東京と横浜を結ぶ路線の1つの東海道線。東京と横浜を結ぶ交通機関の中では最も所要時間が短く、混雑しているというイメージもあります。では、どの程度混んでいるのでしょうか。平日昼間の実態を確認しました。
※本調査は社会情勢で外出「自粛」が実施される前の2020年2月上旬に実施しました。
写真1. 東海道線は日中といえども15両編成が多い
平日日中時間帯の東海道線の混雑状況まとめ
以下、長い本文を読む気がない人のために、要点をまとめます。
・混雑率は50%程度であるが、10両編成の場合は70%程度になる
・混む車両は6~10号車、空いている車両は1~3号車、13~15号車である
・ただし10両編成の場合はまんべんなく混んでいる
混雑調査の概要
今回の混雑調査の方法を紹介しましょう。この記事では、定点観測を行い、一定時間の全列車を対象にして各車両の混雑を目視で確認しています。これはプロも行っている調査方法です。
簡単に調査方法を紹介しましょう。一部の個人サイトでは混雑状況を書いているところもありますが、調査方法や混雑指標の言及がないのでう~んと考えてしまうところがあります。そのようなことを踏まえて、弊サイトではきちんと方法を示します(さすがー)。
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しております。その概要を示します(表1)。
表1. 混雑ポイントの概要
せっかくなので、120ポイント~160ポイントの様子をご覧いただきましょう(写真2-4)。いずれも個人情報を守ることを目的に、画質を落としています。
写真2. 混雑ポイント120ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真3. 混雑ポイント140ポイントの様子(右上に私の指が写っていますね…)
写真4. 混雑ポイント160ポイントの様子(写真3と異なり、ドア部分が圧迫されていることがわかります)
今回は東海道線で山手線のターミナル駅である品川と、その1つ横浜よりの駅である川崎の間である、品川-川崎で調査しました。
※実際には品川駅のホームの川崎よりで確認しています。
混雑状況の生データ
混雑状況の生データから細かく分析することにします。先に生データを示し、その後にデータを解析します。
東海道線はおおむね10分間隔で運転されています。1時間に1回だけ快速アクティが設定されていますが、通過駅は少ないので、そこまで差がないと推定しています。そこで、上下線それぞれ3本ずつ確認しました。
まずは生データを示します(表2)。
表2. 東海道線の日中時間帯の混雑状況(品川-川崎、生データ)
※4号車と5号車はグリーン車です。
日中時間帯でもそれなりに混んでいます。15両編成であれば混雑率は50%弱、10両編成であれば混雑率は70%程度です。
混雑状況の分析
生データだけ示しておしまい、というのも不愛想でしょう。そこで、私なりに混雑状況を分析します。要点は以下の通りでしょう
・下りは13~15号車、上り(10両編成を除く)は1~3号車が空いている傾向にある
・上記の通り上下で傾向は異なるものの、両端の車両は空いている傾向にある
・ただし、10両編成だとまんべんなく混んでいる
・快速アクティと普通でそれほど混雑に差はない
分析の基本は層別です。つまり、何かしらの要素の有無で場合分けするということです。どの列車でも号車ごとの混雑状況の差が顕著でしたので、その点に着目してみましょう。
すると、10両編成の場合を除いて、両端の車両が空いていて中央の車両が混んでいることがわかります。空いている傾向の車両は1~3号車、13~15号車、混んでいる傾向の車両は6~10号車です。ただし、空いている傾向の車両は上下線で異なり、下りは13~15号車、上り(10両編成を除く)は1~3号車が空いている傾向にあります。
10両編成の場合は1~3号車も混んでいますが、これはホームの端にいる人が1~3号車に集まったためでしょう。
快速アクティと普通の停車駅の差は辻堂、大磯、二宮、鴨宮だけであり、東京-藤沢での差はありません。そのため、東京-藤沢の利用に限ると、快速と普通は同じです。よって、快速アクティと普通の利用状況は特に違いありません。もともと快速アクティの通過駅は「利用が少ない」駅です。したがって、通過したところで特に利用状況が違わないのかもしれません。
混雑状況からダイヤ案を考える
基本的に現在の東海道線の混雑状況は大局的に見ると「適正」という判断ができます。ただし、これは大局的に見た場合です。細かくいうと是正する点があります。例えば、15両編成だと両端の車両が空いています。これは別の言いかたをすると15両編成であっても一部の車両は輸送力の足しとしてほとんど機能していないということです(あってもなくても同じ!)。であれば、10両編成でもじゅうぶんです。
では、10両編成で「常にどの車両も混んでいる」のが良いのでしょうか。それもNoです。であれば、15両編成を10両編成に減車するかわりに、余った5両編成で増発するという考えかたがベストです。現在のダイヤだと15両編成が2本運転されていますが、それを10両編成3本にするのです(グリーン車の関係で付属編成2本連結というわけにはいかないでしょうが)。現在は1時間に6本運転されていますが、これを1時間に8本にするということです。
幸いなことに、「上野東京ライン」として直通している高崎線や宇都宮線は1時間に4本の運転です(合計で1時間に8本の運転)。そうであれば、東海道線も1時間に8本の運転とすれば、宇都宮線や高崎線の上野発着の全列車を東京直通にできます。10分待ちの場合だと10両編成の場合の混雑率が70%ですから、7.5分待ちとなれば混雑率は52%程度となり、どの車両でも「座席が埋まり、ドア付近に数人の立ちが生じる」という理想的な混雑状況になります。
増発すると人件費がかさみます。これを解消する良い手段がスピードアップです。現在の快速アクティの停車駅をもう少し厳選すると、所要時間が短縮できます(通過駅も増発するので乗車チャンスは減らない)。さらに、東京-横浜の所要時間を24~26分という113系、211系時代のままとするのではなく、23分程度にするなどの方法も手です。これで、乗務員の「勤務時間」を短くするとともに、乗客サービス向上にもしてもらいたいものです。
混雑基本データへのリンク
ここまで特定の駅での混雑調査という「狭くて深い情報」をお伝えしました。では、公式データをわかりやすくまとめたデータはないでしょうか。そのような声にお応えして、以下のページを作成しました。