車の急行を通勤急行に変更」、「上板橋停車の準急を通勤準急に変更」という形態でラッシュ時のみの変更とする手があり、それがベストでした。

では、所要時間はどうでしょうか。川越から池袋までの所要時間を比較してみました(表2)。

表2. 朝ラッシュ時の所要時間の比較

全体としては所要時間が短縮されていますが、朝ラッシュ時直後でのスピードダウンは見逃せません。では、所要時間が増えている急行について原因を探りましょう。

図2. 当該の急行付近のダイヤ図(時刻表を基に自作したもの)

当該の急行は「急行1022号」と書いたものです。普通の待避時間を削減すべく、中板橋で準急の後追いにしています。また、ふじみ野でTJライナーを待ち合わせています。TJライナーはふじみ野での停車時間も多いですから、当該の急行1022列車もふじみ野での停車時間を長くせざるを得ません。

急行の所要時間を短縮するとしたら、普通734列車の運転時刻を1分後にずらし、成増発を9:11から9:12に変更します。すると、急行1022列車も成増発を9:10(または9:11)に変更できます。すると、ふじみ野を8:51から8:52(普通304列車は8:53発なので何とかなるでしょう)に設定できます。順当にいくと川越発を8:46にでき、川越からの所要時間を36分まで短縮できます。

ただし、このようにするとTJライナーを川越市で抜かされることになり、川越以北のTJライナー通過駅からTJライナーを使えることができずに不便になってしまいます。これを解決するためには準急3318列車を森林公園始発にするか、TJライナーを川越市にとめるかのどちらかです。

なお、和光市以北の普通は従前どおり副都心線直通と有楽町線直通がそれぞれ15分間隔で設定されるのが基本ですが、志木以北の急行停車駅でもおおよそ平均3分~4分間隔を設定するために、パターン外の直通電車も追加されています。

コラム.朝に下り快速急行が設定!


写真3. 朝下りの快速急行(池袋で撮影)

時刻表をよく見ると、朝下りに1本だけ快速急行が設定(池袋7:00発の森林公園行き)されています。川越特急と異なり、平日の快速急行はこれ1本だけです。ダイヤ改正前の急行と所要時間はそう変わらず(川越市での2分停車を短縮すれば良いのに…)、あえて快速急行で設定する意味が分かりません。

実際に見てみると、当該の快速急行は50090系のクロスモードで運転されます。朝の下り急行は意外と混雑します(その後の池袋7:15発の急行も埼玉県内で結構混雑します)。そんな急行にクロスシート車を充当するのは暴挙でしょう。乗客を前後の列車に分散するために快速急行としているのでしょう。

川越特急にしないのは、前後に直前や直後に急行が設定されていないためでしょう。

日中時間帯

写真4. 日中時間帯の池袋発着の普通は本数を維持(下板橋で撮影)

日中時間帯は最も変更点が多かった時間帯です。池袋発着の速達列車毎時8本、和光市以北の速達列車毎時6本こそ変わらないものの、その構成が大きく変わってもいます。

  1. 池袋発着の快速(30分間隔)を急行に変更
  2. 地下鉄直通の急行を快速急行に変更(川越以北は各駅に停車)
  3. 川越市以北の準急を廃止

池袋発着の急行を30分に2本に復活させたのがポイントでしょうか。もともと快速と急行が各30分間隔でしたが、これが急行に統一された格好です。池袋発着の急行は基幹種別であり、これに重点を置いた形です。

池袋発着の急行に味付けるイメージで地下鉄副都心線直通の快速急行が設定されています。快速を運転せずに坂戸・東松山以遠の所要時間が増えるデメリットを、川越以南での通過駅設定で補った形です。その急行は朝霞に停車しており、所要時間が増えました。ダイヤ改正前後で比較しましょう。

表3. 日中時間帯の所要時間比較

所要時間を比較すると、朝霞台→川越の所要時間が14分から15分に増加しています。この意図は不明です。上りは13分で走破しているので、下りにも同様のオペレーションを期待したいです(※)。また、日中時間帯の急行の朝霞停車はやや過剰な措置のようにも見えます。日中時間帯は準急が30分に2本設定されており、そこまで不便ではないためです。

ただし、普通の待避駅が上板橋に統一されたことで、池袋→朝霞の移動において成増で普通に接続する時間が長くなり(従来は成増で緩急結合を実施)、結果として朝霞への移動が不便になった側面があり、急行停車はそれを補う意味合いが強いのかもしれません。

快速急行を使うパターンでも所要時間は1分しか短縮されていません。これは準急の停車駅増加が関連しています。準急を上板橋に停車することにより、所要時間は1分増加します。快速急行化によって2駅(志木とふじみ野)通過になり、所要時間2分短縮が帳消しにされているのです。

