東京でも有数の混雑路線、中央線快速。その夕方ラッシュ時のピークの混雑はどの程度なのでしょうか。最も混むとされる新宿から中野の混雑を調査しました。
実際の混雑状況
弊サイトでは混雑ポイントという概念を導入しています(表1)。
表1. 混雑ポイントの概念
混雑ポイントは以下のように言葉に変換することができます。
・80ポイント以下の場合は立ちが発生していない
・140ポイント以下の場合では吊革につかむことができる
・160ポイント以上の場合は圧迫が生じている
それでは、実際の状況を観察してみましょう。
写真1. 混雑ポイント140ポイントの様子
表2. 実際の混雑状況
多くの車両で吊革をつかめないほど混雑していることがわかります。平均的な混雑状況は、吊革につかめない人が出るものの、ドア部分の圧迫までは発生しない、というものです。現実にはばらつきがありますので、後述します。
混雑の状況の分析
写真2. 11番線に到着する通勤快速(河口湖行き!)
多くのサイトでは、どの電車も均一に混雑しているとしてさまざまな記事を書いています。しかし、現実にはそのようなことはありません。そう、車両や列車ごとによって混雑は異なるのです。では、現実の混雑状況はどのような程度なのでしょうか。
号車ごとの混雑の分析
私は通勤快速と快速で混雑が異なるように見えましたので、快速と通勤快速で各号車の混雑を層別してみました。
表3. 混雑の各車両の分析
通勤快速のほうが格段に混雑していることがわかります。混雑ポイントから計算しますと、以下の混雑となります。
・通勤快速:157%(おおよそ170ポイント、圧迫が生じている状態)
・快速:117%(おおよそ150ポイント弱、吊革が埋まるものの圧迫は生じていない)
また、各車両の混雑はそこまでの違いがないことがわかります。そうは言っても、1号車、2号車と7号車が空いている傾向にあることがわかります。これは快速でも通勤快速でも変わりません。
列車1本ごとの混雑状況
さて、通勤快速や快速はどの電車も均一なのでしょうか。つまり、号車による混雑ムラ以外の列車ごとの混雑がないということでしょうか。明らかに混雑している電車と空いている電車があることは明らかです。調査した3本の通勤快速の混雑はそれなりに均一ですが、快速の混雑は列車ごとに異なります。おおむね快速も混雑していますが、明らかに空いている快速があります。具体的には、以下の通りです。
・18:34発快速八王子行き(圧迫のある車両は存在しない)
・19:18発快速高尾行き(多くの車両はつり革が埋まっていない)
この2つの列車には共通点があります。行先が近いかどうかではなく、前列車間隔が短いことが共通です。そう、続行運転している電車であれば空いているのです。この傾向が見られるのは、以下の電車が該当します。
・18:04発武蔵小金井行き
・18:11発武蔵五日市・箱根ヶ崎行き
・18:27発青梅行き
・18:42発豊田行き(調査日は遅れていたため、前列車間隔が開いており、空いていませんでした)
・19:18発八王子行き
混雑状況からダイヤを考える
ここまでは現状把握です。ここから、より良いダイヤの骨格を考えてみましょう。
快速と通勤快速の比率
それでは、混雑状況からどのようなダイヤが良いのか考えてみましょう。なお、全体的な混雑は新宿発車時点で125%程度であり、ドア付近の圧迫までは見られない程度です。本数が多過ぎると通勤快速の速度が落ちるので、本数増加は適切ではないでしょう。そのため、本数は同一で考えます。復習のために、混雑率を振り返ります。
通勤快速:混雑率157%(対象:3本)
快速:混雑率117%(対象:12本)
単純に考えて、通勤快速の本数が1.25倍になれば通勤快速の混雑が130%程度になります。しかし、このようにすると快速から通勤快速へ乗客がシフトします。そのため、通勤快速の混雑を緩和するには、通勤快速の本数を1.5倍にする必要があるでしょう。東京発18時台の本数は通勤快速4本、快速14本ですから、通勤快速6本、快速12本とするのです。
逆に、高円寺、阿佐ヶ谷、西荻窪については快速を通過させて、各駅停車へのシフトを行い、通勤快速は荻窪や吉祥寺を通過させるのも手です(通勤快速が通過しても、新宿方面からは快速のスピードアップでフォローできます)。この場合は、快速を通過させる3駅のフォローが必須となることでしょう。
グリーン車を増結すると?
グリーン車の増結ということが考えられています。グリーン車の定員は現在の中距離電車で180名(2両の合計)です。仕様の違いや空席が生じることなどを考えると、2両で150名程度乗車すると考えましょう。現在の本数が維持されるとすると、乗車率は114%までに低下(下のコラム参照)します。114%といえば、吊革が埋まる(105%)よりも少し混雑するという程度です。減車や減便がないとすれば、グリーン車連結は普通車の混雑緩和という効果もあるのです。
グリーン車連結後の混雑は以下の計算で求めることができます。全列車に連結ということを考えますと、実は(本数が維持されるとすると)列車本数を考えることなく、計算することができます。
現在の混雑率は125%と調査結果から算出できています。1両あたり140名だとすると、10両編成で1750名が乗車していることになります(式1)。
(式1) 140名×1.25×10両=1750名
この乗客のうち、150名がグリーン車に移行しますと、普通車に残る乗客は1600名となります(式2)。
(式2) 1750名(乗客全体)-150名(グリーン車に移行)=1600名
普通車は10両編成のまま変化ありませんから、1両あたりの混雑率は114%となります(式3)。
(式3) 1600名÷10両÷140名/両 = 1.14 = 114%
また、会社側は収入が見込まれます。ラッシュ時に列車1本当たり150名乗車しますので、11.7万円の収入増加です。このような高い乗車率を誇るのは朝の上りと夕方の下りだけですから、1編成が稼ぐ収入は単純に1日当たり23.4万円と考えることができます。実際には人件費を差し引いて、日中や夜間で稼げるとしたら、1編成の利益(収入ではない!)もこの程度です。1年で8541万円の利益です。これであれば、ホーム延伸を行っても利益が出るというものです。
一部余談となりましたが、グリーン車の純増は会社側は利益上昇、利用客は快適性向上(普通車も混雑が緩和される!)とwin-winの関係となるのです。
ライナーの改革
ライナーは混雑していました。特に、新宿19:15発の青梅ライナーは満席でした。このことからすると、需要が供給を上回っていることは確実です。ここでライナー専用の車両(オール2階建て転換クロスシート)とすれば、もっと定員が増えることでしょう。着席ができれば良いですから、シートピッチは970mm(グリーン車)は不要で、875mm(313系)程度で充分です。このようにすれば、普通車の定員は最大104名とでき、機器室のことを考えても10両編成で普通車700名、グリーン車150名が可能でしょう。現在のE257系だと9両編成だと558名ですから、着席サービスは向上します。このようにすれば前後の一般列車の混雑は300名程度ゆるくなります。このようにして、少しでも混雑を緩和してもらいたいものです。