コラム.下り急行が遅くなる理由

図3. 日中時間帯のダイヤパターン(時刻表を基に自作したもの)

池袋発10分の急行は直前に相鉄からの直通電車が走っています。東上線のダイヤ上の制約から、当該の直通電車は30分後の普通志木行きの直後を走ります。そのため、後の急行の所要時間を2分増やさざるを得ません。30分後の急行(池袋40分発)の直後はそのようなことはありませんが、普通の発車時刻を一致させるために普通川越市行きを時刻調整し、2分後にずらしてます。

また、池袋毎時00分発(と30分発)の急行は(池袋断面で)7分前に準急が先行しています。この準急に追いつくために、ふじみ野までの所要時間をある程度かけることになります。このロスタイムにより、毎時00分発の急行はふじみ野まで27分かけねばなりません。

一方、上りはふじみ野での間合いを1分に詰められるため、そのぶん早いのです。

急行を朝霞通過にしたところで、このようなダイヤ上の制約はそのままで「停まらないけど遅い」ことになってしまいます。やるとすれば、相鉄直通を中止し、池袋-川越市の普通に統一することによる普通-急行の間合い時間確保や、快速急行接続の準急を和光市で30秒程度早発させて後の急行をスピードアップすることでしょうか。

従来、快速で56分だった池袋→森林公園は快速急行利用で57分に増加し、森林公園→池袋は53分から58分に増加しています。川越市以遠の停車駅増加や接続の準急の上板橋停車が響いている印象です。当該の準急は所要時間がやや長めですので、1分程度スピードアップしてもらいたいものです。

夕方ラッシュ時下り

夕方ラッシュ時の下りについてもパターンが若干変更されています。ダイヤ改正前後の18時台と19時台の池袋の発車時刻を比べてみましょう。

表4. 夕方ラッシュ時の池袋発車時刻の比較

行先が変更されている箇所もありますが、そのほかの点で大きな変更点は以下の通りです。

  • 毎時39分、51分の急行がそれぞれ毎時41分、49分に変更され、毎時27分-41分の間で14分のダイヤホール、毎時49分-02分の間で13分のダイヤホールが生じた
  • 18:39の準急は18:51にシフトして残された一方、19:39以降の準急はカットされた

今回のポイントは準急を毎時4本から毎時3本に間引くことです。単純に間引くと列車間隔が開きますので、急行の発車時刻を若干シフトさせた格好です。志木-川越市で各駅にとまる電車は毎時8本以上を維持しています。

では、所要時間はどうでしょうか。簡単に比べてみましょう(表4)。

表4. 夕方ラッシュ時の所要時間比較

おおむね1分増加しています。変わらないのは毎時30分発のTJライナーのみという体たらくです。18:39発の急行は3分前に準急が先行しており、その準急の後追いで時間がかかっていました。今回のダイヤ改正で急行の5分前に変わりました。これによるスピードアップはありません。準急が上板橋に停車するようになり、準急の所要時間が増したためです。とはいえ、準急を1分程度スピードアップすることは可能そうに見え、そうすれば当該の急行の所要時間増加はなしになりました。

補足

夕方ラッシュ時の速達列車は毎時8本です。しかし、日中時間帯よりも急行系の本数が減るのは不便です。東武的にはTJライナーを提案するのでしょうが、別料金がかかります。

朝霞に急行がとまり、相対的に準急の役割が低下しました。そうであれば、急行を10分間隔で運転し、準急を30分間隔にしたほうが全体的には便利になりそうです。例えば、毎時00分にTJライナーを設定し、02分から10分間隔で急行を設定、05分から10分間隔で普通を設定することを基本とします。それだけでは輸送力が不足するでしょうから、14分に準急、08分に普通を設定という具合です。

東上線のダイヤ改正を見てみて

写真4. 都区内の住宅地を走る

今回、東上線のダイヤ改正後のダイヤを簡単に解析しました。朝ラッシュ時以外は1分程度とはいえ、急行のスピードダウンが目立ち、朝霞停車のデメリットがはっきりと表に出た形です。本来であれば、(直線の多い東上線のことですから)最高速度を100km/hから110km/hまで向上させ、停車時間の増加による所要時間増加を吸収することを考えてもらいたかったです。

とはいえ、利便性を低下させずに減便にも成功でき(日中時間帯の川越での速達列車がほぼ10分間隔というのは大改善です)、ダイヤ作成のテクニックを感じることができました。

準急や急行の停車駅増加は遠距離利用者にとってはデメリットとなります。そのデメリットをなるべく表面化させないダイヤをお願いしたいものです。

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